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水銀燈の長編の走馬灯~MANY MEMORYS~から続いてる話なので先にそちらを読むことをお勧めします。 哀歌~HUNT MEMORYS~ 思い出とは儚い物・・・故にそれは美しくもなるのです。 これは大事な親友が死んだとある乙女が “思い出“の意味を違う意味で捉えてしまい 狂気に染まり、やがて双子の姉をも巻き込んでしまう物語です。 では彼女が捉えた“思い出“ 哀れなこのお話を皆さん暫しご覧あれ。 -真夜中 夜の路地に彼女は立っていた。 蒼「よし・・・あの人・・にしよう。」 蒼星石は角に隠れて人が通り過ぎるのを待つ。 そして通り過ぎた瞬間蒼星石は人の背後から 鋏を頭にへと突き刺す。 そして突き刺した所から鋏を一気に下へと下げる。 人は血を吹き流しながら二つへ分かれていく。 やがて両断されると人だった物体は声をあげる事もなく静かに倒れた。 蒼「ふふ・・これでこの人の“思い出“は貰ったね。」 蒼星石は笑いながら鋏をマントの内ポケットへ直し着ていた紺色のマントを脱ぐ。 蒼「今夜もこれで満たされたね。ふふ・・・あは・・。」 蒼星石はそう笑いながら言うと帰路についた。 蒼「ただいま。」 翠「遅いですぅ!唯でさえ通り魔が居て危ないのだから早くかえるですぅ!」 蒼「御免御免、おじいさんと話してたらついね。」 翠「もう~ですぅ!毎日毎日あんなじじいの元に行きやがってですぅ!」 蒼「御免よ・・。じゃあお詫びに今度デートでもしようか?」 翠「な、なに言うですぅ!すすす翠星石はそんなの嬉しくなんかないですぅ!」 蒼「じゃあ行かないの・・・?」 翠「い・・・行くですぅ。」 蒼「ふふ・・・じゃあもう寝るね。」 翠「おやすみですぅ。明日は早く帰るですよ。」 蒼「わかった。」 そう言い蒼星石は部屋に戻る。 蒼「ふぅ・・・疲れたな・・。」 蒼星石はバッグからコートを出すとこっそりドアを開けて風呂場へ向かう。 そして紺から真紅の色へと変わったコートを洗っていく。 蒼「これで・・・7人目か・・。」 蒼星石はそう嘆きながらマントにシャワーの水をかけ続ける。 思えば4週間前、親友の一人が死んでから蒼星石の“思い出奪い“が始まったのはそれからだ。 そしてその4週間前の日は友達が死んだ日でもある。 -4週間前 とある町の火葬場近く。 僕はベジータ君らが帰ったのを見て真紅達より先に帰った。 翠星石には一人になりたいと言っておいた。 蒼「(緊張するな・・。)」 蒼星石は夕日が輝く道を歩きながら考える。 思えばこれを考えたのはつい昨日の事だ。 ジュン君が死んで通夜の日、ふと考えた。 彼は病気じゃなかったらこれからまだ何十年も生きた。 そして一杯の“思い出“を手に入れてっただろう。 しかし彼はこんな歳で死んで思い出は少ししか得られなかったろう。 僕はどうだ? 病気じゃない、それでも一生は少ない。 何十年というのはほんとに短い。この一瞬一瞬が過ぎ去っていき あっという間に年月が流れる。 僕はその間にいくつもの“思い出“を作っていくだろう? そして今ジュン君が死んで少ない思い出の欠片が無くなった。 唯でさえ少ない一生の思い出の欠片が減ったのだ。 足りない・・・満たされない・・・。 思い出がもっと欲しい・・・。 そうだ・・・なら奪えばいい。奪えばいいんだ。 命と共に人の命を奪って同時に思い出を全てかっさらうんだ。 そうしていけば・・・僕は満たされるんだ。 染めよう、この手を血で、かけがえのない思い出で。 そう考えていた時蒼星石の歩いてる前の方向に学生が見える。 蒼「(ジュン君と同じくらいの歳だろな・・。)」 蒼「・・・あの子にしようか。」 蒼星石は足音を殺してその学生に近づく。 学生は無論、自分を殺そうとしてる人間など居るなどとは思わず 呑気に歩いて警戒などしていない。 蒼「さぁ見せてくれ、君の“思い出“を。」 学生は自分に声が掛けられたと思いふっと振り向いてみる。 そこにはボーイッシュな可愛い子が立っていた。 そんな事を思ったのも束の間、激痛が走る。 学生「あ・・・あ・・・。」 声も出ない、苦しんでるみたいだ。 しかし死んでない、そう思い僕は腹に刺した鋏を抜く。 抜いた瞬間血が飛びちり学生はふらつく。 ふらついてる学生の頭を狙う。 しかし相手がふらついてたせいで肩の方にへと刃は刺さる。 学生「ああ・・あ・・痛い・・げぼっ!げぼっ!痛い・・・よぉ。」 学生は先程よりも更に苦しみ遂に倒れる。 そして倒れた学生の頭にと蒼星石が鋏を突き刺す。 学生「やめ・・・あ。」 それが学生の最後の言葉となった。 蒼星石はすぐさま鋏を引き抜きマントを脱いで鞄にいれ走り出す。 走っている蒼星石の顔は笑っていた。 蒼「(ああ・・・いい・・・満たされていく・・・心が・・。)」 ここまで楽しいものだとは思わなかった。 顔についた血を名残惜しく舐めとる。 マントを着ていたので顔以外に返り血は付いていない。 そして空き地で一休みする。 蒼「あはは・・・ははは!!!!」 蒼「やみつきになるよ・・・この快感!」 蒼「(短い人生・・・この喜びと奪い取った“思い出“で心を満たそう・・!)」 そう思った蒼星石の目の赤がいつもの綺麗な赤でなく 狂気の赤へと変わる。 蒼「さて・・そろそろ帰ろうか・・。楽しかったなぁ・・。」 蒼星石は再び帰路へとつく。 ふとジュンの事を思い出し涙を浮かべる。 蒼「君は死んだけど新しい“思い出“を手に入れたよ・・・ジュン君・・。」 蒼「そして僕はこれからも“思い出“を手に入れ続ける。」 夕焼け空に狂気の乙女が語った。 そんな事があってから蒼星石はずっと“思い出奪い“、 つまりは通り魔殺人を行っている。 それはニュースにもなってるが蒼星石には関係の無い事だ。 歓喜の前には些細な事など気にもならない。 蒼「(ふぅ~ようやく血が取れたなぁ。)」 返り血を浴びるため返り血から自分を守るため蒼星石はこの マントを着ている。なんで毎回こうやって洗っているのだ。 そして蒼星石はマントを部屋に持っていき室内乾燥させる。 その後暫くは宿題をやりやがて電気を消した。 蒼「(楽しかった♪次はいつしよう?)」 乙女の狂気は続く 蒼「ふぁ~・・・あ・・。」 欠伸をしながらベッドから起き上がる。 蒼「朝かぁ・・・翠星石起こさないと・・。」 半分寝ぼけながら蒼星石は廊下を進み、翠星石の部屋に行く。 寝相が悪く布団を被っていなくパジャマがはだけていた。 蒼「翠星石~起きて。」 返事がない。寝ているようだ。 蒼「起きないならこうするよ。」 蒼星石は寝ている翠星石の上へとのしかかり唇を奪う。 蒼「~♪。」 翠「・・・ん・・んん!!!!?」 蒼星石が唇を離すと唾液の橋が出来、翠星石の口へと落ちる。 蒼「やっと起きたね、翠星石。」 翠「な、ななななななにするですか!」 蒼「アフリカじゃよくある事だよ、それに毎朝してるじゃないか。」 翠「(///)」 蒼「さ、起きて。」 翠「はいですぅ。」 二人はリビングへと向かう。 蒼「朝食はヨーグルトでいいかな?」 翠「いいですよ。」 そう言われ冷蔵庫から二つのヨーグルトを取り出し テーブルにへと置く。スプーンはプラスチックのが容器に張り付いている。 蒼「はい。」 翠「ありがとですぅ。」 朝食を食べ終え二人は玄関へと向かう。 翠「行って来ますですぅ。誰もいないけど・・。」 蒼「ふふ・・・行ってきます。」 そう言い蒼星石は翠星石の唇をまたもや奪う。 翠「!・・・・ん~・・・。」 蒼「ぷはぁ・・・じゃあ行こうか。」 翠「はいですぅ。」 二人は扉を開け通学路へと向かう。 翠「おはようですぅ。」 蒼「おはよう。」 雛「おはようなのー!」 三人はアウト挨拶をし、一緒に行く。 雛「二人は朝から熱いのー!」 翠「なななにいいやがるです!オバカ苺!」 蒼「事実だしいいじゃないか。」 蒼星石が微笑みそう言うと翠星石は真っ赤になる。 蒼「(ほんとかわいいなぁ・・。)」 そんな事を考えてると学校にへと着く。 教室へ入ると水銀燈が挨拶をしてくる。 水「おはよぉ。乳酸菌とってるぅ?」 水銀燈は指輪をはめた左手でヤクルトを差し出す。 