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五月のはじめ。」(2007/07/30 (月) 02:12:01) の最新版変更点

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<p><br> <br>   2007年5月1日 くもりのちはれ<br> <br>   今日もおねえちゃんに会えなかった。<br>   今日もアトリエにご飯を運ぶときに人形に向かうおねえちゃんの背中を見ただけ。<br> 集中は乱しちゃいけないって、カナも知ってるもの。<br> <br> <br>   アトリエからでてすぐ家に戻って中二階に上ったかしら。そこからだと、ふわふわ<br> でもこもこのぼたん桜の房がすぐ近くで見れるのよ。もうほとんど散っているけれど、<br> 一枝だけ残っているかしら。<br> <br>   そのふわふわを見ていたら急に名前をよばれて、びっくりした。<br> <br>   下を見たら、ちょうど桜のふもとに巴が立っていたかしら。<br>   巴はこのGWの間にフランスに行くんだって。<br>   親の許可は出てないからみっこーするって言ってたかしら。カナがさすがトゥモエ<br> だいたんねって言ったら、これもヒナと出会ったおかげだから。と言って巴ははにかんでいたかしら。<br> <br> <br>   それから巴は眉をくもらせて悲しそうに今回のことがかんちがいだったら、私はた<br> ぶんヒナに嫌われると思う。とポツリって言うから、カナは日記に書いたみたいに、 あわてなくても二人の仲のよさはきっと終生変わらないかしら。って言ったかしら。<br> <br>   巴は本当は、私が嫌われた時はヒナのことをよろしくって言いに来たんだけれど…<br> みたいなことを言ってた。でも決心がついたみたいで、決然とカナとおねえちゃんの家を去っていったかしら。<br> <br>   そうそう、巴からの伝言を書き留めておかなくっちゃ。<br>   もし私になにかあったら、しんくを頼ってほしい。<br> <br>   巴はだいたんだけど、おねえちゃんなみに心配性かしらー。<br>    しんく…確か去年、雛苺と巴が事件を起こしたときに聞いたことがある名前。<br>   そういえば巴の竹刀袋がいつもより曲がっていたのは気のせいだったかしら?<br> <br> <br></p> <hr> <br> <br>    2007年5月3日 あめ<br> <br>   今日は巴がどこに行ったのか聞いて回る電話がかかってきたかしら。<br>   けれどもちろんフランスにいったとは教えないわ。<br>   策士にして友人としては当然のアシストかしら ~。 <p>  受話器を置いたら、背後がらおねえちゃんに「あらあら、何の話ぃ?」<br>    と声をかけられたかしら。おねえちゃんと会えるのは久しぶりで思わず<br>  だきついちゃったけれど、いくらおねえちゃんでも話すわけには行かないかしら-!<br> <br> って叫んだけれど、うう、カナがおねえちゃんの問いつめにあらがえるはずもなかったかしら…。<br>   「そぅお?残念ねぇ」なんて笑ってたから納得してくれたと思ったら、そのにこやかな表情ままがっちり頭をつかまれちゃった。<br>   その後は思い出したくないかしら…。<br>   でもほんとおねえちゃんは強くって綺麗で最高かしらー<br> <br>  おねえちゃんに、ほんとに危そうだったら、ちゃんと連絡するようにいいつけられたかしら。あと、「そのゆきかきって子も災難ねぇ。」って言ってたけれど、きっと巴は雛苺との仲を確認して帰ってくるはずかしら。<br> <br> <br>    巴と雛苺のことを話し終わってから、カナははたと気づいたのかしら!アトリエにこも<br>  りきりだったおねえちゃんが自分から出てきているとゆーことは、ついに人形が完成し<br>  たんじゃないかしら?<br> <br>   そのことを聞くとおねえちゃんは「そうよぉ」っていって、笑ったわ。普通の人ならわからない、ちょびっとテレてる声だったかしら。おねえちゃんの声がこれだけ聞き分けられるのは、きっとカナとメグさんだけ。<br> <br>   「見たい?」って聞かれたから「もちろんかしらー!」って答えたら、「んー、どうしようかしらぁ?」だって。おねえちゃんは本当にいじわるかしらー。でも、いじわるしても最後にはちゃんとカナに見せてくれるかしら。<br> <br>  ここからは、とっても印像に残ってるから、くわしく書こうっと。