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「T18k - 最終章」(2006/03/12 (日) 13:10:20) の最新版変更点
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<p>『T18k - 最終章』<br>
翌朝。曇り。<br>
水銀燈が起きると、一枚のメモが置いてあった。<br>
『先に家に行ってます。遅刻しないように あなたのばらしー』<br>
水銀燈はそれを見て微笑み、階下に降りていった。<br>
チーン、とトーストが焼ける。水銀燈はそれをくわえた。<br>
テレビでは丁度ニュースが終わった。<br>
窓の外を見る。少し薄暗い。<br>
銀「(今日は降るわね・・・・・まあマルイで遊ぶだけだからいいけどぉ)」<br>
水銀燈が傘を持っていこう、と決めたそのときだった。<br>
テレビ「みんなー、元気にしてたかな?探偵くんくんの時間だよー!」<br>
銀「!!!!!」<br>
ニュースの次に始まった探偵くんくんに、水銀燈は釘付けになった。</p>
<br>
<p>
くんくん「じゃあみんな、また来週もよろしーくんくん!」<br>
銀「ふうっ・・・・面白かったわぁ・・・・・」<br>
まばたきをする間も惜しんでくんくん探偵を楽しんだ水銀燈。<br>
銀「でも・・・あのハゲタカ中尉の態度気に入らないわぁ。・・・モグモグ」<br>
感想を述べながらもふもふとパンを食べる。ふと、時計に目をやる。<br>
銀「しまっ・・・・た・・・・・・」<br>
くわえていたパンがポロッと落ちた。<br>
時計は9時58分を指していた。</p>
<br>
<p>銀「はあっ・・・はあっ・・・・ち、遅刻だわ」<br>
既に10時はとっくに過ぎて、水銀燈はダッシュしている。<br>
今日は黒いワンピースを着ている。</p>
<br>
<p>しばらく走ると、ようやく赤月駅の前に到着した。<br>
銀「もう・・・死ぬ・・・・・これは新記録だわぁ・・・・・・あ」<br>
息を切らした水銀燈の視界に、あの薔薇水晶お気に入りのたい焼き屋が飛び込んできた。<br>
銀「そうねぇ・・・・・少し列んでいるけど、どうしよう」</p>
<br>
<p>さて、ここで選択をして貰います。<br>
銀「そうねぇ・・・・・少し列んでいるけど、どうしよう」<br>
A.お詫びって意味も含めて、買っていこうかしら<br>
B.今日の所は止めましょう</p>
<br>
<p>[Aルート]<br>
銀「お詫びって意味も含めて、買っていこうかしら」<br>
そうして、水銀燈は列に列んだ。<br>
案外早く列はすすみ、すぐに水銀燈の順番が来た。<br>
銀「たい焼き4つちょうだぁい。あ、その大きいのおねがぁい」<br>
親父「おう!お姉ちゃん美人だからこの小さいのおまけしてやる!」<br>
銀「ふふ、ありがと」<br>
水銀燈は親父に料金を払い、店を後にした。</p>
<br>
<p>[Bルート]<br>
銀「今日の所は止めましょう」<br>
時刻は10時を大幅に過ぎている。<br>
銀「(たい焼きなら・・・今度も買えるしね・・・・)」<br>
たい焼き屋を後にした。</p>
<br>
<p>[A・B共通ルート]<br>
駅員「まもなく白壁駅行きが2番線より発車致します。ご注意下さい」<br>
銀「まっ、待ってちょうだい!!」<br>
プシューッ<br>
ゴトン・・・ゴトン・・・<br>
銀「ふう・・・ふう・・・ひい・・・・ひい・・・・」<br>
水銀燈は間一髪電車に乗り込んだ。<br>
駅員「お客さんー、飛び込み乗車は禁止です。気を付けてくださいよぉ」<br>
銀「あ・・・ごめんなさい・・・・ひい・・・ひい・・・・・」</p>
<br>
<p>5分ほどで白壁駅に着いた電車。<br>
水銀燈は電車から降り、走って階段を上った。<br>
外は相変わらず薄暗かった。横断歩道の向かい側を見る。<br>
