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<p> 2007年7月2日 くもり<br>
<br>
廊下を歩いていたときに、「金糸雀ってのはおめぇですか?」<br>
って、急に声をかけられたかしら。<br>
高等部の制服を着た、目の色が蒼星石と反対の人。<br>
「そうですけど、なにかごようかしら?」<br>
「えーっと、そう。蒼星石がお世話になっているようなんで、あいさつしに来てやったですぅ」<br>
カナもぴんと来たかしら。<br>
「ひょっとして蒼星石のお姉さん?」<br>
「そう。翠星石っていうですよ。」<br>
「あ、いつも蒼星石にお世話になってます」<br>
ここまでは普通だったんだけれど。<br>
「ふーん。お前がねぇ」って言いながら、顔をずいっと近づけてきて。<br>
それを離したと思ったら。<br>
「それにしても、どんな奴かと思ってたけれど、ずいぶんちびっちゃい奴ですね」<br>
いきなり、いじわるをそうな笑顔でそんなことを言ってきたかしら。<br>
「な…」<br>
カナが困ってたら、翠星石はさっきより小さい声で<br>
「妹がこれなら水銀燈ってのも、案外たいしたことなさそうですぅ」<br>
むちゃくちゃなことを言ってきたのよ。<br>
「おねえちゃんはもっとすごいかしら!」<br>
って言っても、笑いながら<br>
「おでこの面積がですか?」<br>
だって。さすがにこの温厚乙女金糸雀もカチンときたかしら。<br>
<br>
ピチカート、ここでカナは決心したのよ。<br>
おねえちゃん流口ゲンカ術初級の腕前みせつけてくれるかしらって!<br>
けれど、その前に一度すーはーと深呼吸。ちゃんと思い出すかしら。<br>
<br>
おねえちゃん流口ゲンカ術<br>
その1、相手の目立つところをとにかくけなせ。<br>
その2、自分で言った悪口を、さらに悪い言葉で上ぬりする!<br>
その3、相手がたじろいだ時が最大のチャンス!一気に止めをさす。<br>
『1と2のコンビネーションで、たたみかける力は通常の5倍の破壊力を生むわぁ』<br>
『そうやってできた隙を容しゃなく、えぐりぬきなさぁい』<br>
『私のかわいい金糸雀、誰にだって簡単に屈しちゃだめよ。やってきた相手には7倍で返しなさい』<br>
よし、カナ落ち着いてる。その時お姉ちゃんが4本目のヤクルトを飲んでたことまで思い出せたわ。<br>
おっけい、おねえちゃん。カナは負けやしないかしら。</p>
<p> 反撃開始!<br>
「あなたこそ、夏なのに髪の毛が多くて長くて、暑つっさのあまり、頭がゆだってるんじゃなあぃ?」<br>
おねえちゃんの声まねまでばっちり。翠星石がたじろいだかしら。<br>
その1はばっちり。<br>
いざ、その2と思ったんだけれど、それ以上悪口が思いつかなかったかしら。<br>
「ええと…」<br>
考えてたら、<br>
「あ、頭が小さいのはお前のほうですよカナチビッ、でかいのはおでこだけのくせに!」<br>
打ち返されて。<br>
「デコチビーッ」<br>
「フサフサーッ」<br>
あとは乱打戦だった。<br>
<br>
10分は続けたかしら。<br>
「はぁ、はぁ…なかなかやるですね、カナチビ」<br>
「あなたこそ…」<br>
どちらからともなく笑って、なんとなく仲良くなったかしら。</p>
<p> 翠星石は紙パックのオレンジジュースをおごってくれた。<br>
「だいたい、丈の合わない制服なんて着てるから、よけい小さく見えるですよ。<br>
腕なんてすっぽりかくれてまだ余ってるじゃねぇですか」<br>
翠星石はおこりんぼなのか、おせっかいなのかよくわからない人かしら。<br>
「これはおねえちゃんの制服かしら。」<br>
「お古ですか?」<br>
「ううん、カナがお願いしてもらったの」<br>
ってカナが答えたら。<br>
「その姉を思う心、気に入ったですぅ」<br>
だって。<br>
少なくとも感激屋さんかしら。</p>
<hr>
<p><br>
2007年7月3日 あめ<br>
<br>
部室でばらしーちゃんと落花生を食べてたら、蒼星石が来たかしら。<br>
「昨日姉さんが迷惑かけたみたいで…」<br>
蒼星石はしょんぼりしてた。いっつも翠星石のフォローをしてるのかしら…。<br>
「んーん、楽しかったわ。」<br>
「そう…ならいいんだけど」<br>
「蒼星石は巴みたいに心配性ね」って言ったら、<br>
「巴…どんな人?」<br>
不思議そうに聞き返された。<br>
そういえば、蒼星石は巴に会ったことなかったのね。<br>
雛苺の親友よ。蒼星石によく似てるかも。って言ったら、<br>
「へぇ、雛苺のね」<br>
興味深そうにしてた。<br>