翠「ヨーグルトを食べてきたですぅ。だけどヤクルトはいらんですぅ。」 水「あらぁ、残念。」 そう言うと水銀燈はヤクルトを飲み干す。 蒼「相変わらずよく飲むね。」 水「乳酸菌は生活の基本よぉ。」 蒼「ふふ・・・そうだね。」 翠「しかしですぅ、もうあの時から一ヶ月は経ったんですね。」 水「そうねぇ・・・一生忘れられないわ。」 雛「うゆー。二人の仲人も忘れられないのー。」 水「そうねぇ。あなた達がやるとは思わなかったわw」 翠「もうあの事は言わないでですぅ(///)」 蒼「ふふ・・。」 約五週間前、ジュンの結婚式がこの学校で行われた。 もう死してはしまったが水銀燈はいつかまた会えると信じ 泣くのをやめていた。 -五週間前 翠「薔薇のブーケがやっと無くなったですぅ。」 蒼「そうだね、ほんと多かったよ。」 J「凄い量だったな・・肩が痛いよ。」 水「そうねぇ、いい運動になっちゃたわぁ。」 J「それもそうだなw」 蒼「そうだ二人とも、あと2つだけやる事があるよ。」 J「なんだ?まだあったっけ?」 翠「お前達がするんじゃないですぅ。翠星石達がお前らに祝福のスピーチをするですぅ。」 蒼「仲人としてね。」 翠「蒼星石(///)」 水「いつみてもラブラブのカップルだわぁ。」 J「僕らに負けないぐらいにね。」 翠「なな・・何いいやがるですぅ!」 蒼「ほんとなんだしいいじゃない、僕も結婚式を挙げたかったよ。」 翠「そそ蒼星石(///)」 蒼「ではそろそろスピーチを始めるよ。 水「お願いするわぁ。」 蒼「ジュン君、そして水銀燈はとても優しい人でした。」 翠「水銀燈もジュンも面倒見が良かったですぅ。」 蒼「お互いが優しいせいか二人とも二人のそんな所に惹かれていった。」 翠「そして愛し合ったですぅ。」 蒼「優しくそして愛しあってる二人もいつかは結婚するとは思ってたけどまさかこんな早くとはね。」 翠「凄く驚いたですぅ。そしておめでとうですぅ。」 蒼「この結婚式で君達は永遠を誓い合った。」 翠「それも神様にじゃなく薔薇と相手と私達にですぅ。」 蒼「神様なんか信じないって言ってたね、けど僕らは信じてくれてる。」 翠「信用してくれて本当に嬉しいですぅ。」 蒼「そして僕らも君らを信じてる。」 翠「ですぅ。」 蒼「僕らは君らが永遠を誓ってくれたので僕らも誓う。」 翠「私達はこれからずっと二人の幸せを祈るですぅ。」 蒼「だからずっと・・・朽ちない愛を君達は堪能してくれ。」 翠「幸せになりやがれですぅ。」 蒼「以上でスピーチを終わります。」 翠「聞いてくれてどうもありがとうですぅ。」 そう言い舞台を降りていく。 J「ありがとう・・凄く嬉しかった。」 水「私達はこの永遠をあなた達にも誓ったもの、ずっと楽しむわぁ。」 J「だからさ、約束しようぜ。」 蒼「何をだい?」 水「あなた達はずっと私達の幸せを祈ってくれる。」 J「だからいつか僕達にも君達の幸せを祈らせてくれ。」 翠「な・・・(///)」 蒼「ふふ・・・わかったよ。僕らはいつか君達に永遠を誓うよ。」 翠「蒼星石(///)」 水「まだあの人は私の心で生きてるわぁ。だからいつか私に誓ってねぇ。」 雛「翠星石達の永遠をー!」 蒼「勿論さ、いつか必ず誓うさ。」 翠「ち、近い内にでも誓うですぅ(///)」 蒼「さて、チャイムが鳴ったね、授業の準備をしようか。」 蒼星石がそう言うと皆は授業の準備をしだした。 -放課後 蒼「・・・。」 今日は翠星石が追試の為に一人で帰ってるのだ。」 蒼「(地獄なんてのはあるのだろうか・・・?)」 蒼「(あの二人は永遠を誓ったがジュン君が死んでそれで終わりかもしれない。)」 蒼「(生きる事とは平等じゃない、だからこそ死は公平な“無“かもしれない。)」 蒼「(僕にそんな事はわからない、けどジュン君が死んでよくわかる。)」 蒼「(ジュン君は死ぬ間際まで幸せだといってたそうだがほんとはもっと幸福になり“思い出“が欲しかったに違いない)」 蒼「(だから僕は死ぬまでに沢山の“思い出“を手に入れよう。)」 蒼「(奪 う ん だ 。 思 い 出 を 。 )」 そう考えてた蒼星石の手にはいつの間にか鋏が握られている。 蒼「(こんな事考えていたからもう“思い出“が欲しくなってきたよ・・。)」 蒼「(一人やるか。)」 蒼星石の目は再び狂気に満ちる。 蒼「(今日はコートを持ってないから違う方法でやらなきゃな。)」 なぜなら返り血を浴びる為である。 蒼「(そうだ・・・!)」 突然蒼星石は何かを思い浮かべる。 それと同時にバッグからもう1つ鋏を取り出す。 蒼「(さて・・・誰にするか・・・あの老人でいいか。)」 蒼星石はターゲットを睨むとある一定の距離を保ち 他に人が居なくなるのを待つ。 そしてやがて二人以外の人は居なくなる。 蒼「(よし・・!今だ!)」 蒼星石は思うと同時に鋏を二つ投げる。 老人は動きが少ないようなので比較的当たりやすいようで 鋏は見事に心臓と頭を貫いた。血が流れていく。 老「ヴ・・・あ・・。」 老人は倒れる。 蒼「あなたの“思い出“はもらったよ。」 そう言うと蒼星石は場から笑いながら逃げ出す。 顔には満面の笑みが広がっている。 蒼「ふふ・・・満足満足♪」 逃げると同時に蒼星石は帰路へとついた。 蒼「ただいまー。まだ帰ってないのか。」 家にはまだ誰もいないようだ。 翠星石はいつもこんな中自分を待っているのだろうか。 蒼「(今度からは早めに帰ろう・・。ごめんね翠星石)」 蒼星石はそう思うと夕飯を作り始める。 いつもは交代で作っていて今日は翠星石の番だが 蒼星石はいつものお詫び代わりに作り始める。 蒼「ふぅ~なんとか出来たね。」 蒼星石はそう言うとソファーに腰掛ける。 帰ってくるまで宿題をやっておこう。 そして数十分後、宿題が終わると同時に翠星石が帰ってくる。 翠「ただいまですぅ!」 大きな声をあげると同時にリビングに駆け込んでくる。 翠「あれ?なんで蒼星石が作ってるのですか?」 蒼「いつも遅く帰るお詫びだよ、今日一人で待ってたら君の気持ちがよくわかってね。」 翠「そ、蒼星石~。わかったなら次からは早く帰るですよ。」 蒼「ふふ・・わかってるよ。」 そんな会話をしながら二人は夕飯を食べていく。 その後は一緒にお風呂に入ったりしながら過ごしていく。 翠「蒼星石ー。今日は一緒に寝るですぅ。」 蒼「そうだね、襲っちゃおか?」 翠「ななななに言うです!今日は駄目です!」 蒼「残念だなー。今度の楽しみにとっておくよ。」 そう会話しながら二人は寝室にへと向かっていく。 蒼「じゃあおやすみ。」 翠「おやすみですぅ。」 シングルベッドで少々寝にくい中二人は眠りについた。 蒼星石の顔は幸せで満ちていた。 -土曜日 蒼「翠星石ー。でかけないかい?」 翠「なんでですぅ?」 蒼「前デートに行こうって言ったじゃないか。」 翠「なななにいってやがるですか!」 蒼「じゃあ行かないの?」 翠「い、行くに決まってるですぅ!」 蒼「そうこなくっちゃ。じゃあ“ローゼンメイデン“でも行こうか。」 そう言うと蒼星石は玄関へと向かう。 翠「ま、待つですぅ!」 翠星石も急いで後を追う。 蒼「あのマスターに会うのも久々になるね。」 翠「ですねぇ。あの兎店主今度は何をほざいてくれるかなぁですぅ。」 そんな会話をしながら双子はドアを開け喫茶ローゼンメイデンへと向かう。 翠「そういえば怖いですねぇ。」 蒼「何がだい?」 翠「通り魔に決まってるですぅ。」 蒼「あー確かにね。まぁ一人ずつ殺していってるのなら僕らは二人だし大丈夫だよ。」 翠「そうとも限らないですぅ。念には念を入れて走っていくですぅ。」 蒼「あ! ま・・待って翠星石!(僕が通り魔だからそんな事はないのにな・・。)」 そして二人とも急いで喫茶店へと向かう。 -ローゼンメイデン カランカランという鈴の音と共にドアが開かれる。 白「やぁようこそローゼンメイデンへようこそ。この紅茶はサービスだから・・・って。」 白「バカップルの二人じゃないですか。」 翠「バカとはなんです!バカとは!」 蒼「言い返す方もバカだよ・・・翠星石。」 白「まぁ紅茶でも飲んで落ち着いてくださいな。」 