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『六月のおわり』」(2010/02/10 (水) 02:03:48) の最新版変更点

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<div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt">『保守かしら』<br> 2007年6月18日 あめ</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> おねえちゃんが日記を見つけてくれた!</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> てっきりフランスのどこかで落としたんだと思ってたけれど、食器だなの裏にはさまってたわ。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> これは策士でも気づけない盲点ね。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> 「どうしたらそんなところに落とせるのよ?」って聞かれたけれど、自分でもちょびっとふしぎ!?</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> 「一生付き合っていくことだってできるのよ?もっと大切にしてあげなさい。」っておねえちゃんに言われた。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> 返す言葉もございませんかしら…。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> この日記は中の紙を取りかえて、一生使っていくことができるんだって。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> おねえちゃんからもらった日記帳、もちろんずーっと使っていくかしら!</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> そのために日記帳さん、あなたに名前をつけてあげる。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> 名前は…そう、ピチカートかしら。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> ピチカートはいつもカナの近くにいてね。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> きっとずーっといっしょよ!<br> <br> <br></span> <hr> <br> <span style="font-size: 12pt"><br> 『保守かしら』<br></span> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"><span style= "font-size: 12pt">2007年6月20日 あめ つゆ</span></span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> 今日は千客万来の日。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> いつもどおり部室でばらしーちゃんとチェスをしてたら、蒼星石が訪ねてきたかしら。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> 蒼星石は雨ばっかりで、園芸部の仕事ができないって、こぼしてた。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> 家に帰ると、おねえちゃんのおきゃくさまが何人もいたかしら。 </span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> 家で夜会を開くための打ち合わせのためにいらしてたんだって。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> おねえちゃんってば、はりきっちゃって家中をひっくり返しそうないきおい。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> カナまで慌てちゃいそうかしら。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt"> <strong><u>そ う いえば、</u> </strong>蒼星石とのチェスはこれでカナの32連敗。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 12pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt">だいじょうぶよピチカート。この冷静乙女金糸雀は敗北もクールに受け止めるわ、ぜんっぜんくやしくないかしら!</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 12pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt">きっと33回目は負けないもん…!<br> <br></span><br> <hr> <span style="font-size: 12pt"><br> <br> 『保守かしら』<br></span><span style="font-size: 12pt"><span style= "font-size: 12pt">2007年6月21日 あめ</span></span> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt">巴が雛苺がもうすぐ帰ってくるって教えてくれた。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt">あんなことがあったフランスを離れて、退院後はこっち</span><span style= "font-size: 12pt">の学校に戻ってくるんだって。