DIABOROS 第一話 「Misty」
2023年、今より科学技術、文明は少しは発展した。ガンなんかも、治らない病じゃなくなった。車はまだ、空を飛んではないけど。いや、飛ばそうと思えば飛ばせる。まぁ、運転が難しいから飛ばしてないだけだ。それに高いし。アメリカとかの上流階級の人、昔の言葉で言うならセレブか、は一応持っているらしい。その代わり、車の自動運転技術がある。都心部だけだけど、操作のネットワークは張られている。宇宙も少しずつ開発されてきて、大昔流行った月の土地の所有権も少しは価値が出てきた。色々トラブルもあるみたいだけど、僕には関係ない。持ってないからね。政治の面では、外国人に参政権が付与された。当然のことながら、反発はかなり大きかったけど、与党の強行手段によって決定された。結果、今議員の2割を外国人が占めている。
そうそう、世界情勢も変わって来た。2010年には、日本のご近所、北朝鮮が潰れて、今では新しい国家になっている。あと、5年前には、第三次世界大戦が起きそうになった。あわや、核発射か?というすんでの所で済んだ。それも、一人のテロリストが全ての元凶だったらしい。しかも、そいつは日本人。今はどこにいるのやら。会ってみたいとは思わないけどね。 もう一つは日本が東と西に分断されたぐらいかな?大切なことと言えば。全部そいつのせいなんだけどね。 テロリストはあろうことか、日本で蜂起しやがった。イラク、ミャンマーのテロリストや軍事政権派の人々や、北朝鮮の残党、日本の右翼や暴力団など、世界中の危ない人々を束ね上げ、まず警視庁を爆破鎮圧。在日米軍基地を程よく混乱させた後、悠々と緊急招集のかかった国会議事堂をジャック。で、日本から世界へ宣戦布告。そして、その一時間後に同じようなことをして、滅茶苦茶になった4ヶ国からアメリカへミサイルを発射。次は核とのブラフ。いや本気だったのだろう。で、怒ったアメリカが徹底反撃。1ヶ月もたたずに暴動は鎮圧されるだろうとの見込みだったけど、予想に反して4年の奮闘。テロリストの掲げた理想に惹かれていった人々も結構いて、かなり苦戦したようだ。まぁなんとか鎮圧。そいつは死んでないとの噂。日本にもしかしたら潜伏してるのかも知れない。この国も戦場になっちゃって大変なことに。世界中から今は軍隊が集まって、名目上は復興支援。だけど実質占領。そうやって溜飲を下げてるみたい。 まぁ、そんなに色んな国が集まればもちろん仲違いも起きるわけで…。 去年、ついに静岡、長野、新潟より東と、愛知、岐阜、富山より西とで日本は分断された。 DIABOROS 第一話 「Misty」 深い霧の中にいるような、幼い頃の夢、幻。あの頃は何に縛られるでもなく、ただ無邪気に遊んでたっけ? 場面は飛んで、僕が京都に引っ越す時。二人とも泣いている。他にも友達はたくさんいたけど、やっぱり彼女のことが一番記憶に残っている。そういや、最後に何か約束したよな?何だったかな? そして僕は、目覚ましの音に起こされた。あ、時間が。 姉が作ってくれた朝食も摂らず、急いで家を出た。流石にパンをくわえながら走るなんて、器用な芸当は出来ない。落として凹むのも嫌だし。 チャイムと同時にクラスに飛び込む。どっちだ?「桜田、次からは妄想早くに来るんだぞ。今回はセーフにしてあげるが」セーフか…。今回ばかりは梅岡でよかった。副担だったらこうはならず、朝から小言を聞かされる羽目になっただろう。 ホームルームが終わっての休み時間、後ろの席の奴に、「全く、どうしてあなたはそうやっていつも遅刻するのかしら。下僕としての自覚がたりないのだわ」と流暢な日本語で話しかけられた。「なんでだよ。間に合ったからいいじゃんか、真紅」彼女の名は真紅。主従関係という名の下の恋人付き合いをしている。ちなみにドイツ人。父親は軍に在籍しているが、もともと日本には戦争が始まる前からいるので、あまり反日的ではない。「そういうものではないわ。なぜあなたは、もう少しゆとりを持って行動出来ないの」「真紅ぅ。そんなに怒るようなことでもないでしょ?それに怒ってばっかだとカロリーが欲しい所まで届かないわよぉ?」なんて火に油を注ぐ御人。水銀燈。いや、お前がそれを言うか?真紅以上に沸点低いじゃんか…、なんてツッコミを入れる前に真紅が火を吹いた。あぁ、騒がしい。 そう思い、避難。その先にもやっぱりうるさい奴等がいた。金糸雀、翠星石。あぁ、蒼星石がいる分少しはマシか。その辺の会話は略。眠すぎて言葉なんて耳を気持ちいいぐらい右から左へ素通りする。気付けば、翠星石からクッキーを貰ってたけど。ちょっとありがたい。朝抜いてきたし。あんまり関係無いけど、この高校には、そこそこの外国人生徒がいる。一クラスに五人程度。前述の五人は全てそう。ちなみに、本名は別にあるけど、彼女たちはニックネーム?で呼ばれている。ええっと…、本名は思い出せないが。まぁ仕方ないよな。一回でも聞いてるかどうかのレベルだし。 そんなこんなで始まった、いつもの日々。それはこの日を境に転がり始めた。良い方向か、悪い方向かは分からないけど。少なくとも、今とは違う方向へ。日本の真ん中の壁へと惹かれるように。 DIABOROS 第一話 「Misty」 了
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