銀「ごめんっ!遅刻しちゃったわっ!!」<br>
水銀燈は横断歩道まで走りながら、両手を顔の前に合わせて言った。<br>
薔「・・・・遅い。・・・・ふふ、早く来て」<br>
薔薇水晶は拗ねる素振りを見せて、すぐに笑顔になった。<br>
クリーム色のセーターと紺のスカートを穿いて、赤いキャップを被っている。<br>
銀「まあ待ちなさいよ。赤信号だから」<br>
二人は横断歩道越しに話す。<br>
薔「ふふ・・・・なんで遅刻したのかなー?」<br>
平日だけあって、辺りは人気が少ない。<br>
水銀燈は少し恥ずかしがりながら、理由を説明し始めた。<br>
銀「えっとぉ・・・・・実はね・・・・」</p>
<br>
<p>その瞬間だった。<br>
キイイイイイイイイッッッッッ<br>
ドンッッ</p>
<br>
<p>銀「ば・・・薔薇水晶・・・・・・?」<br>
水銀燈は持っていたたい焼きの袋を落とした。<br>
すぐさま薔薇水晶の元に駆け寄る。<br>
倒れている薔薇水晶を・・・そっと抱き起こす。<br>
薔「水・・・・・銀燈」<br>
銀「なに?」<br>
薔「ふふ・・・・・おか・・・しいよね・・・・・ちゃんと・・・・・信号・・・守ったのに」<br>
銀「薔薇水晶・・・・・・・・」<br>
薔「大丈・・・夫・・・・・・だよ」<br>
薔薇水晶は笑って言った。<br>
薔「あのね・・・・水銀燈・・・・・・」</p>
<br>
<p>なに?<br>
薔「もし私が・・・・居なくなっちゃっても・・・・・泣いちゃだめだよ・・・」<br>
居なくなるなんて・・・・・そんなわけないじゃない・・・・・・。<br>
薔「私が・・・・・居なくなって・・・も・・・・・今まで・・どおり・・・・明るくて・・・<br>
素敵で・・・・・格好良くて・・・・・本当は面倒見が良くて・・・・・みんなの人気者で・・・<br>
そんな・・そんな水銀燈で・・・・ずっと居て欲しい・・・・・」<br>
うん、私・・・・薔薇水晶の望みならずっとそんな私で居るわ。<br>
だから・・・・・・・<br>
薔「もう・・・・水銀・・・燈・・・・・泣かない・・でって・・・・言ってるじゃない・・・<br>
水銀燈の・・・・・泣き虫・・・・・」<br>
私は泣いてなんかいない・・・・・・・・・・・泣かないわよ・・・・。<br>
だから・・・・・・・・<br>
薔「水銀燈・・・・・・・もうひと・・つ・・・・お願いが・・・あるの・・・・・・」<br>
もうひとつ?薔薇水晶・・・・貴女のお願いならまだまだ沢山聞いてあげる。<br>
だから・・・・・・・・・・・<br>
薔「キス・・・・して欲しい・・・・・・」<br>
うん、してあげる。薔薇水晶・・・・・貴女が望むなら・・・・・・。<br>
だから・・・・・・・・・・・・・・お願い。</p>
<br>
<p>そんなに・・・悲しい顔しないで・・・・・・・。</p>
<br>
<p>水銀燈は薔薇水晶に顔を近づけ・・・・キスをした。<br>
ほんの数秒・・・・・しかし二人には永遠にも感じられた。<br>
薔「ありがとう・・・・・・・嬉しい・・・・・・・・」<br>
銀「・・・薔薇っ・・・・水晶・・・・・・・・」<br>
薔「泣かないで・・・・・・って・・・言ってる・・・・・・・・・・・」<br>
薔薇水晶は水銀燈の涙を指で拭う。<br>
銀「だって・・・・・・・薔薇水晶・・・・・貴女だって・・・・泣いてるじゃない・・・」<br>
薔「ふふ・・・・・水・・・・銀・・・・・・・燈・・・・・・・・・・」<br>
銀「な・・・・なぁに・・・?」<br>
水銀燈は涙をこらえて・・・・・できる限りの笑顔で返事をした。<br>
薔「ありがとう・・・・・・・たのし・・・・かった・・・・・・・・・・・・・・・」<br>
薔薇水晶はゆっくりと目を閉じた。<br>
水銀燈の手を握る力が・・・・・ゆっくりと抜けていった。<br>
銀「薔薇・・・・・・水晶・・・・・・?」</p>
<br>
<p>銀「・・・どうしたの、薔薇水晶?」<br>
