第45話「進行中?」
・・・車の中を、静寂とエンジン音が同居している。確かに進んでいるはずなのだが、回りは焼け野原。広がるのは、かすかな血の臭いだけ。本当にあいつ等は、焼き進んでいるらしいな。ずっと前の失敗を考えて、残らず全てを焼いている。そこ等辺は感心するべきなのか、怒るべきなのかは微妙だ。
J「・・・しかし・・・腐ったカーナビだな、コレ。」銀「おかしいわね・・・【何か】の気配はするのに。」
そうなのだ、皆薄々気が付いているのだが。恐らく生物らしき、【何か】の気配を感じているものの。未だにそれの気配が、何処から来ているのかが、さっぱり分からない。けれども、コレだけ濃いとなると、かなり近くに居るのは分かる。・・・再び、車内が静寂に包まれる。今此処で無闇に喋るのは、自殺行為だというのに、皆気が付いているのだろう。其れは恐らく本能的にで有り、無意識のうちに出ているのだろう。喋ろうとしないのも、何かを感じているからである。今此処は敵陣の真っ只中、何処から【どうやって】出てきても、可笑しくは無いのだ。相手がほぼ人外だというのも、少しは有るかもしれないが。暫く車を走らせていると、思わず、鼻を押さえそうになる、この臭いは・・・やつ等だ・・・死臭を巻き上げ、腐った肉を振り回し。相手を我武者羅に打ちつけ、殺した相手をかっ喰らい。臓腑をはみ出させ、死へと無闇に突っ込んでいく。やつ等が来たのだ、死を喰らう人にあらざる者達が。ゾンビが来たのだ、人であった者達が。
J「くっ!!何て量だ!」
其れもその筈、地平の彼方には其れを埋め潰さん限りの。ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ。1匹1匹は、それ程の脅威には為らないものの。ゆうに其れは、一個の船隊と化していた。それ程居れば、1キロほど離れた所でも、死臭が鼻を突く筈だ。ジュンは車を急いで急停車させ、皆で死者を無に返すための戦法を練る。先ずは真紅の拡散弾で、ゾンビをある程度爆破し。続けてある程度近づいてきたら、翠星石や金糸雀の範囲攻撃で、ゾンビを粉砕し。上空から水銀燈の羽で、神経ごと体を切断する方法を考え付く。しかし、それではやはり数が多すぎるので。ジュン其れに、突っ込み。残りが進んできたゾンビを、打ち払う方法を思いついた。早速其れを、行動に移す。
真「照準良し・・・発射ッ!」金「うおっまぶしっ、かしら!」
真紅はかなり大型の、戦車が撃ちそうな放射器で。ミサイルをゾンビの群れに、撃ち込む。かなり遠くだが、巨大な其れは。ゾンビの群れを、大きく吹き飛ばす。続いて、次々と砲弾を撃ち込んでいく。ゾンビの3分の1ぐらいが削れた頃、ゾンビは此処から600メートル付近まで接近している。足はそれなりに速いようだ。これ以上の爆薬は、自分達にも危険が回ると判断し。ジュンは真紅の拡散弾を、止めていた。
金「死んだんなら成仏して欲しいかしらッ!!」翠「うー気持ち悪いです・・・」
続いて金糸雀と翠星石が、ゾンビを吹き飛ばさんと。大量攻撃を仕掛ける、翠星石の蔦は前より太くなっていた。ゾンビは防御をする気も無く、ただただ突っ込んできていた。既に脳が死んでいるのだ、其れは守備本能の死を意味する。だから、防ぐ気すら起きないのだ、奴等は。残り5分の3ぐらいか?其れぐらいの時。翠星石と金糸雀に車を、守るように言い付けて。ジュンは地上から、水銀燈は空から死者の、浄化を始めた。水銀燈はグールの上空から、雨のような羽の嵐を巻き起こし。次々とゾンビを、本当の死へと導き。ジュンは地上から、ナイフ状のを投げ。次々と的確に、グールの首を撥ねる。ゾンビとは、本来、誰かしらの命令を聞く、死者とされているが。恐らくバイオハザー○とかのせいで、ただ生き肉を喰らう者と為った。序に、噛まれても死ぬだけで。ゾンビ化とかは一切無い。恐らく今回は、誰かが作り上げたのだ、この死者の行進を。恐らく人を喰らう物だろう、ゾンビとは本来、全身が綺麗であっても良いのだが。今回はどいつも、体を何処か大きく喰われている。恐らく、グールか何かだろう。グール自体は非常に厄介で、蘇生能力、力、経験値も、ゾンビとは比較にならない。恐らく遠くでこいつ等を、操っているのだろう。ゾンビ自体は、サル並みの知能すら、危ういといわれている。その上本来、馬鹿みたいな力も無いため、1匹1匹にはあまり苦戦はしないが。何分、死を恐れないため、死ぬはずの傷でも動いて来る。多少厄介であるが、それと罪悪感にさえ勝てれば、何も問題は無い。