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<p>8ページめ<br />
小さな、薄暗い部屋の椅子に独り。ドアが開き、現れた人が差し出す手。誰…？<br />
「がはっ！！げほげほっ…うう…」<br />
真紅は、突如感じた違和感に、飲み込んでいた水を思い切り吐き出しました。<br />
瞼を開くと、目の前の石だらけの地面が、吐き出した水で濡れています。<br />
気がつくと、真紅はうつぶせになった状態で体を支えられ、誰かにのどに指を<br />
入れられていました。この誰かが川原に引き上げてくれたようです。<br />
「！！よかったぁ、こっちの子生きてるわぁ！」<br />
「ほんとっ！？」<br />
体を支え、水を吐き出させてくれた誰かが、真紅をあおむけに戻します。<br />
その時真紅の目に入ったのは、自分を心配そうに見つめる紅い瞳。真紅は一瞬ぎょっとしてしまいました。<br />
真「…あなたたちは？…！！雛苺っ！！雛苺はっ！！？」<br />
紅い瞳の少女が答えます。<br />
「雛苺って…」<br />
少女は目線を別の所に移しました。真紅が視線を追うと、何人かの少女達が何かを囲んでいます。<br />
真「雛苺っ！！」<br />
「あっ！！無理して動いちゃダメよぉ…」<br />
紅い瞳の少女の手から抜け出した真紅は、疲労と水で重くなった体を必死に動かし、<br />
寝かされている雛苺のもとへ這っていきました。<br />
…長い栗毛の少女が、目をとじている雛苺の鼻をつまみ、息を口移しで吹き込んでいます。<br />
その横では、ショートカットの栗毛の少女が、両手のひらを重ね、ものすごい力で雛苺の胸を<br />
押していました。真紅が近づいて来たのを感じ取った二人の少女は、一瞬だけ視線を真紅に向けました…<br />
その、左右で色が異なる、対になったオッド・アイを。<br />
なすすべもなく、ただ妹が蘇生の手当を受けているのを見ている真紅の肩に、誰かが手を置きました。<br />
「今はこの二人に任せておきましょう。大丈夫、必ずこの子は息を吹き返しますわ」<br />
そう言った少女の右眼は、眼帯でおおわれていました。その少女の横で無言でうなずいている少女の左眼にも、<br />
眼帯がありました。やがて…<br />
2・3度咳こんだ雛苺はうっすらと目をあけ、自分を取り囲んでいる少女達の中に真紅を見つけるや、<br />
目に涙を浮かべました。<br />
雛「ぅぅ…うわぁぁああーーーーん、真紅ぅーーーーっ」<br />
真「雛苺！！」<br />
雛「真紅…しんく…ぅ、怖かったの～！！」<br />
真「あああごめんなさい雛苺、私のせいだわ、私が悪かったわ許してちょうだい雛苺…もう離さないわ雛苺っ・・・」<br />
雛「うあーん！！」<br />
涙ながらに抱きあう姉妹。<br />
それをどぎまぎしながら見ている少女達。<br />
ややあって、真紅は、泣きつづけている最愛の妹を胸に抱いたまま顔を上げました。<br />
真「皆さん、本当にありがとうございます、何とお礼を言ったらいいか…その…」<br />
雛苺を助け出したこの4人は、それぞれ顔を見合わせていました。<br />
少し間をおいて、栗毛のショートカットの少女が、真紅に笑顔を向けました。<br />
「妹さん、無事で良かったね」<br />
続いて、栗毛の髪の長い少女が、そのかたわらに膝をつきました。<br />
「ほんとたまげたですよぉ、いやーまったくですよ」<br />
オッド・アイの双子の後ろに控えていた二人のうちの一人が、もう一人の手を取って、<br />
真紅のそばにしずしずと歩み寄ってきます。<br />
「可愛らしい妹さんですね。これからは、目を離してはいけませんわよ？」<br />
右眼に眼帯を付けた少女。<br />
「本当…良かった…」<br />
左眼に眼帯を付けた少女。<br />
「蘇生が間に合ってラッキーだったわねぇ」<br />
最後に、真紅を介抱した紅い瞳の少女。この銀髪の少女も…他の少女も、真紅には日本人には見えません。<br />
真紅と雛苺自身も、金髪のハーフではあるのですが。<br />
「はじめまして、僕は蒼星石。で、こっちが…」<br />
「翠星石ですぅ。この蒼星石と私はご覧の通り双子の姉妹ですぅ。よろしくですぅ」<br />
真紅も慌てて自己紹介をします。<br />
真「あ、あの私、真紅と言います。この子は妹の雛苺です。よろしくお願いします…」<br />
翠「んで、こっちが雪華綺晶で、その横が薔薇水晶ですぅ。この子たちも双子ですぅ」<br />
真「あ、よろしく…」<br />
雪「真紅さんですね。よろしくお願いしますわ。」<br />
薔「…よろしく…」<br />
雪「妹はご覧の通り、人見知りが強いのですわ」<br />
薔「もう…お姉ちゃん…」<br />
真「翠星石…蒼星石…雪華綺晶…薔薇水晶…」<br />
雪「あら、記憶力がよろしいですわね」<br />
「ホントねぇ。で、私は…」<br />
真「…水銀燈…？」<br />
真紅は、偶然ではなく頭に浮かんだ名前をつぶやきました。それを聞いて、銀髪の少女が、<br />
紅い目を大きく見開きました。他の4人の少女も、驚きの表情です。<br />
銀「どうして…私の名前を…？」<br />
真「えっと…べネッツェの高校模試の成績表の上位者のところに、いつも載っている五人の名前を覚えていて…<br />
そのうちの四人の名前が、今翠星石さんが言ったのと同じだったから…<br />
あっあと、その五人の…所属中学校欄が空欄だったので…」<br />
しばらく、その場の時間が止まりました。セミの声だけが響いていました。<br />
つづく</p>
