「第五章後編~三人の騎士~」
「第五章後編~三人の騎士~」血の黎明、三人の騎士達はそれぞれが生き残るべく道を剣や槍で切り開く、是即修羅道也。騎士達は生ける屍が如く貪欲に血路を開く、生き残りたい・守りたい人がいる・友のためと三者三様の思惑を旨に三人は市街地を血に染めて走り抜ける。J「うぉぉぉぉ!!退けえええい!!」先頭を走るJUMがただひたすら剣で道を切り開く、エクスカリバーもJUMも返り血で真紅に染まり紅き鬼となっていた。巴「邪魔をするな!!命が惜しければ退け!!」それに釣られて巴も刃を振るう、JUMが殺し損ねた死に損ない共に刃を振り下ろす、その黒き刃は更に血を吸うように赤黒く染まって行った。メ「うふふふ♪死を踊りなさい♪」メグのゲイボルグが唸りを挙げて次々と襲いかかる下郎共を弾き飛ばし・貫き通し・薙ぎ払い・叩き付ける、槍を振るう度に血が飛び散り市街地の壁を真紅に染めていく。そんな鬼のような三人を反乱軍に止める術も無くただただ死の壁にぶち当たり次々と屍を晒して行った。ざっと一人当たり百人以上は斬った、それでも三人は止まることを知らないまさに騎兵が歩兵を蹂躙するが如く死の道を作っていく。
三人が通った後には血の大河と屍の山が出来るだけでそこを歩く生者の姿は無かった、恐らく地獄と言う物があるとすればきっとソレはこれと同じ光景なのだろう。これ以上の犠牲は好ましくないと判断した反乱軍上層部は直ちに市街地から全軍を撤退させリンボン城に篭もった。それから三人が港に姿を見せたのは、陽が丁度真上に到達した時である、誰一人として傷を負わず誰一人として血を浴びなかった者はいない程血に染まっていた。後に紅王国の兵士の一人が手記に『その時俺は本当の死神を見た』と記す程三人はボロボロになっていた。真「JUM?」J「真紅様・・・役目無事に果たしました・・・」JUMが血に濡れたエクスカリバーを振るって血を払い落とす、だがすっかり固まってしまった血までは落とす事が出来なかった。雛「トモエ?怪我したの?」巴「いいえ、雛苺様・・・巴はどこも傷ついてはおりませんよ」雛「良かったの~!!ヒナねヒナね!!真紅の所に『ぼーめー』するの!!真紅、トモエも来ていい?」真「えぇ、構わないのだわ・・・それで?貴女は何をしにきたのかしら?」血に染まった巴の姿を見て怯えきった雛苺に優しく微笑み、安心させるかのようにその頭を優しく撫でた。真紅は雛苺を説得し紅王国内に亡命政権を立てていつの日か国を取り戻す時には協力する事を条件に雛苺を説得していたのだ。メ「真紅様、これを陛下から預かってきております・・・真紅様に直接手渡すようにと・・・」メグは鎧の中から黒い獣の皮に包まれた袋を取り出して真紅に手渡した。
それには水銀燈直筆で書かれた密書が入っていた、真紅はソレを取り出すと少しの間ソレを眺めてから懐にしまった。真「メグ、これは他の姉妹にも?」メ「はい、雪華綺晶様・薔薇水晶様・翠星石様・蒼星石様・金糸雀様にも同じ物を・・・」真「そう・・・解ったのだわ、この返事は追って公文書としてそちらに送るのだわ」メ「はい、ではこれにて・・・」自分の仕事を終えたメグは真紅と雛苺に深々と頭を下げてその場を立ち去ろうとした。J「メグ・・・今日は、助かった・・・礼を言う」メ「あら?感謝されるような事はしてないわ、私は戦いたいから戦っただけだから」J「そうか、でも礼を言わせてくれ・・・ありがとう」巴「私からも言わせて貰うわ、ありがとう・・・」メ「ふふふっ♪変なの・・・まぁいいわ、今日は私も楽しかったから・・・それじゃ」J「あぁ・・・またな」三人は不器用ながらも少ない言葉を交わした、騎士にとって言葉とは所詮それでしかない、ましてそれ以上でもそれ以下でも無かった。
真「JUM」J「は、何でしょうか・・・」真「お帰りなさい・・・」J「・・・はい、真紅様・・・ただいま戻りました・・・」海から吹く潮風に長く綺麗な金髪を揺らしながら真紅はニッコリ微笑んだ、それを見たJUMは少し恥ずかしそうに鼻の頭を掻くとそう言って笑った。血の黎明は終わった、JUMは新たな嵐の予感を感じつつも大海原へと戻っていく---やがてその予感は現実の物となる
<<次回予告>>血の黎明もやがて明ける、後に残りしは物言わぬ屍と其”屍”の山を乗り越えし三人の生者。真紅とJUMの絆はより深まる、友情でも無ければ敵意でも無い---そう言いしれぬ絆が・・・。次回、薔薇乙女大戦・・・「幕間~不器用な二人~」・・・私にとって貴方は・・・。
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