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第六章『春風』」(2006/03/28 (火) 09:12:08) の最新版変更点

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<p><a title="bokudakenoseigi6" name= "bokudakenoseigi6"></a>第六章『春風』<br> <br> ああ、快晴だ。<br> 遠くにうっすら雲がかかり、白と青とのコントラストが目に優しい。<br> 世間は花粉症だの叫んでるが、僕はこの季節が大好きなのかもしれない。<br> ついさっきのことを思い出す。<br> 人を殺すってこういうことなのか?<br> 実感が湧かない。変に落ち着いている。<br> 授業には集中できるが、どこか上の空だ。<br> <br> キンコーンカンコーン<br> 「ジュン帰りましょう」<br> 「いいけどさ、真紅?帰りにちょっと付き合ってくれない?」<br> 「いいわ、何処に行くのかしら?」<br> 「デートだよ」<br> 「あら、ジュンから誘うのは珍しいわ。それじゃぁ、公園にでも歩きに行きましょう」<br> 第一発見者はおねぇちゃんが望ましい、僕は警察相手に演技するほど芸達者じゃない…。<br> 真紅を誘ったのは早く帰るのを避けるため…。<br> 卑怯だ、<br> 醜い、<br> 汚れてる…<br></p> <p>ピーポーピーポー<br> 警部「おや?救急車だ。」<br> く「パトカーのサイレンも聞こえるね。事件だろうか?」<br> 警部「私は行こうと思うが、君はどうするかね?」<br> く「僕も行くとするよ、お邪魔じゃないならね」<br> 警部「なぁに、事件なら君が解決してくれるじゃないか」<br> 事件だろうか?それとも事故だろうか?<br> 事件だとすると、警部という肩書き上、また忙しくなるな。<br> 息子とはたまには遊んでやりたいもんだ…。<br> <br> 警部「助手席にのりたまえ」<br> く「お邪魔するよ」<br> 外に出ると女子高生やら子供やらが待ち構えていた。<br> 警部「またすごい人気だな。迂闊に外を歩けないんじゃないのか、これでは。」<br> く「もうなれたよ」<br> 探偵は、これ以上ないうんざりとした様な声を出し、帽子を深くかぶる<br> く「出してくれ」<br> 警部「人気が有りすぎるのも考え物だ」<br> 苦笑しつつ車を出す。<br></p> <br> <p>「…ただいま」<br> 「あっ、ジュンくん…」<br> 予想通り。玄関の前にはパトカーと救急車が止まっていた。<br> 姉が警察に囲まれ困った顔つきで僕に助けを求める。<br> 「何かあったの?」<br> 「それが…」<br> 姉は叔父のことについて話す。<br> 全て知ってた、警察も姉も知らないことまで知ってた。<br> それでも、ショックを受けたフリをする。<br> 何も言えない、言ったらボロが出そうだった。<br> 全部言ってしまいそうだった…。<br> 警部「ボウズ、あんまり気を落とすな。」<br> ビール腹を抱えた中年男性、警部と呼ばれていたっけ。<br> 慰めてるのだろうか?嫌にぶっきらぼうだ。<br></p> <br> <p>く「警部~、一通り見せてもらったよ。」<br> 「あっ!!」<br> 「どうしたのジュンくん?」<br> 何でくんくんが?<br> ひどく動揺しているのが分かる。まずい、まずいまずいまずい!<br> とりあえず落ち着くんだ。<br> 「えっと、その、本物のくんくん探偵はじめて見たから…」<br> 「おねぇちゃんもよ~♪わくわくしちゃう」<br> 警部「何かわかりましたか?」<br> く「えぇ、彼はひどいアルコール依存症みたいですね。まだ断定は出来ませんが、病死か他殺かと聞かれたら病死の線が強いですね。」<br> 警部「解剖結果は明日には出るだろう。君にも送るよう手配しとくよ」<br> く「それはどうも。とても助かるよ。」<br> もしかして、ばれてない?<br> キッ<br> 「!!!!!!」<br> くんくんが僕を睨む(実際には見ただけなのだが)<br> 何もかも見透かされているような…。だめだ、目を見ていられない…。<br> 目をそらす、出来るだけ自然に見えるように努めて。<br> 警部「それでは、私たちは帰るとしよう」<br> く「そうですね、長居しすぎました。」<br> 「いいんですよぅ。それより…」<br> 警部「大丈夫です。無縁仏として近くの集合墓地に埋葬されますよ」<br> …<br> ……<br> ………<br> ……………<br></p> <p>ハァハァハァッ<br> 口と鼻を押さえる―<br> ハァハァハァッ<br> 胸を圧迫し、胸部から空気を抜いていく―<br> …やった、終わった!正義が勝ったんだ、これでこの屑は終わりだ…。<br> 後始末を終え、学校に戻るためドアのノブに手をかける<br> ガタンッ!<br> 「!!!?」<br> なぜ!?死んだだろ?<br> 動くなよ、動くなよ!!!勝手に動くな!<br> 迫る影。<br> 追い詰められる。<br> 「ぅ、ぅわっ!くっ、来るな!来るなああああああああああああ!!!!」<br> ・<br> ・<br> ・<br> ガバッ<br> 「…?」<br> 汗がすごい、下着も寝間着もべたべただ。<br> 何だ夢なのか…。<br> 夢だと分かって安心したが、腕にはびっしりと粟が立っていた。<br> <br></p> <p>今日も昨日に引き続き快晴だ。<br> 一抹の不安はあるものの、今のところはばれていない…はず。<br> あと、僕に出来ることは普通の生活を続けるだけだ。病死で片がつくまで<br> 「ちび人間、おはようですぅ!」<br> 「朝からうるさいんだよ、性悪!」<br> 「なっ!翠星石はちび人間が心配で…、その、最近元気が無かったから…。でも大丈夫みたいですね、いつものちび人間に戻ったですぅ!」<br> 「だからチビじゃないと何度要ったら…」<br> 心配していてくれたんだ、翠星石<br> 「まったく、翠星石は…。でも僕も嬉しいよ、いつものジュン君だから」<br> 蒼星石も…<br> 「まったく、引きつった顔でデートされても、楽しくなかったのだわ。」<br> 「悪い、悪い」<br> 真紅には迷惑かけたし、双子には心配させた。<br> だめだな僕は、もっとしっかりしなきゃ。<br> 「今日は皆で遊びに行こう」<br> 桜もすっかり散ってしまった山からは、春を惜しむ風が吹いていた<br> </p> <br> <p>「速達デース!印鑑くださーい」<br> く「今行く」<br> 封筒を破り捨て、中身を取り出す。そこには数枚の書類が入っていた。<br> く「なになに、内臓の一部に鬱血が認められるが、恐らく動脈硬化症による血流障害が要因、か」<br> デスクに腰をかけ、パイプに火をつける。<br> く「ふむ、血流障害か。だがどうだろう、静脈系統の鬱血は少ないじゃないか。これは…、窒息死ではないのか?」<br> 書類の束を掻き分け、昔ながら黒電話を取り出し、ダイヤルを回す。<br> く「あー、もしもし警部?一通り目を通してみたんだが、いくつか気になることがあるんだ。明日そっちに行きたいんだが。」<br> 警部「あぁ、かまわんよ。署のみんなも大喜びだろ。しかし、気になることとはなんだね?」<br> く「たいした事ではないんだがね、それは―…」<br> <br> 第六章『春風』~完~<br></p>

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