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男だと思ってた 前編」(2008/03/12 (水) 05:33:57) の最新版変更点

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<p>「この服をデザインしたのは…桜田ジュン君です!!」<br /> 壇上に立つ教師が、誇らしげな表情でそう言った。<br /><br /> ヒソヒソ…<br /> 「えー、マジでー」「キモーイ」<br /> クスクス…<br /> 「ヘンタイみたいじゃーん」「コワーイ…キャハハ…」<br /> 女子の嘲笑うような声が聞こえる。<br /><br /> 「う…あ…ぁ…」<br /> 僕は意味不明な言葉を呟き、その場に膝をつき…<br /> 「それ以上…僕に近寄るなァーーーーーーーッ!!」<br /><br /><br /><br /><br /> 「―――――――――!!」<br /> 自分の叫び声で目を覚ます。<br /> そして…そこが見慣れた自分の部屋の、自分のベットの上である事を確認した。<br /> 「…中学での事、夢で見たのは…」<br /> 随分と久しぶりだな。<br /> そう考えながら、モゾモゾと学校に行く準備をする。<br /><br /> 僕が通うような、私服の学校は…服のチョイスが面倒だ。<br /> 同じ服でも良いんだが、流石にそれはかっこ悪い。<br /> アレ?お前その服、週に四日位着てね?なんて言われたら目も当てられない。<br /> まあ最も、誰も僕の服なんて見ちゃあいないだろうけどね…フフフフフ…<br /> とりあえず、まあ大丈夫じゃね?と思える服に着替え、「行ってきます」と声をかけて部屋を出る。 <br /><br /> バカだなぁ。<br /> 居るじゃないか、そこに…<br /> 違うよ!フィギュアじゃないよ!れっきとしたアンティークドール、ってやつさ!<br /> 彼女達は素敵だ…<br /> 僕を蔑んだり、罵詈雑言を浴びせてきたり、スイーツ(笑)なんて言ったりしない。<br /> 僕の作ったドレスを嬉しそうに着てくれるし、常に優しい視線を僕に向けてくれる。<br /> ぁぁ…ホント…素敵だよ…<br /><br /> 「おはよう…桜田君…」<br /> 家から出ると、幼馴染の柏葉と偶然居合わせた。<br /> 「もうすぐ三年…そうなったら、受験だね…」<br /> 「受験か…柏葉はもう進路とか決まってるのか?」<br /> そんな何気ない会話をしながら…僕は心の中で呟く。<br /><br /> …何で女子大は有るのに、男子大は無いんだ!?<br /> いや、そんな極論でなくったって良い。発想の転換だ。<br /> 男子大が無いのなら…せめて男子率の高い理系に進めば良いんだ!<br /> 大丈夫。僕の成績なら、問題なく行ける!メイビー!多分きっと!<br /><br /> そうこうしてる内に、学校に着く。<br /> 「それじゃあ、またね…」<br /> そう言い自分の教室に入っていく柏葉を見送り…その姿が消えたのを確認して、そっと自分の手を見る。<br /> …汗でぐっしょり濡れている。<br /> 幼馴染の柏葉との短い会話でさえ、コレだ…。<br /> 僕は女性恐怖症です!なんてカミングアウトしようものなら、<br /> 弱肉強食のこの世界では格好の餌食になるのは見えている。<br /> 僕は決して背中を見せない殺し屋の気分で、自分の教室に入る。<br />  <br /><br /> 誰かが部屋に居るのかって?<br /> 「よう!桜田!」<br /> 「ああ、おはようベジータ。今日も光ってるな(Mハゲが)」<br /> 「当然だろ!俺様を誰だと思ってやがる!」<br /> 「おはよう、桜田!」<br /> 「今日は遅刻してないんだな。笹塚」<br /> 「おはよう、桜田君」<br /> 「ア…ハイ、オハヨウ桑田サン」<br /><br /> オーケー、落ち着け僕。たかが級友との朝の挨拶じゃあないか。