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<br>
夜霧に染まり尽くした山道を抜けるまで、延々と続けられる徐行運転。<br>
そのため、コリンヌが屋敷に帰り着いたのは、すっかり夜も更けた頃だった。<br>
<br>
キィ――<br>
深夜の静穏にあって、車の甲高いブレーキノイズは、やたらと大きく響く。<br>
それを聞きつけたのだろう。屋敷のドアが開いて、小柄な侍女が幼顔を覗かせる。<br>
侍女は、車を目にするや瞳を輝かせ、スカートを翻しながら車窓に縋りついた。<br>
<br>
「コリンヌお嬢様ー、おかえりなさいませなのっ。<br>
あんまり帰りが遅いから、旦那様もヒナも、いーっぱい心配してたのよ?」<br>
「ごめんなさい、雛苺。山で霧に巻かれて、立ち往生していたの」<br>
「それはお疲れさ……まな……の」<br>
<br>
明るい声を振りまいていた侍女は、しかし、車内を見るや、俄に眉を曇らせた。<br>
彼女の碧眼が向けられた先には、見ず知らずの娘の、苦しげな寝顔。<br>
<br>
「お嬢様…………その子……誰なの?」<br>
「山道を彷徨っていたから、保護したのよ。ケガの手当をしてあげないと。<br>
手を貸してちょうだい、雛苺。お部屋に運ぶわ」<br>
「は、はいなのーっ」<br>
<br>
運転手には車の片付けを任せて、コリンヌと雛苺は、左右から娘を支えて歩き始めた。<br>
そして、シーツが汚れるのも構わず、来客用のベッドに娘を寝かし付けた。<br>
手当をするにも、まずは身体の汗や泥を拭かなければ。<br>
雛苺に湯を沸かすよう言いつけて、コリンヌは、娘の数少ない着衣を脱がせ始めた。<br>
<br>
<br>
<br>
第二話 『Graceful World』<br>
<br>
<br>
<br>
なんて、透きとおるような肌なのかしら。<br>
シュミーズに隠されていた娘の柔らかな白皙に、コリンヌは目を奪われ、<br>
熱っぽく吐息した。一見、コリンヌと大差ない歳のようだが、娘の胸はふくよかで、<br>
キュッと括れた腰からも、女としての妖しい色香が漂いだしている。<br>
<br>
細い首筋、浮き出した鎖骨、幾筋もの薄影を刻む脇腹、落ちくぼんだ臍……<br>
そして、脚のつけ根にある、秘めやかな茂み。<br>
一糸まとわぬ娘の、ありとあらゆる魅力が、見る者を惹き付けて止まない。<br>
コリンヌも、女の子同士であるにも拘わらず、恋に似た胸の昂りを覚えていた。<br>
<br>
「本当に、不思議な子……実は、森の妖精さんじゃあないのかしら」<br>
<br>
コリンヌは、眠り続けている娘の左隣りに、ふわりと身を横たえた。<br>
しなやかに指をくねらせ、娘の白い髪をサクサク掻き分けて、耳を探り当てる。<br>
そして、ぷるんとした耳たぶを指で玩びながら顔を寄せ、耳元で囁いた。<br>
<br>
「ねえ…………貴女は、だぁれ?」<br>
<br>
問いかける声が、おののいていた。いつの間にやら、頬が熱を帯びている。<br>
コリンヌは、不意に訪れた興奮を鎮める術を知らず、ただ、くらくらと……<br>
瀬を行く木の葉の如く、押し寄せる熱情の波に翻弄されるがままだった。<br>
<br>
美しいモノへの憧憬と畏敬――<br>
もっと近くで見たい。許されるものなら、思う存分、触りつくしてみたい。<br>
そんな、欲望とも渇望ともつかない感情が、コリンヌの胸を掻きむしる。<br>
<br>
偶像崇拝と、偶像破壊……<br>
妖しい衝動は、相反するものを乳鉢に入れて擦り潰し、ひとつに混ぜ合わせる。<br>
気づけば、彼女は汗と泥で薄汚れた娘の冷たい頬に、そっと唇を押し当てていた。<br>
<br>
<br>
はしたない! 浮つくコリンヌを、乙女としての潔癖な理性が、厳しく叱責する。<br>
こんなことしては、いけない。淑女にあるまじき、浅ましい行為だ。<br>
……解っている。だけど……娘の身体をまさぐる腕を、止められなかった。<br>
<br>
次第に、荒くなっていく呼吸。コリンヌは眩暈を覚えていた。<br>
じわじわと、彼女の背筋を、得体の知れないナニかが衝き上がってくる。<br>
もう、これ以上はダメ――<br>
理性のタガが軋めいて、自制を促すけれど、欲望の勢いを削ぐことができない。<br>
<br>
コリンヌの中で、ナニかが炸裂しそうだった。頭が痺れて、真っ白になる感覚。<br>
その気持ちよさに、もう上品な世界に戻れなくても良いとさえ思った矢先……<br>
ドアがノックされて、雛苺のくぐもった声が、厚い板越しに呼びかけてきた。<br>
<br>
「コリンヌお嬢様ー。お湯と、おクスリを用意してきたのー」<br>
「あっ?! え、ええ……ご苦労さま。待ってて、いまドアを開けるわ」<br>
<br>
幸か、不幸か。さながら破裂寸前まで膨らんだ風船を針でつついたように、<br>
コリンヌを悩ましく悶えさせていたナニかは、急速に萎んで消え失せた。<br>
