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「第九十九話 ＪＵＭと大晦日」(2007/01/16 (火) 23:59:16) の最新版変更点
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<p>「一つ屋根の下 第九十九話 ＪＵＭと大晦日」</p>
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<p>「今日で今年も終わりねぇ～。」<br>
コタツで蜜柑を口に入れながら銀姉ちゃんがぼやく。そう、今日は12月31日。要するに大晦日というわけだ。<br>
「今年も何だかんだで早かったよね。銀姉ちゃんは今年何かいい事あった？」<br>
僕は銀姉ちゃんの手元にある蜜柑を一房取って口に運ぶ。うん、甘い。<br>
「そうねぇ……ふふっ、もちろんあるわぁ。例えばぁ～……」<br>
「へ？うわっ、ちょっと銀姉ちゃん？」<br>
不意打ちで僕はコタツから抜け出した銀姉ちゃんに押し倒される。そして銀姉ちゃんはそのまま僕の腹部辺りに<br>
馬乗りになって僕を見つめる。<br>
「例えばぁ、ＪＵＭが大きくなってから初めてキスした事とかぁ。そういえば、ディープキスもしたわよねぇ。」<br>
まぁ、それはその……銀姉ちゃんに限った事じゃないんだけどね。<br>
「心残りと言えばぁ、やっぱりＪＵＭを私の物に出来なかったことくらい……あらぁ、そういえば今年ってまだ<br>
数時間残ってるじゃなぁい。折角だしぃ、この際ＪＵＭを頂いちゃおうかしらぁ。」<br>
銀姉ちゃんがニヤリと笑い僕の上着のボタンを外そうとする。<br>
「ちょ、っちょっとタンマタンマ！！」<br>
「やぁよぉ。こんな状況で待つわけないじゃない……」<br>
当然のように僕の言う事なんて聞くわけも無く銀姉ちゃんはボタンを外していく。銀姉ちゃんは女の子の割りに<br>
案外力は強い。いや、僕が弱いだけかもしれないが。一応の抵抗は試みてはいるが、銀姉ちゃんはまるで<br>
気にしていない。今年の最後の日になって僕の貞操もここまでか……そう思っていたとき赤鬼が現れた。<br>
その赤鬼は、銀姉ちゃんの首根っこをまるで嫌いな猫を掴むかのように掴み、僕から引き剥がした。<br>
「そこまでにしなさい、水銀燈。ＪＵＭも嫌がっているじゃないの。」<br>
「ちょ、ちょっとぉ。そんなトコ持たないでよぉ、痛いじゃないのよぉ！」<br>
真紅姉ちゃんによって銀姉ちゃんは引き剥がされてようやく僕は上着のボタンを留める。いや、危なかった。<br>
「全く……貴方はもう少し落ち着いて年を越そうと思わないの？」<br>
「はぁ、五月蝿いうるさぁい。真紅ったら口煩いオバサンねぇ。私より2歳も年下の癖にぃ。」<br>
「なっ！？私のドコがおばさんよ！！大体ね、貴方の目元なんて小皺が……！」<br>
「い、言ったわねぇ！！これは貴方達姉妹が私に苦労かけるからよぉ！！貴方こそ姑みたいにクドクドと……」<br>
きっと今年最後の口喧嘩が始まる。そして、きっと明日にはまた口喧嘩が始まるんだろうなぁと僕は確信した。</p>
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「ただいま～！あれ、また二人は喧嘩かな？飽きないねぇ。」<br>
「お帰り蒼姉ちゃん、翠姉ちゃん。買い物行ってたの？」<br>
「そうですよ。御節なんて大層なものは作る暇なかったですけど、明日は多少は豪勢にいきたいですからね。」<br>
