「灯台の下 【3】」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

灯台の下 【3】」(2008/01/13 (日) 20:52:38) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<p>【3】<br> <br> <br> ガチャ<br> 帰ってきた。あの後一時間も何してたんだろう?<br> いや、何も考えない事にしよう。せめて、今日の事を覚えておいてくれれば・・・・ <br> <br> 「ただいま。」<br> 「お帰りなさい。・・です。」 <br> <br> 駄目だ、声が震えている。頭が回らない。 <br> <br> 「ん?どうした?何か変じゃないか?」<br> 「・・翠星石はどこも変じゃないですよ?」<br> 「・・・・そうか。気分でも悪いんじゃないかと思って心配したよ。<br>  そんな状態の人に料理をさせるなんて出来ないからね。手伝おうか?」 <br> <br> ああ、この優しさ。飾り気の無い、本心からの優しさ。<br> 彼女はここに惹かれたのだ。自分に無いもの、に惹かれたのだ。<br> ジュンも昔は負けず劣らずの意地っ張りだったが、<br> いつからか二人の心はそれぞれ相反するように成長した。<br> しかし、翠星石が全くの冷血人間と言うわけでも無い。<br> 彼女も心の奥底にそういった心があるのだが、<br> ただ気恥ずかしさからうまく表現できないだけだった。<br> 「・・・・別におめぇなんぞに心配されるほどヤワじゃないですよ。でも、ありがとです。」<br> 思い切って訊いてみようかとも思ったが、徐々に薄れていった。まるで麻薬のようである。<br> 「手助け無用です。後三十分ほどで完成ですから、そこで涎垂らして待ってろですぅ。」 <br> <br> やっぱり、さっきのは自分が見た幻なんだ、きっと。そして今日の事も覚えていてくれてる。 <br> <br> 「うっし!出来たですぅ!」<br> 「おお!今日もハンバーグかぁ!でも美味そうじゃないか。」<br> 「────え?」<br> ───゙も゙ってどういうことですか?<br> 「ん、どうし・・・!あ、いや・・その・・・・」 <br> <br> 狼狽えるジュン。<br> こういう嘘を吐けないところも彼らしい。<br> しかし、今はそんなこと、どうでもよかった。 <br> <br> 「どういうこと、ですか」<br> 「・・・・・・・」 <br> <br> そう言えば、一昨日は晩ごはん要らないってメールが来てたっけ。まさか・・・・ <br> <br> 「巴、ですか。」<br> 「なっ!?」<br> 「やっぱり、ですか・・」<br> 「な、何がだよ・・・・」<br> 「いいですよ、しらばっくれなくても。<br> 今日、二人で帰るのを見たです。その後も。」<br> 「!・・そうか・・・」<br> 「ジュン。」<br> 「な、何?」<br> 「今日が何の日か、覚えてますか?」<br> 「・・・・へ?」<br> 「やっぱり、・・です・・・・かぁ・・・・っ。」<br> 嫌だ。泣きたくない。<br> 「翠星石・・・」<br> 「ジュンは・・ジュンは・・・・・・・・私と巴とどっちが良いですか?」<br> 「いきなり何を言い出すんだ!?」<br> 「答えるです!どっちですかっ!」<br> 「・・どっちも僕にとって大事だ。」<br> 「そ、そんなぁ・・っ・・・・」<br> 「だがな、聞いてくれ翠星石。僕は───」<br> 「もう・・・・嫌です。 <br> <br> もう・・・・翠星石はジュンの事が信じられないです。」<br> そう言って翠星石は部屋を出ていった。<br> <br> ------------------------ <br> <br> 「はぁ・・・・」 <br> <br> 溜息を吐くジュン。 <br> <br> 「どうしよっかなぁ・・・・」 <br> <br> プルルルル。プルルルル。 <br> <br> 携帯の着信を見る。・・巴だ。 <br> <br> 「・・・どうした?」<br> 「それはこっちの台詞よ。どうしたの?元気の無い声して。」<br> 「や、何でもないよ。ちょっと疲れてるだけ。」<br> 「そう。ねぇ、今から逢ってくれない?」<br> 「え!?今から?」<br> 「そう、今から。・・・・ダメ?」<br> 「・・ああ。分かった。じゃ、今からお前ん家に行くから。」<br> 「うん。待ってる。」<br> <br> 行かなくちゃ。重い腰を上げる。<br> <br> <br> <br> 『───続いて、海上の波の予想です。<br>  ・・・・県沖は6メートルから8メートルの非常に強い波となっております。<br>  海のレジャーなどは控えるようにしてください。────』</p>
