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この町大好き!増刊号21」(2008/09/10 (水) 00:45:25) の最新版変更点

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<dl><dd> <div align="left"> <p><br /> 薄暗い教室の中で、彼女はワイングラス(中身はファンタ)を傾けていた。<br /><br /> 遠く沈み始めた夕日が、空を赤く染める。<br /> それを静かに眺めながら……少女は、友の事を想っていた。<br /><br /> いや、友だけではない。<br /> この町の事。この国の事。そして、世界の平和を…。<br /><br /> 自分が何とかするしかない。<br /> 夕日に染まる町を見つめながら、少女は決意する。<br /> 自分が、友である雛苺を恐怖のどん底に叩き落した悪魔を倒すのだ。<br /><br /> 静かに燃える闘志を糧に、少女は立ち上がる。<br /> それを応援するかのようにキランと光った太陽が、彼女のデコに反射した。<br /><br /><br /> 彼女の名前は、金糸雀。<br /> 『自称』無敵の策士である。<br /><br /><br /><br /><br /> ◆ ◇ ◆ ◇ ◆  この町大好き! ☆ 増刊号21 ☆  ◆ ◇ ◆ ◇ ◆<br /><br /><br /><br />  <br /> 金糸雀は家に帰り…さっそく、行動を開始した。<br /><br /> 『敵を知り己を知れば、百戦危うからず』<br /> 何やら小難しい言葉を知っている金糸雀だが……あいにく彼女は、自分のキャラをよく把握してない。<br /><br /> ともあれ、金糸雀は、自らの保護者である草笛みつ…<br /> 悪魔の在籍する学園で教師をしている彼女から、情報を集める事にした。<br /><br /> 「みっちゃんの学園に、片目に薔薇を付けた……その……ええっと……『何とか晶』という生徒はいるかしら? 」<br /><br /><br /> ……この悲劇は……ここから始まる。<br /><br /> 金糸雀が、悪魔の名前をちゃんと覚えてなかった事。<br /><br /> そして……<br /> 『片目に薔薇』『何とか晶』これに当てはまる人物が、二人いた事。<br /><br /> 恐ろしい悪魔と勘違いされた『雪華綺晶』<br /> ちょっぴり無口で妄想が大好きな『薔薇水晶』<br /><br /> この二人が当てはまるにも関わらず……みっちゃんは、こう答えてしまったのだった。<br /> 「ええ、居るわよ。薔薇水晶の事でしょ? 」<br /><br /> 金糸雀はその名を聞き…ゴクリと固唾を飲み、誰に言うでもなく小さく呟く。<br /> 「……薔薇水晶…それが……悪魔の名前かしら…… 」<br /><br /><br /> 全ての悲劇は……ここから始まった。<br />  <br /><br /> ◆ ◇ ◆ ◇ ◆<br /><br /><br /> 薔薇水晶は下校しながら、止まらない妄想を楽しんでいた。<br /><br /> 今日の妄想は、学園でバトルロワイヤルが開かれる話。<br /><br /><br /> 数々のクラスメイト達を血の海に沈め……最後に残ったのは、私ときらきー。<br /> でも…私にはきらきーを撃つ事なんてできないよ……<br /> 私が迷っていると、きらきーは突然、私に銃口を向けてきて…<br /> 驚きと戸惑い。迷いと…まぎれもなく存在する、生きたいとい意思。<br /> バキューン!<br /> 私は咄嗟に、きらきーに向けて銃を撃ってしまった。<br /> ……きらきーの銃には、弾が入ってなかった事にも気が付かず……。<br /> そんな……きらきー……!!<br /> 私は急いで、大切な友達へと駆け寄ろうとすr<br /><br /><br /> 「………ハッ!? 」<br /> そんな妄想をしていたせいで、薔薇水晶は危うく電信柱にぶつかる所だった。<br /><br /> ◇ ◇ ◇<br /><br /> 「……ついに…見つけたかしらっ!!雛苺のカタキ…この策士・金糸雀が楽してズルして 」云々。<br /> 不審者丸出しで匍匐前進で進んでいた金糸雀は……<br /> ついに見つけた『白い悪魔(雛苺談)』の姿に、鼻息を荒くした。