第二話 「ローゼンメイデンへ」
第二話 「ローゼンメイデンへ」-次の日私は朝いつものように学校に行く時間の一時間前に目覚める。いつものように今は居ないジュンに朝の挨拶をしようとするがもう声が出ない事に気付く。そういえばもう出ないのね・・・。そんな事を考えながら一階へと降りていく。昨日雛苺が来てくれたお陰で大分ショックから立ち直れた。親友、そして下僕である彼女に感謝しよう。キッチンにいる母の肩をトントンと叩きメモを見せる。“おはようなのだわお母様“それで母はようやく私に気付き朝食の準備をする。私はその間に紅茶を入れる。暫くすると朝食も出来あがりそれを食べ終えると顔を洗う。洗面所から戻って母の顔を見るとまだショックが隠せない表情が現れている。“御免なさい“そう書いた、メモを見せるが母はあなたは何も悪くないと言って自分の寝室へと戻っていった。
私はその後鞄を持ち、玄関へと向かう。“行って来ます“そう書いたメモを床に置きドアを開け通学路へと向かう。暫く歩いていると雛苺の家が見える。私は雛苺の部屋の出窓に拾った石を投げる。「うゆー?誰なのー?」そう言い雛苺が窓から姿を見せる。「あ、真紅ー!ちょっと待ってなのー!」彼女はそう言うと急いで一階に降りて行った。五分もすると彼女が扉から出てくる。苺大福を口に入れたまま。「おはようなのー!」“ええ、おはようなのだわ“物を口に入れたまま器用に喋ると思いつつ雛苺を見てると雛苺が苺大福をうらやましそうに見てると勘違いしてバックから苺大福を出してきたので“遠慮しとくのだわ、ありがとうなのだわ“と書きメモを渡す。
するとうゆーと言いながらバックに苺大福をなおした。朝から苺大福を食べるとは真性の苺中毒ね。そんな事を考えながら歩き出す。紅茶中毒の自分が言えるような事ではないが。「真紅大丈夫なのー?いつでもヒナに困った事があったら言ってなのー。」“今の所は大丈夫なのだわ、後で皆に説明したり大変だと思うから その時に手というより口を貸してくれたら嬉しいわ“「わかったのー。それ以外でもいつでも言ってなのー。」ほんとこの子は優しい子ね、そんな事を考えながら通学路を二人で進んでるとこちらに向かって手を振るヤク中(ヤクルト中毒)の水銀燈の姿が見える。「おはよぉ。乳酸菌とってるぅ?」何故いつも乳酸菌にこだわるのだろうか?そんな疑問を抱きつつ私はメモにペンで返事を書く。“生憎私は中毒じゃないからそんなにしょっちゅうとらないのだわ“私は紅茶中毒よなどと自慢にならない事を頭に浮かべつつ書いた紙を渡すと水銀燈は?マークを頭に浮かべる。疑問に思ったのか水銀燈が口を開く。「言いたい事はわかったけどなんでわざわざ紙に書くわけぇ?」真紅が少し暗い顔になりメモに書こうとするが雛苺が代わりに説明してくれるというので説明をお願いした。
学校に着く頃には説明が終わり暫くして水銀燈は悲しそうな顔をしてそんな事を聞いて御免ねぇと言って来た。謝らなくてもいいのだわと返事した頃には教室にへと着いていた。「おはよう・・・。」「おはようございます。」「おはようかしらー!」ばらきー姉妹に金糸雀が朝の挨拶をしてくる。つい最近までもう二人の声がしてた事を思い出すと悲しくなるので必死に思い出すのをやめた。そしてメモに文を書くと三人に渡す。“おはようなのだわ“言いたい事はわかるが何故紙に・・?とでも思ってるのか水銀燈の時と同じように?マークを頭に浮かべている。そんな三人に雛苺が水銀燈の時と同じように説明をしだす。金糸雀は今にも泣きそうになるがばらきー姉妹は冷静だった。「それは悲しいですね・・・。何か力になれるなら私達も協力さしてもらいますね。」「うん・・・。いつでも言ってね・・・。」「真紅の為なら・・なんだってやるかしらー!」“ありがとうなのだわみんな“私は素直に感想を述べる。
