第四話「TRUE BLUE」
壊れそうな程 狂いそうな程 切ない夜には そっと 「抱きしめて」壊れそうな程 狂いそうな程 切ない夜には そう呟いた…誰もいない部屋 キミのいない部屋 誰もいない部屋 僕が消えて行く…「キャー」「ワー」等の悲鳴が響いている。ゴゴゴゴォーとローラーの駆けて行く音。ここには笑顔がある。たくさんの笑顔が。「あれ?全然食べてないですね?大丈夫ですか?」「ん?あぁ、最近食べる量減らしててな。大丈夫。心配するようなことじゃないよ」「ふ~ん。そうですか。じゃあ、これ貰っちゃうですよ」「いいぞ。他にも何かいるか?」「ふふん。この翠星石様に献上しようだなんて、立派な心掛けですぅ♪ですけど、もういいですよ。腹八分目までです」「そうか。じゃあ、そろそろ出るか。会計は出しておくよ」「え!?本当にどうしたんですか?本当に大丈夫なんですか!?どうしちゃったんです!?天変地異の前触れですか!?」 「はぁ~。ひどいな。そこまで驚くようなことかぁ?なんとなくだよ、なんとなく。先に外で待っててくれ」「はいですぅ♪」LUNA SEA 第四話 「TRUE BLUE」彼が帰って来てから2日目、私達は今遊園地にいる。会えなかった時間の溝というのは、深いようで案外浅かった。たまに、変なことをするけど気になるようなことではない。良かった。連休に帰って来てくれて。今日の遊園地は私のリクエストで、最近オープンしたばかりなのだ。一度行ってみたいな、と思いつつ、チャンスはなかなかないだろうと、思っていた矢先のこと。ラッキー。当然人も多い。私は人混みが苦手なのだが…「はぐれないように」、と握ってくれた彼の手は、私の胸の不安をすっと溶かしてくれる。「じゃあ、次はあれに乗るです!」「うげ、また絶叫系かよ…仕方ない。ここまできたら、腹くくるしかないな。よし!とことん付き合ってやる!」数時間後…あれ?ジュン、少しやつれた?足元おぼついてないし。 「もうジェットコースターはやめて…お願い…」「しょうがないですね~。本当はまだまだ乗り足りないですけど、時間もそろそろですし、最後にあれに乗ろうです」私が指差したのは観覧車。きっと、私の頬は赤く染まっているだろう。いや、これは夕焼けのせいだ。そうにちがいない。…陽はとっくに沈んでしまっているが。「さ、さぁ、とっとと行くです!」「はいはい。分かったよ」お互い様みたい。二人とも初心なのだ。「本当、今日は楽しかったですよ」「そうか?良かったよ。そう言ってもらえて」「でも、突然どうしたですか?」「…翠星石、お前に伝えたいことがあるんだ…」観覧車が頂点に差し掛かる頃、彼の発した言葉は、私を絶望の淵に立たせるには、あまりに残酷で、あまりに強力過ぎるものだった。「翠星石、僕、ガンらしいんだ」この時、全ての歯車が噛み合って、ギシギシと鈍い音を立てながら、何かの終りを告げ、何かの始まりの声を呼んでいった。第四話 「TRUE BLUE」 了
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