ローゼンの創世神話
ローゼンの創世神話昔々、この世界が出来る前、ここには《世界》はなく《場所》だけがありました。そこにはたくさんの神々と、神が暇をもてあまして創った生き物だけがいました。神様の中で一番えらいのは《お父様》と呼ばれる神様です。《お父様》は、7人の完全な少女を作り、自分の娘としてかわいがっていました。少女達の名前は、《アリス》といいます。アリスは、人間にして人形で、そして、天使で神様でした。《お父様》は退屈でしたが、アリスたちと楽しい楽しい日々を過ごしていました。あるとき、神様がどんどんいなくなりだしました。《お父様》は不思議に思い、ある神様に尋ねます。「いったいどうしてみんないなくなるんだい?」その神様は答えます。「別の、世界とやらから兎の神様がきたんです。 みんな、その人の来た、《世界》とやらの話を聞いているんです」《お父様》も、その兎の神様に会いに行きました。兎の神様は、とても不思議な人でした。兎の神様は世界について教えてくれます。兎の神様は、世界に案内してくれます。たくさんの神様達が、《世界》へと引っ越していきました。兎の神様とすっかり仲良くなり、《世界》の話を詳しく聞いた《お父様》は、自分も《世界》を作ってみようと考えました。兎の神様に《お父様》は尋ねます。「いったいどうすれば、《世界》を作ることが出来るんだい?」兎の神様は答えます。「《世界》を作るには、一回この《場所》を壊さなければいけません。 そして、場所がなくなったところに、広がりと、時、そしてたくさんの生き物を与えればいいのです。」 「《場所》を壊すとどうなるのかな?」「神様と天使は助かりますが、生き物は皆消え去ります。 消え去るときに納得して消えてもらえないと、次にそこに《世界》はうまく作れません。」《お父様》はそう聞いて、さっそく生き物達の説得にかかりました。といっても、みんな《お父様》や、他の神様が創った生き物なので、生き物達を説得するのはとても簡単でした。そして、ついに最後の一人の番になりました。その最後の一人は、人間の、少年の姿でした。《お父様》は尋ねます。「新しく世界を作りたいんだ。そうすると君は消えてしまうけれど、いいかい?」少年は答えました。「いやです。僕は消えたくありません。」《お父様》はそんなことをいわれるとは思いませんでした。だから、一生懸命説得します。けれど、少年は頑として首を縦に振りません。《お父様》は困ってしまい、兎の神様を振り返りました。「大丈夫です。一人ぐらいなら納得していなくても。多少不完全な世界になりますが。」《お父様》は、その言葉に安心し、早速《世界》を創り始めました。まず《お父様》は《場所》を壊します。すると、生き物は消え去りました。少年も、《お父様》をにらみながら消えていきました。兎の神様が囁きます。「次は、広がりをお創りなさい。」《お父様》は広がりを創ります。《お父様》のまわりは、とてもとてもひろくなりました。 「次は、時をお創りなさい。」《お父様》は、ときを創りました。すると、時は思ったようには創れず、流れになってしまいました。進むことは出来ても、戻れなくなってしまったのです。兎の神様は又囁きます。「仕方ありません。一応時は出来たんですから。それで良しとしましょう。 次は、生き物をお創りなさい。」《お父様》は生き物を創りました。すると、見たことも無い不思議な生き物がたくさん生まれてきました。《お父様》は思わず目を見張ります。香りのついた花も、《お父様》には始めて見るものでした。広さと時と生き物を眺め回した後、《お父様》は尋ねました。「これが《世界》かい?」「はい。そうですよ。多少不完全ですけれど。」「なぜ?」「世界とは本来それを作った神の思う通りになるもの。 けれど、あそこを御覧なさい。」《お父様》は、兎の神様の指差した先をご覧になりました。すると、あの少年がいたのです。その少年は《お父様》のほうに向き直ると、こう叫びました。「僕はここを《世界》と認めない!あなたも神と認めない!」《お父様》は、狼狽されました。しかも、よく目を凝らすと少年のほかにもたくさんの人間が見えました。それは、お父様の創った人間ではなく、勝手気ままに動き回る、『人』でした。 「どうしたらいいんだろう?」すっかりこまってしまった《お父様》は兎の神様に助けを求めます。「どうしようもありません。 まさかここまで不完全な世界になるとは。 まあ、初めて世界をおつくりになられたんだから仕方ありませんよ。」兎の神様はそういって《お父様》を慰めます。仕方が無いので、《お父様》はもう一度、世界を創り直しました。今度は生き物達を納得させないで。けれどちっともよくなりません。前と全く同じです。「ほらほら。納得させないで消し去ったから、世界はますます酷くなりましたよ。」兎の神様の言う通りでした。生き物達には寿命が出来、人間達は神様達をあがめなくなりました。そして、アリスたちは人形へと変わってしまいました。「ああ、なんていうことだろう。」《お父様》はお嘆きになり、《世界》の隣にもう一度、《場所》をおつくりになられました。そしてそこで、人形となってしまったアリスたちに言いました。「もう一度、君たちがアリスになれたらここにおいで。 又、楽しく暮らそう。」元アリスたちは必死に考えます。どうしたらもう一度アリスになれるのか。少女達は、兎の神様に助けを求めました。「君たちがアリスから人形になってしまったのは、人間のせい。 だから、人間とすごしなさい。 そしてお互いに少しづつ残っている、アリスの欠片を集めなさい。」 少女たちは悲しみました。人間と過ごさなければいけない上、お互いにアリスの欠片の奪い合いをしなければいけないなんて。けれど、《お父様》はアリスにもう一度なれたら一緒にすごそうといわれました。少女達は嘆きながら、人と共に殺し合いを始めました。いつかアリスになれる日を夢見ながら。人間達は少女達の力を求めました。そして、兎の神様に手伝ってもらって一人の少女を作り上げました。なんで、兎の神様が手伝ったのかはわかりません。単なる気まぐれなのでしょう。世界は支持する少女と共に、八つに分かれます。最初は互いに戦っていました。同じ《世界》で。けれどいつしか繋がりは薄まり、少女を通してしか接点を持つことの無い、全く別の次元、全く別の世界へとなって行きました。《お父様》は驚きました。まさか自分があんなに苦労して創った世界を、少女達と人間達がバラバラの、八つの世界に分けてしまうなんて。しかたがないので、兎の神様に頼みます。「僕の居る場所の隣に、八つの世界の重なるもう一つの世界を新しく創ってくれ。」兎の神様は言うとおりにしましたが、もはやその世界は少女達と人間の世界。《お父様》の力は及びません。もう、少女達の戦いをとめることすら出来ません。兎の神様は時々顔を見せますが、《お父様》はほとんどいつも一人です。《お父様》は兎の神様と違って、《世界》の間を動けません。新しく作った《場所》にいくことが出来るだけです。お父様はいくつもいくつも《場所》を創り、少女達の面影を求めます。少女達も、いろんなところから《お父様》の創ったたくさんの場所に入って《お父様》の面影を求めます。人間達はすべてを忘れ、無知の幸せを享受しています。いまだに、この鬼ごっこは続いているのでしょう。人間達の知らないところで。
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