「新説JUN王伝説~序章~」第17話
「はぁ…はぁ…くそぉっ…」新月の暗い森の中を1人の男が走るだが彼の体は泥にまみれ足元もおぼつかず先程から何度も転倒を繰り返していた「こ…ここまでくれば…」男は一本の大木の根元に横たわり大きく一息を吐いただが…『それで私から逃げたつもりですか?』「!?」突然辺りにもうひとつの声が響き渡る…男はぎょっとしながら再び進もうと体を起こしたが、その眼前には音もなく現れた1人の男が立っていた…?「お諦めなさい…我が組織では敗北とはすなわち“死”それは貴方も承知の筈です。そうですよね…涅論餓?」涅論餓…それが追われていた男の名前であった。彼はつい先程までヤクザに雇われた用心棒であり、闇を友とする狩人であったしかし今の彼は狩られる側となり友であった夜の闇に怯え逃げ惑っている。その理由はただひとつ…彼が他人に敗北したということ…そのために今、彼は何者かに追われる身となっていた涅「ひ…ひいぃ…ゆ、許してくれ…次は…次こそは必ず…」涅論餓は喉の奥から必死に言葉を放つ?「生憎、敗者の弁など聞く耳は持ち合わせておりません…」しかし男は道端のアリでも見るかのような冷たい瞳で涅論餓を見据えて言い放った
涅「あ…相手は…あの伝説の北斗神拳の使い手だぞ!?いくら私でも相手が悪すぎたんだ!!」?「何?…」その時、涅論餓が助かりたい一心で放った弁解に男は小さく眉を動かした?「ほぅ、それはそれは…して、その使い手の名は?」涅「た…たしか…JUN王とか言っていたような…」?「JUN王……そうか、そうでしたか。ククク…確かに、相手が本当に北斗神拳の使い手であれば貴方がかなう相手ではありませんね。」涅「だ…だろ?なら…」?「ですがルールはルールです…」その刹那、小さく空気を斬る音が鳴った『ドシュッ…』涅「へ?…あ……」その瞬間、涅論餓の胸部を男の手が貫いていた涅論餓は何が起きたかも分からぬまま血飛沫を上げながらその場に崩れ落ち絶命した…?「確かに貴方では北斗神拳は破れません…貴方では…ね。ククッ…クックック…ハーッハッハッハッハッハッハ…!!」男は涅論餓の遺体に言葉を投げ捨てると踵を返し、不気味な笑い声と共に闇の中へと消えていった…
めぐの一件から数日が過ぎた…季節は12月も半ばに差し掛かり、ジュンの通う学校もまた例外なく冬休みムードで持ちきりであった翠「あとちょいで冬休みですね~♪」銀「それよりも…こないだの期末試験どうだったのよぉ?」翠「うぐっ…それは…」紅「どこかのM字のように休みを補講で潰されないよう祈ることね。」真紅がちらりと視線を向けた先には机に突っ伏して欝オーラを放つベジータがいた蒼「どうもまた補講確定らしいね…」薔「冬休みも…梅岡と一緒か…同情するね…」翠「ば…馬鹿言うじゃねえです!!翠星石とあんなバクテリアを一緒にするたぁ侮辱もいいとこですぅ!!」ベ「( ̄□ ̄;)!!」雪「まぁ…確かにそれも一理ありますわね。」翠「きらきーの言う通りですぅ!!あんなのと同類に扱われちゃ存在を否定されるのと同じですぅ!!」ベ「しくしくしくしく……」ジ「お…おい…ベジータの机から涙が滝のように溢れ出てるぞ?」銀「汚いわねぇ…ちゃんとモップかけてもらわなきゃ…」ジ(哀れだ…)その時であった、教室の扉が勢いよく開き雛苺と金糸雀が元気一杯に飛び込んできたそして2人はそのままジュン達の前へ駆け寄ると大声で叫んだ