そう言う白崎の言う通りに双子はカウンターへ座り サービスの紅茶を飲み始める。 蒼「いつ来てもおいしいね。」 翠「ですぅ。兎店主の紅茶は美味ですぅ。」 白「はは。お褒めの言葉感謝します。」 白「しかし兎って言うのは・・。」 翠「兎は兎ですぅ。兎に何言っても兎なんですぅ。」 白「とほほ・・。」 マスターの白崎は好んで不思議の国のアリスなどの本や人形や薔薇を飾っている。 そんな中で兎の人形が多いので翠星石はいつからか兎と呼ぶようになる。 白「しかしお二方が最近来ないので忘れられたかと思いましたよ。」 蒼「ふふ・・・そんな訳ないですよ。寂しかったんですか?」 白「まぁ少しは。しかし別れとは出会いの始まり。」 白「死は復活の始まり復活は死の始まり表は裏、裏は表。」 白「一見逆に見える二つの意味も実は隣合わせなのですよ。」 白「あなた達と別れても新たな出会いがある。そう考えれば寂しさは少しは紛れますよ。」 翠「相変わらず御託を並べるですねぇ。」 蒼「けどいい詩のようじゃないか。」 白「ふふ・・しかし今言ったのは詩ではなく真理を述べただけですよ。」 蒼「あなたらしいですね。」 翠「変わってないですぅ。」 白「ふふ・・。」 蒼「そう言えば今新たな出会いがあるって言ったですよね?何か出会いはあったんですか?」 白「出会いも別れもこのローゼンメイデンには溢れていますよ。」 白「こういう稼業やってると色んなお客さんが居ていろんな出会いと別れが楽しめるのですよ。」 翠「もしかしてそれが理由ですか?この店を開いた。」 白「それも大きな理由ですね、他にも理由はあるんですがね。」 そう言いながら白崎は紅茶の葉を整理する。 蒼「そうだ、マスター。何か詩でもなんでも言ってくださいよ。」 翠「ですぅ。御託を聞きたいですぅ。」 白「ほうほういいでしょう、どんなテーマがいいですかね?」 蒼「んーそうだね、翠星石はどんなテーマがいい?」 翠「そりゃ勿論“愛と花“ですよ。」 蒼「君らしいね。」 白「では・・・そうですね。」 愛とは花のよう、綺麗な愛のような花もあれば儚い愛のような花もある。 では儚い花には愛のように永遠がないのだろうか?いや 見てくれる人がいる限りその心にどんな花にも永遠がある。 花は朽ちてもその姿はずっと満開で心に咲き続けるだろう。 だから心に花を、愛の花を。 白「ぱっと思いついたのですから出来はいまいちですよ。」 翠「いいですぅ。」 蒼「うん、相変わらずいい詩だよ。」 白「お褒めの言葉に感謝。」 翠「じゃあちょっと翠星石はトイレにいってくるですぅ。」 蒼「わかった、早く戻ってきてよ。」 翠「わかったですぅ。」 そう言い残し翠星石は走り去る。 蒼「ふぅ・・・そういやマスター。聞きたい事があるんだ。」 白「ほう・・・なんでしょうか?」 蒼「地獄って・・・あると思う?」 白「ほう・・・またそれはどういう事で?」 蒼「生きるって平等じゃないと思うんだ、それはマスターもわかるよね?」 白「ええ。確かに生とは平等ではありませんね。」 蒼「だからこそ死は平等だと思うんだ。そして平等故に死は“無“。」 蒼「死んだら何も無いと思うんだ、マスターはどう思う?」 白「ほうほう・・・その意見には同意できますね。」 白「死んだら何もない平等だからこそ生きるという事は不公平な事ですしね。」 蒼「やっぱりマスターもそう思うんだ。」 白「ええ。ただ・・・。」 蒼「ただ?」 白「もしかしたら地獄という物は作れるものかもしれませんよ。」 蒼「と言うと?」 白「“愛“があれば何でもつくれるんじゃないですかね。」 白「わかりはしませんがこの世界だって神様の愛によって出来たのかもしれません。」 白「だから極楽地獄にしろ無間地獄にしろ人の愛があれば作れるかもしれません。」 蒼「なるほど・・・。」 白「あのジュンさんはきっと極楽地獄で生きてますよ、あの人は水銀燈さんへの愛があった。」 蒼「ですかね・・。僕も彼が地獄で生きてる事を祈っときますよ。」 白「僕も・・・まぁ死んだらわかるかもしれませんがね。」 蒼「ふふ・・・まだまだわからないですよ。」 そう話してた所に翠星石が戻ってくる。 翠「何の話してたですかー!?」 蒼「ちょっとねw」 翠星石が帰ってき三人は暫く話す。 そして夕方にせまった頃に 翠「そろそろ帰るですぅ。」 蒼「そうさしてもらうか。マスター、お勘定。」 白「はい・・・ではお気をつけて、夕闇に飲み込まれぬよう・・。」 白「蒼星石さん。生の真理ははっきりとはしてませんが生とはかけがえのないものという事は確かです。」 白「それをお忘れにならないように・・。」 翠「?」 蒼「・・ですね。どうもありがとうございました。」 そう言い出て行く。 翠「ふぅ・・・久々に来たから楽しかったですぅ。」 蒼「だね、まだ元気で良かったよ。」 翠「そんなもうすぐ死ぬような言い方やめるですぅ。」 蒼「それもそうだねw」 二人は談笑しながら帰っていく、そんな中蒼星石はある事を考える。 蒼「(愛が地獄を作るかもしれないか・・。僕も翠星石との愛の地獄を作れるのか?)」 蒼「(もしそうなら今までやっていた“思い出奪い“はなんだったんだ?)」 蒼「(今まで僕は儚い人生の思い出を手に入れたい一心にやってきた。)」 蒼「(それも愛の前では意味の無い事だったのか?)」 蒼星石は帰る途中ずっと考える。しかし答えは見つけれなかった。 蒼「(くそ!くそくそくそ!どうなんだ!)」 蒼「(結局は何も死んでからじゃわからないじゃないか!)」 蒼「(愛を信じるだけじゃわからないじゃないか!)」 翠「蒼星石ー。何考えてるですぅ?」 蒼「ん?いや何でもないよ。そうだ翠星石。先帰っておいて。」 蒼「ちょっと買い物があるから。」 翠「私もついていくですぅ。」 蒼「そんな大した物じゃないよ。来てもつまらないだろうし先帰って夕飯作っておいてよ。」 翠「わかったですぅ。おいしい食事を作って待ってるですねぇ。」 そう言うと翠星石は家へと向かう。 蒼「ふぅ・・・。ストレスが溜まり過ぎたな・・。一人やっていこうか。」 蒼星石はそうつぶやくとターゲットを探す。 懐から鋏を取り出すと蒼星石は友達と別れ帰路へと向かう子供に目をつける。 蒼「隙だらけだしコートもいらないね。」 蒼星石は歩く子供にむかって走る。 そして背後にぴったりくっつくと鋏を心臓へと刺す。 そして素早く離れる。すると子供は声も出さず倒れた。 蒼「(・・・生きる事はかけがえのない事か・・・じゃあこの子は・・。)」 蒼「(な、何も考えるな!他人の事なんて気にしないでいいじゃないか!)」 そう考えていると蒼星石は人影に気付く。 通行人「ん・・?え・・?う、うわあああああああああああ!」 蒼「(しまった!)」 そう思うと蒼星石は子供の体から鋏を抜き取ると通行人へと向かう。 腰を抜かし倒れている通行人の眉間にそれはあたる。 蒼「ちっ!逃げなきゃ!」 そう言いながら蒼星石は急いで帰路へついた。 翠「何買ってたですかぁ?」 蒼「君に花をプレゼントしようとしたんだけどいいのが無くてね。」 翠「そ、蒼星石(///)」 蒼星石は家に着いてようやく落ち着いてきたようだ。 蒼「ちょっと具合が悪いみたいだから先に寝るよ・・。」 翠「大丈夫ですかぁ?あの兎の紅茶が悪かったんじゃ・・。」 蒼「それはないよ。疲れだと思うけど・・。じゃあおやすみ。」 翠「しっかり寝るですよー。」 翠星石のそんな言葉を後ろに蒼星石は部屋に入り電気を消してベッドに潜り込む。 蒼「(こんなミス初めてだ・・。僕の心が迷ってるのか?)」 蒼「(これからどうすればいいかを・・。)」 蒼「(“思いで奪い“をしたのに喜べない・・。)」 蒼「(今さらになって抵抗を覚えたのか?)」 蒼「(僕が奪った命もかけがえのない生・・。それを奪ってた僕はなんだんだ?)」 蒼「(地獄があるとしたら・・・どうなんだ。彼らは地獄で僕を憎むのか?)」 蒼「(限りある生を堪能するのにこれは間違ってるのか?)」 蒼「(・・・寝よう。ゆっくり考えるとしよう。)」 蒼星石は眠りについた。しかしいつもと違い 喜びには満ち溢れてはいなかった。 その日通り魔被害者が10人に達したニュースが流れていた。 -翌日の朝 蒼「結局眠れなかったな・・。」 蒼星石はそう呟くとベッドから起き上がる。 翠星石に少し旅に出ると書いた置手紙を残し蒼星石は ドアを開け、一日だけの自分探しの旅へと出掛けた。 向かう場所は近くにある大きな公園。 暫く歩き公園に着くと芝生へと寝転がり蒼星石は考え始めた。 蒼「(僕のやってきたのはなんだったんだ?)」 蒼「(生きる事はかけがえの無い事、短い人生を堪能しようと“思いで奪い“を始めた。)」 蒼「(それは果たして正しかったのか?)」 蒼「(地獄があるだなんてわからない。地獄が愛で作れるかなんてわからない。)」 蒼「(愛で地獄が作れるなら僕は一体何をやってきたんだ?)」 蒼「(作れるとしても僕は何をやってきたんだ?)」 蒼「(作れたとしても生はかけがえの無い物には違いない。)」 蒼「(僕はそれを奪ってきた。)」 蒼「(それな何はどうあれ許されざる事なのか?)」 蒼「(僕は極楽地獄でなく無間地獄へ行く運命なのか?)」 蒼星石はその日ずっとその事を考えていた。やがて答えが出る。 蒼「(やはりかけがえの無いものを奪うのは許されざる事なのかな・・。)」 蒼「(ジュン君が仮に殺されたとしたら悪いには殺した方と僕は思う・・。)」 蒼「(それは僕が殺した人も同じ、死んだら周りの人も悲しませる・・。)」 蒼「(やはり・・・僕は罪人だったんだな・・。)」 蒼「(自首しよう。そして僕は罪を償いジュン君がいる地獄へと落ちれるようにしよう。)」 蒼「(信じよう、愛は地獄だって作り出せる・・・地獄はあると。)」 蒼星石は今までの罪を償うべく警察へと向かう。 蒼「(ごめんね翠星石・・。一日限りの自分探しの旅は長い償いの旅にへとなりそうだ。)」 その時蒼星石はパトロールをする警察官を見つける。 こんだけ通り魔事件があればそりゃパトロールは厳しくなっている。 折角だ。この人にでいいから自首し警察へと連れてってもらおう。 蒼「すいませーん。」 警「なんですか?この辺は危ないですよ。通り魔がいるのですから。」 蒼「その事でお話が・・。」 蒼星石は全てを打ち明ける。 自分が今まで十人もの人を殺してきた通り魔だという事。 そして自首するので警察に連れて行って欲しい事。 蒼「という訳なんです・・。僕を警察に連れてって下さい。」 警「・・・わかった。」 パトロールをする警察官は手錠を蒼星石へとかけ連行する。 警「・・・だよな。」 蒼「へ?」 警「お前が罪をやった証拠は今の自白であるけど俺がお前を犯したってばれないんだよな!」 蒼「!」 すると警察官は蒼星石を襲い始める。 警「償いと思って大人しく犯られてろ!」 警察は蒼星石を押し付ける。 周りはすっかり暗くなり助ける人はいない。 蒼「や・・・やめて!」 警「そう言われてやめるのは馬鹿のする事だ!」 警察官は蒼星石の服を脱がそうとする。 必死に抵抗するが手錠をされてるのでうまく動けない。 蒼「や・・やめて!」 やがて警察官は上のTシャツを脱がし終える。 その時に蒼星石の服ごしに蒼星石は蹴りをいれる。 油断してたのだろうかその蹴りは鳩尾へ入る。 警「うっ!貴様・・。」 警察官はうずくまって震えている。 その隙に蒼星石はズボンの後ろポケットから鋏を取り出す。 手錠をされてて使いにくいがしょうがない。 蒼星石は腕を前に突き出して走り出した。 そして倒れている警官の頭へと突き刺す。 さらに突き刺さった後それを豪快に上に振り上げる。 警官の頭は真っ二つになり蒼星石の体は血まみれになる。 蒼「はぁ・・はぁ・・・どうして・・・償おうと思った時に・・。」 そう言い警官の腹へと鋏を突き刺すと警官は仰向けに倒れる。 蒼星石は涙声になり嘆く。 その時後ろから声がする。 蒼「(通報されるな・・・。けどいいんだ、これで・・・これで・・。)」 しかし蒼星石はここで疑問に思う。 聞こえた声が聞きなれた声だったからだ。 そう思いぱっと振り向く。 翠「あ・・あ・・蒼・・星石・・。」 そこには旅をすると書かれた手紙を見つけ心配で探しに来た我が愛しの恋人が居た。 蒼「す・・・翠星石・・・これは・・。」 翠「あ・・あ・・うわああああああああああああ!」 翠星石は泣きながら蒼星石を叩く、叩く。 蒼星石はじっと殴られていた。 翠「なんで・・なんで蒼星石が・・・!」 翠星石は問い詰めた。 蒼星石は答えた。 ジュン君が死んでから生きる事が儚く思え“思い出奪い“をした事。 通り魔は自分だと言う事・・。 過ちに気付き自首しようとした事・・。 そして今警官にそれを言うと犯されそうになり殺した事・・。 全てを話した。 蒼「御免ね・・・翠星石・・・御免ね・・・。」 翠「蒼星石は馬鹿ですぅ・・・ひっく。」 翠「何があっても殺す事は人を不幸にするから駄目・・ですぅ・・うう・・。」 翠「思い出は手に入れるものじゃないですぅ・・・ひっく。“作るからかけがえが無いんですぅ“・・・ひっく。」 翠「人を殺して幸せになろうなんて・・・ひっく・・・馬鹿のする事ですぅ・・。」 蒼「御免ね・・御免ね・・・ほんと馬鹿だよ僕・・。」 いつの間にか蒼星石も泣いていた。 翠「うう・・・最後に反省してくれたのが・・・少しは嬉しいですぅ・・。」 翠「けどこんな下衆のいる警察になんかに・・妹は出さないですぅ・・。」 翠「最後に・・・姉妹として・・・双子として・・・蒼星石を殺して自分も死ぬですぅ!」 そう言うと翠星石は警官の腹から鋏を抜き取り蒼星石の所へと歩く。 翠「・・ひっく・・・地獄で・・・また会うですぅ・・。」 蒼「す・・・翠星石?」 鋏は振り落とされる。 -殺す気は無かった。 ただ反射的に鋏を振り下ろす手をずらした。 そして鋏は鋏を持つ翠星石の腹へ- 蒼「す・・・翠星石!」 翠「ほんと・・・お前は馬鹿ですぅ・・。」 蒼「そんな気は・・・そんな気は無かったんだ!」 翠「ふふ・・・わかってるですよ・・・・今のはたまたまだって・・・。」 蒼「翠星石・・・御免・・・御免・・・。」 翠「なら約束をするですぅ・・・・。」 蒼「ひっく・・・・なん・・だい・・?」 翠「罪を償ってきたらまた・・・地獄で・・会うですぅ・・・。」 翠「それまで暫く・・・さよならですぅ・・・。」 翠星石の体から力が抜ける。 蒼「翠星石?嘘だろ?嘘と言ってくれ!うわあああああああああああああああ!」 蒼星石は泣いた。泣き続けた。 その後蒼星石は警察署にへと向かう。 血まみれの姿で鋏を持った蒼星石が警察の入り口で呟く。 蒼「僕は・・・罪深き通り魔です。自首しに来ました・・。」 そう呟くと蒼星石は走り出す。 すぐさま警察は蒼星石を追う。 蒼星石は公園の恋人の前で立ち止まった。 周りは警察によって包囲されている。 蒼「翠星石・・・僕は自分の地獄で償いの“哀歌“を歌い続ける。」 蒼「“哀歌“を歌い終えたら・・・君の地獄へと行くよ。」 蒼「ちょうど僕で13人目・・。まるでキリストの処刑だな。」 すでに死んだ翠星石を抱きしめながら言う。 そして 蒼「さよならこの世よ・・・!僕は地獄で償いの哀歌を歌う!」 改札に囲まれる中蒼星石は鋏を握り自分の胸へと突き刺す。 周りで警察の喧騒が聞こえるがやがて聞こえなくなっていく・・・。 世間を騒がした通り魔事件は13人目の死亡者、通り魔自身という終わり方となる。 蒼星石は地獄で歌い続けた。 自分を苦しめ罪を悔い何年も何十年も 自分の地獄で償いの“哀歌“を歌い続けた。 そして気が遠くなるような年月が過ぎ 蒼星石は歌を歌い終え約束を果たしに行く。 久しぶりだな 久しぶりぃ? 久しぶりジュン君、水銀燈、そして愛しの人よ 待ちくたびれたですぅ!罪は償ったですか!? 勿論、約束は守る主義だからね そして僕はもう1つの約束も果たしに来た 翠星石、僕は君を愛している 君との永遠を約束どおり誓いたい そ・・・そんなのOKに決まってるですぅ! ふふ・・・じゃあ早速誓ってよぉ? ああ、約束通り僕らに誓ってくれ うん・・翠星石、僕は君を・・・永遠に愛する 翠星石もですぅ・・私も愛してるですぅ そう言うと二人の唇が重なる この口付けは永遠へのスタート “哀歌“を歌った哀しい乙女の愛が終わらない道を歩み始める fin