跳ねるように身を起こした彼女は、内開きのドアに駆け寄って、雛苺を招き入れた。<br>
<br>
「うよ? コリンヌお嬢様……なんだか、お顔が紅いのよ?」<br>
「き、気のせいよ。それより、もうひとつ頼みを聞いて欲しいの。<br>
わたしのお部屋へ行って、この子の着替えを持ってきてちょうだい」<br>
「う、ういー!」<br>
<br>
雛苺は釈然としない面持ちながら、ことこと靴を鳴らして、服を取りに向かった。<br>
コリンヌは、遠ざかる雛苺の背中を暫く見送ってから、徐にドアを閉ざした。<br>
そして、気合い十分に腕まくりして、きりりと表情を引き締めると、<br>
ぬるま湯を張った洗面器に、真っ白なタオルを浸した。<br>
<br>
<br>
この娘は、いったい何をしていたのだろう? どんな目に遭ったのだろう?<br>
コリンヌと雛苺は、色々と考え得ることを並べながら、傷の手当を続けた。<br>
あとは、この娘の目覚めを待って、詳しい話を聞いてみるしかない。<br>
夜が明ければ、すべてが解る。コリンヌも雛苺も、そう思っていた。<br>
<br>
~ ~ ~<br>
<br>
翌朝、コリンヌは目を覚ますと、身繕いもそこそこに娘の部屋を訪れた。<br>
まだ眠っているかも。コリンヌの不安は、しかし、杞憂に終わる。<br>
かの娘はベッドの上に半身を起こして、ひたと、彼女を見据えていた。<br>
<br>
「起きていたのね。具合はどう? あ……わたしの言葉、通じているかしら?」<br>
<br>
こくり。娘は、目を凝らさなければ解らないほど微かに、だがハッキリと頷いた。<br>
<br>
「それは良かったわ。それじゃあ……まず初めに、貴女の名前を教えて」<br>
「な……ま……え? 私…………えぇと…………私は……誰?」<br>
「まあ! 冗談でしょう? 自分の名前が、分からないだなんて」<br>
<br>
だが、嘘を吐いているようには見えない。何らかのショックによる、記憶障害かも。<br>
身元の調査は、もう少し落ち着いてからの方が良いわねと、コリンヌは判断した。</p>
<p>「仕方ないわ。じゃあ仮に……あくまで仮に、よ? 貴女のこと――」<br>
コリンヌは、娘の胸元で輝いているペンダントに目を留めて、切り出した。<br>
「きらきしょう……雪華綺晶って、呼んでも良いかしら」<br>
<br>
キラキラと光を放つ雪の結晶を見ていて、咄嗟に閃いた呼び名だ。<br>
彼女は、何度か口の中でその名を呟き……ニッコリと満足そうに微笑んで、言った。<br>
<br>
<br>
「改めまして……初めまして。私は――――雪華綺晶」<br>
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<br></p>
<hr>
<br>
<br>
第二話 終<br>
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<br>
【3行予告?!】<br>
<br>
名前……それは、燃える命――<br>
彼女は私に、素敵なものをプレゼントして下さいました。<br>
だから、私は……その恩返しを、したいと思ったのです。<br>
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次回、第三話 『For the moment』<br>
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夜霧に染まり尽くした山道を抜けるまで、延々と続けられる徐行運転。<br>
そのため、コリンヌが屋敷に帰り着いたのは、すっかり夜も更けた頃だった。<br>
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キィ――<br>
深夜の静穏にあって、車の甲高いブレーキノイズは、やたらと大きく響く。<br>
それを聞きつけたのだろう。屋敷のドアが開いて、小柄な侍女が幼顔を覗かせる。<br>
侍女は、車を目にするや瞳を輝かせ、スカートを翻しながら車窓に縋りついた。<br>
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「コリンヌお嬢様ー、おかえりなさいませなのっ。<br>
あんまり帰りが遅いから、旦那様もヒナも、いーっぱい心配してたのよ?」<br>
「ごめんなさい、雛苺。山で霧に巻かれて、立ち往生していたの」<br>
「それはお疲れさ……まな……の」<br>
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明るい声を振りまいていた侍女は、しかし、車内を見るや、俄に眉を曇らせた。<br>
彼女の碧眼が向けられた先には、見ず知らずの娘の、苦しげな寝顔。<br>
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「お嬢様…………その子……誰なの?」<br>