<p>ガチャ<br> <br> 帰ってきた。あの後一時間も何してたんだろう?<br> いや、何も考えない事にしよう。せめて、今日の事を覚えておいてくれれば・・・・ <br> <br> 「ただいま。」<br> 「お帰りなさい。・・です。」 <br> <br> 駄目だ、声が震えている。頭が回らない。 <br> <br> 「ん?どうした?何か変じゃないか?」<br> 「・・翠星石はどこも変じゃないですよ?」<br> 「・・・・そうか。気分でも悪いんじゃないかと思って心配したよ。<br>  そんな状態の人に料理をさせるなんて出来ないからね。手伝おうか?」 <br> <br> ああ、この優しさ。飾り気の無い、本心からの優しさ。<br> 彼女はここに惹かれたのだ。自分に無いもの、に惹かれたのだ。<br> ジュンも昔は負けず劣らずの意地っ張りだったが、<br> いつからか二人の心はそれぞれ相反するように成長した。<br> しかし、翠星石が全くの冷血人間と言うわけでも無い。<br> 彼女も心の奥底にそういった心があるのだが、<br> ただ気恥ずかしさからうまく表現できないだけだった。<br> <br> 「・・・・別におめぇなんぞに心配されるほどヤワじゃないですよ。でも、ありがとです。」<br> <br> 思い切って訊いてみようかとも思ったが、徐々に薄れていった。まるで麻薬のようである。<br> <br> 「手助け無用です。後三十分ほどで完成ですから、そこで涎垂らして待ってろですぅ。」 <br> <br> やっぱり、さっきのは自分が見た幻なんだ、きっと。そして今日の事も覚えていてくれてる。 <br> <br> 「うっし!出来たですぅ!」<br> 「おお!今日もハンバーグかぁ!でも美味そうじゃないか。」<br> 「────え?」<br> ───゙も゙ってどういうことですか?<br> 「ん、どうし・・・!あ、いや・・その・・・・」 <br> <br> 狼狽えるジュン。<br> こういう嘘を吐けないところも彼らしい。<br> しかし、今はそんなこと、どうでもよかった。 <br> <br> 「どういうこと、ですか」<br> 「・・・・・・・」 <br> <br> そう言えば、一昨日は晩ごはん要らないってメールが来てたっけ。まさか・・・・ <br> <br> 「巴、ですか。」<br> 「なっ!?」<br> 「やっぱり、ですか・・」<br> 「な、何がだよ・・・・」<br> 「いいですよ、しらばっくれなくても。<br>  今日、二人で帰るのを見たです。その後も。」<br> 「!・・そうか・・・」<br> 「ジュン。」<br> 「な、何?」<br> 「今日が何の日か、覚えてますか?」<br> 「・・・・へ?」<br> 「やっぱり、・・です・・・・かぁ・・・・っ。」<br> <br> 嫌だ。泣きたくない。<br> <br> 「翠星石・・・」<br> 「ジュンは・・ジュンは・・・・・・・・私と巴とどっちが良いですか?」<br> 「いきなり何を言い出すんだ!?」<br> 「答えるです!どっちですかっ!」<br> 「・・どっちも僕にとって大事だ。」<br> 「そ、そんなぁ・・っ・・・・」<br> 「だがな、聞いてくれ翠星石。僕は───」<br> 「もう・・・・嫌です。 <br>  もう・・・・翠星石はジュンの事が信じられないです。」<br> <br> そう言って翠星石は部屋を出ていった。<br> <br> ------------------------ <br> <br> 「はぁ・・・・」 <br> <br> 溜息を吐くジュン。 <br> <br> 「どうしよっかなぁ・・・・」 <br> <br> プルルルル。プルルルル。 <br> <br> 携帯の着信を見る。・・巴だ。 <br> <br> 「・・・どうした?」<br> 「それはこっちの台詞よ。どうしたの?元気の無い声して。」<br> 「や、何でもないよ。ちょっと疲れてるだけ。」<br> 「そう。ねぇ、今から逢ってくれない?」<br> 「え!?今から?」<br> 「そう、今から。・・・・ダメ?」<br> 「・・ああ。分かった。じゃ、今からお前ん家に行くから。」<br> 「うん。待ってる。」<br> <br> 行かなくちゃ。重い腰を上げる。<br> <br> <br> <br> 『───続いて、海上の波の予想です。<br>  ・・・・県沖は6メートルから8メートルの非常に強い波となっております。<br>  海のレジャーなどは控えるようにしてください。────』</p>

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: