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「―如月の頃―」(2006/05/18 (木) 21:41:03) の最新版変更点
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翠×雛の『マターリ歳時記』<br>
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―如月の頃― 【2月3日 節分】<br>
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二月――後期の期末試験も無事に終わり、学生達の長い春休みが幕を開けた。<br>
受験シーズンと重なるため、二月初頭から四月の中頃までが、休暇となるのだ。<br>
例外として、補習やら卒論研究などの理由で、他の学生より少しだけ長く大学<br>
に通っている者が居たが、殆どは、この長い休暇を思い思いに過ごすのである。<br>
ある者は交遊にうつつを抜かし、また、ある者はアルバイトに精を出した。<br>
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翠星石は、専ら後者の方であった。<br>
祖父母の家は自営業で、世間のお父さん方の様に、定年退職がある訳ではない。<br>
けれど、時計屋という職業柄、安定した収入が望めないのも、厳然たる事実だ。<br>
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彼女は自発的にアルバイトをして、教科書代や交通費を自給自足するばかりか、<br>
学費の補助として、月々五万円を家に納めていた。<br>
それで事足りているのは、国立大に進んだからである。<br>
私立大の学費となると、アルバイト程度で払える額では無い。<br>
それ故に、私立大に行くぐらいなら進学を諦める覚悟で、<br>
翠星石は一月のセンター受験に望んだのだった。<br>
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「あれから、もう三度目の冬を迎えたですね。早いもんです」<br>
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アルバイト先の休憩室で、翠星石は雛苺と共に、短い休息を取っていた。<br>
今日は金曜日。時刻は、そろそろ午後五時を回ろうとしている。<br>
夜の帳が降り始めて、道行く人の足が、繁華街へと流れ始める頃だ。<br>
何気なく覗き込んだ窓の外は、小雨模様。<br>
ガラスにまとわり付いた雨粒が二つ、溶け合い、流れ落ちて行く。<br>
まるで、人の世の縮図を眺めているようだと、翠星石は思った。<br>
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出会いは偶然。<br>
因縁によって結びついた者達が流れ着くのは、幸福な理想郷か。<br>
はたまた、未来永劫まで続く愛執の闇か。<br>
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誰の心にも、鬼は棲んでいる。そいつは常に、外に出る機会を虎視眈々と狙っているのだ。<br>
少しでも隙を見せれば、弱い心は、鬼に食われてしまうだろう。<br>
そうなれば、逃げられない。欲望のままに、ただ、闇へと落ちて行くだけ。<br>
坂道を転がり落ちる、石ころのように――<br>
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(私と蒼星石は……この先、どうなってしまうです)<br>
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黄昏空に降りしきる雨を眺めながら、翠星石が詮無いことを考えていると、<br>
雛苺がコーヒーの紙コップを片付けつつ、声を掛けてきた。<br>
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「翠ちゃん、そろそろ休憩時間が終わるのよ」<br>
「ん? もう、ですか」<br>
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壁掛け時計を見ると、確かに、そんな時間だった。<br>
終業まで、もう一踏ん張り。翠星石は作業着の襟を正して、気を引き締めた。<br>
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「さぁ、気合い入れて行くですよっ!」<br>
「うぃー! なのぉ」<br>
「あ、そうそう。ところで雛苺は、今夜って、何か予定が入ってるですか?」<br>
「うゅ? 無いけど……どうして?」<br>
「今日は節分ですぅ。たまには、私の家で豆を撒いてみないですか?」<br>
節分とは、季節の変わり目の意味。立春、立夏、立秋、立冬の前日を指す。<br>
それが、今では立春の前日だけを節分と呼ぶようになっていた。<br>
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「クジ引きで、今年はおじじが鬼の役になったです。日頃の鬱憤を豆粒に込めて、<br>
思いっ切りブチかますですぅ」<br>
「それは……ちょっと可哀想かも、なの。でも、愉しそうなのよー」<br>
「じゃあ、参加するです。ついでに、家で夕飯も食べてくと良いですぅ」<br>
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柴崎家では毎年、こんな賑やかな豆まきを催していた。<br>
ちなみに、去年の鬼役は蒼星石。<br>
翠星石は改造エアーガンで豆をフルオート連射して、蒼星石をイヂメたのだ。<br>
勿論、その晩は思いっ切り、心のケアをしてあげた。<br>
――――寝床の中で。<br>
今夜の『祭り』に想いを馳せ、翠星石は、にたぁ……と口の端を歪ませた。<br>
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――そして、仕事を終えて帰宅。<br>
雛苺と翠星石、祖母の三人で簡単な夕食を摂った後、翠星石は戦闘準備を始めた。<br>
祖父は、彼女たちが帰宅する以前に早い食事を済ませて、雲隠れしたらしい。<br>