二人の持っている大きなスーパーの袋の中には、沢山の食材が入っている。これは、明日期待できるな。<br>
「やぁめたぁ。おばかさんの真紅の相手してたら私までおばかさんになっちゃうわぁ。」<br>
「よく言うわよ……それよりお蕎麦は買ってきてくれたかしら？」<br>
ようやく口喧嘩を終えた二人も翠姉ちゃん達に絡む。<br>
「うん、買ってきたよ。インスタントはあんまり好きじゃないから夜に僕がゆがくよ。」<br>
蒼姉ちゃんがゴソゴソと袋を漁って蕎麦の麺を取り出す。そっか、今日は年越し蕎麦もあったな。<br>
「全く、最近の主婦はインスタント頼りで自分でゆがこうと思わないですかねぇ。嘆かわしい事ですぅ。」<br>
翠姉ちゃんに腰に手を当てて言う。我が家の料理担当の翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんはインスタントカップメンが<br>
お嫌いなようで。我が家にカップメンがある事は一年を通して稀だったりする。翠姉ちゃん曰く<br>
「たった3分に愛情なんてねぇですぅ！だからおめぇらは翠星石達が時間かけて作ってやったモンを有難く<br>
食いやがれです！！」<br>
との事らしい。それはとても嬉しいし、有難い事なんだけど。たまに僕しか家にいない時はカップメンが恋しくなる。<br>
「あ…二人ともお帰りなさい……」<br>
ガチャリとリビングのドアが開かれると薔薇姉ちゃんがやってきた。<br>
「ただいま、薔薇水晶。雪華綺晶とかはどうしてるの？」<br>
「きらきーと…カナと…ヒナはお部屋でお昼寝……夜…神社行くから…」<br>
薔薇姉ちゃんが言う。我が家では毎年大晦日の夜は揃って近所の神社へ行っている。最早恒例行事なので<br>
理由なんて考えた事もない。神社では、その年の干支が描かれた湯のみを配布してたり、お蕎麦が<br>
タダで配られてたり。結構みんな楽しみにしてる事だ。<br>
「はっはぁ～ん、それでお子様組は今のうちにお昼寝って訳ですかぁ。全く、困ったもので…す…ふぁぁ…」<br>
そう言ってる側から翠姉ちゃんも口を押さえてアクビ。直後顔を真っ赤に染める。<br>
「ふふっ、翠星石は朝から家の仕事沢山あって疲れてるもんね。いいよ、少し寝ておいでよ。」<br>
そんな翠姉ちゃんを察して蒼姉ちゃんが気遣う。相変わらず優しい人だなぁ。<br>
「ま、まぁ蒼星石がそこまで言うならちょびっと寝てきてやるですぅ……あふ……おやすみですっ…」<br>
翠姉ちゃんは再びアクビをすると部屋に戻って行く。そういえば僕も何か眠いな…寝るかな、少しくらい。<br>
何せ今日の夜は長いんだからね。</p>
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「毎年思うけど、紅白って誰？って言いたくなるような人が出てたりするわよねぇ。」<br>
夜。僕達姉弟はコタツで蒼姉ちゃんのゆがいた蕎麦を食べながらお決まりの紅白歌合戦を見ていた。<br>
「演歌とか元から知らないですけど、さらに知らない奴がいて困ったもんですよ。」<br>
ズルズルと蕎麦を食べながら銀姉ちゃんと翠姉ちゃんが言う。確かに、演歌の人なんて僕は全く知らない。<br>
よって面白くもなんともない。まぁ、全ての世代に楽しめるようにするには演歌も必要なんだろうけどね。<br>
「最近は年越しライブとか優先させるアーティストも多いよね。僕はそっちの方がよりファンの人の為になって<br>
るんじゃないかって思うけど。」<br>
「そうですね。でも、チケット取れなかったら紅白とかテレビで見たいと思うでしょうし。難しいですね。」<br>
