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「「あなたを呼ぶ」四話」(2006/05/11 (木) 20:16:24) の最新版変更点
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世間で言うところのゴールデンウィークだ。<br>
でも、僕は、いつも通りのバイト以外は、<br>
特に予定を入れていない。<br>
帰ろうかなとも思ったんだけど、バイトを休めないしな。<br>
別にコレといって、欲しいものもないから、<br>
いつも通りのバイトで十分お金は間に合う。<br>
それに折角の休み。家でじっくり休んでいたいもんだろ?<br>
それでなくても、引越しやら、なれない環境やらで疲れてるしな。<br>
TVで渋滞50kmとか見るたびに思うよ。<br>
何が楽しくてそんなのやってるんだろ?ってね。<br>
水銀燈は、……いっぱい予定はいってそうだな。<br>
いろんな人から誘われそうだし。<br>
コンコンとノックの音がする。<br>
誰だよ、こんな休み中に真面目に働いてるバカなセールスは?<br>
そう思って、扉を開けてみると、水銀燈が立っていた。<br>
たぶん、僕は、すごいマヌケな顔をしていたんだと思う。<br>
銀「あらぁ、何その顔?私、変かしら?」<br>
ジ「いや、まさかGW中に尋ねてくるとは思わなかったから。」<br>
銀「ふぅん。予定がギッシリ詰まってるように見えたわけね。」<br>
ジ「うん。水銀燈、もてるだろうし。」<br>
水銀燈は、少し嬉しそうに見えた。<br>
銀「おあいにく様、予定らしい予定はないわよぉ。<br>
紅茶淹れてくれない?」<br>
ジ「うん。」<br>
僕は、ヤカンの火をかける。<br>
ふと、水銀燈に目を向けると、<br>
僕を眺めていた。<br>
ジ「なんだよ?コッチ見て?」<br>
銀「ねぇ、あなた服飾の勉強してるわりには、<br>
自分の服に無頓着じゃなぁい?」<br>
ジ「そうかな?こんなものかなと思ってるんだけど。」<br>
僕自身、服装には、気をつけれているつもりだ。<br>
そうでないと、勉強しているものとして、まずいだろ?<br>
まぁ、服装につぎ込むお金はないから、安物ばっかりなのは認めるけど。<br>
ジ「はい。紅茶をどうぞ。」<br>
銀「ありがと。」<br>
水銀燈は、おいしそうに、紅茶を飲む。<br>
やっぱり、おいしそうに飲んでくれると、嬉しいもんだな。<br>
銀「それで、さっきの話の続きだけどね、<br>
私が服、見立ててあげてもいいわよぉ?」<br>
ジ「……でも、お金もないし。」<br>
頼んでもみたいけれど、お金の余裕がないことは事実だ。<br>
銀「じゃぁ、私の買い物に付き合ってくれないかしらぁ?」<br>
ジ「……ようするに、荷物持ちが欲しいだけか?」<br>
銀「……まぁ、そんなところね。<br>
いつものお礼もかねて、ご飯くらい食べさせてあげるわよ?」<br>
ジ「……わかったよ。どうせ暇だし。」<br>
銀「じゃあ、ちょっと待っててねぇ?準備してくるから。<br>
あなたも、もう少しマシな服でも選んでなさい。」<br>
そういって、水銀燈は、僕の部屋を後にした。<br>
ジ「……もう少し、マシな服ったってなぁ。」<br>
とりあえず、服を漁ってみて、<br>
もう少し、マシそうな服にしてみる。<br>
あんまり、変わらないような気もするけど。<br>
銀「おまたせぇ」<br>
彼女は、かわいい大きめのフードつきの服に着替えていた。<br>
もうちょっと、カッコイイって感じの服装をイメージしていたので、<br>
ちょっと意外だった。<br>
銀「あらぁ、おかしいかしらぁ?」<br>
ジ「や、良く似合ってる。かわいい。」<br>
銀「ふふっ、ありがと。」<br>
少し顔を赤らめて、そう答えた。<br>
銀「あなたの服装は……まぁ、許してあげようかしら。」<br>
まぁ、許してもらえるのなら、マシになってるのかな。<br>
銀「それじゃぁ、行きましょうかぁ?」<br>
ジ「どこに、行くんだ?<br>
あんまり人が多いところはイヤだぞ。」<br>
銀「私も、そんなところ嫌よぉ。<br>
人は少ないけど、いいお店よ。」<br>
ジ「穴場ってことか?」<br>
銀「まぁ、そんなとこねぇ。<br>
ほら、行きましょう?」<br>
そういいながら、腕を組んでくる。<br>
ジ「おわっ!」<br>
思わず、声を上げて驚いてしまった。<br>
水銀燈はおかしそうに笑いながらいった。<br>
銀「ふふっ、もしかして、こういう風にされるのはじめてぇ?」<br>
ジ「悪いかよ?とりあえず、放してくれ?」<br>
銀「あらぁ……こういうのキライ?」<br>
少し残念そうに聞いてきた?<br>
上目遣いと、服装があいまって、かなりかわいい。<br>
ジ「う、別にキライじゃないけど、恥ずかしい……」<br>
銀「大丈夫、誰も見やしないわよぉ。さ。行くわよぉ」<br>
ふふっ、と笑いながら、僕の腕を引っ張って外に出て行く。<br>
ふいに、視線を感じて後ろを見てみる。<br>
けれども、誰もいなかった。<br>
銀「どうしたのぉ?」<br>
ジ「や、なんか視線を感じて。」<br>
銀「やぁねぇ、腕組んでるからって意識しすぎよぉ」<br>
水銀燈は、おもしろいオモチャ見つけたように、嬉しそうに笑う。<br>
くそ、もう、どうとでもしてくれ。<br>
彼女は、件の店に向かった。<br>
たしかに、質のいい服が安値で売っていて、<br>
それでいて、人はまばらだ。<br>
ほんと、水銀燈はいい店を知ってるよな。<br>
ちなみに、そこで買い物した量は、袋一つ分。<br>
その後、いくつかの店にいき、<br>
少々荷物は増えたものの、<br>
荷物持ちいらないんじゃないって量だ。<br>
ご飯は、全部屋個室の雰囲気のいいお店で<br>
おごってもらった。<br>
味は、文句なく、おいしかった。<br>
その後、アパートに戻った。<br>
ちなみに、ずっと、腕を組んだままだ。<br>
そうとう、僕の反応がおもしろかったのか<br>
「また、付き合ってねぇ」という始末。<br>
ご飯つきなら喜んでいくが、<br>
腕組みだけは、勘弁していただきたい。<br>
アレは恥ずかしい。<br>
………まぁ、ちょっとは嬉しかったけど。<br>
<br>
今日、ジュンに会いに行ったわ。<br>
迷惑かしら、けれど、彼は喜んでくれる。<br>
そう、思って、彼のアパートに向かったの。<br>
けれども、彼は、知らない女と、腕組みしながら、出て行ったわ。<br>
うれしそうな、彼の顔。<br>
私は、逃げ出したの。<br>
これ以上見ていられなかった。<br>
もう、ジュンには必要にされていないんだという現実。<br>
ジュンは、目立つような人ではないし、<br>
素直ではないし、鈍感だけれども、<br>
とても、やさしい人だから、<br>
東京に行ったら、きっと誰かに取られることをわかっていた。<br>
でも、私がジュンに必要とされなくなっても、<br>
私はジュンを必要としてるわ。<br>
けれども、もう、ジュンには、私が呼ぶ声が聞こえない。<br>
声が抑えられない。涙が止まらない。<br>
私は……どうすればいいの?