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「この町大好き!増刊号3」(2008/07/18 (金) 23:32:51) の最新版変更点
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学園の中心に立つ塔は、楽園(女子更衣室)へ通じているという……。<br />
数多の猛者たちが、その秘密の花園へと挑み……そして消えていった…。<br /><br />
そんな楽園(更衣室)で…<br />
翠星石は今まさに、自らのブラウスのボタンに手を伸ばしていた…。<br /><br />
ゆっくり、上から順に、白い指先がボタンを外す。<br />
夏の暑さにしっとりと濡れた肌が、薄暗い更衣室の中で妖しさを引き立てる。<br />
どこか恥らうような動作で翠星石は、はだけたブラウスを脱ぎ、そっと畳んでロッカーの中へとしまい込んだ。<br />
そして次に、自分のスカートへと手を伸ばす。<br />
スルスルと、音も無く翠星石のスカートが……<br /><br /><br />
―※―※―※―※―<br /><br />
中略<br /><br />
―※―※―※―※―<br /><br /><br />
「さーさー!待ちに待った水泳の授業ですぅ!! 」<br />
元気な声と共に、水着に着替えた翠星石が更衣室の扉を開いた。<br /><br /><br /><br /><br />
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ この町大好き! ☆ 増刊号3 ☆ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆<br /><br /><br />
<br /><br />
「やっぱり、夏と言えばコレよねぇ 」<br />
学園の一角に造られた50メートルのプールを前に、水銀燈はうんと体を伸ばした。<br />
「いやー、授業とは分かっていても、心躍るですねぇ 」<br />
翠星石も満面の笑みで相槌を打つ。<br /><br />
「…真紅は…泳げるようになったのかい? 」<br />
体育が得意な筈の蒼星石が、元気無く真紅に尋ねる。<br />
「……大丈夫よ…きっと…浮く位は出来るはずだわ… 」<br />
真紅は自分に言い聞かせるように、そう呟いた。<br /><br />
と…<br />
そんな風にプールサイドで待ち受けるものの…肝心の、体育の柿崎めぐ先生がやって来ない。<br /><br />
どうしたんだろう。と、生徒達がざわざわし始めた時…<br /><br />
『♪かーらーたちーの朝が来たー♪希望の朝ーだー♪ 』<br />
突然、重低音の効いた音楽が空高く響き渡った!!<br /><br />
「そんな…まさか!! 」<br />
翠星石が叫びを上げ、遥か彼方に立つ体育館の屋上に目を見張る。<br />
真紅も、水銀燈も、蒼星石も、クラスの全員が釣られて屋上へと視線を向ける。そこには……―――<br /><br />
「……そんな所に居るわけ無いでしょ 」<br />
苦笑いを浮かべながら、めぐが普通に階段を上ってプールサイドまでやってきた。<br /><br /><br />
「計画通り…」と、ニヤリとほくそ笑む翠星石。<br />
翠星石に釣られた事に気付いて、微妙な顔をするクラス一同。<br /><br />
<br /><br />
◆ ◇ ◆ ◇ ◆<br /><br /><br />
「さて、今日は念願の水泳の授業よ。たまには先生らしく、真面目に注意点を説明するけど… 」<br />
何だか妙な前置きをして、めぐは真っ直ぐに水銀燈の目を見ながら注意を始めた。<br /><br />
「プールに飛び込む際の注意だけど…しっかり、頭から飛び込むように。<br />
怖いからってお腹から飛び込むのはダメよ。お腹から飛び込んで、真っ二つになってからじゃあ手遅れよ 」<br />
水銀燈も、教師らしい一面を見せためぐの言葉に、うんうんと頷く。<br /><br />
皆、何故それを水銀燈を見ながら言うのかと疑問に思ったが…<br />
何だか触れてはいけない気がして、そっと視線を泳がせた。<br /><br />
それから、帽子(水泳キャップ)を投げるな、とか、塩素の塊を拾うな、とか。<br />
普通に注意点を挙げ、それから最後にこう締めくくった。<br />
「それじゃ、泳げない子は端で練習しましょうか。後はそうね…自由…かな? 」<br /><br />
結局、今日も投げっぱなしだった。<br /><br /><br />
◆ ◇ ◆ ◇ ◆<br /><br /><br />
真紅と蒼星石が、プールの端でビート板を持ちながらパシャパシャとバタ足の練習に励んでいた。<br /><br />
「……僕ら…何で浮かないんだろうね… 」<br />
悲しそうに蒼星石が、真紅にそっと尋ねた。<br />
「……筋肉は水より重いから沈むそうよ… 」<br />
ストイックな表情でビート板にしがみ付きながら、真紅が呟く。<br />
<br /><br />
「つまり…私達は、引き締まったスレンダーで美しい体の持ち主。泳げないのは…その代価ね… 」<br />
「…やっぱり…胸…なのかな… 」<br />
蒼星石は俯き、小さく呟いた。<br />
「それは関係無いわ。例え関係あったとしても、関係無いわ 」<br />
ビート板のみを見つめながら、禅問答のような言葉を返す真紅。<br /><br />
まな板を装備した人間の悲しみが満ち溢れていた。<br /><br /><br />
◆ ◇ ◆ ◇ ◆<br /><br /><br />
「あらぁ?真紅じゃなぁい 」<br />
猫なで声で話す水銀燈の声が、不意に背後から聞こえてきた。<br /><br />
「…何なの?私は今、泳ぎの練習で忙しいの 」<br />