<br />  <br /> でも……<br /> 「でも…よく見ると…そんなに白くないかしら…? 」<br /> どうも、雛苺の証言と食い違う。<br /> 金糸雀はちょっとだけ首をかしげて考え込み……<br /><br /> 「!! そうよ!きっとあれは…『擬態』というやつに違いないかしら!! 」<br /> 結局、たいした疑問も持たずに、薔薇水晶へと攻撃を始める事にした。<br /><br /> ◇ ◇ ◇<br /><br /> 「………… 」<br /><br /> 薔薇水晶は、小学生のたどたどしい文字で書かれた『道路工事中。迂回路→こっち』という看板を見つめていた。<br /><br /><br /> 最近の小学生って、ずいぶんと思い切った事をするね。<br /> 私が小さい頃は、せいぜい公園の砂場で遊ぶ位だったけど……<br /> まさか、今の小学生は土木工事にまで手を出すだなんて……<br /> 日本の道路事情は安泰だね!<br /><br /><br /> そんな風に考え、さしたる疑問も持たずに、明らかに怪しい林道へと足を踏み入れて行った。<br /> でも、そんな林道でも、薔薇水晶にとっては小さい頃から馴染んだ場所。<br /><br /> 「………懐かしい……それに……変わってない……… 」<br /><br /> 思い出に浸りながら歩く内に…<br /><br /> 突然!薔薇水晶の足元が消失した!!<br />  <br /> ◇ ◇ ◇<br /><br /> 「よし!作戦通りかしら!! 」<br /> 金糸雀はグッとガッツポーズをした。<br /><br /> 嘘の看板で薔薇水晶を林道に招きいれ……そして落とし穴でやっつける作戦。<br /><br /> 見事に、すっぽりと落っこちた薔薇水晶を見てると……<br /> 穴を掘ったせいで真っ赤ににじんだ指先も報われる。<br /><br /> だが、感慨に浸っている時間は無い。<br /> 雛苺の話では…悪魔は、あの巴ですら凌駕する力の持ち主との事。<br /><br /> 金糸雀はタタタッ…と駆けると……<br /> 落とし穴の上に、『悪霊退散』と書かれたお札(通販で買った)を貼りまくった紙で、ペタ。とフタをした!<br /><br /> 「ふぅ~…カナにかかれば、悪魔を封印だなんてチョロイものかしら!! 」<br /> 知らずの内に、緊張感でデコに滲んでいた汗を拭う。<br /><br /> 「ホーッホッホー!!流石は策士!!カナは天才かしら~!! 」<br /><br /> と、勝利の確信に高笑いをしていると……<br /><br /> 何と悪魔は…<br /> 落とし穴の底から、封印のお札(みっちゃんのカードで買った)をバリバリ破りながら出てくるではないか!<br /><br /> ◇ ◇ ◇<br />  <br /> ……最近の子供って……アグレッシブだね……<br /> こんな大きな落とし穴作るだなんて……<br /><br /> 落とし穴の底で、薔薇水晶はドキドキしていた。<br /><br /> ここまで大きな仕掛けだと……怒るより、むしろ純粋に感心しちゃう。<br /> ……お父様にコーヒーと言って墨汁を飲ませる悪戯なんて……可愛い方だね。<br /><br /> とりあえず、いつまでも穴の中に居ても仕方ないし…服だって汚れちゃう。<br /> そう考えた薔薇水晶が立ち上がろうとすると……<br /><br /> ぺた。と、穴の上に何かでフタをされた。<br /><br /> 閉じ込められた!?嘘!?美人薄命キタコレ!?こんな所で『薔薇水晶、死す!』とか嫌だよ!?<br /><br /> 半泣きになりながら、薔薇水晶はがむしゃらにフタを下から叩き……<br /> でも、フタだと思っていたのは大きな紙で、あっさりと壊す事が出来た。<br /><br /> また閉じ込められたら、今度こそ泣いちゃう。<br /> そう考え、薔薇水晶は急いで落とし穴から這い出ると……<br /><br /> 「キャーーーー! 」と叫びながら逃げる、小さな子供の背中が見えた。<br /><br /><br /> とりあえず、今の子を捕まえて、お姉さんとしてお説教でもしてやるべきかな…?<br /> 薔薇水晶はちょっとだけ考えるも……<br /> でも、子供は自由で腕白なものだよね!今回だけは特別に許してあげよう。<br /><br /> とはいえ、流石にこれ以上、罠にはかかりたくない。