「ずっと傍らに…激闘編 第二十章~ジュンside~」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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の『ジュンく~ん、ご飯よぅ~』
ジ「はーい」
1階からねーちゃんの呼ぶ声がする。
波乱に満ちたGWもすっかり終わってしまった。
ABCに2回も邪魔されたことに恨めしさを感じるが、
僕の今の力では諦めるしかない。
だからといって逃げ惑いっぱなしでいると、
水銀燈に喝を入れられる始末…
あんな奴らに太刀打ち出来るわけないだろっての。
ちくしょう。
水鉄砲で遊ぼうとした時にイヤというほどよく分かったよ。
ほんと、水銀燈も解ってないなぁ…。
やっぱり僕が一番解ってるんだよ。
──こんな事、面と向かって言ってたら、もっとシバかれてたかな。
ほんと鬱だよ…まったく。
~~~~~
の「じゃ、いってきまーす」
ジ「ん」
ねーちゃんを玄関から送り出したところで、
連休も明けたことだし、また引き篭もりライフを送ろうっかな~
…と自分の部屋へ戻る。
今日から学校へ行く前に翠星石、蒼星石、柏葉の3人が
僕の家の前を通りかかるんだそうだ。
昨日の晩に翠星石からそんな電話があった。
じゃあ翠星石がピンポン押して、僕が玄関から出たらいいんじゃないか?
って提案したら「あくまで通りがかるだけですから…」って返してきた。
…今の僕ならちょっと外に出るくらい余裕なのに。
「あっそ」とだけ返しておいた。
そんなわけで、適当に外を眺めておく。
…思えば、街に出る直前は対人恐怖症が一番悪化してたなぁ。
あの時、翠星石に手を引っ張ってもらわなかったら、
今はこうして窓から顔を出すことも出来なかったんだろなぁ。
──あ、翠星石と蒼星石と柏葉が来た。
翠星石が手を大きく振っている。
僕もそれに合わせて小さく手を振った。
翠「いつか絶対学校に来るですよ~」
──出来れば声に出して欲しくなかった…w
声には出すなと電話で言っておけば良かったかな。
う~ん…仕方ない。
蒼星石が翠星石に何かコソコソと話し掛けてるけど、
蒼星石の方が僕の事を解ってくれてるなぁ…これは。
まぁ、今さら大声で晒されたって、この辺りの人には
僕がヒッキーやってるのは既に知られてると思うんだけどね…w
~~~~~
3人が学校へ行き、いよいよ僕だけの時間が訪れる。
蒼星石にコピーしてもらった翠星石の連休課題も、
既に昨日までに仕上げてしまってから、
もう勉強に関しては何もやる気が起きない。
しかし、学校に復帰した直後から
クラスでトップの成績を修めてやる…という野望が僕にはある。
ABCの奴らには、殴り合いではダメでも、
学業でなら勝てる自信がある。
今でも勝てると思う。
…でも今はネットに接続が先だなw
また今度やろう。
~~~~~
──気がつけば昼になり、
適当にピザの出前頼んで、
リビングでぼーっとテレビを眺め、
部屋に戻っては適当に数学の教科書ガイドを眺め、
日の光が差し込む角度が変わったかなと思えば6時前になっていた。
今日は誰も来ないな。
翠星石も部活か。
あの部活、活動日が不規則になったりすることがあるからなぁ…。
…まぁ別にいいよ。
本当の引き篭もりってのは僕みたいに頻繁に人と接触してないんだろうし。
ピーンポーン
ジ「…」
おっ!きたきた。
早速窓から外をチェック。
…翠星石と目が合った。
ちょっと待ってくれ、とジェスチャーで伝えた。
~~~~~
──今日は学校で何があったんだろなぁ。
ABCに遣り返されてなければいいけど…。
ピーンポーン
…だから待てって言ってるのに…w
でも今日は連打はしないんだなw
まったく…面白い奴だなw
…ガチャ
ジ「おかえり」
あっ。
翠「…たっ…ただいまです──」
ジ「…」
~~~~~
ジ「──何か飲むか?」
翠「そんな…別にいいですよぉ」
ジ「いや、麦茶ぐらいは飲みたいだろ?
今日は5月にしては暑いとかテレビで言ってたぞ?」
翠「…そうですねぇ。ジュンがそこまで言うなら…」
翠星石はダイニングの椅子に座り、
僕は麦茶をグラスに注ぎ、それを翠星石の前に置いた。
翠「ありがとうです」
そしてそれを美味しそうに飲む。
僕はその正対する席に座った。
──こうやって目の前にいる翠星石。
僕がヒッキーになってから、ずっとこんな感じだ…。
激しく毒づき、僕にやたら突っ掛かってきてた頃が懐かしく思えてくる。
街へ行った時はその時を思い出させてくれた。
ABCと遭遇しなかったら、翠星石も元に戻ってくれてたろうな…。
今の翠星石は…ある意味奇跡の塊だ。
以前と比べれば翠星石は格段に丸くなってるし、
普通じゃないくらい気遣ってくれる。
気持ち悪いくらい優しい。
むしろこっちが本当の翠星石なのか…?
でも何か胸騒ぎがするんだよな──
翠「──何をぼーっとしてるですか?」
ジ「…ん?あ…いや、ちょっとね」
翠「“ちょっと”って何です?」
ジ「…何でもないよ」
翠「…」
翠星石はムスッとして、また麦茶を一口飲んだ。
そんな翠星石を見た僕はちょっと安心した。
ジ「…で、今日の学校はどうだったんだ?」
翠「…」
まだ不機嫌そうに口を尖らせてる翠星石。
ジ「…」
翠「こっちで下の4人と遊んでたときの写真を見せびらかしてたです」
ジ「やっぱりな」
撮ったらまずそうするわな。あいつらは…。
僕としては諦めというか放置というか、
もう気にしてばかりだと体力が勿体無いような気がしてきてるし、
ま、適当に流せばいいんじゃないか?ってな感じだ。
うん。
翠「…」
ジ「そうなると思ったよ」
翠「…じゃあ何で翠星石にその撮られたことを言わなかったんですか?」
ジ「…」
翠星石が唐突に熱くなりだした。
翠「何で何も言わないんですか?」
ジ「…」
翠「おめぇの事なのに、何でばらしーたちの方が先に伝えに来るんですか?」
ジ「…」
翠星石の唇が震えている。
翠「おかしいです!何で今日の今まで私に言わなかったんですか?」
ジ「…別に…撮り逃げされたら…無理だろ」
翠星石はテーブルをバン!と叩いた。
翠「そんなだから水銀燈が怒るんですよ!」
これには思いっきり腹が立った。
何から何まで水銀燈に見えた。
沸騰した。
ジ「い…」
今までのお前なんかABCと変わらんだろ!
…なんて、言える訳が無かった。
ジ「…お前に言ったところで何も──」
翠「そーですか!翠星石はやっぱり世話焼き過ぎですか!お荷物ですか!」
ますます語気を荒げる翠星石。
逆にちょっと心配になってきた。
ジ「…お前?何か学校であったのか?」
翠「…」
翠星石は唇を噛んだ。
ジ「…」
翠「…」
ジ「どうしたんだよ?」
翠「…ジュンが何も教えなかったんですから、翠星石だって何も言わんですっ!」
翠星石は震わせた声でそう叫ぶと、
カバンを引っ掴み、顔に手を当て、
そのまま玄関を飛び出し帰っていってしまった。
ジ「…」
また怒らせてしまった…。
何でいつもこうなるんだろうなぁ…。
それより、僕は今さらながら冷や汗をかきはじめた。
自分のさっき言おうとしたことに──