ユキイチゴ
最初のそれは、庇護欲に似ていた。何時しかそれは焦がれになって、私の内側をするするとなめしていく。愛おしい。あなたに、抱きしめて欲しい。あなたを、抱きしめたい。最後まで受け入れてもらえなくてもいい。想っているだけでも幸せ。何物にも代え難い、快さ。一緒に紅茶を楽しんで、時には異性の話で盛り上がって、それから……偶には、愛して欲しい。「お姉様」漏らした声が、思ったよりも大きく響いた。きっとそれは、やり場を失くした肩の力の所為だろう。いつもより落ち着いた昼下がりだった。瞼が微かにまどろみを覚えている。横になっていたソファには小さな、幼子のような寝顔が一つ。愛おしい、私に最も近いお姉様。薄い一枚の毛布が私達の膝を覆っている。そっと、頬を撫でた。さらさらとして、とても柔らかな頬――これは、絹だろうか。熱い舌の先を伸ばす。ふわふわした、妙な感覚が私を酔わせていく。いや、もう既に酩酊しているのかもしれない。「……ん……」私の耳の近くで空気が震える。振動の発生源は薄い、ほのかな桃色をしていた。そっと、そこに唇を重ねる。手で拍を取る程度の、短い間だけ。「……あっ……ん、んぅ……」再び、舌を這わせ始める。時折唇だけで頬を甘く噛みながら、手を小さな身体に添える。衣擦れの音が一瞬だけ水音に紛れた。でも、紛れただけ。ゆっくりとした手付きで背中を上下に摩る。寝付いた子供をあやすように、優しく。毛布でそっと頬の唾液を拭った。いつも、終わった後に悔やむ。まるで自分は獣ではないか、箍の外れた獣ではないか――と。「……んん……」くぐもった声に、あなたはどのような気持ちを込めているのですか?私を軽蔑しているものなのか、それとも――「きら……き、しょう」あなたの名前はとても綺麗ね。そうあなたが言ってくれたことを覚えている。今でも鮮明に。そして、これからも。雛苺お姉様。「ねえ雪華綺晶。何かあったの?とても嬉しそう」いえ、何も。それよりもお姉様、今日も一緒に夢を見ましょう。
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