あれ、でも蒼星石は雛苺とも会ったことはなかったかしら?<br>
<br>
その後はばらしーちゃんとマラカス振りながら踊ったりしたかしら。<br>
<strong><u> ち な み に 、</u></strong>蒼星石とのチェスの決着は47回目の決着までおあずけね。</p>
<hr>
<p><br>
2007年7月7日 はれ<br>
<br>
今日は街の七夕祭り。<br>
卵焼き柄の浴衣を着て、おねえちゃんと街をそそろ歩いたかしら。<br>
途中でみっちゃん、ばらしーちゃん、雛苺に巴と合流して、七夕パレード見てたら、<br>
なんと主役の織姫と彦星が翠星石と蒼星石だったのよ!<br>
<br>
緑の着物を着た、織姫翠星石そっとうつむくように座っていて、彦星蒼星石は天秤棒を<br>
やりみたいに持って、翠星石を守るみたいに、りんと立っていたかしら。<br>
毎年、パレードの二人はいい出来だけれど、今年のは本当に絵になっていて、周りの人<br>
も感心して声をあげていたかしら。<br>
おねえちゃんは「やってくれるわぁ、一葉の爺様」って呟いてた。<br>
<br>
槐さんが一葉さんのことを色々教えてくれた。<br>
一葉さんは業界トップの植物卸の会長さんなんだって。<br>
「花卉の王」の異名を持ってるらしいかしら。<br>
お祭りには毎年参加してるけれど、今度の人形展覧会はあんまり手伝ってくれなかったんだって。<br>
<br>
パレードを見てるとき、ばらしーちゃんは槐さんに肩車してもらってた。<br>
ついつい、いいなーって思ってみてたら、ばらしーちゃんが「お父様…カナお姉さまも」って気を利かせてくれたかしら。<br>
カナもえんりょはしたんだけれど、おねえちゃんも勧めてくれたから、ちょっとだけ肩車してもらっちゃった。<br>
その後は、雛苺も肩車してもらったかしら。雛苺ったら、よっぽど肩車が気に入ったみたいで、とってもはしゃいでた。<br>
<br>
七夕のお願いは「甘くてでっかい卵焼き」って書いたけれど、雛苺は「こんな日がずっと続きますように」ってお願いしたんだって。<br>
巴も一緒のお願いにしたみたい。<br>
カナは二人と夏休みはいっぱい遊ぶ約束をしたかしら。</p>
<p> 2007年7月2日 くもり<br /><br />
廊下を歩いていたときに、「金糸雀ってのはおめぇですか?」<br />
って、急に声をかけられたかしら。<br />
高等部の制服を着た、目の色が蒼星石と反対の人。<br />
「そうですけど、なにかごようかしら?」<br />
「えーっと、そう。蒼星石がお世話になっているようなんで、あいさつしに来てやったですぅ」<br />
カナもぴんと来たかしら。<br />
「ひょっとして蒼星石のお姉さん?」<br />
「そう。翠星石っていうですよ。」<br />
「あ、いつも蒼星石にお世話になってます」<br />
ここまでは普通だったんだけれど。<br />
「ふーん。お前がねぇ」って言いながら、顔をずいっと近づけてきて。<br />
それを離したと思ったら。<br />
「それにしても、どんな奴かと思ってたけれど、ずいぶんちびっちゃい奴ですね」<br />
いきなり、いじわるをそうな笑顔でそんなことを言ってきたかしら。<br />
「な…」<br />
カナが困ってたら、翠星石はさっきより小さい声で<br />
「妹がこれなら水銀燈ってのも、案外たいしたことなさそうですぅ」<br />
むちゃくちゃなことを言ってきたのよ。<br />
「おねえちゃんはもっとすごいかしら!」<br />
って言っても、笑いながら<br />
「おでこの面積がですか?」<br />
だって。さすがにこの温厚乙女金糸雀もカチンときたかしら。<br /><br />
ピチカート、ここでカナは決心したのよ。<br />
おねえちゃん流口ゲンカ術初級の腕前みせつけてくれるかしらって!<br />
けれど、その前に一度すーはーと深呼吸。ちゃんと思い出すかしら。<br /><br />
おねえちゃん流口ゲンカ術<br />
その1、相手の目立つところをとにかくけなせ。<br />
その2、自分で言った悪口を、さらに悪い言葉で上ぬりする!<br />
その3、相手がたじろいだ時が最大のチャンス!一気に止めをさす。<br />
『1と2のコンビネーションで、たたみかける力は通常の5倍の破壊力を生むわぁ』<br />
『そうやってできた隙を容しゃなく、えぐりぬきなさぁい』<br />
『私のかわいい金糸雀、誰にだって簡単に屈しちゃだめよ。やってきた相手には7倍で返しなさい』<br />
よし、カナ落ち着いてる。その時お姉ちゃんが4本目のヤクルトを飲んでたことまで思い出せたわ。<br />
おっけい、おねえちゃん。カナは負けやしないかしら。</p>
<p> 反撃開始!<br />
「あなたこそ、夏なのに髪の毛が多くて長くて、暑つっさのあまり、頭がゆだってるんじゃなあぃ?」<br />
おねえちゃんの声まねまでばっちり。翠星石がたじろいだかしら。<br />
その1はばっちり。<br />
いざ、その2と思ったんだけれど、それ以上悪口が思いつかなかったかしら。<br />
「ええと…」<br />
考えてたら、<br />
「あ、頭が小さいのはお前のほうですよカナチビッ、でかいのはおでこだけのくせに!」<br />
打ち返されて。<br />
「デコチビーッ」<br />
「フサフサーッ」<br />
あとは乱打戦だった。<br /><br />
10分は続けたかしら。<br />
「はぁ、はぁ…なかなかやるですね、カナチビ」<br />
「あなたこそ…」<br />
どちらからともなく笑って、なんとなく仲良くなったかしら。</p>
<p> 翠星石は紙パックのオレンジジュースをおごってくれた。<br />
「だいたい、丈の合わない制服なんて着てるから、よけい小さく見えるですよ。<br />
腕なんてすっぽりかくれてまだ余ってるじゃねぇですか」<br />
翠星石はおこりんぼなのか、おせっかいなのかよくわからない人かしら。<br />
「これはおねえちゃんの制服かしら。」<br />
「お古ですか?」<br />
「ううん、カナがお願いしてもらったの」<br />
ってカナが答えたら。<br />
「その姉を思う心、気に入ったですぅ」<br />
だって。<br />
少なくとも感激屋さんかしら。</p>
<hr /><p><br />
2007年7月3日 あめ<br /><br />
部室でばらしーちゃんと落花生を食べてたら、蒼星石が来たかしら。<br />
「昨日姉さんが迷惑かけたみたいで…」<br />
蒼星石はしょんぼりしてた。いっつも翠星石のフォローをしてるのかしら…。<br />
「んーん、楽しかったわ。」<br />
「そう…ならいいんだけど」<br />
「蒼星石は巴みたいに心配性ね」って言ったら、<br />
「巴…どんな人?」<br />
不思議そうに聞き返された。<br />
そういえば、蒼星石は巴に会ったことなかったのね。<br />
雛苺の親友よ。蒼星石によく似てるかも。って言ったら、<br />
「へぇ、雛苺のね」<br />
興味深そうにしてた。<br />
あれ、でも蒼星石は雛苺とも会ったことはなかったかしら?<br /><br />
その後はばらしーちゃんとマラカス振りながら踊ったりしたかしら。<br /><strong><u> ち な み に 、</u></strong>蒼星石とのチェスの決着は47回目の決着までおあずけね。</p>
<hr /><p><br />
2007年7月7日 はれ<br /><br />
今日は街の七夕祭り。<br />
卵焼き柄の浴衣を着て、おねえちゃんと街をそそろ歩いたかしら。<br />
途中でみっちゃん、ばらしーちゃん、雛苺に巴と合流して、七夕パレード見てたら、<br />
なんと主役の織姫と彦星が翠星石と蒼星石だったのよ!<br /><br />
緑の着物を着た、織姫翠星石そっとうつむくように座っていて、彦星蒼星石は天秤棒を<br />
やりみたいに持って、翠星石を守るみたいに、りんと立っていたかしら。<br />
毎年、パレードの二人はいい出来だけれど、今年のは本当に絵になっていて、周りの人<br />
も感心して声をあげていたかしら。<br />
おねえちゃんは「やってくれるわぁ、一葉の爺様」って呟いてた。<br /><br />
槐さんが一葉さんのことを色々教えてくれた。<br />
一葉さんは業界トップの植物卸の会長さんなんだって。<br />
「花卉の王」の異名を持ってるらしいかしら。<br />
お祭りには毎年参加してるけれど、今度の人形展覧会はあんまり手伝ってくれなかったんだって。<br /><br />
パレードを見てるとき、ばらしーちゃんは槐さんに肩車してもらってた。<br />
ついつい、いいなーって思ってみてたら、ばらしーちゃんが「お父様…カナお姉さまも」って気を利かせてくれたかしら。<br />
カナもえんりょはしたんだけれど、おねえちゃんも勧めてくれたから、ちょっとだけ肩車してもらっちゃった。<br />
その後は、雛苺も肩車してもらったかしら。雛苺ったら、よっぽど肩車が気に入ったみたいで、とってもはしゃいでた。<br /><br />
七夕のお願いは「甘くてでっかい卵焼き」って書いたけれど、雛苺は「こんな日がずっと続きますように」ってお願いしたんだって。<br />
巴も一緒のお願いにしたみたい。<br />
カナは二人と夏休みはいっぱい遊ぶ約束をしたかしら。</p>