と言ってもこいつ等は、既に傷口からしてバイオハ○ード状態なので。殺しても殺した罪悪感は、生まれてこないと思う。聖水も効かないんだけどね・・・うんざりした顔で、ジュンはゾンビの急所を突き。ゾンビを次々と、潰していく。生々しい切断の音楽とともに、次々とゾンビが倒れていく。流石にこの数のゾンビって事は、かなり死んだな。そう思いながら、次々と狩っていく。流石に5分の4が狩られた頃、ゾンビの数はめっきり減り。車の方のに居る者達にも、疲れが見え始める。ジュンはさっさと終わらせるため、武器を鎌に変えてゾンビを半ば、撥ね飛ばしていた。序に今この時は、集中力の方が痛みに勝るため、何処を如何攻撃されているのかが、さっぱり判らない。ジュン並みの不死性を有していないと、とても使えたものではない。そろそろラストとして、アレを使う事にした。その瞬間、ジュンの体は軋みの音と共に、筋肉が肥大化を起こし。威力とスピードが格段に上昇する、ジュンの骨はギチギチと悲鳴をあげながら。次々と腐敗を取り除く、既にゾンビは6体まで減りつつあった。次の瞬間、ジュンは鎌を投げつけ、ゾンビ6体をを跡形も無く吹き飛ばした。そして、安堵の息と共に、汗に混じって血が滴り落ちる。全身の浅い傷と共に、筋肉を極限まで肥大化させた反動で。全身の涙腺から、浅黒く変色した血を流していた。量は微量なので、気にした様子も無く車の方に戻る。・・・今更になって、全身がズキズキして来た。くそッ、傷は治ってるのに・・・バスに行く途中、雪華綺晶が俺の目の前に現れた。雪華綺晶は、血塗れのジュンを見るや否や。呆れた様に項垂れた。
J「たっだいまー」雪「また使ったんですか?アレ。」J「良いだろ?アレ・・・いやー実は面倒臭くって・・・」雪「大体ですね、貴方はコレが如何いう事だか、全部判ってるのですか?」J「あはははは・・・良いじゃないか、俺等の寿命は普通の人と違って、全然長いんだし。」雪「そうですが・・・気よ付けてくださいよ?行き成り死んだら困るんですからね?」J「あははは・・・そんなへましないよ・・・」雪「そうですか・・・其れと一つ。」J「ん?」雪「其れは貴方一人の命では、無いんですよ?以上です。」J「・・・」
そう言うと、ジュンにタオルを渡して、さっさと車に走っていっていた。・・・このタオル・・・絶妙に台所の臭いがしたのは、僕の気のせいでしょうか?こん畜生。
J「・・・(下向いて、右下向いて、正面向いて♪)馬鹿にされてんじゃねーの!?」J「あの尼ッ!!」
そう言うとジュンは早足に、車に向かって走っていった。
其処から少し離れた所に位置する、所からその男は覗いていた。スラリと伸びた体、其れで居てずっしりした重量感。赤い両目に、縛り付けられるような視線。幾多もの実践と、戦場を駆けずり回ったものに備わる、鋭い殺気。其処にそいつは居た、美麗で何処か妖艶な顔だが。振り向いたら殺されるような、そんな雰囲気が漂う。
???「チッ・・・失敗か。」
まるで、ゲームに負けた位の態度の先には。無残にも、ジュン達に葬られた、死者の山がある。手元に有るのは、巨大な手にでも捻られたような形の、短剣が数本。そして、夏にも拘らず分厚いコートを着て居て。動くたびに中からガシャガシャと、少し大きな音を立てる。
?「チッ・・・主め、変な力をくれやがって・・・」?「まぁいい、あいつ等には途方も無い狂気を、とくと見せ付けてやろう。」?「この狂気の性に、何時まで耐えられるかな?」
そう言うと、死体の頭にナイフを投げた。グシャッ!と鈍く厭な音を立てて、投げられたナイフは。死んだ人間の脳漿と、折れた骨を弾き飛ばしつつ。どす黒く赤い色に変色し、切っ先を血色で染めていた。もはや其処に残るのは、逸脱した紅い【狂気】だけ。血色の鴉が数本の羽を残し、まだ青い空を駆け抜けて行った。男は舌打ちをして、タイルの部屋の中から外に移動を始めた。足の裏の靴は嬉しそうに、ピチャピチャと血を撥ねて、小さな音を立てていた。後に残ったのは、ピチャピチャと鈍く、液体を嚥下する音だけだった。一体誰が・・・いや、【何が】居たのだろうか・・・