<br></span><span style= "font-size: 12pt"> 雛苺がフランスに転校したときはすごく残念だったけれど、こんな形で</span><span style= "font-size: 12pt">戻ってきてくれても、うれしくないかしら。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 12pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt">巴もふくざつな気持ちだったみたい…。</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt">今日はおねえちゃんに会えなかった。<br></span><span style="font-size: 12pt">  オーダーメイドの仕事もいよいよ山場なのかしら?</span></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="left"><span style= "font-size: 12pt">カナはヴァイオリンをアトリエに向けて弾くだけかしら。<br> <br> <br></span> <hr> <span style="font-size: 12pt"><br> <br> 『保守かしら』<br> 2007年6月24日 はれ<br> <br>  ピチカート、今日は色々なことがあったかしら!<br> <br>  今日はおねえちゃんが準備してた夜会の日。<br>  近くの町で開かれる人形展覧会の出品者の方々の交流会。<br>  カナも黄色とオレンジのドレスを着て参加したかしら。みっちゃんお手製の髪飾りもばっちり。<br>  たくさんの人がきれいなドレスを着てて、お家が不思議の国みたいなふいんき。<br> <br>  けれど、みんなの視線を集めたのはやっぱり、おねえちゃん。<br>  黒のドレスに銀の髪…おねえちゃん自身が絵から抜け出してきたみたい。<br>  ほんとに、おねえちゃんってきれい。<br>  おねえちゃんはお客様とあいさつするたびに、たくさんたたえられていたかしら。<br> <br>  カナは夜会のBGMで「金と銀」や「ピチカートポルカ」とかを弾いたの。<br>  お手伝いは食器を出したりとかのほうが良かったんだけれど、専門の人が来てたからしかたないかしら。<br> <br></span> <div class="mes"><span style= "font-size: 12pt">BGMのつもりで弾いてたんだけれど、やっぱりばらしーちゃんは熱心に聴いてくれてた。<br>  ばらしーちゃんは紫のドレスに、紫薔薇の眼帯をしてた。ひょっとしてキラキショウのえいきょう?<br>  槐さんはいつもの作業着。あんまり自分の服装に興味がないみたい。ばらしーちゃんはそこにちょびっと不満そうだった。<br>  白崎さんは…ウサギのお面がよく出来すぎててちょっと怖かったかしら。<br> <br>  槐さんは、この家を懐かしがってた。槐さんが一人立ちする前は、ここで修行していたんだって。<br>  「今でもあの地下設備は使っているのかい?」って槐さんが言い出して、家の地下に行ってみることになったかしら。<br>  危ないから近づいちゃだめって言われてたから、正直どきどき。<br> <br>  家に地下があることは知っていたけれど…こんなにすごいとは思わなかった。<br>  カナには、よくわからない大きな工作機械がたくさん。カナの頭より大きい丸カッターがぶら下がってるし、一体何に使うのかなって思っていたら、槐さんが色々説明してくれた。<br> <br>  「なつかしい。よく粘土を練らされたものだ」<br>  「これがボールミル」「これは混合貯蔵タンク」「これはプレス機…取り扱いには注意が必要だ」<br>  ここには釜以外の、人形を作り、加工するための設備がそろっているんだって。<br>  「人形師でもここまでこだわっていたのは、師匠ぐらいのものさ。なっとくできる素材ができなければ、何日だってここにこもっていたよ。<br>  ここは師匠の第二のアトリエと言えるかもしれない」<br>  お父様のもう一つのアトリエ。<br>  お父様の残した欠片がこんなところにあったなんて、ぜんぜん知らなかった。<br>  人形師が集まった日に、お父様のことを教わるなんて、何かの運命かしら。 <br> <br>  地下から戻る途中に、不思議なお客様にあった。<br>  シルクハットを被っていて、顔はわからなかったけれど…<br>  そのお客様は人形劇を見せてくれた。<br>  糸で吊った人形をあやつる、やさしい手つき。<br>  カナにまで、とっても人形を大切にしていることが伝わってくるみたい…。<br> <br>  劇は悲しいお話だったの。<br>  静かに、みんなが沈んでいく話。<br>  みんながみんな、わかりあえずに色んな物を失くしてく。<br>  受け入れられなかった商人が「おおい音楽、しっかりやれよ!新しいご領主様のお通りだ!」<br>  って嘆いて叫ぶのが、いまでもはっきり耳に残ってるかしら。<br> <br>  劇が終わってから、廊下はしん、としてた。<br>  「さ…おじょうさん、これで人形劇はおしまいだよ」<br>  お客様はそういって、カナを送り出してくれた。<br>  カナはお客様もいっしょに戻ろう?って誘ったんだけれど、お客様は「もう戻れないんだ、私はもう行かねばならなくてね」って。<br>  なんでだったのかしら、その人の声を聞くとすごく悲しくなって、涙がぽろぽろこぼれた。 <br> <br></span> <div class="mes"><span style="font-size: 12pt"><br>  「また会える?」って聞いたら、「それはね…」ってその人の返事が、なんて言われたのか思い出せないかしら。<br>  あの時、ピチカートにすぐ聞いてもらえばよかった。<br> <br>  お客様が階段に消えていくのを見送って、槐さんも白崎さんもばらしーちゃんも、いなくなってた。<br>  いつのまにか、みんな先に広間に戻っちゃってたみたい。<br>  広間に戻ったら、カナがはぐれたことになっているし、みんなはくじょーかしらっ。<br>  そういえば、時間も20分くらいしかたってなかったし、長い劇を見たと思ったけれど、集中してたから、そう感じただけだったのかしら。<br> <br>  広間に戻ってから、おねえちゃんとおじいさんが真剣そうな調子で話していたから、ちょびっと気になって近づいたけど、すぐ二人ともカナに気づいたかしら。