第46話「狂気の晩餐」
ジュンは何とか回復しており、急いで走り蒼星石達の所に向かった。フレンジィはにんまりと、満足そうに笑みを浮かべ。蒼星石達を意にも介さず、ジュンの方に走っていった。
フ「ヒャッハー!!!」
其れは狂気の賜物なのか、戦闘による強者の渇望なのか判らない。しかし、すぐさまジュンとフレンジィは戦闘を繰り広げる。先ず、フレンジィはジュンの腹にナイフを投げ込み。周りには逃げられないように、ナイフを飛ばす。しかし其れをジュンは、指先の力の流しでナイフを逸らし。周りのナイフを巻き沿いにして、全てのナイフを避けきった、筈だった。
J「クッ!カッ!・・・ふはは・・・!」
しかし数本のナイフが、視界の死角から入り込み。ジュンの腹と、右肩を抉り取る。
赤黒くなった鮮血と共に、誰にも気が付かれずに微量に、青い血が出る。その事に関しては、まだ誰も気が付いていなかった。
フ「フッ・・・ハッ!!」
しかし、呻き声を上げる前に、鋭い一撃が前方から飛んでくる。其れをかわすと、其れが何か判る。血だった、指先から心拍5000~7000/秒程の圧力で、噴出されたのだ。その一撃は、かすかに髪を切り裂き、頭を割ろうとする。しかし、ラグナロクを使った斬撃により、血は風圧で飛ばされる。続けざまにジュンは、剣技を繰り広げるが。ナイフの表面の摩擦を使った、流しにより一撃が入らない。5~60発打った所で、少し離れて体の具合を確かめる。
J「スゥー・・・ハァー・・・」
既にさっきの傷は癒え、準備万端とでも言わんばかりに脈を打つ。其処で気が付く、俺はこの戦闘で何を思っているんだ?もしかしたら・・・微妙に・・・歓喜しているのか?しかし、そんな事を考えている間にも、フレンジィは間合いを詰めてくる。
フ「おっ!お前も好き者だな!?嬉しそうな顔をしやがって!」J「五月蝿い!黙れ!」フ「厭よ厭よも、好きの内ってな!」
そう言うと、フレンジィはナイフを煌かせ、風を切りながら襲い来る。そこでジュンは荒業だが、糸を取り出す。先程の様に、糸で超音波を繰り出すが、吹っ飛んだのはジュンだけだった。
フ「ふー、あぶねぇあぶねぇ、すっかりその事忘れてた・・・」
フレンジィは、紙一重で其れをナイフを身代わりにして、ダメージを最小限にした。ジュンに続けざまに、連撃を加えたのだ。ナイフを通じて加えられる、その一撃は強大で。ジュンはそのまま、気を失いかけていた。
J(あ・・・や・・・ばい・・・あい・・・つ・・・く・・・r・・・)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・タッタッタッ・・・・・・・タッタッタッ・・・・・・・・・・タッタッタッタッタッ・・・ペタッ・・・ペタッ・・・・・・ペタッ・・・ペタッ・・・ペタッ・・・ペタッ・・・ギギィ・・・バタン。
そのままフレンジィは、止めとでも言わんばかりに、次々攻撃を加える。手を千切り、足を?ぎ、臓器をかち割り、頭を割り。心臓を貫き、5体を完璧なまでに、破壊しようとしていた。
フ「アッハッハ!こいつミスってやーんの、馬鹿でぇ。」
そう言うと、次々と肉溜まりにナイフを投げ込む。しかし、其処で気が付いた。赤い血に混じって、青い血が出ていることに。青い血と共に、殺気が周りを満たしていくのに。其れは、遠くの水銀燈達にも届いており。バスの所の真紅達の動きさえも、完全に止めていた。止めたというよりも、其れは、恐怖で射抜くだけであったが・・・
真「な、何が・・・起こって・・・」翠「わ、判らないで、です、けどコレは・・・」雛「あっあ・・・こ、来ないで・・・来るなぁ!!」金「ひ、雛!如何したのかしら!?」
そして、蒼星石達は全身が震え、体中に寒気が迸っていた。足が萎えて尻餅をつき、分けの分からぬ憎悪に塗れていた。
蒼「こ、怖い・・・何かが・・・」水「こ、この寒気は・・・な、何だって言うのよ!?」薔「・・・怖い・・・何か・・・」雪「来てしまいましたか・・・アレが・・・」
水銀燈は、雪華綺晶にこの殺気が何なのか、聞こうとしたが。その瞬間、月夜に照らされながら、ジュンが立ち上がる。しかし、その双眸は青白く光り。全身からは、肉から骨が突き出し、武具と化し。筋肉は膨張と硬化し青白い血で濡れ、サファイヤと見違えるほどの淡い光を出す。しかし、姿形は既に異形の物であり、顔は幽鬼のように変形し。全身は光沢を持った筋肉と、青白い血で蒼で染まった骨が、変な所から筋肉を突き破り。腕先の骨が、腕と剣の両方と成り。全身武器と化したかのような、そんな状態でジュンだった者が現れた。寧ろ、其れはジュンと異なった、別質のモノだったのかもしれない。