<br /> そのまま林道を戻ると、薔薇水晶はいつも通りの道で帰宅する事にした。<br /><br /> ◇ ◇ ◇<br /><br /> どうやら、あの悪魔にはお札は効かないらしい。<br /> 「さすが…雛苺が言うだけの事はあるかしら… 」<br /> 神妙な顔で、金糸雀は呟いた。<br /><br /> 「とはいえ……これで終わりじゃあないかしら!!<br />  常に二手三手先を読む。それが、策士たるゆえんかしら!! 」<br /><br /> そう意気込むと、金糸雀は薔薇水晶の行く道を先回りして……<br /> 手ごろな木を見つけると、スルスルと登り始めた。<br /><br /> ◇ ◇ ◇<br /><br /> 先ほど落とし穴に落ちたせいで、薔薇水晶の妄想も爆発していた。<br /><br /><br /> ……地の底から復活した大魔王。<br /> それを倒すべく立ち上がった……勇者・私。<br /> 共に旅をする仲間は、武道家の真紅。シーフの水銀燈に……きらきーはやっぱり、賢者かな。<br /> 迫る魔物の群れを、私と真紅と水銀燈で引き寄せ…きらきーが魔法で一網打尽。<br /> 出会った中ボスは、私と真紅と水銀燈が牽制して…きらきーが魔法で一撃。<br /> ………<br /> あれ?きらきー強すぎるよ?<br /><br /> そんな妄想ロールプレイングゲームをしていると……<br /> 不意に頭上から、何か白いモノが音も無く降ってきた。<br />  <br /> 「……こんな季節に…雪……? 」<br /> ちょっと疑問に思ったけど……<br /><br /> ううん、きっとこれは、穴に落っこちた可哀想な私に、神様がくれた奇跡なんだよ…。<br /><br /> 何だか電波丸出しな思考で、白い粒をそっと手にとってみた。<br /> でも、雪だと思ったそれは…手の上でも一向に溶ける気配は無い。<br /><br /> 雪じゃなかったら、何だろう?<br /> ふと頭上を見上げてみると……先ほどの女の子が、木の上からパラパラと塩をまいていた。<br /><br /> ◇ ◇ ◇<br /><br /> 「くっ…!どうして……どうして効かないのかしら!? 」<br /> 金糸雀は一生懸命に塩をまきながら、半ば叫ぶように声を上げた。<br /><br /> 古今東西、悪魔に効くとされている清めの塩。<br /> それが…あの悪魔には一向に効いてないではないか!<br /><br /> 「……やっぱり…味塩では効果は薄いのかしら…… 」<br /> それでも諦めずに、金糸雀は塩をパラパラ。<br /><br /> と……<br /><br /> 薔薇水晶はその塩を手に取り……そして、グルリとこちらに顔を向けてきた!<br /><br /> 金糸雀にはその右目が「何をやっても…無駄…」と言ってるような気がして……思わず、震え上がる。<br /> 「キャーーーキャーーー!!! 」<br /> 叫びながら、それでも精一杯、力の限り味塩のビンを振りまっくった。<br />  <br /> ◇ ◇ ◇<br /><br /> 何でこの子は、木の上から塩をまいてるんだろう?<br /><br /> ぼんやりとちびっ子を見上げながら考えていた薔薇水晶だったが……<br /> 見上げていたせいで、目の中に塩がちょっぴり入ってしまった。<br /><br /><br /> これは痛い。うん。かなり痛いね。<br /><br /> しょんぼりと涙目になりながら、目を押さえる。<br /> 「やった!効いてきたかしら! 」<br /> 何だか訳の分からない事を叫びながら、女の子はさらに塩をパラパラ。<br /><br /> ……ここにいたら、塩漬けにされちゃうよ……<br /> 私は半泣きになりながら、タタッ…とその場から逃げるように駆け出した。<br /><br /> と…ほんのちょっと走って、曲がり角を曲がった時……<br /> 「あら?ばらしーちゃん……どうかなさいたの?そんなに泣いて…… 」<br /> パーフェクトなフトモモ(雪華綺晶)が、そう声をかけてきた。<br /><br /> 「……目の中に……塩が入った…… 」<br /> 半泣きで事情を説明すると、「あら、まあ!」と言って、雪華綺晶は目薬を貸してくれる。<br /><br /> 「……ありがとう、きらきー…… 」<br /> 「いえいえ……どういたしまして、ばらしーちゃん 」<br /><br /> さっきまでの災難も忘れて、薔薇水晶はちょっとだけ和んできた。