水銀燈の長編の走馬灯~MANY MEMORYS~から続いてる話なので先にそちらを読むことをお勧めします。 哀歌~HUNT MEMORYS~ 思い出とは儚い物・・・故にそれは美しくもなるのです。 これは大事な親友が死んだとある乙女が “思い出“の意味を違う意味で捉えてしまい 狂気に染まり、やがて双子の姉をも巻き込んでしまう物語です。 では彼女が捉えた“思い出“ 哀れなこのお話を皆さん暫しご覧あれ。 -真夜中 夜の路地に彼女は立っていた。 蒼「よし・・・あの人・・にしよう。」 蒼星石は角に隠れて人が通り過ぎるのを待つ。 そして通り過ぎた瞬間蒼星石は人の背後から 鋏を頭にへと突き刺す。 そして突き刺した所から鋏を一気に下へと下げる。 人は血を吹き流しながら二つへ分かれていく。 やがて両断されると人だった物体は声をあげる事もなく静かに倒れた。 蒼「ふふ・・これでこの人の“思い出“は貰ったね。」 蒼星石は笑いながら鋏をマントの内ポケットへ直し着ていた紺色のマントを脱ぐ。 蒼「今夜もこれで満たされたね。ふふ・・・あは・・。」 蒼星石はそう笑いながら言うと帰路についた。 蒼「ただいま。」 翠「遅いですぅ!唯でさえ通り魔が居て危ないのだから早くかえるですぅ!」 蒼「御免御免、おじいさんと話してたらついね。」 翠「もう~ですぅ!毎日毎日あんなじじいの元に行きやがってですぅ!」 蒼「御免よ・・。じゃあお詫びに今度デートでもしようか?」 翠「な、なに言うですぅ!すすす翠星石はそんなの嬉しくなんかないですぅ!」 蒼「じゃあ行かないの・・・?」 翠「い・・・行くですぅ。」 蒼「ふふ・・・じゃあもう寝るね。」 翠「おやすみですぅ。明日は早く帰るですよ。」 蒼「わかった。」 そう言い蒼星石は部屋に戻る。 蒼「ふぅ・・・疲れたな・・。」 蒼星石はバッグからコートを出すとこっそりドアを開けて風呂場へ向かう。 そして紺から真紅の色へと変わったコートを洗っていく。 蒼「これで・・・7人目か・・。」 蒼星石はそう嘆きながらマントにシャワーの水をかけ続ける。 思えば4週間前、親友の一人が死んでから蒼星石の“思い出奪い“が始まったのはそれからだ。 そしてその4週間前の日は友達が死んだ日でもある。 -4週間前 とある町の火葬場近く。 僕はベジータ君らが帰ったのを見て真紅達より先に帰った。 翠星石には一人になりたいと言っておいた。 蒼「(緊張するな・・。)」 蒼星石は夕日が輝く道を歩きながら考える。 思えばこれを考えたのはつい昨日の事だ。 ジュン君が死んで通夜の日、ふと考えた。 彼は病気じゃなかったらこれからまだ何十年も生きた。 そして一杯の“思い出“を手に入れてっただろう。 しかし彼はこんな歳で死んで思い出は少ししか得られなかったろう。 僕はどうだ? 病気じゃない、それでも一生は少ない。 何十年というのはほんとに短い。この一瞬一瞬が過ぎ去っていき あっという間に年月が流れる。 僕はその間にいくつもの“思い出“を作っていくだろう? そして今ジュン君が死んで少ない思い出の欠片が無くなった。 唯でさえ少ない一生の思い出の欠片が減ったのだ。 足りない・・・満たされない・・・。 思い出がもっと欲しい・・・。 そうだ・・・なら奪えばいい。奪えばいいんだ。 命と共に人の命を奪って同時に思い出を全てかっさらうんだ。 そうしていけば・・・僕は満たされるんだ。 染めよう、この手を血で、かけがえのない思い出で。 そう考えていた時蒼星石の歩いてる前の方向に学生が見える。 蒼「(ジュン君と同じくらいの歳だろな・・。)」 蒼「・・・あの子にしようか。」 蒼星石は足音を殺してその学生に近づく。 学生は無論、自分を殺そうとしてる人間など居るなどとは思わず 呑気に歩いて警戒などしていない。 蒼「さぁ見せてくれ、君の“思い出“を。」 学生は自分に声が掛けられたと思いふっと振り向いてみる。 そこにはボーイッシュな可愛い子が立っていた。 そんな事を思ったのも束の間、激痛が走る。 学生「あ・・・あ・・・。」 声も出ない、苦しんでるみたいだ。 しかし死んでない、そう思い僕は腹に刺した鋏を抜く。 抜いた瞬間血が飛びちり学生はふらつく。 ふらついてる学生の頭を狙う。 しかし相手がふらついてたせいで肩の方にへと刃は刺さる。 学生「ああ・・あ・・痛い・・げぼっ!げぼっ!痛い・・・よぉ。」 学生は先程よりも更に苦しみ遂に倒れる。 そして倒れた学生の頭にと蒼星石が鋏を突き刺す。 学生「やめ・・・あ。」 それが学生の最後の言葉となった。 蒼星石はすぐさま鋏を引き抜きマントを脱いで鞄にいれ走り出す。 走っている蒼星石の顔は笑っていた。 蒼「(ああ・・・いい・・・満たされていく・・・心が・・。)」 ここまで楽しいものだとは思わなかった。 顔についた血を名残惜しく舐めとる。 マントを着ていたので顔以外に返り血は付いていない。 そして空き地で一休みする。 蒼「あはは・・・ははは!!!!」 蒼「やみつきになるよ・・・この快感!」 蒼「(短い人生・・・この喜びと奪い取った“思い出“で心を満たそう・・!)」 そう思った蒼星石の目の赤がいつもの綺麗な赤でなく 狂気の赤へと変わる。 蒼「さて・・そろそろ帰ろうか・・。楽しかったなぁ・・。」 蒼星石は再び帰路へとつく。 ふとジュンの事を思い出し涙を浮かべる。 蒼「君は死んだけど新しい“思い出“を手に入れたよ・・・ジュン君・・。」 蒼「そして僕はこれからも“思い出“を手に入れ続ける。」 夕焼け空に狂気の乙女が語った。 そんな事があってから蒼星石はずっと“思い出奪い“、 つまりは通り魔殺人を行っている。 それはニュースにもなってるが蒼星石には関係の無い事だ。 歓喜の前には些細な事など気にもならない。 蒼「(ふぅ~ようやく血が取れたなぁ。)」 返り血を浴びるため返り血から自分を守るため蒼星石はこの マントを着ている。なんで毎回こうやって洗っているのだ。 そして蒼星石はマントを部屋に持っていき室内乾燥させる。 その後暫くは宿題をやりやがて電気を消した。 蒼「(楽しかった♪次はいつしよう?)」 乙女の狂気は続く 蒼「ふぁ~・・・あ・・。」 欠伸をしながらベッドから起き上がる。 蒼「朝かぁ・・・翠星石起こさないと・・。」 半分寝ぼけながら蒼星石は廊下を進み、翠星石の部屋に行く。 寝相が悪く布団を被っていなくパジャマがはだけていた。 蒼「翠星石~起きて。」 返事がない。寝ているようだ。 蒼「起きないならこうするよ。」 蒼星石は寝ている翠星石の上へとのしかかり唇を奪う。 蒼「~♪。」 翠「・・・ん・・んん!!!!?」 蒼星石が唇を離すと唾液の橋が出来、翠星石の口へと落ちる。 蒼「やっと起きたね、翠星石。」 翠「な、ななななななにするですか!」 蒼「アフリカじゃよくある事だよ、それに毎朝してるじゃないか。」 翠「(///)」 蒼「さ、起きて。」 翠「はいですぅ。」 二人はリビングへと向かう。 蒼「朝食はヨーグルトでいいかな?」 翠「いいですよ。」 そう言われ冷蔵庫から二つのヨーグルトを取り出し テーブルにへと置く。スプーンはプラスチックのが容器に張り付いている。 蒼「はい。」 翠「ありがとですぅ。」 朝食を食べ終え二人は玄関へと向かう。 翠「行って来ますですぅ。誰もいないけど・・。」 蒼「ふふ・・・行ってきます。」 そう言い蒼星石は翠星石の唇をまたもや奪う。 翠「!・・・・ん~・・・。」 蒼「ぷはぁ・・・じゃあ行こうか。」 翠「はいですぅ。」 二人は扉を開け通学路へと向かう。 翠「おはようですぅ。」 蒼「おはよう。」 雛「おはようなのー!」 三人はアウト挨拶をし、一緒に行く。 雛「二人は朝から熱いのー!」 翠「なななにいいやがるです!オバカ苺!」 蒼「事実だしいいじゃないか。」 蒼星石が微笑みそう言うと翠星石は真っ赤になる。 蒼「(ほんとかわいいなぁ・・。)」 そんな事を考えてると学校にへと着く。 教室へ入ると水銀燈が挨拶をしてくる。 水「おはよぉ。乳酸菌とってるぅ?」 水銀燈は指輪をはめた左手でヤクルトを差し出す。 翠「ヨーグルトを食べてきたですぅ。だけどヤクルトはいらんですぅ。」 水「あらぁ、残念。」 