<br> <br> <br>   アトリエの大きな作業台の上に、その子は静かにすわっていたかしら。<br>   天窓からさしこむ光に照らされて、とっても白くて今にも消えそうなふんいきの子。<br>   カナが見とれていると、おねえちゃんがその子の髪の毛にそっとふれながら「この子の名前はキラキショウ。ローゼンメイデン第七ドール、キラキショウよ」そう、教えてくれた。<br> <br>   それから何分、開かれたかばんに背中を預けるキラキショウに見とれていたのかしら…。<br>   すごいすごいおねえちゃんすごいって、カナはそんなことばっかり言ってたかしら。<br> <br>   「また一歩、アリスに近づいたわぁ」カナが落ちついてから、おねえちゃんはつぶやいた。<br>   ほどよく疲れの乗ったリラックスした声音。おねえちゃんのやさしい声。<br>   「アリス?」<br>   「そう、アリスよ。カナリアは小さかったから覚えていないのね。アリスは――」<br>   ここでおねえちゃんは一つ息を吸いこんだ。次に口を開いたときおねえちゃんの声は<br> とってもおごそかだった。<br> <br>   「――どんな花よりも気高くて、どんな宝石よりも無垢で、一点の穢れもない、世界中のどんな少女でもかなわないほどの至高の美しさを持った少女。おとうさまが生涯の目標としていたドール。おとうさまの夢、それがアリスよ」<br>   おとうさまが…。カナが生まれる前に死んじゃったおとうさま。まだあんまり、どんな人だったか教えてもらえてない、おとうさま。<br>   鼻がなんだかツンとしちゃって、そこからはあんまりしゃべらなかったかしら。<br>   それから、おねえちゃんが私はきっとアリスを作ってみせるわぁって宣言したの。<br>   宣言している間、キラキショウがほんのちょびっと微笑んでいるように見えてなんだか<br> うれしかったかしら。<br>   あんまりアトリエの、それも作業場に長居しちゃいけないから、その場はおしまい。<br> <br>   あれ、そういえばアリスはお父様の夢。それならおねえちゃんの夢はなんなのかしら?<br> <br>   明日はキラキショウを見せにメグさんのところにいくかしら~<br>   おねえちゃんと外出するのはすっごく久しぶりかしらっ<br>   おねえちゃんはしばらく体みだから、残りのGWがとっても楽しみ。<br> <br> <br></p> <hr> <br> <br>   2007年5月4日 はれ あついかしら<br> <br>    昨日の予定通り、おねえちゃんのおともをしてきたかしら。<br>   最初に行ったのはメグさんのところ。<br>   おねえちゃんはドールを作るとすぐメグさんに見せに行くの。さすが十年来の親友かしら。<br> <br>   カナが病室のドアを開けるとメグさんがとぇぇぇぇいっ!て叫びながら鼻メガネでクラッカーを鳴らしてきたからおどろいて、しりもちついちゃった。<br>   後から入ってきたおねえちゃんが「なにやってんのよぉ」って言ったら、車が止まるのが見えたから歓迎しようと思って。親指立てながらメグさんが答えたわ。<br>   ほんとメグさんはカナの知る中で一番陽気な人かしらー。<br>   「あの死にたがりはどこいったんだか」おねえちゃんが苦笑しながら言ったら、「そんな悪い子は黒い天使さんが連れて行っちゃったわ」って、メグさんがとぼけてたかしら。<br> <br>   キラキショウがいるかばんを開いたら、陽気なメグさんの部屋も、しん、とした沈黙が降りたの。あの子は人をはっとひきつける力を持っているのね。<br>   「きれいだけれど、ちょっと…だいじょうぶ?」がメグさんの感想。カナはよくわからないけれど、おねえちゃんはわかってるみたいだった。<br> <br>   その後はメグさんが特選パソコンのおもしろいテレビを見たかしら。長い間病人やってるとひまなのよーってメグさんは言ってた。あと最近JUMっていう子のサイトが面白いっていってた。<br> <br> <br> <hr> <br> <br>   2007年5月5日 はれ<br> <br>   今日も今日とて、おねえちゃんのおともかしら。<br>   ばっちりきめたおねえちゃんの後ろを、かばんを持って、てくてくてくてく。<br>   しつじの黒服がほしいかしら。<br> <br>   今日行ったのは槐さんのところ。槐さんはお父様のお弟子さんだった人形師。<br>   おねえちゃんが必ず人形を見せに行く最後の一人かしら。