蒼姉ちゃんとキラ姉ちゃんは随分真面目な話をしている。その辺はまぁ、俗に言う大人の事情とかが<br>
絡んでくるんだろうなぁ。利益とか利益とか利益とか……<br>
「そういえば……ＪＵＭは好きなアイドルとか……いるの？」<br>
「はぁ？いきなりなんだよ薔薇姉ちゃん。別にいないと思うけど…」<br>
丁度某新メンバーと卒業を繰り返しいつの間にか初期メンバーがいなくなったアイドルグループの歌の時に<br>
薔薇姉ちゃんが言った。実際、僕はそういう事に少し疎い。そもそも音楽にあまり興味が無い。<br>
今時の高校生なら音楽の一つや二つくらい興味持っておけって所だ。<br>
「ん、何となく……少しはＪＵＭの好みが分かるかなと思って……」<br>
好みも何も、そもそも姉ちゃん達の前では恥かしくて絶対言えないけど、一番身近にアイドルグループ顔負けの<br>
人達がいるんだから、わざわざテレビのアイドルを追う必要がないと言うか……言えないけどね。<br>
そんな感じでまったりと時間を過ごし紅白も終了を迎える。時間もすでに２４時に近い。銀姉ちゃんがコタツ<br>
から出ると、ん～っと伸びをして言う。<br>
「さぁてぇ、そろそろいい時間ねぇ。寒くないようにちゃんと服着て神社行きましょうかぁ。」<br>
一年の締めくくりの最終行事。それが神社への参拝だ。僕の覚えてる限りでも近所に神社に毎年欠かさず<br>
お参りに行っている。そして神社で新年を迎えるわけだ。<br>
「は～いなの～！じゃあヒナお洋服着てくるのぉ～！」<br>
「あ、カナも行くかしら。体の冷えは乙女の天敵かしら。」<br>
バタバタと慌しくヒナ姉ちゃんとカナ姉ちゃんが部屋へ向かっていく。さて、僕もダウンジャケットでも着て外に出る<br>
準備でもしますかね。</p>
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「ん……少し寒いわね。ＪＵＭ、こっちに来て風を遮る壁になりなさい。」<br>
神社に向かう途中、真紅姉ちゃんが僕の腕を掴み自分の横に立たせる。風向きからすれば多少は僕が<br>
壁になっているようだ。これに突っかかるのはさっきまで僕の隣だった翠姉ちゃん。<br>
「ちょーっと真紅！ＪＵＭは翠星石の隣に居たんですよ？それを奪うだなんて酷いですぅ！」<br>
「あら？貴方ＪＵＭの隣にいたかったの？じゃあ返してあげましょうか？」<br>
「なっ…べ、別に翠星石はＪＵＭに隣なんかに居て欲しくねぇです！変な事されたら困りますからね。」<br>
翠姉ちゃんがフンっと意地を張る。それを見て蒼姉ちゃんはクスッと笑う。翠姉ちゃんの性格を上手く扱ってる<br>
のが分かってるんだろう。そんなやり取りをしていると神社の鳥居が見えてくる。すでに神社の中は人で<br>
溢れかえっている。毎年の事ながら物凄い人だ。<br>
「……言いたい……人がゴミのようだって……言いたい……」<br>
薔薇姉ちゃんがウズウズしている。言ってもいいけど小声でよろしくね。大声なら他人のフリ決行します。<br>
「あらぁ、結構並んでるわねぇ。まぁ仕方ないわぁ、私達も並びましょうかぁ。」<br>
鳥居をくぐると、お参りする為に並んでいる人が列を作っている。一番目の人とかは、何時ごろから<br>
並んでるんだろうか。仕方なく姉弟揃って列に並ぶ。にしても寒い……ジャケットのポケットに手を入れて<br>
ついつい猫背になる。息が白い。寒いんだから当たり前かもしれないけど。と、その時ヒナ姉ちゃんが大きな声を<br>
出してある人物の名前を呼んだ。その人物は講堂で巫女装束を着ていた。<br>
