機動戦士ガンダムSEED ROZEN
―――何故、こんなことになったのだろう
今、僕の目の前では真紅と水銀燈が必死になって戦っていた。「くっ!!やるわね水銀燈!!」「あっはははは!!大人しくジャンクになりなさぁい!!!」ビームライフルを乱射する水銀燈のデスティニー。対する真紅のインフィニットジャスティスは回避しながらビームライフルで反撃する。MSの腕はほぼ互角。僚機を放してさしの勝負をしている二人は、現時点で同じくらいの損傷を受けていた。
彼女達が戦うことになった時、僕は強く反対した。しかし僕の言葉に耳を貸さずにMSを操って戦った八人も、そのほとんどが力尽き、今は真紅と水銀燈しか残っていない。初めは協力していた二人も、今ではああやって互いに銃を向けていた……僕を巡って。
「このぉ!!いいかげんに堕ちなさぁい!!!」デスティニーがアロンダイトを構えてインフィニットジャスティスに接近し、その長大な刀身を振り下ろした。真紅はそれを軽やかなステップで回避し、ビームライフルを発射!!至近距離からの反撃にデスティニーは反応できずに被弾した。「お前らもういい加減に……」「うるさぁい!!ジュンは黙ってなさぁい!!」「ジュン、これは私と水銀燈の戦いなのだわ。貴方は手を出さないで」僕の言葉は届かない。どちらかが滅びるまで彼女達は戦い続ける。「これでどう!!」水銀燈は高エネルギー長射程ビーム砲を構え、熱線の束を真紅に向けて放つ。ビームをシールドで防いだ真紅は、動き回りながらビームを放ち続ける。攻撃を避けつつ、水銀燈はアロンダイトを構えて真紅に向かって突貫する。斬り合い、打ち合う二体のガンダム……しかし、なかなか攻撃の糸口を掴めない水銀燈は少しずつ苛立ち始めた。ビームブーメランは当たらず、ライフルも回避され、長射程ビーム砲は隙が大きくなかなか使えない。唯一の取り柄である近接攻撃も、接近できなければ意味はない。
(いちかばちか……)
意を決した水銀燈は一度離れて体制を立て直そうとするインフィニットジャスティスに一気に突き進み、アロンダイトを振りぬいた!!だが……
「そんなのお見通しなのだわ」
元々隙の大きい攻撃。真紅は後ろに下がってビームブーメランを放った。水銀燈は攻撃を食らって体勢を崩す。動きの止まった瞬間に、真紅はシュペールラケルタビームサーベルを抜くと一気に切りかかった!!あちこちを切り刻まれて地に伏すデスティニー。「これで……ジュンは私の……」デスティニーをロックオンし、銃口を向けるインフィニットジャスティス。倒れたままで水銀燈は思う。私は負けるのね。でも、やれるだけのことはやったからいいじゃない。でも、本当にそれでいいの?私の思いは、そんなものだったの? この程度で、諦められる程度のものだったの?違う。それだけは、絶対に違う! 私はまだ諦めない! 諦めるもんか!!
―――パリィィィィィィィン
水銀燈の中で何かが弾けた。
「何っ!?」満身創痍のデスティニーが、青い光りをまとって剣を構えて突進してくる。その機体が放つ威圧感に、真紅は押しつぶされそうになった。しかし、相手は死に損ないだ。エネルギーも残り少ない状態で、何をするという。冷静に、照準の中にデスティニーを捕らえ、撃つ。だがデスティニーに当たらない。真紅は再びライフルを撃つ。デスティニーは攻撃を避け、こちらに向かってくる。
「これがデスティニーの力よぉ!!」
インフィニットジャスティスに向けてパルマ・フィオキーナが最大出力で放たれた!!
決着は着いた。上半身を吹き飛ばされ、爆炎の中消え行くインフィニットジャスティス。「アニメでの借りは返したわぁ……」水銀燈はぽつりと呟いた。そして……
パパパパーパパパパーパパパパーパーパッパパー
「はーい、水銀燈の勝ち。第1回桜田ジュン争奪戦の優勝者は水銀燈ですぅ」「んふふ♪勝ったわぁ♪やっぱり嫁補正のないインジャなんてこんなもんよぉ♪」「ジ……ジャンクに負けたのだわ……」勝利に酔いしれる水銀燈とどんよりとしたオーラを放ちながら筐体に突っ伏す真紅。場所はゲームセンター、連合VSザフト2の対戦は水銀燈に軍配が上がった。
切欠は僕が福引でペアの温泉旅行を当てたことだった。どこからかこのことを嗅ぎつけた八人が僕の家に押し寄せ、『私と行こう』『私と行くのだわ』と乱闘寸前の大騒ぎとなった。でもそれじゃ埒があかないということで連ザ2で決めることになったのだ。僕は姉ちゃんと行くつもりだったのに……。試合形式は2vs2のトーナメント戦で、最後まで勝ち残ったペアが決勝戦で戦う形式になった。ちなみに真紅と水銀燈以外のMSは……
金糸雀……暁雛苺……ストライクルージュ翠星石……生ザクウォーリア―蒼星石……グフイグナイテッド(青)雪華綺晶……ストライクフリーダム薔薇水晶……核ウインダム
薔薇水晶がグーンを使うと誰も太刀打ちできないので、彼女のグーン使用は全面禁止になっていた。こういう勝負は実力差がイーブンじゃないと面白くないし。
「やったわぁジュンぅ♪これこそ愛の勝利よぉ♪」「むぐっ!!」とか言いながら僕に抱きつかないで!って、胸を顔に押し付けないで……むぐぅっ……「水銀燈!!私の下僕から離れなさい!!」「いくら優勝したからって馴れ馴れしいですぅ!!」「勝ったら敗者への考慮も考えて欲しいかしら!!」「グーン使えたら勝ってたのに……」「ザクとは違うのになんで……」「私は今泣いているんですわ!!」「あらぁ~、なんだかわんこの遠吠えが聞こえるわねぇ」真紅達の言葉なんてどこ吹く風の水銀燈。だんだん息が苦しくなってきた。早く離れてくんないと呼吸が……
「むぐっむぐぐ!!」「あぁん! そんなにされたら水銀燈感じちゃう~」「JUN離れなさい!今すぐ水銀燈から離れなさい!」そんなの無茶だ。決して水銀燈の胸に顔を埋めているのが気持ちいいからじゃなくて、水銀燈が僕の頭を押し付けているから離れないんだ!……っていうかマジで苦しくなってきた。このままじゃ窒息する!!でも水銀燈は真紅達に見せつけるかのように僕の顔をさらに強く自分の胸に押しつける。ああ……段々頭の中が真っ白に……薄れ行く意識の中で、僕は不覚にも『こんな死に方もありかな』と思ってしまった。
「あれ?ジュン動いてねぇですよ?」「水銀燈。いい加減離れないと、私の下僕が窒息死するのだわ」「え?きゃあ!!ジュン!!大変、ジュンが息してないわぁ!!!」「大変かしら大変かしら!!110番?119番?それとも177番かしらーーー!?」
―――桜田ジュン 死亡―――
いや死んでねえし。ちなみにこの事件が『連ザ窒息事件』としてローゼンゲームセンターで伝説として語り継がれることになるのは別の話。後日、柏葉と姉ちゃんも加えて第2回桜田ジュン争奪戦が開催されるのも別の話である。
機動戦士ガンダムSEED ROZEM DESTINYへ続……かない
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