紅い、世界<br>
銀「薔薇水晶・・・・こんな所で寝ちゃダメよ」<br>
辺り一面に広がる紅い世界<br>
銀「ほら・・・雨が降ってきたわ。早く起きて」<br>
それは深い紅<br>
銀「早く・・・・起きて・・・。風邪を引いちゃうわ」<br>
ケチャップの紅?・・・・・・違う<br>
銀「駅の屋根の下で・・・・雨宿りしましょう・・・だから・・・・起きて・・・・」<br>
絵の具の紅?・・・・・・違う<br>
銀「お願い・・・・・起きて・・・・・目を開けて・・・・・・・・いつもの笑顔で・・・・・・私を見て・・・・」<br>
それは・・・・・・・・・<br>
銀「薔薇・・・・水晶・・・・・・・」<br>
・・・・・紅い紅い、血の紅。<br>
銀「薔薇水晶・・・・薔薇水晶ーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!」<br>
水銀燈の悲鳴は・・・・・・雨音で掻き消えた。</p>
<br>
<p>『T18k - エピローグ』<br>
[A.お詫びって意味も含めて、買っていこうかしら・希望編]<br>
・<br>
・<br>
・<br>
キーンコーンカーンコーン<br>
授業終了のチャイムが鳴った。放課後になったわけだ。<br>
薔薇水晶の席には・・・・誰も居ない。<br>
紅「水銀燈・・・・・私、今日は委員会が無いの。一緒に帰りましょう」</p>
<br>
<p>
真紅と水銀燈は隣りに並んで歩いた。でも、並んでいただけ。何も喋らなかった。<br>
そのまま二人は道を進み・・・・赤月駅で電車を降りた。<br>
銀「あ・・・・ちょっと待ってなさぁい・・・真紅」<br>
先に口を開いたのは水銀燈だった。<br>
紅「あっ・・・・・・行ってしまったのだわ。何をしにいったのかしら・・・・・」<br>
しばらくして、水銀燈が紙袋を抱えて戻ってきた。<br>
銀「お待たせぇ。・・・・・これ、奢ってあげるわ」</p>
<br>
<p>紅「これは・・・たい焼き?ありがとう、水銀燈」<br>
真紅が食べ始めようとするのを、水銀燈が止める。<br>
銀「ちょっと待ちなさい・・・・早とちりねぇ」<br>
紅「・・・・・?」<br>
銀「これはね、ただのたい焼きじゃないのよ。世界一美味しいたい焼き。<br>
そして・・・沢山の想いが詰まったたい焼き。私が今こうやって・・・・普通の高校生活を<br>
送っていられるのもこのたい焼きのおかげ。だから・・・・・ちゃんと味わって食べなさぁい」<br>
真紅はしばらくきょとんとしていたが、水銀燈の表情を見て微笑んだ。<br>
紅「そう・・・・それは素晴らしいたい焼きね。美味しく頂かせて貰うわ・・・・・」<br>
水銀燈は儚げに、しかし幸せそうに笑って空を見上げていた。</p>
<br>
<p>銀「(薔薇水晶・・・・・・・)」<br>
銀「(貴女が居なくなってしまったら・・・・私はきっと泣いてしまう。約束は守れないわ・・・<br>
ごめんなさい)」<br>
銀「(でも・・・・貴女の体がなくなってしまっても・・・・・貴女の想いは私の心にある・・・・)」<br>
銀「(だから・・・・貴女と私はいつまでも・・・・いつまでも一緒よ・・・・・・・・・)」<br>
紅「そろそろ・・・・行きましょう」<br>
銀「あらぁ、ごめんなさぁい」<br>
紅「そういえば水銀燈、貴女数学の課題プリント未提出だったわね」<br>
銀「それはぁ、そのたい焼きで免除ってことでよろしくお願いするわ」<br>
紅「またそんなこと言って・・・・そんなことで免除になるわけないのだわ!早く提出しなさい!」<br>
銀「あらぁ、こわ~い。あ、私こっちだから。まったねー♪」<br>
紅「あっ!ちょっと!待ちなさい!待ちなさい水銀燈!!」</p>
<p>
『T18k』END</p>
<br>
<br>
<p>[B.今日の所は止めましょう・絶望編]<br>
キーンコーンカーンコーン<br>
授業終了のチャイムが鳴った。放課後になったわけだ。<br>