「あ、トゥモゥエー！！こっちこっちなのー！！」<br>
ヒナ姉ちゃんがブンブンと嬉しそうに手を振る。自分が呼ばれたと気づいたのか、その巫女さん……柏葉は講堂<br>
から僕らを見つけた。柏葉って巫女さんのバイトしてたのか。柏葉は講堂から少し身を乗り出す。<br>
「こんばんは、雛苺。それにみんな。神社来てたんだね。」<br>
さすがに講堂からは出れないようだけど、柏葉はこちらに話しかけてくる。<br>
「うん、来たの！トモエは何してるの？」<br>
「私は小さい頃から毎年巫女さんしてるから今年も…ね。」<br>
そうだったんだ。確かに言われて見れば、柏葉と大晦日に神社で会う時はいつも巫女さんだったような。<br>
「そっかぁ～。でも、トモエの巫女さんとっても可愛いのよ～！ヒナも着てみたいの～。」<br>
「ふふっ、有難う雛苺。じゃあ今度一緒に着てみようか？桜田君も巫女好きだろうし。」<br>
何だかとんでもないことを言う柏葉。姉ちゃん達はそうなの？と視線を向けてくる。僕には巫女属性なんて<br>
ない……と思う。あ、でも翠姉ちゃんや蒼姉ちゃんは似合いそうな気が……いや何でもない。</p>
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「じゃあね、トモエ！また今度遊ぼうなの～。」<br>
柏葉が講堂から小さくヒナ姉ちゃんに手を振る。と、その時だった。ヒュルルルと打ち上げ音。直後に破裂音。<br>
そしてその直後周りの人から大きな歓声が上がった。言うまでもない……携帯の時計を見る。時間は<br>
1月1日0時00分。そして鐘の音が響き始める。恐らくこの後108回鐘を撞くのだろう。<br>
そして長かった列もようやく動き出す。僕は姉ちゃん達を見て、そして一礼。<br>
「あけましておめでとう御座います。今年もよろしくお願いします。」<br>
「おめでとう、ＪＵＭ。今年こそよろしくねぇ。」<br>
「ＪＵＭ、おめでとうかしら！」<br>
「まぁ、新年の挨拶くらいしといてやるです。えーと、あけおめことよろ…ですぅ。」<br>
「おめでとうＪＵＭ君。今年もよろしくね。」<br>
「おめでとう。今年も私の下僕として働きなさい。」<br>
「おめでとうなのー！今年もヒナと一杯一杯遊んでね！」<br>
「おめでとう御座います。今年はヨロシクやりましょうね。」<br>
「ＪＵＭ……あけ…おめこ…とよろ。」<br>
何だか銀姉ちゃんやキラ姉ちゃん。薔薇姉ちゃんはオカシイ気もするけどスルー。新年から気にしたら負けだ。<br>
姉ちゃん達と新年の挨拶をかわすと、携帯に次々メールが入ってくる。べジータや桑田さん。めぐ先輩からも<br>
きてる。みんな電波を掻い潜ってきたのかなぁなんて思う。この「umeokauhouho@」は無視でいいよね。<br>
携帯でメールを返しながら御参りの順番を待つ。ん～、みんなどうやって時間ピッタリに送ったんだ？<br>
電波状況悪くて送れない…まぁ、明日でもいいかな。と、あけおめメールに苦戦しているとようやく<br>
僕等の参拝の番になった。先ずは銀姉ちゃんとカナ姉ちゃんが。次は翠姉ちゃんと蒼姉ちゃん。<br>
真紅姉ちゃんにヒナ姉ちゃん。キラ姉ちゃんと薔薇姉ちゃんが参拝を済ませる。さて、最後は僕だ。<br>
とりあえず100円を賽銭箱に投げ入れる。そして鈴をガラガラと鳴らす。パンパンと手を合わせ目を瞑る。<br>
僕の願い、僕の望む事。少し考えて…いやきっと考えるまでも無いような事。僕の願いは……<br>
『今年も、姉ちゃん達と仲良く一緒に……いや今年だけじゃなくてずっとずっと…一緒に暮らせるように…』<br>
ＥＮＤ</p>