その頃、ジュン達はやはり大阪に向けて、着々と進んでいた。真紅達は、ジュンにさっきのゾンビの事について、大分詳しく聞いており。やはり、その事を知った皆は、激怒し奴等の殲滅に力を注ぎ始めた。ボスの顔すら見えていないが、何と無くその内見つかると思っている。其処に、一つの殺気が近づいてくる。余りの濃すぎるそれは、大きすぎるため何処に居るのかを、逆に撹乱させてしまう。心の中で舌打ちをしつつ、ジュン達は各方向を各自で見渡した。此処から余り遠くない所に、一人の何かが居た。それ以外に生物が居ない事から、アレ以外の生物で無いとジュンは仮定した。そして、足元から素早くマスケット銃を取り出し、撃った。筈だった。銃声がしない、手元を見ると、手首から先が千切れている。後ろを向いたその瞬間、何者かの回し蹴りを喰らった。その瞬間集中力が切れ、音が戻ってくる。一瞬目を疑った、其処に居たのは水銀燈だった。しかし目がイってしまっているので、次の瞬間全てを理解した。
J「皆ぁ!!バスから出ろぉぉぉぉ!!」
そう言いながら、水銀燈の目を見て震えている、金糸雀を窓から放り投げ。怒声と共に、皆を外に押し出していく。背中は刃物で抉られ、肩は半分切られている。この切れ方は、普通の刃物では為し得ない。バスの中に居るのが、水銀燈とジュンだけになった時。既にジュンの右肩は取れて、水銀燈が口に銜えていた。水銀燈は薄く壊れた笑みを浮かべ、鬱で幸せな顔をしている。思わず、ゾクリとする。
J「恐らく催眠術、もしくは精神崩壊~」
その瞬間、ナイフが飛んでくる。紙一重で其れをかわすが、次々と飛んでくる。仕方無しに、背後の窓ガラスを突き破り、外に出て唖然とする。ジュンの判断は間違っていた、そう言うしかない。既に皆やられていたのだ、狂気に。遠くの方から、男がさぞ楽しそうな声を上げる。
?「良かったな!お前さん!皆アンタの事が好きだってよ!モテモテだねぇ!?」J「お前は誰だ!」フ「frenzy!狂気と呼ばれてるねぇ!」J「楽しそうだな!?」フ「そりゃ楽しいさ!仲間ゴッコしてる奴の、最も苦しむ姿が見れるんだからねぇ!」J「・・・気違いが・・・」フ「さぁ早く殺しなよ!そうすれば、自分は助かるかもよ!」
そう言うと、フレンジィは嫌味な笑いを零す。しかし次の瞬間、其れは驚きに変わる。ジュンが武器を仕舞った、戦う様子も無く。しかし其れは次の瞬間、理解へと変わる。皆が洗脳から解けたのだ。しかしどうやって・・・其れはかすかに風に乗ってきた、音によって判った。音は密室では強大な音を出す、ジュンは其れを糸で音を出し。超音波で皆に囲まれているのを利用し、脳を強い力で揺さぶったのだ。その証拠に、ジュンの足取りは覚束なく。耳や目、鼻から血が出ている。恐らく8人は、今状況をジュンから聞いているだろう。その証拠に、足取りの覚束ないジュンを、数人が治療道具を取り出して治療し。残りの数人が、此方に向かっている。恐らく目を反らされるのは、洗脳が目から始まると考えたからだろう。焦点は悪くないが、問題点は戦闘能力だ。今来るのは、蒼星石と水銀燈、薔薇水晶に雪華綺晶。フレンジィはナイフを手に、全員にナイフを投げた。一つ一つが低い悲鳴を上げて、全員を包むように投げられる。しかし4人は、雪華綺晶の穴から、フレンジィの後ろに回り。先ずは水銀燈が、羽を打ち込むが、完全にナイフに叩き落され。続いて、巨大な風の質量と共に、蒼星石が乱れ切りを打ち込む。ジュンにスピードだけなら、打ち勝つかも知れない其れを。フレンジィは易々と避け、お返しと言わんばかりに蹴りを叩き込む。
蒼「グゲハッ・・・ウック・・・」
蒼星石は急いで後ろに飛び、ダメージを軽減させるが。骨が軋み、肺をしこたま打ち、肺から空気が圧迫され出される。さっきの蹴りは、肺を押し潰さんばかりに打たれたようだ。続いて薔薇水晶が、大きな1撃を浴びせようとするが。紙一重でかわされ、相手は剣圧で後ろに飛ぶだけだった。雪華綺晶は異次元の穴を使うが、フレンジィはナイフを身代わりにし。全てを避けていた。圧倒されていた、相手は1人だが如何せん、実戦経験がモノを言ったようだ。其処で雪華綺晶は、とある事に気がついた、相手のナイフが色々な形に捻ってあるのだ。しかもナイフには、幾つかの刺が付いており。斬られたりすると細切れになり、修復に普段より時間が掛かるのだ。コレはジュン対策なのだろうが、あんな物で切られたら、普通の人ならなお更。かなり修復に時間が掛かる事だろう。背筋がゾクリとする、随分おぞましい武器を・・・恐らくこいつとの戦闘は、ジュンが来るか、来ないかに分けられると思われた。
フ「ショーターイム!!お前等が今日の俺の晩餐だ!ヒャハッ!!」
小さく舌打ちをして、雪華綺晶は戦闘図を練り始めていた。
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