薔薇水晶の席には・・・・誰も居ない。<br>
紅「水銀燈・・・・・私、今日は委員会が無いの。一緒に帰りましょう」<br>
銀「・・・・・・・・五月蠅い」<br>
水銀燈は一言吐き捨てると、逃げるように教室から出て行ってしまった。<br>
紅「あ・・・・・・・・」</p>
<p><br>
銀「・・・・・・・・・・・・・・・」<br>
水銀燈は何も考えずに、朝登校した道を戻っていた。<br>
ガチャッ<br>
バタン<br>
水銀燈の母「あら、お帰りなさい。水銀燈」<br>
銀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」<br>
母親の言葉も無視して、階段を上がっていく。<br>
ガチャッ、と自分の部屋のドアを開け、中に入る。<br>
水銀燈の部屋は、カーテンで閉め切っていて薄暗かった。<br>
バタン、とドアを閉めた。</p>
<br>
<p>銀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」<br>
机の上のあるものに目を向ける。<br>
銀「・・・・・・・・・・・・・・」<br>
水銀燈はそれを手に取った。<br>
銀「薔薇水晶・・・・・・・・・・・・」<br>
それは、一枚のプリクラ。<br>
銀「薔薇水晶・・・・・・・・貴女の居ない生活なんて・・・無理よ・・・・うっ・・・・・<br>
会いたい・・・・・貴女に・・・会いたい・・・・・・・・」<br>
泣き崩れる水銀燈。<br>
銀「私は・・・貴女が思っているほど・・・・・完璧じゃない・・・・・・大切な貴女を失った<br>
私は・・・・一体どうすればいいの・・・・うっ・・・・うっ・・・・・・・」<br>
水銀燈の部屋には・・・彼女の泣き声だけが響いた。</p>
<p>
『T18k』END</p>
<br>
<br>
<p>※『T18k』は『タイヤキ』と読むそうです<a title=
"t18k_l" name="t18k_l"></a></p>
<p>『T18k - 最終章』<br>
翌朝。曇り。<br>
水銀燈が起きると、一枚のメモが置いてあった。<br>
『先に家に行ってます。遅刻しないように あなたのばらしー』<br>
水銀燈はそれを見て微笑み、階下に降りていった。<br>
チーン、とトーストが焼ける。水銀燈はそれをくわえた。<br>
テレビでは丁度ニュースが終わった。<br>
窓の外を見る。少し薄暗い。<br>
銀「(今日は降るわね・・・・・まあマルイで遊ぶだけだからいいけどぉ)」<br>
水銀燈が傘を持っていこう、と決めたそのときだった。<br>
テレビ「みんなー、元気にしてたかな?探偵くんくんの時間だよー!」<br>
銀「!!!!!」<br>
ニュースの次に始まった探偵くんくんに、水銀燈は釘付けになった。</p>
<br>
<p>
くんくん「じゃあみんな、また来週もよろしーくんくん!」<br>
銀「ふうっ・・・・面白かったわぁ・・・・・」<br>
まばたきをする間も惜しんでくんくん探偵を楽しんだ水銀燈。<br>
銀「でも・・・あのハゲタカ中尉の態度気に入らないわぁ。・・・モグモグ」<br>
感想を述べながらもふもふとパンを食べる。ふと、時計に目をやる。<br>
銀「しまっ・・・・た・・・・・・」<br>
くわえていたパンがポロッと落ちた。<br>
時計は9時58分を指していた。</p>
<br>
<p>銀「はあっ・・・はあっ・・・・ち、遅刻だわ」<br>
既に10時はとっくに過ぎて、水銀燈はダッシュしている。<br>
今日は黒いワンピースを着ている。</p>
<br>
<p>しばらく走ると、ようやく赤月駅の前に到着した。<br>
銀「もう・・・死ぬ・・・・・これは新記録だわぁ・・・・・・あ」<br>
息を切らした水銀燈の視界に、あの薔薇水晶お気に入りのたい焼き屋が飛び込んできた。<br>
銀「そうねぇ・・・・・少し列んでいるけど、どうしよう」</p>