苛立ちを隠しながら、真紅が答え振り返ると…<br /><br />
水銀燈はニヤニヤしながら、ビート板に話しかけていた。<br /><br />
そう…そういう事ね…<br />
つまり貴方は、この真紅と『まったいら』なビート板の区別がつかない、と言いたいのね…<br /><br />
そう理解すると、真紅は素早かった。<br />
持っていたビート板を真っ二つに叩き折り、叫ぶ。<br />
「このジャンク!貴方だけは許さない!! 」<br />
<br />
「何ですってぇ!! 」<br />
水銀燈も負けじと叫ぶ。<br />
<br />
<br />
飛沫を巻き上げながら、二人の乙女が水中で殴りあう!<br /><br />
二人の戦いは、蒼星石がめぐを呼んでくるまで繰り広げられた。<br /><br /><br />
◆ ◇ ◆ ◇ ◆<br /><br /><br />
「それならいっそ、水泳で勝負する、ってのも面白そうじゃない? 」<br />
めぐの、教師として決定的な何かを欠いた采配により…<br />
プールの一角にコースが引かれ、そこで決着をつける運びとなった。<br /><br />
第一コース。魅惑の天使、水銀燈!<br />
「ふふ…私に勝てると本気で思ってるのぉ?このおバカさぁん… 」<br /><br />
第二コース。水の抵抗は皆無、真紅!<br />
「…ビート板が使えるんですもの。負ける理由が見つからないわね 」<br /><br />
第三コース。我らが新聞部の部長、翠星石!<br />
「はて……何だかよく分からねーですけど……私も負けんですよ!! 」<br /><br />
何だかよく分からない内に、翠星石まで参加してる。<br /><br />
でも、まあいいか。みたいな感じで、レースは幕を開いた!<br /><br /><br />
◆ ◇ ◆ ◇ ◆<br /><br />
<br />
スタートの合図を告げるピストルの音が鳴り…<br />
各人、一斉に飛び出した!!<br /><br />
真紅はビート板にしがみ付いたまま、バタ足で進む。<br />
翠星石は何だかよく分からない泳ぎ方で、がむしゃらに水を掻き分ける。<br /><br />
二人とも、とっても遅かった。<br /><br />
対して水銀燈は…<br />
水泳部顔負けのキレの有る動きで、水中を華麗に横切る!<br /><br />
5メートルも進まない内に、勝負は歴然だった。<br /><br />
(ふふ…圧勝じゃなぁい…あっけなぁい…ふふふ )<br />
水銀燈は余裕の笑みを浮かべ、それでも手を緩める気配も無く、グングンと進んでいく。<br />
プールの端にタッチし、華麗にターン。<br />
二人が50メートルを泳ぎきる前に、100メートルのゴールをするつもりでいた。<br /><br />
そのまま速度を緩めず、折り返し泳いでいると……不意に、視界が何かに塞がれた!<br /><br />
◆ ◇ ◆ <br /><br />
真紅は…どんどん遠ざかる水銀燈を恨めしげに見つめていた。<br /><br />
まな板同然と言ってきた相手に負けるのは、悔しい。<br />
かといって、勝ち目は無い。<br />
<br />
なら、どうするか…。<br />
そう考えた矢先、不意に名案が思い浮かんだ。<br /><br />
(そうよ…これは事故よ。事故なら…ふふ…仕方ないわね )<br />
妖しげな笑みを浮かべると…<br />
真紅は持っていたビート板を、水中に深く沈める。<br /><br />
そして、隣のコースで折り返し、こちらに向かってくる水銀燈めがけて…手を離した。<br /><br />
浮力により、ビート板は凄まじい勢いで、さながら弾丸のように水銀燈に迫り…<br />
スコーン!と、水銀燈の顔面に命中した!<br /><br />
「やったわ! 」<br />
思わず真紅は叫びを上げる。<br /><br />
そして…<br />
すぐに、自分がカナヅチである事を…思い出す間もなく、ブクブクと沈んでいった。<br /><br />
◆ ◇ ◆ <br /><br />
二人(実質3人だったけど)の勝負を見守っていためぐは…流石に驚いた。<br /><br />
ビート板が顔面に直撃し、プカプカと水面を漂う水銀燈。<br />
頼みの綱のビート板を失い、ブクブクと沈む真紅。<br /><br />
「天使さん!今助けるわ!! 」<br />
そう叫ぶや否や、めぐはプールへと飛び込んだ!<br /><br />
自分が最初に言った注意も忘れて。<br />
<br /><br />
めぐは…思いっきりお腹からプールに飛び込み…水面でお腹を強打し……<br />
グッタリと、水面に漂う結果となった。<br /><br />
朦朧とする意識で…めぐは、辞表を書いてる夢を見たとか見なかったとか……<br /><br />
◆ ◇ ◆ <br /><br />
「ぷはぁ!! 」<br />
大きく息を吸い込み、翠星石は50メートルの折り返し地点の壁にタッチした。<br /><br />
はてさて、勝負は50メートルだったか、100メートルだったか…<br />
そんな風に考えながら振り返ると…<br /><br />
水面にプカリと浮かぶ、水銀燈とめぐの姿。<br />
水中でブクブクしてる、真紅の姿。<br /><br />
それらの救援に駆けつけてる、クラスメイト達。<br /><br /><br />
何が何やら、サッパリ理解できなかったが…一つだけ、ハッキリしていた。<br /><br />
「翠星石が一着ですぅ!! 」<br />
満面の笑みで、高々と拳を突き上げる。<br /><br />
誰も見てなかった。 <br /><br /><br /><br /><br /><br />
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