<br>   槐さんの家は小さなドールショップになっていて、ここだけちょっと鏡の世界に入ったみたい。<br>   ラッキーなことに槐さんはお店にいたかしら。もしアトリエにいたらおねえちゃんと同じで何日も出てこないもの。<br> <br>   お店の奥の部屋でお茶を飲みながらおねえちゃんと槐さんが人形の話を始めたらカナは静かに席を立つの。二人は人形の話となったら止まらないし、むずかしい話ばかりだもん。<br>   そうそう、槐さんのキラキショウを見た感想は「この子は…人の心をかき立てるものがあるね…そう、それもだれにもへんざいする心の底にあるへんしつをかき立てる…くうきょな鏡のようだ」<br>   だって。ほめてたのかしら?あとで辞書を引いてみようっと。<br> <br>   カナが席を立つとばらしーちゃんも一緒に席を立ってくれる。これはもう槐さんちにきた時のお約束かしらー。<br>   なにしよっか?って聞いたら「…きか…せて…ヴァイ…オリン」だって。こんな風にお願いされるのはいつものことだけれど、でもカナは知性はだからあんまりヴァイオリンはうまくないかしら。<br> <br>   とりあえず「ます」をゆったり弾いたら、ばらしーちゃんはにこにこしながら聴いてくれたかしら。<br>   この曲を弾いてる間、ばらしーちゃんの左目からぽろっと涙がこぼれたけれど、それに気づいてなかったから、本当に熱心に聴いてくれてるのが伝わってくるかしら。<br> <br>   カナはあんまりヴァイオリンはうまくないけれど、ばらしーちゃんが気にしてる左目のことを少しでも忘れてくつろげるなら、きっとそれは意味のあること。<br>   ばらしーちゃんはいつも左目から涙がこぼれやしないか気にしてる。<br>   カナには生まれたときから、勝手に涙がこぼれてくる病気になんてなったことがないからわからないけれど、ばらしーちゃんは笑ってるほうがかわいいかしら。<br> <br>   そのあとは店員の白崎さんが呼びに来るまで、ばらしーちゃんとお話ししてたかしらー。<br> <br> <br> <hr> <br> <br>   2007年5月6日 今日もはれかしらー<br> <br>   今日はみっちゃん達と遊んでたかしら。途中で青い服を着た子が僕もまぜてよ、っていって来たからいっしょに遊んだわ。最初、男の子だと思ったけれど女の子だったからびっくり。<br>   名前は蒼星石。むずかしい字…。<br>   同じ学校に通ってるらしいから、休み明けの楽しみがまた増えたかしらっ  <br> <br>   おねえちゃんは今晩はアトリエにいる。お客さまが昼に来て色々注文していったんだって。<br>   おねえちゃんは自分の作品を作っていないときはオーダーメイドの仕事をしてる。<br>   「これも修行よぉ。」だって。おねえちゃんはほんとうにアリスを作りたいのね。<br> <br>   そして、うふふ。カナは本日この晩ある計画を実行にうつすのかしら。<br>   今日帰ったらおねえちゃんはアトリエにこもってるに違いないかしらって、言ったらみっちゃんたちを心配させちゃった。そのとき蒼星石がこの考えを思いついてくれたのよ。<br> <br>   今からカナはアトリエの見えるバルコニーでヴァイオリンを弾いてくるかしら。おねえちゃんの邪まにならないくらいに、でもかすかに聴こえてくれたらいいな…。<br> <br> <br>   そういえば、蒼星石はなんでカナがヴァイオリンを弾けるって知ってたのかしら?<br> <br>   いよいよカナの才知は目に見えるほどなのかしら!?自分の才女ぶりが恐ろしいほどかしら…<br> <br> <br> <hr> <br> <br>    5月7日<br> <br>   もう日付が変わってる、ちょびっと混乱してるかしら。<br>   電話で起こされたっていうこともあるけれど、巴も混乱してたからもっとよくわからない<br> わかったのは巴が保ごされて、雛苺が重体だということだけ。<br> <br>   巴の電話はすぐ切られてしまったわ。あとはフランスの人がなにかしゃべって、それで終わり。<br>   その人の声は落ち着いてやさしかったから、たぶん巴は大丈夫かしら。<br>   雛苺は大丈夫なのかしら。そっか、巴の心配はこういうことだったのね。<br> <br>   おねえちゃんが許しをくれるのなら、明日にでもフランスに行きたいかしら。