<br>
<p>さて、ここで選択をして貰います。<br>
銀「そうねぇ・・・・・少し列んでいるけど、どうしよう」<br>
A.お詫びって意味も含めて、買っていこうかしら<br>
B.今日の所は止めましょう</p>
<br>
<p>[Aルート]<br>
銀「お詫びって意味も含めて、買っていこうかしら」<br>
そうして、水銀燈は列に列んだ。<br>
案外早く列はすすみ、すぐに水銀燈の順番が来た。<br>
銀「たい焼き4つちょうだぁい。あ、その大きいのおねがぁい」<br>
親父「おう!お姉ちゃん美人だからこの小さいのおまけしてやる!」<br>
銀「ふふ、ありがと」<br>
水銀燈は親父に料金を払い、店を後にした。</p>
<br>
<p>[Bルート]<br>
銀「今日の所は止めましょう」<br>
時刻は10時を大幅に過ぎている。<br>
銀「(たい焼きなら・・・今度も買えるしね・・・・)」<br>
たい焼き屋を後にした。</p>
<br>
<p>[A・B共通ルート]<br>
駅員「まもなく白壁駅行きが2番線より発車致します。ご注意下さい」<br>
銀「まっ、待ってちょうだい!!」<br>
プシューッ<br>
ゴトン・・・ゴトン・・・<br>
銀「ふう・・・ふう・・・ひい・・・・ひい・・・・」<br>
水銀燈は間一髪電車に乗り込んだ。<br>
駅員「お客さんー、飛び込み乗車は禁止です。気を付けてくださいよぉ」<br>
銀「あ・・・ごめんなさい・・・・ひい・・・ひい・・・・・」</p>
<br>
<p>5分ほどで白壁駅に着いた電車。<br>
水銀燈は電車から降り、走って階段を上った。<br>
外は相変わらず薄暗かった。横断歩道の向かい側を見る。<br>
銀「ごめんっ!遅刻しちゃったわっ!!」<br>
水銀燈は横断歩道まで走りながら、両手を顔の前に合わせて言った。<br>
薔「・・・・遅い。・・・・ふふ、早く来て」<br>
薔薇水晶は拗ねる素振りを見せて、すぐに笑顔になった。<br>
クリーム色のセーターと紺のスカートを穿いて、赤いキャップを被っている。<br>
銀「まあ待ちなさいよ。赤信号だから」<br>
二人は横断歩道越しに話す。<br>
薔「ふふ・・・・なんで遅刻したのかなー?」<br>
平日だけあって、辺りは人気が少ない。<br>
水銀燈は少し恥ずかしがりながら、理由を説明し始めた。<br>
銀「えっとぉ・・・・・実はね・・・・」</p>
<br>
<p>その瞬間だった。<br>
キイイイイイイイイッッッッッ<br>
ドンッッ</p>
<br>
<p>銀「ば・・・薔薇水晶・・・・・・?」<br>
水銀燈は持っていたたい焼きの袋を落とした。<br>
すぐさま薔薇水晶の元に駆け寄る。<br>
倒れている薔薇水晶を・・・そっと抱き起こす。<br>
薔「水・・・・・銀燈」<br>
銀「なに?」<br>
薔「ふふ・・・・・おか・・・しいよね・・・・・ちゃんと・・・・・信号・・・守ったのに」<br>
銀「薔薇水晶・・・・・・・・」<br>
薔「大丈・・・夫・・・・・・だよ」<br>
薔薇水晶は笑って言った。<br>
薔「あのね・・・・水銀燈・・・・・・」</p>
<br>
<p>なに?<br>
薔「もし私が・・・・居なくなっちゃっても・・・・・泣いちゃだめだよ・・・」<br>
居なくなるなんて・・・・・そんなわけないじゃない・・・・・・。<br>
薔「私が・・・・・居なくなって・・・も・・・・・今まで・・どおり・・・・明るくて・・・<br>
素敵で・・・・・格好良くて・・・・・本当は面倒見が良くて・・・・・みんなの人気者で・・・<br>
そんな・・そんな水銀燈で・・・・ずっと居て欲しい・・・・・」<br>
うん、私・・・・薔薇水晶の望みならずっとそんな私で居るわ。<br>
だから・・・・・・・<br>
薔「もう・・・・水銀・・・燈・・・・・泣かない・・でって・・・・言ってるじゃない・・・<br>
水銀燈の・・・・・泣き虫・・・・・」<br>