J「・・・オマエハ、ダレダ?」フ「ふ、ふざけるな!俺とお前は戦闘中だったんだろ!?」J「・・・・・・イタダキマス。」
其れが戦闘の合図となったのか、ジュンとフレンジィが飛び掛りあう。
雪「此処から先は・・・生物の戦闘ではありません。」銀「一体どういうこと!?」雪「彼は・・・言わば、単細胞生物を、無理に人化させたものです。」薔「・・・?」雪「彼の戦闘能力は、ある一定まで、リミッターが外れない様になっているのですが。」雪「彼は、一定値になると、異常に生存本能が活性化し、精神状態が単細胞生物までに成るのです。」蒼「其れは・・・」雪「そうです、単細胞生物の食べる本能、そして殺す本能だけに成るのです。」銀「!!!」雪「彼は、この状態になると、気分が済むまで暴れ続けます。」雪「戦闘能力は、雲泥の違いです・・・」
そう言うと、4人は絶望に身を震わせた。その頃フレンジィは・・・
フ「くそッ!早すぎる!」
ジュンの圧倒的スピードと、異常なほどの力に押され、後ずさりを始めていた。ジュンは、既にナグナロクを指輪に戻し。腕の剣で、フレンジィを圧倒していた。一撃一撃の破壊力も然る事ながら、瞬間に打ち出す数が、25~30発から徐々に上がりつつあり。フレンジィの体は、徐々に切り刻まれ。フレンジィの回復力でも、中々きつい所まで来ていた。
フ「ハッ!!」
指先から血圧を圧縮し、飛び出させるものの。其れすらも、悉くジュンの剣技に打ち飛ばされる。そして、最後の一撃が打ち込まれる。
フ「う、ああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ザクッ・・・ドス・・・グシャッ・・・鈍い音と共に、フレンジィは真っ二つに裂かれ。内容物を撒き散らした。
フ「あっ・・・あー・・・」J「イイニクダナ、クケケケケケケ・・・」フ「うあっ・・・あああああああ・・・!」
ジュンは既に息が絶え絶えのフレンジィを掴み。頭からパキパキ・・・メキョ・・・グチョ・・・と、音を立てて食べ始めた。まるで、その者の呻き声すら、意にも介さず。まさに、世の果てとでも言っておこうか。ジュンはフレンジィの体を、グシャグシャ・・・ズグッ・・・ニチャァ・・・と音を立てて。頭、首、胸、腹、腕、下半身、足の先に至るまで、美味しそうに完食し。グ、グ、グ・・・という音と共に、ジュンの体は変形し。元の体に戻っていき。ジュンの周りの瘴気は、打ち払われた。ジュンは気を失って、元の姿に戻っていたが。ジュンが倒れた所には、何も残っておらず。フレンジィは液体を残し、消えていた。運が良かったのは、暗闇の中。誰もこの光景を見えていなかった、唯其れだけだった。そして不運なのは、その姿の本能を見れていなかった。唯其れだけだった。
――――ピチャッ・・・ピチャピチャッ・・・其処に雪華綺晶が現れた、辺りの液体を不快そうに踏み鳴らしながら。ジュンをバスに続く移動穴に入れて。こう呟く。
雪「また成ってしまわれたか・・・」雪「それでも今回は、コレだけで済んで良かった。」雪「運が悪かったら・・・今頃数人は、ジュンのお腹の中でしょうね・・・」
そう言うと、雪華綺晶は穴からバスに戻り。穴を消した。
後に残っていたのは、ジュンが周りに振りまいた。青くて濃い血だけだった。其れは、死臭を振りまき、土に吸われていった。
其れから約、半日。大阪に向けて、一台の車が走る。
・・・地面が揺れている―此処は何処だろう?フレンジィと戦闘途中から、意識が無い。・・・また成ってしまったのか?異形のアレに・・・取り敢えず、今は眠い・・・また後で起きて考えよう・・・―ここでジュンの意識は途切れた。
此処は陸上自衛隊、大阪支部。ジュン宛に、一つの小包が届いていた。送り主は、柴崎と書いてある。包みはガサリと音を立てて、嬉しそうに震えていた。其れを知るのは、生憎番犬しか居なかった。
―・・・アー此処は・・・何処だロウ?相方ハ何処ダろウ?ケど近ヅイてル。きット来ル。マだカナ。まダカナ。僕は・・・君ノ―君ハ僕の・・・―
此処で小包の中の、気配は途切れた。隅では犬が唸っていたが。誰も気にも留めなかった。
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