優しい友人達が沢山いて本当に嬉しいと思う。死のうだなんて考えていた自分が恥ずかしい。暫くすると金糸雀が泣き止み口を開く。「真紅・・良かったら一緒に働かないかしら?」“何故?“「言葉を失ったからこそ働いて色々学んだ方がいいかしら。 逆に言葉を失ったからこそ伝えれる事があるはずかしら。」“こんな状態じゃ雇ってくれないわ“「あの人はそんな事は関係無いとでも言うと思うかしら、きっと大丈夫かしら。」・・・働いて色々学ぶ・・か。今の私に必要な事かもしれないのだわ。伝えれる事か・・・。「真紅が働くならヒナも手伝うのー!真紅の力になるのー!」・・・この子もこう言ってるし働いてみてもいいかもしれないわ。“わかったのだわ、是非働かせてちょうだい。“「やったーかしらー!」“しかしどこで働いてるの?どこで働くの?金糸雀。“金糸雀がアルバイトをしてる事自体知らないし何より自分達が働くかもしれない所なので疑問に思い聞いてみる。「“ローゼンメイデン“かしらー!」
・・・成る程ね、あそこの店主なら確かに雇ってくれるかもしれないわ。それに紅茶を飲めるし紅茶を煎れる事も出来るのだわ。“金糸雀はどういう仕事をしているの?“「舞台に立って“幸せの曲“を弾き続けてるのかしらー!」幸せの曲ね・・。彼女らしいのだわ。「うゆー。きらきー達も働くのー!」「あの店主ならあなた達も雇ってくれると思うかしらー!」“多い方が楽しいのだわ、この子達も言う通りどうかしら?“私も彼女らとも一緒に働きたいので二人と一緒に薔薇水晶達に呼びかけてみる。「・・ごめんね。どうも苦手なの・・・。」薔薇水晶が弱々しい声でそう言うと雪華綺晶が続いて申し訳なさそうに頭を下げて言い出す。「すいません、妹がこう申しているのでご遠慮さしてもらいます・・。すみません皆様」“謝る事は無いのだわ、だけどたまにはお客さんとしてでも来店してくれると嬉しいのだわ。“「そうかしらー。ってまだ働いてない真紅が言う台詞じゃないかしらー!」思わず微笑みそれもそうだったわと思う。そんな会話を広げている内にチャイムが鳴る。ホームルームが始まるので皆席に着く。
その後は梅岡が私の事情を話したり色々面倒だったけどようやく六時間目が終わり待ち望んでいた放課後が来る。“早速行くのだわ“帰る用意をしている金糸雀にメモを見せる。「少し落ち着くかしらー!焦っても何もないかしらー!」「うゆー。だけど早く働きたいのー!」そう言ってる内に金糸雀が用意を済ませ私達の元に来る、が途中で椅子に引っかかってしまいこけて鞄の中身をぶちまけてしまう。「きゃーかしらー!」「ドジしてないで早く来るのー!」“足元をよく見るようにするのだわ“私達も鞄の中身を拾ったので今度は早く鞄にしまう事が出来た。そして一緒に走り出す。「は、早いかしらー!」「早く来るのー!」スタートの遅れた金糸雀が追いつける程度にスピードを落とすと再びペースを上げる。そうやって走ってる内に喫茶ローゼンメイデンへと着く。先頭の私が扉を開ける。
カランカラン「やぁ、ようこそローゼンメイデンへ。この紅茶はサービスだから・・・って皆さんですか。」すっかり馴染みとなった店主の白崎さんが声をかけてくる。私達はカウンターの席へと向かう。そしてサービスの紅茶を受け取ると金糸雀が白崎さんに説明しだす。「-という訳でこの二人を働かせて欲しいのー!」「なるほど、そういう事でしたか・・。真紅さんも大変ですね・・。 アルバイトの件は勿論OKですよ。」「やったーなのー!」雛苺が席から立ち上がり嬉しそうに叫ぶ。私も嬉しいので思わず金糸雀に抱きつく。「きゃーっ!ほっぺがまさちゅーせっつー!」金糸雀の悲鳴で正気に戻り、金糸雀を離すと気になる事を店主に聞く。“私達はどういう仕事をすればいいのかしら?“「うゆー。そういえば何すればいいのー?」白崎はグラスを拭きながら答える。