私は泣いてなんかいない・・・・・・・・・・・泣かないわよ・・・・。<br>
だから・・・・・・・・<br>
薔「水銀燈・・・・・・・もうひと・・つ・・・・お願いが・・・あるの・・・・・・」<br>
もうひとつ?薔薇水晶・・・・貴女のお願いならまだまだ沢山聞いてあげる。<br>
だから・・・・・・・・・・・<br>
薔「キス・・・・して欲しい・・・・・・」<br>
うん、してあげる。薔薇水晶・・・・・貴女が望むなら・・・・・・。<br>
だから・・・・・・・・・・・・・・お願い。</p>
<br>
<p>そんなに・・・悲しい顔しないで・・・・・・・。</p>
<br>
<p>水銀燈は薔薇水晶に顔を近づけ・・・・キスをした。<br>
ほんの数秒・・・・・しかし二人には永遠にも感じられた。<br>
薔「ありがとう・・・・・・・嬉しい・・・・・・・・」<br>
銀「・・・薔薇っ・・・・水晶・・・・・・・・」<br>
薔「泣かないで・・・・・・って・・・言ってる・・・・・・・・・・・」<br>
薔薇水晶は水銀燈の涙を指で拭う。<br>
銀「だって・・・・・・・薔薇水晶・・・・・貴女だって・・・・泣いてるじゃない・・・」<br>
薔「ふふ・・・・・水・・・・銀・・・・・・・燈・・・・・・・・・・」<br>
銀「な・・・・なぁに・・・?」<br>
水銀燈は涙をこらえて・・・・・できる限りの笑顔で返事をした。<br>
薔「ありがとう・・・・・・・たのし・・・・かった・・・・・・・・・・・・・・・」<br>
薔薇水晶はゆっくりと目を閉じた。<br>
水銀燈の手を握る力が・・・・・ゆっくりと抜けていった。<br>
銀「薔薇・・・・・・水晶・・・・・・?」</p>
<br>
<p>銀「・・・どうしたの、薔薇水晶?」<br>
紅い、世界<br>
銀「薔薇水晶・・・・こんな所で寝ちゃダメよ」<br>
辺り一面に広がる紅い世界<br>
銀「ほら・・・雨が降ってきたわ。早く起きて」<br>
それは深い紅<br>
銀「早く・・・・起きて・・・。風邪を引いちゃうわ」<br>
ケチャップの紅?・・・・・・違う<br>
銀「駅の屋根の下で・・・・雨宿りしましょう・・・だから・・・・起きて・・・・」<br>
絵の具の紅?・・・・・・違う<br>
銀「お願い・・・・・起きて・・・・・目を開けて・・・・・・・・いつもの笑顔で・・・・・・私を見て・・・・」<br>
それは・・・・・・・・・<br>
銀「薔薇・・・・水晶・・・・・・・」<br>
・・・・・紅い紅い、血の紅。<br>
銀「薔薇水晶・・・・薔薇水晶ーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!」<br>
水銀燈の悲鳴は・・・・・・雨音で掻き消えた。</p>
<br>
<p>『T18k - エピローグ』<br>
[A.お詫びって意味も含めて、買っていこうかしら・希望編]<br>
・<br>
・<br>
・<br>
キーンコーンカーンコーン<br>
授業終了のチャイムが鳴った。放課後になったわけだ。<br>
薔薇水晶の席には・・・・誰も居ない。<br>
紅「水銀燈・・・・・私、今日は委員会が無いの。一緒に帰りましょう」</p>
<br>
<p>
真紅と水銀燈は隣りに並んで歩いた。でも、並んでいただけ。何も喋らなかった。<br>
そのまま二人は道を進み・・・・赤月駅で電車を降りた。<br>
銀「あ・・・・ちょっと待ってなさぁい・・・真紅」<br>
先に口を開いたのは水銀燈だった。<br>
紅「あっ・・・・・・行ってしまったのだわ。何をしにいったのかしら・・・・・」<br>
しばらくして、水銀燈が紙袋を抱えて戻ってきた。<br>
銀「お待たせぇ。・・・・・これ、奢ってあげるわ」</p>
<br>
<p>紅「これは・・・たい焼き?ありがとう、水銀燈」<br>
真紅が食べ始めようとするのを、水銀燈が止める。<br>
銀「ちょっと待ちなさい・・・・早とちりねぇ」<br>
紅「・・・・・?」<br>