これは形を変えた鬼ごっこ。但し、追う者と、追われる者の立場が真逆だけれど。<br>
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「さあ、狩りの時間ですぅ。いっひっひっひ」<br>
「翠ちゃん、趣旨が違ってるのよー」<br>
「気にするなです。あ、それとですね」<br>
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翠星石は用心深く周囲を見回して、雛苺に、こっそり耳打ちした。<br>
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「掛け声は『福は内、鬼も内』と言うです」<br>
「うょっ?! 鬼も……内ぃ?!」<br>
「昔、柴崎家の御先祖が、鬼に頬の瘤を取って貰ったそうですぅ。<br>
それからと言うもの、柴崎家では鬼にも礼を尽くすしきたりになってるです。<br>
もしも『鬼は外』だなんて罰当たりなコトを言ったらぁ――」<br>
「う……い、言ったら?」<br>
「――あんた地獄に堕ちるわよ、ですぅ」<br>
「じ、地獄っ?!」<br>
「そればかりか、おじじの頬に瘤が出来ちまうです。コワイですぅ~。<br>
おバカ苺は、うっかり口走りそうですね。精々、気を付けやがれです」<br>
「あ、あう……ど、努力はしてみるのよ」<br>
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実際、鬼の字が付く土地によっては、豆まきの際に『鬼も内』と言ったりする。<br>
これは、鬼が集落の守護神であったり、神社の祭神であったりするためだ。<br>
が、騙されてはいけない。翠星石の話は、いつもの出任せである。<br>
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柱に掛けてある古びた鳩時計が、くたびれた声(殆どフクロウ)で八回、鳴く。<br>
翠星石は、豆を詰めたドラムマガジンを、ザクマシンガンにセットした。<br>
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「戦闘開始ですっ。鬼は、この家の何処かに隠れてるから、気を付けるです」<br>
「う、うぃ!」<br>
「と言うワケだから、雛苺が斥候を努めるです。援護は任せとけですぅ」<br>
「!? そ、そんなの酷いのー!」<br>
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精一杯の拒否をしたものの、翠星石に豆入りの升を手渡されて、押し切られてしまった。<br>
渋々と、升を手に先行する雛苺。その後ろに、翠星石が続く。<br>
互いに簡単なジェスチャーで意志の疎通を図りながら、慎重に進んでいった。<br>
食堂を出て、居間を抜け、仏壇を安置している部屋に踏み込む。<br>
室内には誰も居ない。冬の冷気と、夜の静寂が、空間を支配していた。<br>
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「……押入が怪しいですね。雛苺、襖を開けるです」<br>
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腕を伸ばし、指を掛けた雛苺は、恐る恐る……ゆっくりと……襖を開いていく。<br>
心臓がドキドキして、妙に息苦しい。きっと、グズグズしてるからだ。<br>
雛苺は意を決すると、一気に襖を開いた。<br>
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押入の中には、膝を抱えて蹲った鬼が、一匹。<br>
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「悪い子は居ねぇが――っ!」<br>
「ひゃああぁっ! ふふふふ、福は外なのーっ!」<br>
「ちょっと待ちやがれですっ。今、縁起でもねぇこと言いやがったですぅ!」<br>
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突如、押入から飛び出してきた鬼の顔面に、雛苺は豆の入った升を投げ付けた。<br>
鬼の面に檜の升が当たって、乾いた音を立てた。畳の上に豆が散らばる。<br>
祖父は面の下で「痛たたた」と呻いた。升をぶつけられれば、痛くて当然だ。<br>
慌てて鬼の面を外す元治老人の顔を見るや、雛苺は喉の奥から悲鳴を搾り出した。<br>
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「ひ、ひぃぃ。お爺さんの頬に……ここ、こ、瘤が出来てるのよー」<br>
「ウソっ!? まさか、ホントに呪いですかっ?!」<br>
「ののの、呪……お爺さんに呪いの瘤が…………がくっ」<br>
「ちょっ! なに気絶してるです!」<br>
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張り詰めていた緊張の糸がプッツリと切れたらしく、雛苺の身体が崩れ落ちる。<br>
エアーガンを投げ捨てて雛苺を支えた翠星石の背後から、祖母の暢気な声が届いた。<br>
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「あらあら、お爺さん。だから、無理はしない方が良いと言ったのに」<br>
「? どういうコトです?」<br>
「お爺さん、昼間に親知らずを抜いてきたのよ」<br>
「……それで、あんなに腫れてるですか。なぁ~にバカやってるです」<br>
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「いやはや、面目ないのう。痛たた」<br>
「もう良いから、おじじは鎮痛剤を飲んで、とっとと休むですぅ」<br>
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祖父のことは祖母に任せて、翠星石は雛苺を居間に運んだ。<br>
座布団を何枚か並べて敷き、その上に横たえる。<br>
雛苺の頭の下には、二つ折りにした座布団を挟み込んでおいた。<br>
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程なくして、雛苺は目を覚ました。柔道でする様に、活を入れてみようかとも<br>