「そうですね・・・二人に合った事をやってもらいましょう。 真紅さんは紅茶を煎れたり料理を作ったり、 雛苺さんはウェイターでどうですか?」やっぱり紅茶を煎れたり出来るのね、嬉しいのだわ。でも・・・料理ね・・・ここからが本当の地獄だ・・・って感じね。“私に料理を作れるのかどうかわからないわ。“「ご心配なく、私が指導してさしあげますよ。」良かった・・教えてもらえるのならやっていけそうなのだわ。安心し一息つく。その後暫くの間中で紅茶を飲んだり金糸雀の演奏を聴いたりして時を過ごす、やがて周りが暗くなる。「もう暗いですね、皆さん時間は大丈夫なのでしょうか?」白崎に言われ気付くともう7時、こんなに遅くまでいたのか。「うゆー。もうこんな時間なのー!」“本当ね、そろそろ帰らないと危ないのだわ。“「なのー。だから今日は帰るのー。ご馳走様なのー。」白崎特製の苺パフェを食べた雛苺が料金を差し出しながら言う。よくこんなでかい物を食べれたものね。
「料金は結構ですよ、これから働いてもらうのですし今日はサービスです。」“そんな、悪いのだわ。“「いえいえ、気にしないで下さい。」この店主もほんと人が良いのだわ、まるでジュンみたいに・・。「うゆー。ありがとうなのー。」“ほんとに感謝するのだわ。“口元を拭きながら鞄を持ち店の扉を開けながら言う。「お気になさらずに、金糸雀さん、あなたもあがってもらって結構ですよ。」「わかったのかしらー!」ちょうど弾き終えた金糸雀がバイオリンケースに急いでしまいカウンターに持って行き白崎にしまうように言うとこちらに向かってくる。つまずきそうになるものの今回はなんとか耐えてこけずに済んだようだ。“ではまた明日なのだわ“「ばいばいなのー!」「かしらー!」私達は行きと同じように走り出す。何故走ったかはわからない。けどただなんとなく走りたかった。これから私は新たな道を走るのだわ。
三人がもうほとんど暗くなった道に走っていくのを見届けると白崎は店の中へと入っていく。中はすっかり夜の雰囲気とマッチしバーのようになっている。実際喫茶店と言いつつもかなりの量の酒を扱っているのだが。そして夜になってお客さんが沢山来るのでぱと少しだけ掃除をする。音楽は金糸雀の弾いているバイオリンの“幸せの曲“を流す。一人静かに箒を掃きながら呟く。「廻る廻る運命の糸車が・・・私達は抗う者、運命と言う重圧に立ち向かう事こそに 生きる意味を感じる哀しき小人。命燃え尽きるまで踊ってみせよう。」そう言い終えると白崎は箒をカウンターの内側にへとしまう。「ジュンさん・・・。真紅さんもあなたと同じように戦い出しました・・。 声を出せないという運命に挑み始めました。悲しいですね・・。 皆あなたの様に戦っている・・。」カウンターの中を移動し汚れなどをチェックする。「あなたは地獄で見届けてるでしょう、私も見届けましょう。運命との戦いを。 そして戦いましょう、私も運命と。」そう言ってると客が入ってくる。今夜も忙しくなるそうだと思いながらいつもの台詞を言う。「やぁ、ようこそローゼンメイデンへ」
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