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第十三話「TONIGHT」」(2007/09/12 (水) 01:31:59) の最新版変更点

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<p>キミだけの夜に キミだけの夜に<br> キミだけの夜に キミだけの夜に<br> <br> 「これで私とジュンのお話は終りです」<br> ふぅ、長かった…。少し疲れた。喉がカラカラ。<br> 「ふぇっ、えぐっ、ひっ…」子供たちは二人とも泣いている。<br> 蒼星石も少し涙ぐんでいた。<br> 「ほらほら。二人とも風呂入って寝るですよ。ちーと遅くなっちまったですし、朝起きれなくなっちまうですからね」<br> 「う、うん。分かったよ」<br> 「お母さん、蒼姉ちゃん、一緒にお風呂入ろ?」<br> 「いいよ。でもちょっと待ってね。お皿洗うから先に入っててよ」<br> 「あ、いいですよ。私一人でするですから。三人とも入っとくです。後で行くですよ」<br> 「まぁまぁ、二人とも先に入っててね」<br> 「「はぁーい」」<br> <br> <br> LUNA SEA 第十三話 「TONIGHT」<br> <br> <br> ザァー。カチャカチャ。<br> <br> 「ねぇ、翠星石。さっき気付いたことがあるんだけど」<br> 「なんです?」 <br> <br> 「あの子たち二人の誕生日って変じゃない?」<br> 「というと?」<br> 「いやね、考えてみたら、ジュン君が亡くなった日と誕生日との計算があわないんだ」<br> 「あぁ、それでしたか。そーいや、言ってなかったですよ」<br> 「何を?」<br> 「別に、そう大きな事じゃないんですけどねぇ」<br> 「あ、もしかして、笹塚先生に聞こうとしてたこととか、結婚式に来てた先生と関係あるの?」<br> 「鋭いですよ。そうですっていうか、さっきはちぃとばかし口が滑ったですね。<br> 本当は墓まで持ってくつもりだったんですけど」<br> <br> <br> 「あの…、一つ聞きたいことがあるんですけど」<br> 「何ですか?」「どうした?翠星石」<br> 二人が同時にコトバを出す。<br> 「ジュンは先に行っててです」<br> 「どうしたんだよ、本当に」<br> 「何でもないですから、とにかく先に出とけです」<br> そうして、ジュンを診察室から追い出す。<br> <br> 「で、どうなされました?翠星石さん」<br> 「え~と、あの~、その~」<br> 少し聞きにくい。普通は聞くような事じゃないし。<br> 先生は相変わらずニコニコしてる。<br> <br> <br> 「あっと、子ど…ゴニョゴニョ…」<br> 「はい?」<br> 「子供を確実に産めるような方法ってあるんですか?」<br> 「ブッ!」先生が吹いた。呆然として私を見る。<br> 「だから、彼との子供が欲しいんですけど…」<br> 「え、えっとですね…、ちょっと待って下さい。そのことって桜田さんには聞いたんですか?」<br> 「あ、いやまだです」<br> 「一応、確実ってわけじゃあないんですけど、少しだけ確率を上げる方法があるにはありますがねぇ…。<br> その前に一度よく相談なさって下さい。話はそれからです。<br> でも、ぼく自身としては、地道な方法をおすすめしますけどねぇ…」<br> 「そうですか…。また今度聞いてみるです。ありがとうでした」<br> 「はい、ではまた。でも早めにご相談なさった方がいいですよ」<br> その日は、それで終わった。<br> <br> <br> そして、次に病院を訪れた時、<br> 「あれ?今日はどうなさいました?」<br> 「先生。決めたです。どうするのか、教えて下さいです」<br> <br> <br> <br> <br> 私たちは今、産婦人科にいる。笹塚先生に紹介された先生なのだが…。<br> 「笹塚に紹介されました、ベジータです、ってあれ?ジュンじゃねぇ、どうしたんだよ」<br> 「え?うわ、久しぶりだなベジータ。お前ここの病院にいたのか」<br> 「…だ、誰です?ジュン?」<br> ジュンの後ろに隠れながら聞く。<br> 「あぁ、この人はベジータで、大学の二つ上の先輩なんだ。偶然知り合ってさ」<br> 「ね、ねぇジュン。先輩なのにタメ口でいいんですか?」<br> 「あぁ、それは俺から言ったんだ。敬語やめろ、タメ口にしろってな。<br> 結構直すのに苦労したなぁ」<br> 「『敬語やめろ!』