<br>  お話したら、おじいさんは蒼星石のおじいさんだった。<br>  そうそう、蒼星石にはお姉さんがいるんだって。初耳かしら。<br>  ほんのちょっぴり「まだ知らない」「もうすぐ」って言葉だけが聞こえたけれど、どういうことなのかしら?<br> <br>  ねぇピチカート。<br>  カナは夜会なんて初めてだったけれど、とっても不思議な感じのするものなのね。<br>  おねえちゃんはまた、アトリエにこもっちゃった。<br>  きっと他の人形師の方々と触れ合って、創作意欲が刺激されたんだわ。<br>  カナもあと一曲、お姉ちゃんに向けて弾くかしら。<br>  そう…「天体の音楽」にしましょ。ちょっとうるさいかしら?<br> <br></span></div> <div class="mes"> <hr></div> <div class="mes"><br> <br> 『保守かしら』<br> 2007年6月25日 はれ <br> <br>  昨日遅くまで起きてたせいか、目が覚めたらお昼だったかしら…。<br>  おねえちゃんも、まだ寝てた。<br>  あわてて制服を着て、遅刻届を取りに職員室に向かったのよ。 <br> <br>  今期2度目だから、反省文までリーチよ、って先生にしかられちゃった。<br>  今日の給食にはプリンがあったのになぁ。<br>  って考えていたら、後ろから制服のそでを引かれたかしら。<br>  いっしゅん、ばらしーちゃん?って思ったけれど、振り向いた先に立っていたのは、雛苺だったかしら!<br>  もちろん横には巴が立ってた。あっさり授業を抜けてこられるのは、やっぱり委員長パワーだったのね。 <br> <br>  雛苺は、退院してから、すぐこっちに帰ってきたんだって。<br>  もう一度、この学校に通うために、まずはあいさつに来てたところだったかしら。<br>  「もう少しで、かなりあとは、すれ違いになるところだったの」<br>  って言って、雛苺は笑ってた。危ないところだったかしら。<br>  復学まではもう少しかかりそうなんだって。きっとまだ体調がよくなかったのね。 顔色が、まだ白かったもの。<br>  いろいろなことを話したけれど、フランスの話は全然しなかった。<br>  それよりも、これからの話をしたかしら。<br>  けれど、雛苺を正門まで見送った別れ際に、雛苺がちっちゃな声で「うにゅーをありがとう」って、耳元でささやいたかしら。 <br> <br>  雛苺の乗ったタクシーが見えなくなったくらいで、巴が深こくそうな顔をしてた。<br>  「だいじょうぶ、これからは楽しいことばっかりかしら」ってはげましたんだけど。<br>  巴は深こくそうな顔のまま、<br>  「いえ、そのことじゃなくって。カナリア、あなた遅刻してきたのよね…。<br>  1時間たった今では、サボリもやったことになるんだけど」<br>  だって。 <br> <br>  反省文ってなんであんなに書くのが難しいのかしら…。<br>  先生に「遅刻にサボチュードだなんて、あなたはなんて不良なの!」って言われるし…。<br>  巴のはくじょうものー。けん力の犬―。</div> </div> </div> </div> </div>
<div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;">『保守かしら』<br /> 2007年6月18日 あめ</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> おねえちゃんが日記を見つけてくれた!</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> てっきりフランスのどこかで落としたんだと思ってたけれど、食器だなの裏にはさまってたわ。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> これは策士でも気づけない盲点ね。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> 「どうしたらそんなところに落とせるのよ?」って聞かれたけれど、自分でもちょびっとふしぎ!?</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> 「一生付き合っていくことだってできるのよ?もっと大切にしてあげなさい。」っておねえちゃんに言われた。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> 返す言葉もございませんかしら…。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> この日記は中の紙を取りかえて、一生使っていくことができるんだって。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> おねえちゃんからもらった日記帳、もちろんずーっと使っていくかしら!</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> そのために日記帳さん、あなたに名前をつけてあげる。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> 名前は…そう、ピチカートかしら。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> ピチカートはいつもカナの近くにいてね。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> きっとずーっといっしょよ!<br /><br /><br /></span> <hr /><br /><span style="font-size:12pt;"><br /></span> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"><span style="font-size:12pt;">2007年6月20日 あめ つゆ</span></span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> 今日は千客万来の日。