複数短編34
「よしっ!」顔を洗い終え、気合いを入れるため頬を叩く。そして部屋に戻り制服に着替える。「ジュンく~ん、雛ちゃん来たよ~。」僕が制服に着替え終えるとほぼ同時に、姉からそう連絡が入る。「はーい。」僕はそう答えた。それにしてもなんでいっつもこんな絶妙な時間に来るんだ?あいつ、僕を監視してるんじゃないだろうな?などとくだらない事を考えながら、リビングに向かう。「ジュン~!」と言う声が聞こえたのと同時に腹に鈍い痛みが走る。「お前はいっつもいっつも抱きつきやがって・・・」「雛ちゃんとジュン君はいつ見てもラブラブね~。」「違ーう!」これだから朝は嫌いだ。
「行って来ます!」少々不機嫌になりながら、吐き捨てるように僕は言った。「あっ、ジュン待つのよ~!じゃ、のり行って来ま~す。」そう言うと雛苺は俺の横まで走って来た。「二人とも~車には気をつけるのよ~。」と姉が言ったので「分かってる~。」と返事一つ。俺の横でいろいろ話してるこいつの名前は雛苺。いわゆる幼馴染み。僕と同じ歳。背は小さいが、これでもちゃんとした高校一年生。身長・体重・性格すべて小さい頃から変わってないと思う。魔法使いより珍しいかも知れない。「ジュンちゃんと聞いてるの~?」少々顔を膨らませたような顔で言う。「聞いてる。聞いてる。」僕は期待通り全く聞いて無かった。「じゃ、さっき言った事言ってみて!」「えっ?」これは予想外な事になった。どうしよう・・・「早く言うの~!」「そっ、それより早く水銀燈の所行くぞ!待たせるのは悪いしな!」そして僕は少し歩くのを早めた。「ジュンごまかすなんてズルいの~!」そう言いながら、雛苺は僕の元へ走ってきた。
「ピンポーン」僕と雛苺は水銀燈の家の前に来ていた。水銀燈の家は凄いデカい。そして広い。この家に来るたび「社長ってやっぱ儲かるだな」とつくづく思う。ちなみに雛苺の家は僕の家とさほど変わらない。そんな事を考えてるとインターホンの受話器を取る音が聞こえた。「はい。」「あっ、桜田です。」「少々お待ちください。」と言うメイドさんとのいつもと変わらない会話を終えると、鉄で出来た柵が自動的に開く。ふと雛苺の方を見ると、満面の笑みで目をキラキラさせそれを見ている。何が面白いんだ?
鉄の柵が開ききるのを見た後、僕らは玄関まで歩いた。雛苺はキョロキョロ辺りを見回しながら歩く。「ねぇねぇジュン、あれ凄いのー!」「お前いつも見てるだろ。飽きないのか?」「凄いのは凄いのー!」と笑顔を僕に向けて言った。可愛いな・・・あぁこれが娘をもつ父親の心境なのか。こんな事を思ったり、雛苺と話をしたりしてたら、いつの間にか玄関に着いた。水銀燈が出て来るまで待つ。雛苺は今日も扉やその周りの彫刻などを見ている。よく飽きないな。
しばらく待っていると扉が開いた。「行ってらっしゃいませ、お嬢様。」「お留守番よろしくねぇ。」と言いながら水銀燈が出て来た。「銀ちゃんおはようなのー!」雛苺は片手を挙げてそう言った。「雛ちゃんおはよぉ。ジュンもおはよぉ。」「あぁ、おはよう。」体をかがめ雛苺の頭を撫でながらそう言ってきた水銀燈に、僕はそう言葉を返した。水銀燈とは小学校六年間・中学校三年間・そして高校も同じクラス。いわゆる腐れ縁。そういや、なんで社長の娘なのに公立の学校に通ってたんだ?まぁどうでも良いか。雛苺とは性格を含め全てが正反対だ。共通してる点はどちらも何をしでかすか分からない所だけだな。
銀「昨日はエステに行ってきたの。ほらぁJUM、お肌スベスベよぉ。」J「わかったからくっつくなって。」翠「肌質なら負けてね―ですよ。ここ触ってみるです。」銀「う、やわらかしっとりなのねぇ。」真「もち肌なのだわ。」翠「日頃のケアの賜物ですぅ。」真「髪なら誰にも負けないのだわ。(ふぁさぁ)」銀「それはどうかしらねぇ。(ふぁさふぁさ)」翠「翠星石だってなかなかのモンのはずですぅ(ふぁっさぁ)」J「すごいのは分かったからやめれ。くすぐったいwww」
3人がJUMを金銀亜麻色の波に埋もれさせているのを見て雪華綺晶がため息をついた。
雪「皆さんいろいろと努力してますのね。私達も何か始めましょうか?」薔「・・・お姉ちゃん、だれでも美しくなる方法がひとつだけあるって話知ってる?」雪「なんですの?」薔「笑顔でいること、だって。」雪「そうですわね、笑顔が一番ですわ。」薔「・・・それに素材では負けてないから大丈夫、だから行こ?」
そろそろお昼の時間。2人は満面の笑みを湛えて輪に入っていった。
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