<br /> 視線を泳がせるな!挙動不審な男という印象を持たれたら、裏で何言われるか分かったもんじゃないぞ!<br /> 心の中で素数を数えるんだ!2…3…4……4は素数じゃない!落ち着け僕!<br /><br /> 「そう言えば桜田君…進路希望の一時調査、もう出した?」<br /> 「エ…イヤ…アア、早メニ出シテオクヨ!」<br /><br /> …オーケェー…今の僕、最高にクール。<br /> 心の中の恐怖感を微塵も表に出さない、完璧な仕事をしてたね。<br /><br /> 「それと、後ね…」<br />   キーンコーンカーンコーン<br /> 女子との会話から救ってくれたチャイムが、まるで福音のように心に響いた。<br />  <br /><br /> …<br /><br /> その日の授業が終わり、僕は疲弊しきった心を引き摺りながら家路につく…<br /> だが…平穏の神はすでにこの世には居ない事を思い知った。<br /><br /> 何で女子バレー部が校庭で練習を!?お前らの敷地は体育館の筈だろ!<br /> …大丈夫。邪魔にならないように、端を通って校門まで進む。<br /> 何も難しいミッションじゃない。<br /> 僕なら出来る。それ位、訳無いさ…<br /><br /> そして足を一歩踏み出し…<br /> 裏門に向かった。<br /><br /> 何も、あえて危険な事に及ぶ必要な無いじゃないか。そうだよ、裏門から帰ればいいだけの話じゃないか。<br /> この桜田ジュン…まさに策士!…ククク…<br /><br /> 校舎の裏を通り、出口に向かう。<br /> その時…向かう先から何か騒がしい声が聞こえた。<br /> 何だろう?そう思いその方向を見ると…<br /><br /> 花壇を荒らしている一匹の猫。<br /> それを追い払おうと悪戦苦闘している一人の人物。<br /><br /> …確かに僕は、超の付く女性恐怖症のチキンハートの持ち主さ。<br /> だけど、猫の一匹位、訳無いさ。 <br /><br /> それに…<br /><br /> 猫を捕まえようと躍起になってる人物を見る。<br /><br /> 短い髪。青いジーンズ姿。…それに、胸も無い。<br /> あれは…間違いなく男子だ。<br /> 困っている男に手を差し延べず…何が漢か!<br /><br /> 僕は気配を殺して花壇を荒らす不届きな猫に近づき…<br /> 素早い動きでその首根っこを捕まえた!<br /><br /> 捕まった猫は暫くジタバタしていたが…<br /> やがて諦めたのか疲れたのか、大人しくなった。<br /> グッタリしている猫を、そっと塀の上に放す。<br /> …今度僕の前に現れる時は…もっと俊敏になってる事だね…。<br /><br /> 「ありがとう、助かったよ」<br /> 塀の上を颯爽と逃げる猫を見ていると、後ろから声をかけられた。<br /> 「ん?ああ…」<br /> とりあえず、曖昧に返す。<br /> 「最近、花壇が荒らされて困ってたんだよ」<br /> そう言い、荒れ果てた花壇を悲しそうな目で見つめる。<br /><br /> 「とりあえず、ありがとう。…ええっと…?」<br /> 僕に視線を戻し、そう言い首をかしげる。<br /> 「ん、僕は1組の桜田ジュン」<br /> 「ありがとう、ジュン君。僕は4組の蒼星石っていうんだ」<br /> そう言い、手を差し向けてくる。<br />  <br /> …短い髪。青いズボン。一人称が僕。<br /> つまり、男子だ。…つまり、敵ではない。味方だ!<br /> という事は…今日からお前も友達だ!<br /><br /> 僕は差し出された手をガシッと掴む。<br /><br /> 夕日に照らされる、友情の握手。<br /> 夕日に赤く染まった、蒼星石の横顔。<br /><br /><br /> こうして僕は…蒼星石と出会った。</p>

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