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> いつもどおり部室でばらしーちゃんとチェスをしてたら、蒼星石が訪ねてきたかしら。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> 蒼星石は雨ばっかりで、園芸部の仕事ができないって、こぼしてた。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> 家に帰ると、おねえちゃんのおきゃくさまが何人もいたかしら。 </span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> 家で夜会を開くための打ち合わせのためにいらしてたんだって。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> おねえちゃんってば、はりきっちゃって家中をひっくり返しそうないきおい。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> カナまで慌てちゃいそうかしら。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;"> <strong><u>そ う いえば、</u> </strong>蒼星石とのチェスはこれでカナの32連敗。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:12pt;"><span style="font-size:12pt;">だいじょうぶよピチカート。この冷静乙女金糸雀は敗北もクールに受け止めるわ、ぜんっぜんくやしくないかしら!</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:12pt;"><span style="font-size:12pt;">きっと33回目は負けないもん…!<br /><br /></span><br /><hr /><span style="font-size:12pt;"><br /><br /> 『保守かしら』<br /></span><span style="font-size:12pt;"><span style="font-size:12pt;">2007年6月21日 あめ</span></span> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;">巴が雛苺がもうすぐ帰ってくるって教えてくれた。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;">あんなことがあったフランスを離れて、退院後はこっち</span><span style="font-size:12pt;">の学校に戻ってくるんだって。<br /></span><span style="font-size:12pt;"> 雛苺がフランスに転校したときはすごく残念だったけれど、こんな形で</span><span style="font-size:12pt;">戻ってきてくれても、うれしくないかしら。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:12pt;"><span style="font-size:12pt;">巴もふくざつな気持ちだったみたい…。</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;">今日はおねえちゃんに会えなかった。<br /></span><span style="font-size:12pt;">  オーダーメイドの仕事もいよいよ山場なのかしら?</span></div> <div align="left" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:12pt;">カナはヴァイオリンをアトリエに向けて弾くだけかしら。<br /><br /><br /></span> <hr /><span style="font-size:12pt;"><br /><br /> 『保守かしら』<br /> 2007年6月24日 はれ<br /><br /> ピチカート、今日は色々なことがあったかしら!<br /><br /> 今日はおねえちゃんが準備してた夜会の日。<br /> 近くの町で開かれる人形展覧会の出品者の方々の交流会。<br /> カナも黄色とオレンジのドレスを着て参加したかしら。みっちゃんお手製の髪飾りもばっちり。<br /> たくさんの人がきれいなドレスを着てて、お家が不思議の国みたいなふいんき。<br /><br /> けれど、みんなの視線を集めたのはやっぱり、おねえちゃん。<br /> 黒のドレスに銀の髪…おねえちゃん自身が絵から抜け出してきたみたい。<br /> ほんとに、おねえちゃんってきれい。<br /> おねえちゃんはお客様とあいさつするたびに、たくさんたたえられていたかしら。<br /><br /> カナは夜会のBGMで「金と銀」や「ピチカートポルカ」とかを弾いたの。<br /> お手伝いは食器を出したりとかのほうが良かったんだけれど、専門の人が来てたからしかたないかしら。<br /><br /></span> <div class="mes"><span style="font-size:12pt;">BGMのつもりで弾いてたんだけれど、やっぱりばらしーちゃんは熱心に聴いてくれてた。<br /> ばらしーちゃんは紫のドレスに、紫薔薇の眼帯をしてた。ひょっとしてキラキショウのえいきょう?<br /> 槐さんはいつもの作業着。あんまり自分の服装に興味がないみたい。ばらしーちゃんはそこにちょびっと不満そうだった。<br /> 白崎さんは…ウサギのお面がよく出来すぎててちょっと怖かったかしら。<br /><br /> 槐さんは、この家を懐かしがってた。槐さんが一人立ちする前は、ここで修行していたんだって。<br /> 「今でもあの地下設備は使っているのかい?」って槐さんが言い出して、家の地下に行ってみることになったかしら。<br /> 危ないから近づいちゃだめって言われてたから、正直どきどき。<br /><br /> 家に地下があることは知っていたけれど…こんなにすごいとは思わなかった。<br /> カナには、よくわからない大きな工作機械がたくさん。カナの頭より大きい丸カッターがぶら下がってるし、一体何に使うのかなって思っていたら、槐さんが色々説明してくれた。