<p><br /><br />   2007年5月1日 くもりのちはれ<br /><br />   今日もおねえちゃんに会えなかった。<br />   今日もアトリエにご飯を運ぶときに人形に向かうおねえちゃんの背中を見ただけ。<br /> 集中は乱しちゃいけないって、カナも知ってるもの。<br /><br /><br />   アトリエからでてすぐ家に戻って中二階に上ったかしら。そこからだと、ふわふわ<br /> でもこもこのぼたん桜の房がすぐ近くで見れるのよ。もうほとんど散っているけれど、<br /> 一枝だけ残っているかしら。<br /><br />   そのふわふわを見ていたら急に名前をよばれて、びっくりした。<br /><br />   下を見たら、ちょうど桜のふもとに巴が立っていたかしら。<br />   巴はこのGWの間にフランスに行くんだって。<br />   親の許可は出てないからみっこーするって言ってたかしら。カナがさすがトゥモエ<br /> だいたんねって言ったら、これもヒナと出会ったおかげだから。と言って巴ははにかんでいたかしら。<br /><br /><br />   それから巴は眉をくもらせて悲しそうに今回のことがかんちがいだったら、私はた<br /> ぶんヒナに嫌われると思う。とポツリって言うから、カナは日記に書いたみたいに、 あわてなくても二人の仲のよさはきっと終生変わらないかしら。って言ったかしら。<br /><br />   巴は本当は、私が嫌われた時はヒナのことをよろしくって言いに来たんだけれど…<br /> みたいなことを言ってた。でも決心がついたみたいで、決然とカナとおねえちゃんの家を去っていったかしら。<br /><br />   そうそう、巴からの伝言を書き留めておかなくっちゃ。<br />   もし私になにかあったら、しんくを頼ってほしい。<br /><br />   巴はだいたんだけど、おねえちゃんなみに心配性かしらー。<br />    しんく…確か去年、雛苺と巴が事件を起こしたときに聞いたことがある名前。<br />   そういえば巴の竹刀袋がいつもより曲がっていたのは気のせいだったかしら?<br /><br /><br /></p> <hr /><br /><br />    2007年5月3日 あめ<br /><br />   今日は巴がどこに行ったのか聞いて回る電話がかかってきたかしら。<br />   けれどもちろんフランスにいったとは教えないわ。<br />   策士にして友人としては当然のアシストかしら ~。 <p>  受話器を置いたら、背後がらおねえちゃんに「あらあら、何の話ぃ?」<br />    と声をかけられたかしら。おねえちゃんと会えるのは久しぶりで思わず<br />  だきついちゃったけれど、いくらおねえちゃんでも話すわけには行かないかしら-!<br /><br /> って叫んだけれど、うう、カナがおねえちゃんの問いつめにあらがえるはずもなかったかしら…。<br />   「そぅお?残念ねぇ」なんて笑ってたから納得してくれたと思ったら、そのにこやかな表情ままがっちり頭をつかまれちゃった。<br />   その後は思い出したくないかしら…。<br />   でもほんとおねえちゃんは強くって綺麗で最高かしらー<br /><br />  おねえちゃんに、ほんとに危そうだったら、ちゃんと連絡するようにいいつけられたかしら。あと、「そのゆきかきって子も災難ねぇ。」って言ってたけれど、きっと巴は雛苺との仲を確認して帰ってくるはずかしら。<br /><br /><br />    巴と雛苺のことを話し終わってから、カナははたと気づいたのかしら!アトリエにこも<br />  りきりだったおねえちゃんが自分から出てきているとゆーことは、ついに人形が完成し<br />  たんじゃないかしら?<br /><br />   そのことを聞くとおねえちゃんは「そうよぉ」っていって、笑ったわ。普通の人ならわからない、ちょびっとテレてる声だったかしら。おねえちゃんの声がこれだけ聞き分けられるのは、きっとカナとメグさんだけ。<br /><br />   「見たい?」って聞かれたから「もちろんかしらー!」って答えたら、「んー、どうしようかしらぁ?」だって。おねえちゃんは本当にいじわるかしらー。でも、いじわるしても最後にはちゃんとカナに見せてくれるかしら。<br /><br />  ここからは、とっても印像に残ってるから、くわしく書こうっと。<br /><br /><br />   アトリエの大きな作業台の上に、その子は静かにすわっていたかしら。<br />   天窓からさしこむ光に照らされて、とっても白くて今にも消えそうなふんいきの子。<br />   カナが見とれていると、おねえちゃんがその子の髪の毛にそっとふれながら「この子の名前はキラキショウ。