考えたのだが、生兵法は怪我の元。素人が下手にやっても、効果が望めないばかりか、<br>
却って悪化しかねないので止めておいたのだ。賢明な判断だった。<br>
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「うょ? ヒナは、何を――あ! お爺さんは? お爺さんは平気だったの?」<br>
「ええ。もう平気ですぅ。なぁんか、悪いことしたですね。折角、来てくれたのに」<br>
「ううん。良いのよ、別に。ちょっと……驚いちゃったけど、愉しかったの」<br>
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雛苺の朗らかな笑顔に救われた気がして、翠星石は、ふ……と頬を緩ませた。<br>
楽しんで貰えたなら、なによりだ。祖父も喜ぶだろう。<br>
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「実は、この行事って、おじじの発案なのです。私と蒼星石が、まだ幼い頃、<br>
この家に引き取られて来たのは知ってるですよね? 突然に両親を亡くして、<br>
私たち姉妹は悲しみに暮れるばかりで、とても笑える心境じゃなかったです」<br>
「……それで、こんな催し物を?」<br>
「うん。私たちの笑顔を取り戻すために、おじじも、おばばも色々と気を遣って<br>
くれたです。自分たちだって、息子夫婦を失って泣きたい筈なのにね」<br>
「きっと、それだけ翠ちゃんと蒼ちゃんの事を大切に思ってるのよ。<br>
それは、とっても素晴らしいことなの。翠ちゃんは、お爺さんとお婆さんに、<br>
もっと感謝しなきゃダメなのよー」<br>
「そんな事、おバカ苺に言われなくても解ってるですよぅ」<br>
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翠星石は、指で雛苺の額をツン……と軽くつついて、優しく微笑みかけた。<br>
憎まれ口こそ叩いているものの、不思議と、素直に笑える自分が居る。<br>
知らず知らずの内に、雛苺に対して心を開いていた。<br>
蒼星石が側に居てくれた頃は、こんな気持ちになる事なんてなかったのに。<br>
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(まさか……蒼星石は、私の自立を促すために……?)<br>
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彼女の真意は、今もって把握し切れていない。メールでは、如何にも自分の為と<br>
言わんばかりの内容を書いてくるが、とても蒼星石の本心とは思えなかった。<br>
だって、二人は双子の姉妹。言葉に頼らなくても、伝わり合う何かが有ったから。<br>
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「さ、もう夜も遅いし、送って行くですよ」<br>
「うん。ありがとなのっ」<br>
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雛苺の身支度が済むのを待って、翠星石は祖母に、雛苺を送ってくる旨を告げた。<br>
夜中だけれど、近所と言う事もあって、祖母は心配なさげだ。<br>
小雨は、相も変わらず降り続いている。二人は足早に、雛苺の家に向かった。<br>
また明日……と、別れの挨拶を済ませて、翠星石は帰途に就く。<br>
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「帰ったら、メールで蒼星石を問い質してやるです」<br>
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さっきの想いを胸に、傘を差しながら、雨降りの交差点に近付く翠星石。<br>
正面から一台の大型バイクが近付いてくるを見て、少しだけ路肩に寄った。<br>
突然、交叉する道から野良猫が飛び出し、バイクは避けようとして大きくバランスを崩した。<br>
濡れたマンホールの蓋でスリップしたのだろうか。横転した車体が、翠星石へと、路面を滑ってくる。<br>
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――降りしきる雨の夜空に、傘がひとつ咲いて、散った。<br>
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『保守がわり番外編 まだ続いていた・・・』<br>
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「ど、どうしちゃったの、翠ちゃんっ!?」<br>
「脳ミソを食うと痛みが治まるですぅ。ひぃ~っひっひっひぃ!!」<br>
「ひぇーん。痛くしないで、なのー」<br>
「およしなさいっ! いじめは許しませんよ!!」<br>
「む・・・出やがったですね、オバンバっ!」<br>
「・・・オバンバって。なんて事を言い出すのかしら、この娘は」<br>
「お婆さん、グッドタイミングなの。良く来てくれたのっ!」<br>
「あら、そうだったの? 実はね、お爺さんと一緒に来てみたのよ」<br>
「おじじと? おじじは何処に?」<br>
「・・・あそこでしょげ返っているわよ」<br>
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祖母が指差した先には、ソファに腰を降ろし、ガックリと項垂れる祖父の姿。<br>
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「どうしたです、アレ?」<br>
「頭にねぇ、育毛泥パックをしたら・・・その泥がコチコチに固まっちゃって。<br>
無理矢理に引き剥がしたもんだから、生え始めていた産毛が全部ぬけたのよ」<br>
「育毛のハズが脱毛ですか・・・そりゃご愁傷さまですぅ。おじじ、元気だすですよ」<br>
「おお、翠星石。元気を出そうにも、心と頭皮が痛くてのう」<br>
「・・・・・・このパターンは、もしや・・・」<br>
「翠星石・・・脳ミソ、くれんか?」<br>
「やっぱり、ですぅ――――っ!!」<br>
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・・・そろそろ糸冬。<br>