って殴られたしな。体に叩きこまれたよ」<br> 「な、なにしてるですか!」<br> 「まぁまぁ、それくらいは勘弁してやれよ」<br> <br> <br> 「そうだな。じゃとっとと本題にはいるぞ。これからやる方法は、はっきり言って100%ってわけじゃない。<br> 確率っつーより、回数、チャンスを上げることになる。<br> よく言う体外受精をする訳だが、普通、これは不妊治療へのもんだ。通常のカップルにはやんねぇな。必要性の問題なんだが。<br> 今回、それだけじゃなくて、凍結受精卵も使うつもりだ。<br> これは、受精卵の着床のタイミングを合わせるためだな。何回もミスるわけにはいかないからな。この方法を取らせてもらう。<br> んで、代わりにっちゃあなんだが、この治療のことは、絶対に口外しないで欲しい。<br> 二人の希望としては…、言いたくないんだが、ジュンの死後、それでも妊娠してなかった場合のためだろ?<br> いや、まぁそれをやってるのがばれると、色々マズイことになるからな」<br> 「いいのか?本当にそんなことして。迷惑だろ?」<br> 「ふざけんなよ。俺は医者だ。それを教えてくれたのは、お前だろうが。せめてもの恩返しぐらいさせてくれ」<br> <br> <br> <br> <br> 「とまぁ、こんな感じで決まったんですよっと、後は私がやっとくから先に風呂行っとけです」<br> 「へぇ~そんなことがあったんだ。でも、ジュン君が亡くなった後の翠星石は見てて本当に辛かった。散骨の時なんか、一緒に海に落ちそうなくらい。<br> その治療のことがなかったら、絶対倒れてたよね?」<br> 「そうかもですねぇ~。あの時、私はギリギリで生きてたですね。<br> まぁ、その前にジュンに追って来るなって言われてたですけど」<br> 「そうだったね。そういえば、ジュン君とベジータ先生の間に何があったのか聞いてる?」<br> 「詳しくは知らないですけど、なんでもベジータは、医学部に入ったはいいけど、そこで軽く燃え尽きちゃってたらしいです。<br> で、偶然妊婦さんの出産に立ち会うことになったみたいですけど、パニックになっちゃって、その時ジュンが手助けして、ベジータに怒鳴って落ち着かせたらしいですよ。<br> それで、なんで医学部に入ったのか思い出したですって。<br> それに、その赤ん坊が産まれた時、感動しちゃって、それ以来産婦人科医を目指し始めたんですって」<br> 「何てジュン君は言ったの?」<br> <br> <br> 「確か、『この馬鹿野郎!お前は半人前でも医者は医者だろうが!<br> 何のためにその両手を持って医学部に入ったんだよ!人を救うためだろうが!』だったです」<br> 「ふ~ん。そんなことがあったんだ。大きいね」<br> 「そうですよ。あいつは何だかんだで色んな人を救ってたですからね。じゃあ、そろそろ風呂入っとけです」<br> 「うん。分かったよ」<br> <br> <br> 一つ飛ばしてたことがある。これこそ、誰に言うことでもないが。<br> 思い返すと今でも胸を締め付けられる。それは、最初の検診から帰った日の夜のこと。<br> <br> <br> 「ジュン。今日は一緒に寝ろです」<br> 「…は?えぇっ!?」<br> 「と、ととととにかく、一緒に寝やがれです!」<br> 「うわ!勝手に入って来んなよ!抱きつくな!」<br> 「お、おおおお願いです…。す、すすす翠星石をだ、だだ抱けです」<br> 「え?な、なな何言ってんだよ!お前は!」<br> <br> <br> 「頼むですよ…。お互い大人ですし、もうそれくらいは普通ですよね?こ、恋人なんですし。<br> 無茶言ってるのは分かってるですけど…、お願いです。のりは今日もいないですし」<br> 「う、うぐぅっ。そんな目で見るなよ。反則だ…。でも、いいのか?」<br> 「いいです。ジュンだから」<br> <br> <br> その夜、私たちは、何度も、何度も、深く、深く交わり合った。<br> お互いの全てを奪うよう、お互いの傷を癒すよう、激しく、優しく。<br> <br> <br> 事が終わった後、彼の腕の中で、<br> 「ねぇジュン。もう一つお願い、頼み事があるです…」<br> <br> <br> 「ふぅ。そろそろ私も風呂行くですか」<br> その前に、この胸の高鳴りを沈めてから。何年も前のことなのに…。<br> <br> <br> 第十三話 「TONIGHT」 了</p>

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