そう言うと水銀燈はヤクルトを飲み干す。 蒼「相変わらずよく飲むね。」 水「乳酸菌は生活の基本よぉ。」 蒼「ふふ・・・そうだね。」 翠「しかしですぅ、もうあの時から一ヶ月は経ったんですね。」 水「そうねぇ・・・一生忘れられないわ。」 雛「うゆー。二人の仲人も忘れられないのー。」 水「そうねぇ。あなた達がやるとは思わなかったわw」 翠「もうあの事は言わないでですぅ(///)」 蒼「ふふ・・。」 約五週間前、ジュンの結婚式がこの学校で行われた。 もう死してはしまったが水銀燈はいつかまた会えると信じ 泣くのをやめていた。 -五週間前 翠「薔薇のブーケがやっと無くなったですぅ。」 蒼「そうだね、ほんと多かったよ。」 J「凄い量だったな・・肩が痛いよ。」 水「そうねぇ、いい運動になっちゃたわぁ。」 J「それもそうだなw」 蒼「そうだ二人とも、あと2つだけやる事があるよ。」 J「なんだ?まだあったっけ?」 翠「お前達がするんじゃないですぅ。翠星石達がお前らに祝福のスピーチをするですぅ。」 蒼「仲人としてね。」 翠「蒼星石(///)」 水「いつみてもラブラブのカップルだわぁ。」 J「僕らに負けないぐらいにね。」 翠「なな・・何いいやがるですぅ!」 蒼「ほんとなんだしいいじゃない、僕も結婚式を挙げたかったよ。」 翠「そそ蒼星石(///)」 蒼「ではそろそろスピーチを始めるよ。 水「お願いするわぁ。」 蒼「ジュン君、そして水銀燈はとても優しい人でした。」 翠「水銀燈もジュンも面倒見が良かったですぅ。」 蒼「お互いが優しいせいか二人とも二人のそんな所に惹かれていった。」 翠「そして愛し合ったですぅ。」 蒼「優しくそして愛しあってる二人もいつかは結婚するとは思ってたけどまさかこんな早くとはね。」 翠「凄く驚いたですぅ。そしておめでとうですぅ。」 蒼「この結婚式で君達は永遠を誓い合った。」 翠「それも神様にじゃなく薔薇と相手と私達にですぅ。」 蒼「神様なんか信じないって言ってたね、けど僕らは信じてくれてる。」 翠「信用してくれて本当に嬉しいですぅ。」 蒼「そして僕らも君らを信じてる。」 翠「ですぅ。」 蒼「僕らは君らが永遠を誓ってくれたので僕らも誓う。」 翠「私達はこれからずっと二人の幸せを祈るですぅ。」 蒼「だからずっと・・・朽ちない愛を君達は堪能してくれ。」 翠「幸せになりやがれですぅ。」 蒼「以上でスピーチを終わります。」 翠「聞いてくれてどうもありがとうですぅ。」 そう言い舞台を降りていく。 J「ありがとう・・凄く嬉しかった。」 水「私達はこの永遠をあなた達にも誓ったもの、ずっと楽しむわぁ。」 J「だからさ、約束しようぜ。」 蒼「何をだい?」 水「あなた達はずっと私達の幸せを祈ってくれる。」 J「だからいつか僕達にも君達の幸せを祈らせてくれ。」 翠「な・・・(///)」 蒼「ふふ・・・わかったよ。僕らはいつか君達に永遠を誓うよ。」 翠「蒼星石(///)」 水「まだあの人は私の心で生きてるわぁ。だからいつか私に誓ってねぇ。」 雛「翠星石達の永遠をー!」 蒼「勿論さ、いつか必ず誓うさ。」 翠「ち、近い内にでも誓うですぅ(///)」 蒼「さて、チャイムが鳴ったね、授業の準備をしようか。」 蒼星石がそう言うと皆は授業の準備をしだした。 -放課後 蒼「・・・。」 今日は翠星石が追試の為に一人で帰ってるのだ。」 蒼「(地獄なんてのはあるのだろうか・・・?)」 蒼「(あの二人は永遠を誓ったがジュン君が死んでそれで終わりかもしれない。)」 蒼「(生きる事とは平等じゃない、だからこそ死は公平な“無“かもしれない。)」 蒼「(僕にそんな事はわからない、けどジュン君が死んでよくわかる。)」 蒼「(ジュン君は死ぬ間際まで幸せだといってたそうだがほんとはもっと幸福になり“思い出“が欲しかったに違いない)」 蒼「(だから僕は死ぬまでに沢山の“思い出“を手に入れよう。)」 蒼「(奪 う ん だ 。 思 い 出 を 。 )」 そう考えてた蒼星石の手にはいつの間にか鋏が握られている。 蒼「(こんな事考えていたからもう“思い出“が欲しくなってきたよ・・。)」 蒼「(一人やるか。)」 蒼星石の目は再び狂気に満ちる。 蒼「(今日はコートを持ってないから違う方法でやらなきゃな。)」 なぜなら返り血を浴びる為である。 蒼「(そうだ・・・!)」 突然蒼星石は何かを思い浮かべる。 それと同時にバッグからもう1つ鋏を取り出す。 蒼「(さて・・・誰にするか・・・あの老人でいいか。)」 蒼星石はターゲットを睨むとある一定の距離を保ち 他に人が居なくなるのを待つ。 そしてやがて二人以外の人は居なくなる。 蒼「(よし・・!今だ!)」 蒼星石は思うと同時に鋏を二つ投げる。 老人は動きが少ないようなので比較的当たりやすいようで 鋏は見事に心臓と頭を貫いた。血が流れていく。 老「ヴ・・・あ・・。」 老人は倒れる。 蒼「あなたの“思い出“はもらったよ。」 そう言うと蒼星石は場から笑いながら逃げ出す。 顔には満面の笑みが広がっている。 蒼「ふふ・・・満足満足♪」 逃げると同時に蒼星石は帰路へとついた。 蒼「ただいまー。まだ帰ってないのか。」 家にはまだ誰もいないようだ。 翠星石はいつもこんな中自分を待っているのだろうか。 蒼「(今度からは早めに帰ろう・・。ごめんね翠星石)」 蒼星石はそう思うと夕飯を作り始める。 いつもは交代で作っていて今日は翠星石の番だが 蒼星石はいつものお詫び代わりに作り始める。 蒼「ふぅ~なんとか出来たね。」 蒼星石はそう言うとソファーに腰掛ける。 帰ってくるまで宿題をやっておこう。 そして数十分後、宿題が終わると同時に翠星石が帰ってくる。 翠「ただいまですぅ!」 大きな声をあげると同時にリビングに駆け込んでくる。 翠「あれ?なんで蒼星石が作ってるのですか?」 蒼「いつも遅く帰るお詫びだよ、今日一人で待ってたら君の気持ちがよくわかってね。」 翠「そ、蒼星石~。わかったなら次からは早く帰るですよ。」 蒼「ふふ・・わかってるよ。」 そんな会話をしながら二人は夕飯を食べていく。 その後は一緒にお風呂に入ったりしながら過ごしていく。 翠「蒼星石ー。今日は一緒に寝るですぅ。」 蒼「そうだね、襲っちゃおか?」 翠「ななななに言うです!今日は駄目です!」 蒼「残念だなー。今度の楽しみにとっておくよ。」 そう会話しながら二人は寝室にへと向かっていく。 蒼「じゃあおやすみ。」 翠「おやすみですぅ。」 シングルベッドで少々寝にくい中二人は眠りについた。 蒼星石の顔は幸せで満ちていた。 -土曜日 蒼「翠星石ー。でかけないかい?」 翠「なんでですぅ?」 蒼「前デートに行こうって言ったじゃないか。」 翠「なななにいってやがるですか!」 蒼「じゃあ行かないの?」 翠「い、行くに決まってるですぅ!」 蒼「そうこなくっちゃ。じゃあ“ローゼンメイデン“でも行こうか。」 そう言うと蒼星石は玄関へと向かう。 翠「ま、待つですぅ!」 翠星石も急いで後を追う。 蒼「あのマスターに会うのも久々になるね。」 翠「ですねぇ。あの兎店主今度は何をほざいてくれるかなぁですぅ。」 そんな会話をしながら双子はドアを開け喫茶ローゼンメイデンへと向かう。 翠「そういえば怖いですねぇ。」 蒼「何がだい?」 翠「通り魔に決まってるですぅ。」 蒼「あー確かにね。まぁ一人ずつ殺していってるのなら僕らは二人だし大丈夫だよ。」 翠「そうとも限らないですぅ。念には念を入れて走っていくですぅ。」 蒼「あ! ま・・待って翠星石!(僕が通り魔だからそんな事はないのにな・・。)」 そして二人とも急いで喫茶店へと向かう。 -ローゼンメイデン カランカランという鈴の音と共にドアが開かれる。 白「やぁようこそローゼンメイデンへようこそ。この紅茶はサービスだから・・・って。」 白「バカップルの二人じゃないですか。」 翠「バカとはなんです!バカとは!」 蒼「言い返す方もバカだよ・・・翠星石。」 白「まぁ紅茶でも飲んで落ち着いてくださいな。」 そう言う白崎の言う通りに双子はカウンターへ座り サービスの紅茶を飲み始める。 蒼「いつ来てもおいしいね。」 翠「ですぅ。