「山道を彷徨っていたから、保護したのよ。ケガの手当をしてあげないと。<br>
手を貸してちょうだい、雛苺。お部屋に運ぶわ」<br>
「は、はいなのーっ」<br>
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運転手には車の片付けを任せて、コリンヌと雛苺は、左右から娘を支えて歩き始めた。<br>
そして、シーツが汚れるのも構わず、来客用のベッドに娘を寝かし付けた。<br>
手当をするにも、まずは身体の汗や泥を拭かなければ。<br>
雛苺に湯を沸かすよう言いつけて、コリンヌは、娘の数少ない着衣を脱がせ始めた。<br>
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第二話 『Graceful World』<br>
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なんて、透きとおるような肌なのかしら。<br>
シュミーズに隠されていた娘の柔らかな白皙に、コリンヌは目を奪われ、<br>
熱っぽく吐息した。一見、コリンヌと大差ない歳のようだが、娘の胸はふくよかで、<br>
キュッと括れた腰からも、女としての妖しい色香が漂いだしている。<br>
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細い首筋、浮き出した鎖骨、幾筋もの薄影を刻む脇腹、落ちくぼんだ臍……<br>
そして、脚のつけ根にある、秘めやかな茂み。<br>
一糸まとわぬ娘の、ありとあらゆる魅力が、見る者を惹き付けて止まない。<br>
コリンヌも、女の子同士であるにも拘わらず、恋に似た胸の昂りを覚えていた。<br>
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「本当に、不思議な子……実は、森の妖精さんじゃあないのかしら」<br>
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コリンヌは、眠り続けている娘の左隣りに、ふわりと身を横たえた。<br>
しなやかに指をくねらせ、娘の白い髪をサクサク掻き分けて、耳を探り当てる。<br>
そして、ぷるんとした耳たぶを指で玩びながら顔を寄せ、耳元で囁いた。<br>
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「ねえ…………貴女は、だぁれ?」<br>
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問いかける声が、おののいていた。いつの間にやら、頬が熱を帯びている。<br>
コリンヌは、不意に訪れた興奮を鎮める術を知らず、ただ、くらくらと……<br>
瀬を行く木の葉の如く、押し寄せる熱情の波に翻弄されるがままだった。<br>
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美しいモノへの憧憬と畏敬――<br>
もっと近くで見たい。許されるものなら、思う存分、触りつくしてみたい。<br>
そんな、欲望とも渇望ともつかない感情が、コリンヌの胸を掻きむしる。<br>
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偶像崇拝と、偶像破壊……<br>
妖しい衝動は、相反するものを乳鉢に入れて擦り潰し、ひとつに混ぜ合わせる。<br>
気づけば、彼女は汗と泥で薄汚れた娘の冷たい頬に、そっと唇を押し当てていた。<br>
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はしたない! 浮つくコリンヌを、乙女としての潔癖な理性が、厳しく叱責する。<br>
こんなことしては、いけない。淑女にあるまじき、浅ましい行為だ。<br>
……解っている。だけど……娘の身体をまさぐる腕を、止められなかった。<br>
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次第に、荒くなっていく呼吸。コリンヌは眩暈を覚えていた。<br>
じわじわと、彼女の背筋を、得体の知れないナニかが衝き上がってくる。<br>
もう、これ以上はダメ――<br>
理性のタガが軋めいて、自制を促すけれど、欲望の勢いを削ぐことができない。<br>
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コリンヌの中で、ナニかが炸裂しそうだった。頭が痺れて、真っ白になる感覚。<br>
その気持ちよさに、もう上品な世界に戻れなくても良いとさえ思った矢先……<br>
ドアがノックされて、雛苺のくぐもった声が、厚い板越しに呼びかけてきた。<br>
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「コリンヌお嬢様ー。お湯と、おクスリを用意してきたのー」<br>