銀「これはね、ただのたい焼きじゃないのよ。世界一美味しいたい焼き。<br>
そして・・・沢山の想いが詰まったたい焼き。私が今こうやって・・・・普通の高校生活を<br>
送っていられるのもこのたい焼きのおかげ。だから・・・・・ちゃんと味わって食べなさぁい」<br>
真紅はしばらくきょとんとしていたが、水銀燈の表情を見て微笑んだ。<br>
紅「そう・・・・それは素晴らしいたい焼きね。美味しく頂かせて貰うわ・・・・・」<br>
水銀燈は儚げに、しかし幸せそうに笑って空を見上げていた。</p>
<br>
<p>銀「(薔薇水晶・・・・・・・)」<br>
銀「(貴女が居なくなってしまったら・・・・私はきっと泣いてしまう。約束は守れないわ・・・<br>
ごめんなさい)」<br>
銀「(でも・・・・貴女の体がなくなってしまっても・・・・・貴女の想いは私の心にある・・・・)」<br>
銀「(だから・・・・貴女と私はいつまでも・・・・いつまでも一緒よ・・・・・・・・・)」<br>
紅「そろそろ・・・・行きましょう」<br>
銀「あらぁ、ごめんなさぁい」<br>
紅「そういえば水銀燈、貴女数学の課題プリント未提出だったわね」<br>
銀「それはぁ、そのたい焼きで免除ってことでよろしくお願いするわ」<br>
紅「またそんなこと言って・・・・そんなことで免除になるわけないのだわ!早く提出しなさい!」<br>
銀「あらぁ、こわ~い。あ、私こっちだから。まったねー♪」<br>
紅「あっ!ちょっと!待ちなさい!待ちなさい水銀燈!!」</p>
<p>
『T18k』END</p>
<br>
<br>
<p>[B.今日の所は止めましょう・絶望編]<br>
キーンコーンカーンコーン<br>
授業終了のチャイムが鳴った。放課後になったわけだ。<br>
薔薇水晶の席には・・・・誰も居ない。<br>
紅「水銀燈・・・・・私、今日は委員会が無いの。一緒に帰りましょう」<br>
銀「・・・・・・・・五月蠅い」<br>
水銀燈は一言吐き捨てると、逃げるように教室から出て行ってしまった。<br>
紅「あ・・・・・・・・」</p>
<p><br>
銀「・・・・・・・・・・・・・・・」<br>
水銀燈は何も考えずに、朝登校した道を戻っていた。<br>
ガチャッ<br>
バタン<br>
水銀燈の母「あら、お帰りなさい。水銀燈」<br>
銀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」<br>
母親の言葉も無視して、階段を上がっていく。<br>
ガチャッ、と自分の部屋のドアを開け、中に入る。<br>
水銀燈の部屋は、カーテンで閉め切っていて薄暗かった。<br>
バタン、とドアを閉めた。</p>
<br>
<p>銀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」<br>
机の上のあるものに目を向ける。<br>
銀「・・・・・・・・・・・・・・」<br>
水銀燈はそれを手に取った。<br>
銀「薔薇水晶・・・・・・・・・・・・」<br>
それは、一枚のプリクラ。<br>
銀「薔薇水晶・・・・・・・・貴女の居ない生活なんて・・・無理よ・・・・うっ・・・・・<br>
会いたい・・・・・貴女に・・・会いたい・・・・・・・・」<br>
泣き崩れる水銀燈。<br>
銀「私は・・・貴女が思っているほど・・・・・完璧じゃない・・・・・・大切な貴女を失った<br>
私は・・・・一体どうすればいいの・・・・うっ・・・・うっ・・・・・・・」<br>
水銀燈の部屋には・・・彼女の泣き声だけが響いた。</p>
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『T18k』END</p>
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<p>※『T18k』は『タイヤキ』と読みます<a title="t18k_l"
name="t18k_l"></a></p>