雛・金「「旅行に行く(の~♪)(かしら~♪)!!」」一同『……は?』その元気な声とは裏腹に突然の言葉を受けたジュン達は一瞬思考を停止させられた金「は?…じゃないかしら~!だから、冬休みにみんなで旅行に行くって言ってるのかしら~!!」金糸雀が呆気に取られていたジュンたちに話の主旨を告げたところでようやく全員の意識は空の彼方から復帰したジ「…旅行?」金「そうかしら♪せっかくの冬休みなんだもん、青春の一ページをみんなで作るのも悪くないのかしら。」雛「なのー♪」銀「ふぅん、旅行ねぇ…悪くないかもしれないわぁ。」蒼「うん、僕もいい案だと思うよ。」雪「旅行…名物料理…食べ歩き…素敵ですわぁ…(うっとり)」薔「…ご当地アッガイ…あるかな?」紅「そうね…私も特に異論はないわ。」翠「まぁ、チビチビのわりにはいい案ですね。こういうイベントは翠星石がいなくちゃ始まらねぇですから行ってやってもいいですよ。」銀「補講がなければ…でしょう?」翠「や…やかましいですぅ!!」金「みんな都合がつきそうでよかったかしらー♪」雛「ねー、勿論ジュンも来るよね?」ジ「えっ…僕もなのか?」金「勿論かしら~。ジュンがいなくちゃ盛り上がらないかしら~♪」
ジ「で…でも色々とマズくないか?」雛「ほぇ?なにが?」ジ「その…お前ら、旅行ってことは泊まりかもしれないんだろ?なら男子の僕がいちゃ色々とマズくないか?」確かに高校生の男女合同の宿泊旅行が学校にバレでもしたら厳重な処罰が下る恐れがあるのは当然な考えであるだが…銀「あらぁ、その点に関しては大丈夫じゃなぁい?」ジ「な、何でだよ?」銀「ジュンに私達をどうにかするだけの甲斐性があるとは思えないしぃ♪」ジ「なっ…!?」紅「それは同感ね。」翠「ジュンのそういう度胸はプチサイズなのですぅ。」薔「……私は…いつでもバチコーイなのにね…」ジ「お前らまで…僕ってそんなにヘタレに思われてたのかよ…orz」女友達の口から放たれた率直な自分のイメージを聞いたジュンはその場に膝をついた蒼「ジ…ジュン君、元気出してよ。みんなそれだけジュン君を信用してるってことだよ。」ジ「信用って言うよりナメられてるようにしか思えないんだが…」金「とにかくジュンも一緒に来るかしら♪予約は早めに取らなくちゃいけないし。」雪「もし学校にバレてもいざとなれば私が校長を買収しますわ♪」ジ「も…もうちょっと考える時間をくれよ…」
銀「あらぁ、そんな釣れないこと言わないでよぉ。」翠「こーんな可愛い女の子たちが誘ってやってるのにそんなハッキリしない返事でどうするですか!?」紅「まさかレディに重い荷物を持たせる気じゃないでしょうね?」ジ「っておい!!荷物持ちかよ!?」ジュンが怒鳴り声を上げた次の瞬間、ガラリと教室の扉を開けて梅岡が入ってきた梅「やぁ、おはようみんな!担任の梅岡だよ♪冬休み前ではしゃぐのもいいけど朝のHRの時間だから席についてね☆」ジ「おっと…じゃあこの話はまた後だな。」銀「あ、こらジュン!」翠「逃げやがったですぅ!」ジュンはしめたとばかりに薔薇乙女の面々から離れるとそそくさと自分の席へと座った。このときばかりは梅岡がほんの蚤の爪先ほどありがたく思えたのであった梅「さ、HRを始めるよ…おっと、その前にみんなに紹介させなきゃいけない人がいるんだ。お~い、入ってきていいぞ~。」梅岡が廊下に呼び掛けると再び教室の扉が開いたその直後、教室内に小さなざわめきが起こった…入ってきたのはスーツに身を包んだスラリと背の高い若い男であった
梅「紹介しよう…彼は円谷先生。この度我が校に赴任してきた新任の先生なんだ。彼にはうちのクラスの副担任をしてもらうことになったんだよ。じゃあ、円谷先生から一言どうぞ☆」梅岡はバチコーンとウィンクをかますと教卓を円谷に渡した男はチョークで黒板に『円谷英二』と名前を書くと生徒たちへと視線を向けた円「先程梅岡先生からご紹介にあずかりました円谷です。まだこの学校には馴染んではおらず色々とご迷惑をかけるかもしれませんが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。」 