<br /><br /> 「なつかしい。よく粘土を練らされたものだ」<br /> 「これがボールミル」「これは混合貯蔵タンク」「これはプレス機…取り扱いには注意が必要だ」<br /> ここには釜以外の、人形を作り、加工するための設備がそろっているんだって。<br /> 「人形師でもここまでこだわっていたのは、師匠ぐらいのものさ。なっとくできる素材ができなければ、何日だってここにこもっていたよ。<br /> ここは師匠の第二のアトリエと言えるかもしれない」<br /> お父様のもう一つのアトリエ。<br /> お父様の残した欠片がこんなところにあったなんて、ぜんぜん知らなかった。<br /> 人形師が集まった日に、お父様のことを教わるなんて、何かの運命かしら。 <br /><br /> 地下から戻る途中に、不思議なお客様にあった。<br /> シルクハットを被っていて、顔はわからなかったけれど…<br /> そのお客様は人形劇を見せてくれた。<br /> 糸で吊った人形をあやつる、やさしい手つき。<br /> カナにまで、とっても人形を大切にしていることが伝わってくるみたい…。<br /><br /> 劇は悲しいお話だったの。<br /> 静かに、みんなが沈んでいく話。<br /> みんながみんな、わかりあえずに色んな物を失くしてく。<br /> 受け入れられなかった商人が「おおい音楽、しっかりやれよ!新しいご領主様のお通りだ!」<br /> って嘆いて叫ぶのが、いまでもはっきり耳に残ってるかしら。<br /><br /> 劇が終わってから、廊下はしん、としてた。<br /> 「さ…おじょうさん、これで人形劇はおしまいだよ」<br /> お客様はそういって、カナを送り出してくれた。<br /> カナはお客様もいっしょに戻ろう?って誘ったんだけれど、お客様は「もう戻れないんだ、私はもう行かねばならなくてね」って。<br /> なんでだったのかしら、その人の声を聞くとすごく悲しくなって、涙がぽろぽろこぼれた。 <br /><br /></span> <div class="mes"><span style="font-size:12pt;"><br /> 「また会える?」って聞いたら、「それはね…」ってその人の返事が、なんて言われたのか思い出せないかしら。<br /> あの時、ピチカートにすぐ聞いてもらえばよかった。<br /><br /> お客様が階段に消えていくのを見送って、槐さんも白崎さんもばらしーちゃんも、いなくなってた。<br /> いつのまにか、みんな先に広間に戻っちゃってたみたい。<br /> 広間に戻ったら、カナがはぐれたことになっているし、みんなはくじょーかしらっ。<br /> そういえば、時間も20分くらいしかたってなかったし、長い劇を見たと思ったけれど、集中してたから、そう感じただけだったのかしら。<br /><br /> 広間に戻ってから、おねえちゃんとおじいさんが真剣そうな調子で話していたから、ちょびっと気になって近づいたけど、すぐ二人ともカナに気づいたかしら。<br /> お話したら、おじいさんは蒼星石のおじいさんだった。<br /> そうそう、蒼星石にはお姉さんがいるんだって。初耳かしら。<br /> ほんのちょっぴり「まだ知らない」「もうすぐ」って言葉だけが聞こえたけれど、どういうことなのかしら?<br /><br /> ねぇピチカート。<br /> カナは夜会なんて初めてだったけれど、とっても不思議な感じのするものなのね。<br /> おねえちゃんはまた、アトリエにこもっちゃった。<br /> きっと他の人形師の方々と触れ合って、創作意欲が刺激されたんだわ。<br /> カナもあと一曲、お姉ちゃんに向けて弾くかしら。<br /> そう…「天体の音楽」にしましょ。ちょっとうるさいかしら?<br /><br /></span></div> <div class="mes"> <hr /></div> <div class="mes"><br /><br /> 『保守かしら』<br /> 2007年6月25日 はれ <br /><br /> 昨日遅くまで起きてたせいか、目が覚めたらお昼だったかしら…。<br /> おねえちゃんも、まだ寝てた。<br /> あわてて制服を着て、遅刻届を取りに職員室に向かったのよ。 <br /><br /> 今期2度目だから、反省文までリーチよ、って先生にしかられちゃった。<br /> 今日の給食にはプリンがあったのになぁ。<br /> って考えていたら、後ろから制服のそでを引かれたかしら。<br /> いっしゅん、ばらしーちゃん?って思ったけれど、振り向いた先に立っていたのは、雛苺だったかしら!<br /> もちろん横には巴が立ってた。あっさり授業を抜けてこられるのは、やっぱり委員長パワーだったのね。 <br /><br /> 雛苺は、退院してから、すぐこっちに帰ってきたんだって。<br /> もう一度、この学校に通うために、まずはあいさつに来てたところだったかしら。<br /> 「もう少しで、かなりあとは、すれ違いになるところだったの」<br /> って言って、雛苺は笑ってた。危ないところだったかしら。<br /> 復学まではもう少しかかりそうなんだって。きっとまだ体調がよくなかったのね。 顔色が、まだ白かったもの。<br /> いろいろなことを話したけれど、フランスの話は全然しなかった。<br /> それよりも、これからの話をしたかしら。<br /> けれど、雛苺を正門まで見送った別れ際に、雛苺がちっちゃな声で「うにゅーをありがとう」って、耳元でささやいたかしら。 <br /><br /> 雛苺の乗ったタクシーが見えなくなったくらいで、巴が深こくそうな顔をしてた。<br /> 「だいじょうぶ、これからは楽しいことばっかりかしら」ってはげましたんだけど。<br /> 巴は深こくそうな顔のまま、<br /> 「いえ、そのことじゃなくって。カナリア、あなた遅刻してきたのよね…。<br /> 1時間たった今では、サボリもやったことになるんだけど」<br /> だって。 <br /><br /> 反省文ってなんであんなに書くのが難しいのかしら…。<br /> 先生に「遅刻にサボチュードだなんて、あなたはなんて不良なの!」って言われるし…。<br /> 巴のはくじょうものー。けん力の犬―。</div> </div> </div> </div> </div>

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