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=さらば!我が愛しき日々よ=第十八話」(2006/05/27 (土) 11:50:41) の最新版変更点

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ジ「ううん、何だよ・・・せっかく人が寝てるっていうのに・・・。」  ジュンは目をこすり、枕元に置いてある眼鏡を手探りで取り、掛ける。 蒼「ジュン君。翠星石の事なのだけど・・・。いいかな?」  蒼星石はジュンの顔を覗き込む。 ジ「・・・勝手にしろ。」  ジュンは窓からどんよりとした空模様を見る。 蒼「ありがとう。えっと、ジュン君は翠星石の事をどう思っているのだい?」 ジ「え・・・?」  ジュンは翠星石の事でまた説教を喰らうのかと思っていたが、蒼星石の意外な問いに、  疑問を隠せない。 蒼「そのまんまだよ。翠星石をどう思っているかって。」  蒼星石は、無理に作り笑いをした。  ジュンにも、その笑顔は無理をしていると、直感で分かった。   ――――悔しい。翠星石に、先を越されそうで。 ジ「どうっていうか・・・、口が悪い毒舌家みたいな感じ。」  あごに手を当てているジュンは、蒼星石を傷つけないために、わざと嘘をついた。  ジュンは、翠星石の事を正直かわいいと思っている。まあ、口さえよければの話だが。   ――――僕は・・・なんでいつもこうなのだろう・・・。  蒼星石は、ジュンが嘘をついている事は見抜いていた。 蒼「そう・・・。ねえ、ジュン君、翠星石を探しにいってあげて。」  蒼星石は後ろに向き直り、唇をかみ締め、声を絞り出す。 ジ「でも・・・僕はあいつにひd」 蒼「いいから行ってあげて!!」  蒼星石の突然の声に、ジュンは驚く。 ジ「え・・・あっと・・・その・・・。」  ジュンは動揺し、おろおろする。   ――――姉さん・・・。ジュン君が迎えに行くよ・・・。 蒼「君が行くのが、姉さんにとって一番いいんだ。だから、行って。」 蒼星石はゆっくりと呼吸を整える。 ジ「わ、わかった。」  ジュンはパッと起き上がりクローゼットへ歩き、着替える。  体はまだ正直痛い。しかし、この部屋からは、すぐに出なければならない。  ジ(蒼星石・・・) ジュンには分かっていた。蒼星石は絶対にこちらを向かないと。  なぜなら、今の蒼星石は涙を堪えるのが精一杯だと知っていたから。   手を強く握り、下を向いている。 ジ(ごめんな、蒼星石。僕が弱虫なばっかりに・・・)  ジュンは部屋を出る。  ジュンの廊下を走る音と、いつの間にか降り出した、蒼星石の代わりに泣いているような空からの雨が、窓を打つ音。  蒼星石一人の部屋に二つの音が鳴り響く。  ジュンが遠ざかれば遠ざかるほど、雨は強さを増すだろう。   蒼「ううん、謝らなくいいよ・・・僕は、大丈夫だから・・・。」  蒼星石がそうであるように。    ジュンは一階に降りると、リビングへ入り、キッチンへと向かう。  リビングに居る六人は、テレビに夢中、昼寝、ティータイムと相変わらず好き勝手している。 真「行くのね、ジュン?」  真紅はカップを片手にジュンを見る。 ジ「別に。ちょっと外の空気を吸いに行くだけだよ。」  ジュンは魔法瓶を取り出し、熱湯を注ぎ、ホットココアを作る。 真「あら、私翠星石の元に行くとは言っていないわよ?」  真紅は不敵な笑みを浮かべる。 ジ「うるさい。とにかく、留守番頼んだぞ。」  ジュンは魔法瓶を持ち、廊下に出ようとする。 銀「頑張ってねぇ~。」 薔「・・・ハッピーエンド。」 雪「しっかりしてくださいね。」  起きている三人は、笑みを浮かべながらジュンを見る。 水銀燈と雪華結晶はソファーの上から、薔薇水晶はテーブルの下から。 ジ「・・・留守番、しっかりやれよ?」  ジュンはそれだけ言うと、リビングから出て行った。 雪「正直でないですわね。」  雪華結晶はフフ、と笑う。 しかし、それぞれの本心は違った。  ―――嫉妬心、羨み、悔しさ。 これらが、それぞれの中に回っていた。  しかし、決して憎むような感情は抱かない。愛する姉妹のためだから。  ジュンは小さめのナップサックに魔法瓶を入れ、玄関を出る。     ―――雨は激しさを増し、雷が鳴り響く。 ジ「くっ・・・翠星石・・・。」  ジュンは傘をさし、走り出す。  ―――自分が傷つけた、か弱い子猫のために。薔薇姉妹が愛する姉妹のために。   真「さて、蒼星石の所に向かいましょうか。」  真紅は立ち上がり、リビングを出ようとする。  後の三人は、テレビを見ている。 銀「あの娘、強そうで弱いからねぇ。」  水銀燈は、テレビから目を離さずに真紅に話しかける。 真「そうね。でも、そのために私達が居るのだわ。」  真紅はリビングから出て行った。  リビングからは、テレビの無機質な音声、窓を叩く雨、時折吹く強い風、雷の音が、  ただ流れるだけだった。 銀「そうかもしれないわぁ。でも、ジュンの為にも居るって事、忘れないでねぇ。」  既に出て行った真紅に、水銀燈は静かに言い放った。  真紅は階段を上り、ジュンの部屋に入る。 真「蒼星石・・・。」  蒼星石は、ジュンが出て行った時と同じ姿勢のままで、そこに立っていた。 蒼「やあ・・・真紅か・・・。」  蒼星石はゆっくりと向き直り、真紅を見る。  蒼星石の顔は、悲しみと嬉しさを混ぜたような、くしゃくしゃな顔をしていた。 蒼「ねえ、真紅・・・。」  蒼星石は、ゆっくりと口を開く。 真「何?蒼星石。」  真紅は優しく蒼星石を見つめる。 蒼「何で・・・僕ってこう・・・いつも空回りするんだろう・・・。」  蒼星石は苦笑いになっていた。 真「そうね・・・。あなたは優しすぎるわ。蒼星石。」  真紅はそっと蒼星石を引き寄せ、抱きしめる。 蒼「しん・・・く?」 真「泣きたいのなら、今泣きなさい。気の済むまで・・・。」  真紅は蒼星石の背中をゆっくりと擦る。 蒼「う・・・うああ、・・・うう・・・ヒグ、うわああん。」  蒼星石は泣いた。雨より大きい大粒の涙を流し、雷より儚い泣き声で。  真紅の温かい胸の中で。

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