兎店主の紅茶は美味ですぅ。」 白「はは。お褒めの言葉感謝します。」 白「しかし兎って言うのは・・。」 翠「兎は兎ですぅ。兎に何言っても兎なんですぅ。」 白「とほほ・・。」 マスターの白崎は好んで不思議の国のアリスなどの本や人形や薔薇を飾っている。 そんな中で兎の人形が多いので翠星石はいつからか兎と呼ぶようになる。 白「しかしお二方が最近来ないので忘れられたかと思いましたよ。」 蒼「ふふ・・・そんな訳ないですよ。寂しかったんですか?」 白「まぁ少しは。しかし別れとは出会いの始まり。」 白「死は復活の始まり復活は死の始まり表は裏、裏は表。」 白「一見逆に見える二つの意味も実は隣合わせなのですよ。」 白「あなた達と別れても新たな出会いがある。そう考えれば寂しさは少しは紛れますよ。」 翠「相変わらず御託を並べるですねぇ。」 蒼「けどいい詩のようじゃないか。」 白「ふふ・・しかし今言ったのは詩ではなく真理を述べただけですよ。」 蒼「あなたらしいですね。」 翠「変わってないですぅ。」 白「ふふ・・。」 蒼「そう言えば今新たな出会いがあるって言ったですよね?何か出会いはあったんですか?」 白「出会いも別れもこのローゼンメイデンには溢れていますよ。」 白「こういう稼業やってると色んなお客さんが居ていろんな出会いと別れが楽しめるのですよ。」 翠「もしかしてそれが理由ですか?この店を開いた。」 白「それも大きな理由ですね、他にも理由はあるんですがね。」 そう言いながら白崎は紅茶の葉を整理する。 蒼「そうだ、マスター。何か詩でもなんでも言ってくださいよ。」 翠「ですぅ。御託を聞きたいですぅ。」 白「ほうほういいでしょう、どんなテーマがいいですかね?」 蒼「んーそうだね、翠星石はどんなテーマがいい?」 翠「そりゃ勿論“愛と花“ですよ。」 蒼「君らしいね。」 白「では・・・そうですね。」 愛とは花のよう、綺麗な愛のような花もあれば儚い愛のような花もある。 では儚い花には愛のように永遠がないのだろうか?いや 見てくれる人がいる限りその心にどんな花にも永遠がある。 花は朽ちてもその姿はずっと満開で心に咲き続けるだろう。 だから心に花を、愛の花を。 白「ぱっと思いついたのですから出来はいまいちですよ。」 翠「いいですぅ。」 蒼「うん、相変わらずいい詩だよ。」 白「お褒めの言葉に感謝。」 翠「じゃあちょっと翠星石はトイレにいってくるですぅ。」 蒼「わかった、早く戻ってきてよ。」 翠「わかったですぅ。」 そう言い残し翠星石は走り去る。 蒼「ふぅ・・・そういやマスター。聞きたい事があるんだ。」 白「ほう・・・なんでしょうか?」 蒼「地獄って・・・あると思う?」 白「ほう・・・またそれはどういう事で?」 蒼「生きるって平等じゃないと思うんだ、それはマスターもわかるよね?」 白「ええ。確かに生とは平等ではありませんね。」 蒼「だからこそ死は平等だと思うんだ。そして平等故に死は“無“。」 蒼「死んだら何も無いと思うんだ、マスターはどう思う?」 白「ほうほう・・・その意見には同意できますね。」 白「死んだら何もない平等だからこそ生きるという事は不公平な事ですしね。」 蒼「やっぱりマスターもそう思うんだ。」 白「ええ。ただ・・・。」 蒼「ただ?」 白「もしかしたら地獄という物は作れるものかもしれませんよ。」 蒼「と言うと?」 白「“愛“があれば何でもつくれるんじゃないですかね。」 白「わかりはしませんがこの世界だって神様の愛によって出来たのかもしれません。」 白「だから極楽地獄にしろ無間地獄にしろ人の愛があれば作れるかもしれません。」 蒼「なるほど・・・。」 白「あのジュンさんはきっと極楽地獄で生きてますよ、あの人は水銀燈さんへの愛があった。」 蒼「ですかね・・。僕も彼が地獄で生きてる事を祈っときますよ。」 白「僕も・・・まぁ死んだらわかるかもしれませんがね。」 蒼「ふふ・・・まだまだわからないですよ。」 そう話してた所に翠星石が戻ってくる。 翠「何の話してたですかー!?」 蒼「ちょっとねw」 翠星石が帰ってき三人は暫く話す。 そして夕方にせまった頃に 翠「そろそろ帰るですぅ。」 蒼「そうさしてもらうか。マスター、お勘定。」 白「はい・・・ではお気をつけて、夕闇に飲み込まれぬよう・・。」 白「蒼星石さん。生の真理ははっきりとはしてませんが生とはかけがえのないものという事は確かです。」 白「それをお忘れにならないように・・。」 翠「?」 蒼「・・ですね。どうもありがとうございました。」 そう言い出て行く。 翠「ふぅ・・・久々に来たから楽しかったですぅ。」 蒼「だね、まだ元気で良かったよ。」 翠「そんなもうすぐ死ぬような言い方やめるですぅ。」 蒼「それもそうだねw」 二人は談笑しながら帰っていく、そんな中蒼星石はある事を考える。 蒼「(愛が地獄を作るかもしれないか・・。僕も翠星石との愛の地獄を作れるのか?)」 蒼「(もしそうなら今までやっていた“思い出奪い“はなんだったんだ?)」 蒼「(今まで僕は儚い人生の思い出を手に入れたい一心にやってきた。)」 蒼「(それも愛の前では意味の無い事だったのか?)」 蒼星石は帰る途中ずっと考える。しかし答えは見つけれなかった。 蒼「(くそ!くそくそくそ!どうなんだ!)」 蒼「(結局は何も死んでからじゃわからないじゃないか!)」 蒼「(愛を信じるだけじゃわからないじゃないか!)」 翠「蒼星石ー。何考えてるですぅ?」 蒼「ん?いや何でもないよ。そうだ翠星石。先帰っておいて。」 蒼「ちょっと買い物があるから。」 翠「私もついていくですぅ。」 蒼「そんな大した物じゃないよ。来てもつまらないだろうし先帰って夕飯作っておいてよ。」 翠「わかったですぅ。おいしい食事を作って待ってるですねぇ。」 そう言うと翠星石は家へと向かう。 蒼「ふぅ・・・。ストレスが溜まり過ぎたな・・。一人やっていこうか。」 蒼星石はそうつぶやくとターゲットを探す。 懐から鋏を取り出すと蒼星石は友達と別れ帰路へと向かう子供に目をつける。 蒼「隙だらけだしコートもいらないね。」 蒼星石は歩く子供にむかって走る。 そして背後にぴったりくっつくと鋏を心臓へと刺す。 そして素早く離れる。すると子供は声も出さず倒れた。 蒼「(・・・生きる事はかけがえのない事か・・・じゃあこの子は・・。)」 蒼「(な、何も考えるな!他人の事なんて気にしないでいいじゃないか!)」 そう考えていると蒼星石は人影に気付く。 通行人「ん・・?え・・?う、うわあああああああああああ!」 蒼「(しまった!)」 そう思うと蒼星石は子供の体から鋏を抜き取ると通行人へと向かう。 腰を抜かし倒れている通行人の眉間にそれはあたる。 蒼「ちっ!逃げなきゃ!」 そう言いながら蒼星石は急いで帰路へついた。 翠「何買ってたですかぁ?」 蒼「君に花をプレゼントしようとしたんだけどいいのが無くてね。」 翠「そ、蒼星石(///)」 蒼星石は家に着いてようやく落ち着いてきたようだ。 蒼「ちょっと具合が悪いみたいだから先に寝るよ・・。」 翠「大丈夫ですかぁ?あの兎の紅茶が悪かったんじゃ・・。」 蒼「それはないよ。疲れだと思うけど・・。じゃあおやすみ。」 翠「しっかり寝るですよー。」 翠星石のそんな言葉を後ろに蒼星石は部屋に入り電気を消してベッドに潜り込む。 蒼「(こんなミス初めてだ・・。僕の心が迷ってるのか?)」 蒼「(これからどうすればいいかを・・。)」 蒼「(“思いで奪い“をしたのに喜べない・・。)」 蒼「(今さらになって抵抗を覚えたのか?)」 蒼「(僕が奪った命もかけがえのない生・・。それを奪ってた僕はなんだんだ?)」 蒼「(地獄があるとしたら・・・どうなんだ。彼らは地獄で僕を憎むのか?)」 蒼「(限りある生を堪能するのにこれは間違ってるのか?)」 蒼「(・・・寝よう。ゆっくり考えるとしよう。)」 蒼星石は眠りについた。しかしいつもと違い 喜びには満ち溢れてはいなかった。 その日通り魔被害者が10人に達したニュースが流れていた。 -翌日の朝 蒼「結局眠れなかったな・・。」 蒼星石はそう呟くとベッドから起き上がる。 