序章
『序章』
僕には殺したい人がいる…
~6年前~
「今日は僕」「…こんにちは」「それじゃ、二人をお願いするよ叔父さん。」そういって両親は海外に行ってしまった、幼い二人を残して。「私は桜田のりです、これからお願いします」「いえいえ、いいんだよ。かわいい甥の子供だもの。孫が出来たみたいでうれしいよ!今日からは叔父さんでいいからね」「はい、叔父さん」「……」見た目は小奇麗な紳士といったとこだろうか、口を結び作ったような笑いを浮かべていた。『嫌だ…』これが第一印象だ。何故だろう、心の奥底から拒絶する僕がいる。ねぇちゃんもどことなく緊張しているようだった。今思えば、小奇麗にしていたのは僕らを欺くため、口を結んでいたのは黄ばみ切った乱杭歯を隠すためだったのだろう。叔父は結婚していた。生活には困らなかった。僕の親はちょっとした金持ちで、かなりの金銭援助をしていたらしい。半年が過ぎた。後半年。約束は一年だ。後半年我慢すれば…
突然鳴り響く電話。僕は言い知れない不安にかられる「はい、はい、そうですか…。叔父に伝えます…」叔母の口調は不自然すぎるほど淡々としていて、僕の不安を余計に掻き立てる。「アナタ…ちょっと…」「どうした?」「それが…」・・・こちらに近づいてくる叔父(嫌だ)「…両親が亡くなった」(分からない!!!)「飛行機事故だそうだ…」「……」
葬儀が済み、引取先のない僕らはまた叔父の家に居候することになった…。帰りの車の中は静かだった。
家につくとすぐに部屋にこもった。とにかく泣いた。声をあげて。姉が部屋に入ってくる音がした。「ジュン君、二人で暮らそうか?お父さんたちが残したお金で何とかなりそうなの。おねぇちゃん来年は高校だし、バイトでもして稼げば生活費に回せるでしょう?そしたら叔父さんたちにも迷惑かけづに済むし…」 「…」「どうかなぁ?」「…住もう…一緒に住もう」「ジュン君、よかったぁ。おねぇちゃん叔父さんたちに話してくるから♪」ちょっとうれしかった。半年経ってもあの叔父には慣れなかったから。
新しい生活は大変だったけど、とても充実していた。家事のほとんどを姉がこなしていたが、さすがにそれは申し訳ないので時々手伝った。そして年月は過ぎ、僕は姉と同じ高校に入学した。「おはよう、ジュン君」「おはようですぅ、ちび人間!」「うん、みんなおはよう!」登校中になじみの顔に挨拶をする。中学から友達の蒼星石、翠星石だ。まじめで頑固だが繊細な心をもっている蒼星石。口が悪く性悪だが憎めない翠星石。2人ともにとてもいい友達だ。
僕は叔父のことはすっかり忘れていた、あの日まで…
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