「あっ?! え、ええ……ご苦労さま。待ってて、いまドアを開けるわ」<br>
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幸か、不幸か。さながら破裂寸前まで膨らんだ風船を針でつついたように、<br>
コリンヌを悩ましく悶えさせていたナニかは、急速に萎んで消え失せた。<br>
跳ねるように身を起こした彼女は、内開きのドアに駆け寄って、雛苺を招き入れた。<br>
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「うよ? コリンヌお嬢様……なんだか、お顔が紅いのよ?」<br>
「き、気のせいよ。それより、もうひとつ頼みを聞いて欲しいの。<br>
わたしのお部屋へ行って、この子の着替えを持ってきてちょうだい」<br>
「う、ういー!」<br>
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雛苺は釈然としない面持ちながら、ことこと靴を鳴らして、服を取りに向かった。<br>
コリンヌは、遠ざかる雛苺の背中を暫く見送ってから、徐にドアを閉ざした。<br>
そして、気合い十分に腕まくりして、きりりと表情を引き締めると、<br>
ぬるま湯を張った洗面器に、真っ白なタオルを浸した。<br>
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この娘は、いったい何をしていたのだろう? どんな目に遭ったのだろう?<br>
コリンヌと雛苺は、色々と考え得ることを並べながら、傷の手当を続けた。<br>
あとは、この娘の目覚めを待って、詳しい話を聞いてみるしかない。<br>
夜が明ければ、すべてが解る。コリンヌも雛苺も、そう思っていた。<br>
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翌朝、コリンヌは目を覚ますと、身繕いもそこそこに娘の部屋を訪れた。<br>
まだ眠っているかも。コリンヌの不安は、しかし、杞憂に終わる。<br>
かの娘はベッドの上に半身を起こして、ひたと、彼女を見据えていた。<br>
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「起きていたのね。具合はどう? あ……わたしの言葉、通じているかしら?」<br>
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こくり。娘は、目を凝らさなければ解らないほど微かに、だがハッキリと頷いた。<br>
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「それは良かったわ。それじゃあ……まず初めに、貴女の名前を教えて」<br>
「な……ま……え? 私…………えぇと…………私は……誰?」<br>
「まあ! 冗談でしょう? 自分の名前が、分からないだなんて」<br>
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だが、嘘を吐いているようには見えない。何らかのショックによる、記憶障害かも。<br>
身元の調査は、もう少し落ち着いてからの方が良いわねと、コリンヌは判断した。</p>
<p>「仕方ないわ。じゃあ仮に……あくまで仮に、よ? 貴女のこと――」<br>
コリンヌは、娘の胸元で輝いているペンダントに目を留めて、切り出した。<br>
「きらきしょう……雪華綺晶って、呼んでも良いかしら」<br>
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キラキラと光を放つ雪の結晶を見ていて、咄嗟に閃いた呼び名だ。<br>
彼女は、何度か口の中でその名を呟き……ニッコリと満足そうに微笑んで、言った。<br>
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「改めまして……初めまして。私は――――雪華綺晶」<br>
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第二話 終<br>
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【3行予告?!】<br>
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名前……それは、燃える命――<br>
彼女は私に、素敵なものをプレゼントして下さいました。<br>
だから、私は……その恩返しを、したいと思ったのです。<br>
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次回、第三話 『For the moment』<br>
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