円谷は梅岡とか質が違うほどの爽やかな笑みを見せるとぺこりと頭を下げた『パチパチパチパチパチパチ…』直後、教室内に女子を筆頭とした拍手が沸き起こった。所々では小さく黄色い声すら聞こえているジ(しかにしても…こんな時期に赴任してくるなんて珍しいな…)ジュンは拍手をしながらも爽やかに笑う円谷の姿を眺めていた梅「よしよし、みんないい拍手だ。ならせっかくだし今日の出席は円谷先生に取ってもらおうかな。」円「はい、喜んで…では、出席を取ります。」円谷は梅岡から手渡された出席簿を開くと生徒の名前を呼び始めた
円「柏葉さん。」巴「はい。」円「えっと…キム・シジャンさん?」金「かなりあかしらー!!」円「え!?あ…ごめんごめん、次からは気を付けるね、神奈川さん。」金「だから、か・な・り・あ!!かなりあかしら!カナカナカナカナカナカナカナ!!」クラスにどっと笑いが溢れる翠「くしし、あの新米、なかなか見所があるですぅ…」銀「金糸雀ったら…あんなに真っ赤になって、おばかさぁん。」円「ごめんよ、もう間違わないようにするよ、金糸雀さん。」金「もうっ、分かればいいのかしら…」円「ごめんごめん…えっと、じゃあ出席を続けます…雪華綺晶さん。」雪「はい。」金「ちょwwwなんできらきーの名前は普通に読めるのかしら!?納得いかないかしら~!!」円「金糸雀さん、HR中は静かにね?」金「誰のせいかしら~!?」その後、『か』行の出席を取り終えると円谷はジュンの名前を呼んだ円「…桜田くん。」ジ「は……」『ドクン…!!』ジ「!!?」ふいにジュンは全身に冷水を浴びせられたような凄まじい悪寒に襲われたジ「あ…あぁ…ぅ…」ジュンは喉から言葉を出すことも出来ず、知らぬ間に小刻みに体を震わせていた
円「どうか……したのかい?」ジ「い…いえ、なんでもないです…すみません。」円「そっか…体調が悪ければすぐ言うんだよ?じゃあ、次は…真紅さん。」紅「はい。」ジ(なんだったんだ…今のとてつもない殺気は…?まるで顔面に真剣を突きつけられたみたいだった…)ジュンは再び円谷を見るが彼は相変わらずの爽やかな笑みを称えながら順調に出席を消化しているジ(まさか…な……)放課後…黒『我が主、お迎えにあがりました。』ジ「あぁ、すまない。よっと…」ジュンはいつものように校門に待機していた黒王に飛び乗った黒『む……?』ジ「黒王…?どうした?」そのとき訝し気に黙り込んだ黒王にジュンは声をかけた黒『いえ……我が主、つかぬことをお伺いしますが、今日学校で何か変わったことはおありでしたか?』ジ「変わったこと?いや、特に……あ。」ふいにジュンの能裏に今朝のことが浮かんできたジ「そういえば今日うちのクラスに新任の教師が来てな…なんていうか…妙な感じがしたんだ。」黒『妙…と仰いますと?』ジ「いや、うまくは言えないんだけど…普通なんだけど普通じゃないみたいな雰囲気かな?」黒『そうですか……何もなければよいのですが…』ジ「どういうことだ?」黒『いえ、何と言いますか…この学校から何か嫌な気配がするのです。私の思い過ごしならよいのですが…』
ジ「へ…変なこと言うなよな…もういいから、帰るぞ。」黒『申し訳ありません。では…』パカラ…パカラ…ジュンは黒王を促すと日が落ちかけた薄暗い帰り道を進んでいっただが、ジュンの脳裏にはどうしても拭い去れない一握の不安がこびり付いたままなのであった…ジ(きっと何でもない…何でもないはずだ……なのに、なんなんだ!?この嫌な胸騒ぎは……)そしてこの時、そんな自分を何処からか見つめる不気味な影があったことをジュンはまだ知る由もなかった……?「桜田ジュンですか……なかなかどうして楽しめそうですね…ククク…」続く
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