ローゼンメイデン第七ドール、キラキショウよ」そう、教えてくれた。<br /><br />   それから何分、開かれたかばんに背中を預けるキラキショウに見とれていたのかしら…。<br />   すごいすごいおねえちゃんすごいって、カナはそんなことばっかり言ってたかしら。<br /><br />   「また一歩、アリスに近づいたわぁ」カナが落ちついてから、おねえちゃんはつぶやいた。<br />   ほどよく疲れの乗ったリラックスした声音。おねえちゃんのやさしい声。<br />   「アリス?」<br />   「そう、アリスよ。カナリアは小さかったから覚えていないのね。アリスは――」<br />   ここでおねえちゃんは一つ息を吸いこんだ。次に口を開いたときおねえちゃんの声は<br /> とってもおごそかだった。<br /><br />   「――どんな花よりも気高くて、どんな宝石よりも無垢で、一点の穢れもない、世界中のどんな少女でもかなわないほどの至高の美しさを持った少女。おとうさまが生涯の目標としていたドール。おとうさまの夢、それがアリスよ」<br />   おとうさまが…。カナが生まれる前に死んじゃったおとうさま。まだあんまり、どんな人だったか教えてもらえてない、おとうさま。<br />   鼻がなんだかツンとしちゃって、そこからはあんまりしゃべらなかったかしら。<br />   それから、おねえちゃんが私はきっとアリスを作ってみせるわぁって宣言したの。<br />   宣言している間、キラキショウがほんのちょびっと微笑んでいるように見えてなんだか<br /> うれしかったかしら。<br />   あんまりアトリエの、それも作業場に長居しちゃいけないから、その場はおしまい。<br /><br />   あれ、そういえばアリスはお父様の夢。それならおねえちゃんの夢はなんなのかしら?<br /><br />   明日はキラキショウを見せにメグさんのところにいくかしら~<br />   おねえちゃんと外出するのはすっごく久しぶりかしらっ<br />   おねえちゃんはしばらく体みだから、残りのGWがとっても楽しみ。<br /><br /><br /></p> <hr /><br /><br />   2007年5月4日 はれ あついかしら<br /><br />    昨日の予定通り、おねえちゃんのおともをしてきたかしら。<br />   最初に行ったのはメグさんのところ。<br />   おねえちゃんはドールを作るとすぐメグさんに見せに行くの。さすが十年来の親友かしら。<br /><br />   カナが病室のドアを開けるとメグさんがとぇぇぇぇいっ!て叫びながら鼻メガネでクラッカーを鳴らしてきたからおどろいて、しりもちついちゃった。<br />   後から入ってきたおねえちゃんが「なにやってんのよぉ」って言ったら、車が止まるのが見えたから歓迎しようと思って。親指立てながらメグさんが答えたわ。<br />   ほんとメグさんはカナの知る中で一番陽気な人かしらー。<br />   「あの死にたがりはどこいったんだか」おねえちゃんが苦笑しながら言ったら、「そんな悪い子は黒い天使さんが連れて行っちゃったわ」って、メグさんがとぼけてたかしら。<br /><br />   キラキショウがいるかばんを開いたら、陽気なメグさんの部屋も、しん、とした沈黙が降りたの。あの子は人をはっとひきつける力を持っているのね。<br />   「きれいだけれど、ちょっと…だいじょうぶ?」がメグさんの感想。カナはよくわからないけれど、おねえちゃんはわかってるみたいだった。<br /><br />   その後はメグさんが特選パソコンのおもしろいテレビを見たかしら。長い間病人やってるとひまなのよーってメグさんは言ってた。あと最近JUMっていう子のサイトが面白いっていってた。<br /><br /><br /><hr /><br /><br />   2007年5月5日 はれ<br /><br />   今日も今日とて、おねえちゃんのおともかしら。<br />   ばっちりきめたおねえちゃんの後ろを、かばんを持って、てくてくてくてく。<br />   しつじの黒服がほしいかしら。<br /><br />   今日行ったのは槐さんのところ。槐さんはお父様のお弟子さんだった人形師。<br />   おねえちゃんが必ず人形を見せに行く最後の一人かしら。<br />   槐さんの家は小さなドールショップになっていて、ここだけちょっと鏡の世界に入ったみたい。