<br /><br /> ◇ ◇ ◇<br /><br /> 清めの塩の効果で、苦しそうに逃げ出した悪魔。 その背中を見つめながら……<br /> 「…今こそ…決着の時かしら!! 」<br /><br /> 金糸雀はそう叫ぶと、追撃のために木から飛び降りようとする。<br /> 「……… 」<br /> でも、やっぱり怖かったので、下を見ないようにしながらゆっくりと降りた。<br /><br /> おかげで、薔薇水晶には逃げられてしまったが……<br /> 「まだ遠くには行ってないはずかしら! 」<br /> 自分にそう言い聞かせ、走り出す。<br /><br /> そして、いざトドメを…と、曲がり角を曲がろうとした時…――――<br /><br /> ドシーン!と、素敵なフトモモに正面衝突した。<br /><br /> 「……ぅぅ…ご…ごめんなさいかしら…急いでいたから、つい…… 」<br /> 地面に尻餅をつき、鼻を撫でながら金糸雀がそう言い、顔を上げると……<br /><br /> 薔薇水晶……と似てはいるが…どこか雰囲気の違う人物が立っていた。<br /><br /> 「あらあら…元気なのは良い事ですが……悪戯も程々にしなくては…怪我をしてしまいますわよ? 」<br /> そう言い、その人物はこちらを見下ろしてくる。<br /><br /> まさか…!<br /><br /> 金糸雀は戦慄した。<br /><br /> まさか…ついに薔薇水晶とかいう悪魔は『擬態』を解いて……本気を出してきたのでは!?<br />   <br /><br /> よく見れば…<br /> 目に付けた薔薇の位置がさっきと逆なのが本気の証拠。<br /> 髪の毛もさっきよりふわふわしてて……あふれ出る威圧感に揺れてるように見える。<br /> そして、ぶつかった時に感じたフトモモの弾力……恐ろしい魔力が秘められてると容易に想像できる……<br /><br /> 殺意の波動に目覚めた薔薇水晶(仮)は、しばらく微笑んでいたかと思うと……<br /> 不意に鞄から何かを取り出した!<br /><br /> ヤられる!!<br /><br /> 金糸雀の本能が悲鳴を上げる。<br /> きっと鞄から取り出したのは、一瞬で人間をバラバラにするような悪魔の道具に違いない!<br /><br /> 「キャーーーーー!!命だけはお助けをーーーかーーしらーーー!!!! 」<br /> 地面をゴロゴロ転がりながら、金糸雀は悲鳴を上げ……<br /> そのまま転がりながら、逃げ出した……<br /><br /> ◇ ◇ ◇<br /><br /> 「……あら? 」<br /> ハンカチを鞄から取り出した雪華綺晶は…変な叫びを上げながら逃げ出した女の子に呆然としていた。<br /><br /> と…<br /> 「……もう…大丈夫……? 」<br /> 恐る恐る、といった感じで、薔薇水晶が背後からヒョッコリ出てくる。<br /><br /> 「ええ。ばらしーちゃんが言ってた、変な女の子…でしたっけ?<br />  何だか急いでいるらしく…どこかに行ってしまわれましたわ 」<br />   <br /><br /> それを聞いて、薔薇水晶は安心したように胸を撫で下ろす。<br /> 雪華綺晶も、そんな友人の仕草に、ちょっとだけ微笑む。<br /><br /> 「……最近の子供………元気だね…… 」<br /> 「あら。でも、私の知る限りでは、ばらしーちゃんが子供の時の方が…――― 」<br /><br /> 二人でお話をしながら、テクテクと帰宅。<br /> ちびっ子の悪戯に巻き込まれたせいもあり…ちょっとだけ、懐かしい話にも華が咲いた。<br /><br /> ◇ ◇ ◇<br /><br /><br /> そして……<br /><br /><br /> 泥だらけ。まさに九死に一生といった感じで帰って来た金糸雀は…<br /><br /> 服を着替えるとすぐに、頭から布団をかぶってガタガタ震えていたとか、いなかったとか…… <br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />    </p> </div> </dd> </dl>

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