翠星石に少し旅に出ると書いた置手紙を残し蒼星石は ドアを開け、一日だけの自分探しの旅へと出掛けた。 向かう場所は近くにある大きな公園。 暫く歩き公園に着くと芝生へと寝転がり蒼星石は考え始めた。 蒼「(僕のやってきたのはなんだったんだ?)」 蒼「(生きる事はかけがえの無い事、短い人生を堪能しようと“思い出奪い“を始めた。)」 蒼「(それは果たして正しかったのか?)」 蒼「(地獄があるだなんてわからない。地獄が愛で作れるかなんてわからない。)」 蒼「(愛で地獄が作れるなら僕は一体何をやってきたんだ?)」 蒼「(作れるとしても僕は何をやってきたんだ?)」 蒼「(作れたとしても生はかけがえの無い物には違いない。)」 蒼「(僕はそれを奪ってきた。)」 蒼「(それな何はどうあれ許されざる事なのか?)」 蒼「(僕は極楽地獄でなく無間地獄へ行く運命なのか?)」 蒼星石はその日ずっとその事を考えていた。やがて答えが出る。 蒼「(やはりかけがえの無いものを奪うのは許されざる事なのかな・・。)」 蒼「(ジュン君が仮に殺されたとしたら悪いには殺した方と僕は思う・・。)」 蒼「(それは僕が殺した人も同じ、死んだら周りの人も悲しませる・・。)」 蒼「(やはり・・・僕は罪人だったんだな・・。)」 蒼「(自首しよう。そして僕は罪を償いジュン君がいる地獄へと落ちれるようにしよう。)」 蒼「(信じよう、愛は地獄だって作り出せる・・・地獄はあると。)」 蒼星石は今までの罪を償うべく警察へと向かう。 蒼「(ごめんね翠星石・・。一日限りの自分探しの旅は長い償いの旅にへとなりそうだ。)」 その時蒼星石はパトロールをする警察官を見つける。 こんだけ通り魔事件があればそりゃパトロールは厳しくなっている。 折角だ。この人にでいいから自首し警察へと連れてってもらおう。 蒼「すいませーん。」 警「なんですか?この辺は危ないですよ。通り魔がいるのですから。」 蒼「その事でお話が・・。」 蒼星石は全てを打ち明ける。 自分が今まで十人もの人を殺してきた通り魔だという事。 そして自首するので警察に連れて行って欲しい事。 蒼「という訳なんです・・。僕を警察に連れてって下さい。」 警「・・・わかった。」 パトロールをする警察官は手錠を蒼星石へとかけ連行する。 警「・・・だよな。」 蒼「へ?」 警「お前が罪をやった証拠は今の自白であるけど俺がお前を犯したってばれないんだよな!」 蒼「!」 すると警察官は蒼星石を襲い始める。 警「償いと思って大人しく犯られてろ!」 警察は蒼星石を押し付ける。 周りはすっかり暗くなり助ける人はいない。 蒼「や・・・やめて!」 警「そう言われてやめるのは馬鹿のする事だ!」 警察官は蒼星石の服を脱がそうとする。 必死に抵抗するが手錠をされてるのでうまく動けない。 蒼「や・・やめて!」 やがて警察官は上のTシャツを脱がし終える。 その時に蒼星石の服ごしに蒼星石は蹴りをいれる。 油断してたのだろうかその蹴りは鳩尾へ入る。 警「うっ!貴様・・。」 警察官はうずくまって震えている。 その隙に蒼星石はズボンの後ろポケットから鋏を取り出す。 手錠をされてて使いにくいがしょうがない。 蒼星石は腕を前に突き出して走り出した。 そして倒れている警官の頭へと突き刺す。 さらに突き刺さった後それを豪快に上に振り上げる。 警官の頭は真っ二つになり蒼星石の体は血まみれになる。 蒼「はぁ・・はぁ・・・どうして・・・償おうと思った時に・・。」 そう言い警官の腹へと鋏を突き刺すと警官は仰向けに倒れる。 蒼星石は涙声になり嘆く。 その時後ろから声がする。 蒼「(通報されるな・・・。けどいいんだ、これで・・・これで・・。)」 しかし蒼星石はここで疑問に思う。 聞こえた声が聞きなれた声だったからだ。 そう思いぱっと振り向く。 翠「あ・・あ・・蒼・・星石・・。」 そこには旅をすると書かれた手紙を見つけ心配で探しに来た我が愛しの恋人が居た。 蒼「す・・・翠星石・・・これは・・。」 翠「あ・・あ・・うわああああああああああああ!」 翠星石は泣きながら蒼星石を叩く、叩く。 蒼星石はじっと殴られていた。 翠「なんで・・なんで蒼星石が・・・!」 翠星石は問い詰めた。 蒼星石は答えた。 ジュン君が死んでから生きる事が儚く思え“思い出奪い“をした事。 通り魔は自分だと言う事・・。 過ちに気付き自首しようとした事・・。 そして今警官にそれを言うと犯されそうになり殺した事・・。 全てを話した。 蒼「御免ね・・・翠星石・・・御免ね・・・。」 翠「蒼星石は馬鹿ですぅ・・・ひっく。」 翠「何があっても殺す事は人を不幸にするから駄目・・ですぅ・・うう・・。」 翠「思い出は手に入れるものじゃないですぅ・・・ひっく。“作るからかけがえが無いんですぅ“・・・ひっく。」 翠「人を殺して幸せになろうなんて・・・ひっく・・・馬鹿のする事ですぅ・・。」 蒼「御免ね・・御免ね・・・ほんと馬鹿だよ僕・・。」 いつの間にか蒼星石も泣いていた。 翠「うう・・・最後に反省してくれたのが・・・少しは嬉しいですぅ・・。」 翠「けどこんな下衆のいる警察になんかに・・妹は出さないですぅ・・。」 翠「最後に・・・姉妹として・・・双子として・・・蒼星石を殺して自分も死ぬですぅ!」 そう言うと翠星石は警官の腹から鋏を抜き取り蒼星石の所へと歩く。 翠「・・ひっく・・・地獄で・・・また会うですぅ・・。」 蒼「す・・・翠星石?」 鋏は振り落とされる。 -殺す気は無かった。 ただ反射的に鋏を振り下ろす手をずらした。 そして鋏は鋏を持つ翠星石の腹へ- 蒼「す・・・翠星石!」 翠「ほんと・・・お前は馬鹿ですぅ・・。」 蒼「そんな気は・・・そんな気は無かったんだ!」 翠「ふふ・・・わかってるですよ・・・・今のはたまたまだって・・・。」 蒼「翠星石・・・御免・・・御免・・・。」 翠「なら約束をするですぅ・・・・。」 蒼「ひっく・・・・なん・・だい・・?」 翠「罪を償ってきたらまた・・・地獄で・・会うですぅ・・・。」 翠「それまで暫く・・・さよならですぅ・・・。」 翠星石の体から力が抜ける。 蒼「翠星石?嘘だろ?嘘と言ってくれ!うわあああああああああああああああ!」 蒼星石は泣いた。泣き続けた。 その後蒼星石は警察署にへと向かう。 血まみれの姿で鋏を持った蒼星石が警察の入り口で呟く。 蒼「僕は・・・罪深き通り魔です。自首しに来ました・・。」 そう呟くと蒼星石は走り出す。 すぐさま警察は蒼星石を追う。 蒼星石は公園の恋人の前で立ち止まった。 周りは警察によって包囲されている。 蒼「翠星石・・・僕は自分の地獄で償いの“哀歌“を歌い続ける。」 蒼「“哀歌“を歌い終えたら・・・君の地獄へと行くよ。」 蒼「ちょうど僕で13人目・・。まるでキリストの処刑だな。」 すでに死んだ翠星石を抱きしめながら言う。 そして 蒼「さよならこの世よ・・・!僕は地獄で償いの哀歌を歌う!」 警察に囲まれる中蒼星石は鋏を握り自分の胸へと突き刺す。 周りで警察の喧騒が聞こえるがやがて聞こえなくなっていく・・・。 世間を騒がした通り魔事件は13人目の死亡者、通り魔自身という終わり方となる。 蒼星石は地獄で歌い続けた。 自分を苦しめ罪を悔い何年も何十年も 自分の地獄で償いの“哀歌“を歌い続けた。 そして気が遠くなるような年月が過ぎ 蒼星石は歌を歌い終え約束を果たしに行く。 久しぶりだな 久しぶりぃ? 久しぶりジュン君、水銀燈、そして愛しの人よ 待ちくたびれたですぅ!罪は償ったですか!? 勿論、約束は守る主義だからね そして僕はもう1つの約束も果たしに来た 翠星石、僕は君を愛している 君との永遠を約束どおり誓いたい そ・・・そんなのOKに決まってるですぅ! ふふ・・・じゃあ早速誓ってよぉ? ああ、約束通り僕らに誓ってくれ うん・・翠星石、僕は君を・・・永遠に愛する 翠星石もですぅ・・私も愛してるですぅ そう言うと二人の唇が重なる この口付けは永遠へのスタート “哀歌“を歌った哀しい乙女の愛が終わらない道を歩み始める fin

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