<br />   ラッキーなことに槐さんはお店にいたかしら。もしアトリエにいたらおねえちゃんと同じで何日も出てこないもの。<br /><br />   お店の奥の部屋でお茶を飲みながらおねえちゃんと槐さんが人形の話を始めたらカナは静かに席を立つの。二人は人形の話となったら止まらないし、むずかしい話ばかりだもん。<br />   そうそう、槐さんのキラキショウを見た感想は「この子は…人の心をかき立てるものがあるね…そう、それもだれにもへんざいする心の底にあるへんしつをかき立てる…くうきょな鏡のようだ」<br />   だって。ほめてたのかしら?あとで辞書を引いてみようっと。<br /><br />   カナが席を立つとばらしーちゃんも一緒に席を立ってくれる。これはもう槐さんちにきた時のお約束かしらー。<br />   なにしよっか?って聞いたら「…きか…せて…ヴァイ…オリン」だって。こんな風にお願いされるのはいつものことだけれど、でもカナは知性はだからあんまりヴァイオリンはうまくないかしら。<br /><br />   とりあえず「ます」をゆったり弾いたら、ばらしーちゃんはにこにこしながら聴いてくれたかしら。<br />   この曲を弾いてる間、ばらしーちゃんの左目からぽろっと涙がこぼれたけれど、それに気づいてなかったから、本当に熱心に聴いてくれてるのが伝わってくるかしら。<br /><br />   カナはあんまりヴァイオリンはうまくないけれど、ばらしーちゃんが気にしてる左目のことを少しでも忘れてくつろげるなら、きっとそれは意味のあること。<br />   ばらしーちゃんはいつも左目から涙がこぼれやしないか気にしてる。<br />   カナには生まれたときから、勝手に涙がこぼれてくる病気になんてなったことがないからわからないけれど、ばらしーちゃんは笑ってるほうがかわいいかしら。<br /><br />   そのあとは店員の白崎さんが呼びに来るまで、ばらしーちゃんとお話ししてたかしらー。<br /><br /><br /><hr /><br /><br />   2007年5月6日 今日もはれかしらー<br /><br />   今日はみっちゃん達と遊んでたかしら。途中で青い服を着た子が僕もまぜてよ、っていって来たからいっしょに遊んだわ。最初、男の子だと思ったけれど女の子だったからびっくり。<br />   名前は蒼星石。むずかしい字…。<br />   同じ学校に通ってるらしいから、休み明けの楽しみがまた増えたかしらっ  <br /><br />   おねえちゃんは今晩はアトリエにいる。お客さまが昼に来て色々注文していったんだって。<br />   おねえちゃんは自分の作品を作っていないときはオーダーメイドの仕事をしてる。<br />   「これも修行よぉ。」だって。おねえちゃんはほんとうにアリスを作りたいのね。<br /><br />   そして、うふふ。カナは本日この晩ある計画を実行にうつすのかしら。<br />   今日帰ったらおねえちゃんはアトリエにこもってるに違いないかしらって、言ったらみっちゃんたちを心配させちゃった。そのとき蒼星石がこの考えを思いついてくれたのよ。<br /><br />   今からカナはアトリエの見えるバルコニーでヴァイオリンを弾いてくるかしら。おねえちゃんの邪まにならないくらいに、でもかすかに聴こえてくれたらいいな…。<br /><br /><br />   そういえば、蒼星石はなんでカナがヴァイオリンを弾けるって知ってたのかしら?<br /><br />   いよいよカナの才知は目に見えるほどなのかしら!?自分の才女ぶりが恐ろしいほどかしら…<br /><br /><br /><hr /><br /><br />    5月7日<br /><br />   もう日付が変わってる、ちょびっと混乱してるかしら。<br />   電話で起こされたっていうこともあるけれど、巴も混乱してたからもっとよくわからない<br /> わかったのは巴が保ごされて、雛苺が重体だということだけ。<br /><br />   巴の電話はすぐ切られてしまったわ。あとはフランスの人がなにかしゃべって、それで終わり。<br />   その人の声は落ち着いてやさしかったから、たぶん巴は大丈夫かしら。<br />   雛苺は大丈夫なのかしら。そっか、巴の心配はこういうことだったのね。<br /><br />   おねえちゃんが許しをくれるのなら、明日にでもフランスに行きたいかしら。

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