「あなたはわたしでわたしはあなた」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

あなたはわたしでわたしはあなた」(2006/03/27 (月) 14:49:34) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<p><a title="watasihaanata" name= "watasihaanata"></a> はなれたら、いきがくるしくなるの<br>  はなれては、いきるのもむずかしい<br> <br> <br>  だって、あなたはわたしでわたしはあなた。<br> <br> <br> 「離れていくのは、許さねぇです」<br>  ぐすぐすと涙目の姉を、蒼星石は抱きしめる。<br>  小さい頃と同じように。<br>  いや、小さい頃、本当に抱きしめられたのは、自分だったのかもしれない。<br>  勝気で負けん気の強い姉は、いつだって立ち向かっていった。<br>  負ける度にボロボロと泣いて、慰めるのは自分の役目だったけれど。<br>  そうやって、自分に役目を与えてくれていたのではないかと、今ならば思える。<br>  蒼星石は、自己主張が苦手な子供だった。<br>  いつだって、他の姉妹たちの声をまとめて、最善になるように勤めてきていた。<br>  そこに自分の意思をいれるのを、忘れたかのように。<br>  時折、翠星石に意見を求められれば口も出したが、それとてそう積極的だったわけではない。<br>  だから余計に、翠星石が自己主張をし、蒼星石の分まで押し通そうとしていた。<br>  それが、揉め事にさらなる火種になったことは否定しないが。<br>  彼女はいつだって、蒼星石のことを気にかけて、守ってきていた。<br> <br></p> <p> 気づいたのは、本当についさっき。<br>  翠星石が、名前も知らない他校の男子に告白される現場に、居合わせた為だった。<br>  愕然とした。<br>  彼女の傍に、ずっと自分だけがいるわけはないのに。<br>  いつだって、傍にいるものだと思っていた自分に。<br>  自分の内側の声を聞いて、我侭を押し通す振りをしながら、自分の求めるようにしてくれた、姉、翠星石。<br>  彼女だって、女子高生なのだ。<br>  告白くらいされるだろう。<br>  恋人だって、欲しいと思うに違いない(実際、その手の愚痴は聞かされることもあった)<br>  なのに、いつも傍に居てくれるから。<br> ―――いつまでも傍にいてくれるものだと、勘違いをしていた。<br>  無理に決まっているのに。<br>  だから、距離を置こうと言ったのだ。<br>  いつも自分がいたのでは、告白してくる人だって限られてしまう。<br>  休日を独占して、良いはずが無い。<br>  そんなことを知られれば、デートにも申し込めないのは必至。<br>  だから、距離を置いて。<br>  恋人でも、作ったら? それとももう、他に好きな人、いる? だったら僕は、協力するよ。<br>  双子ノ妹ナンダカラ。<br>  自分でも空々しいほどの態度で、そんな言葉が出た。<br>  瞬間。<br> ―――ばちん。<br>  音だけは大きく、痛みなどほとんどない平手が、蒼星石の頬に飛んだ。<br> </p> <dl> <dd>  呆気にとられていれば、今度は自分と反対のオッドアイを潤ませて、躊躇いなく泣き始める。<br> 「そ、蒼星石は、翠星石が邪魔なのですか」<br> 「違う!」<br>  即座に、鋭く声が出せた。<br>  違う、違う、それは違う。<br>  大切だからだ。<br>  大切だから、離れるべきなのだと。<br>  離れなければ、ならないのだと。<br> 「では、なんでそんなこと言うのです!」<br> 「だって、告白されてた!」<br> 「あんなチビ人間、どってこたねーです! 翠星石には、蒼星石のほうが大事なのです!!」<br> 「いつか僕たちだって、離れなきゃいけない日が来る!」<br> 「そんな日、来やがりません!!」<br> 「翠星石!!」<br> 「翠星石は、蒼星石とずーっとずーっと一緒にいるのです! 齢とってバーさんになっても、縁側で一緒に蒼星石とお茶を啜るのです!」<br> 「翠星石………」<br> 「翠星石は、蒼星石といるのが誰と一緒にいるより楽しいのです。そりゃ、JUMといるのも楽しいですが、格とレベルが違うです」<br> 「離れ離れになるなら、早いほうが良いに決まってる」<br> 「今更です。だって、二人は生まれる前から一緒なのですよ?」<br>  母の胎内にいる頃から、感じていた。<br>  もうひとりのわたし。<br>  はなれては、生きていけないのだと。<br>  叫ぶのは本能。<br> <br></dd> <dd> <p> 「告白なんざ、へのかっぱです。蒼星石と翠星石は、ずっと一緒に居て、墓もおんなじのに入るのです。だから、だから………」<br>  きゅ、と、両手を重ねて、指を組む。<br>  手の大きさも、指の長さも。<br>  巡る血の鼓動さえも、まったく同じ。<br>  あなたはわたし。<br>  わたしはあなた。<br>  離れて生きていくなど、無謀も良いところ。<br> <br> 「離れるのは、許さないのですよ、蒼星石」<br> <br>  涙交じりの笑顔で、微笑んだ。<br> <br></p> </dd> </dl>

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: