「『第一夜~Ouverture・序曲~』」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<p>Rozen Hazard~Infection~<br>
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『第一夜~Ouverture・序曲~』<br>
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アレはまだ蝉が鳴く初夏の夜に友人達と見たB級ホラー映画で誰かが言っていた。<br>
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『地獄が死人で一杯になると、あふれ出た死人が生ける死者"ゾンビ"となって地上を歩く』<br>
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正直そんな非科学的な空想の話だと僕自身はバカにしていた、いやそうであると信じたかった。<br>
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そう思って僕は今まで生きてきた、何も変わらない光溢れる日常・・・少なくともあの日が来るまでは何も変わらなかった。<br>
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あの日、空に燦々と輝く太陽が突然消え---禍々しい程紅い月が昇った。<br>
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それが僕らのありふれた日常の終わりであり、非日常的な日々の始まりであった。<br>
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あの日僕らは私立薔薇学園高等部(通称:薔薇学)の同窓会に出席する予定だった・・・。<br>
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多くの仲間達が卒業後私立薔薇学園大学(通称:薔薇大学)に進んだが何名かは就職したり別の大学に進学していたりした。<br>
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僕は中等部からの友人を車で拾ってから同窓会が開かれる薔薇乙女市へと向かった・・・</p>
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<p>「この調子だと30分後には向こうに着くな・・・」<br>
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僕はハンドルを握りしめながら腕時計に目をやった、僕は薔薇乙女市と他の街を隔てる峠を車で走らせている。<br>
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僕の名前は桜田JUM、薔薇学高等部を卒業後に経済的事情で市外の国立大学に通う大学生だ、ちなみに学部は独文科だ。<br>
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そしてその隣でぼーっと外を眺めつつ長い金色の髪を手で掻き上げているのが中等部からの親友で幼なじみの真紅だ。<br>
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真紅は僕とは天地の差がある程の名門のお嬢様なのに何故か僕と同じ大学の法学部に通っている。<br>
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この間何故かを問いただしたら『貴方に関係の無い事なのだわ』とあっさり右手の拳を顔面に受け、受け流された。<br>
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「二年ぶり・・・なのかしら」<br>
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真紅は助手席で午○の紅茶を飲みながらボソリと外から視線を戻して呟いた、そして勝手に僕のMDコレクションを漁り始めた。<br>
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気に入った曲が無いのか真紅はフゥと溜息を付いてから僕を一度睨み付けてきた、僕はその視線から逃れる為にラジオのチューナーを合わせる、彼女好みの曲を探す為だ。<br>
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「あれ?おかしいな・・・薔薇市のラジオ局がどれもノイズばっかりだ」<br>
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僕はもう一度チューナーを合わせる、やっぱりノイズばかりだ、峠なのだろうか電波の受信状況も宜しくないみたいだ。<br>
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ソーッと真紅を見ると『使えない家来ね・・・』と呟いてハンドバックから自分のCDを取り出し挿入する。<br>
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車のステレオから流れてくるのは70年代に人気を博したイギリスのロックバンド『The Who 』のBehind Blue Eyesと言う曲だ。<br>
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「へぇ・・・真紅にしては珍しいな、ロックは嫌いじゃなかったっけ?」<br>
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僕はイタズラっぽく真紅に聞く、真紅は驚いたような顔をこちらに向けてからニコリと微笑んだ。<br>
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「昔はね・・・今の邦楽はどれもつまらないわ」<br>
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真紅らしい最もな事を言う、確かに最近の邦楽はイケメンを出せば売れると勘違いしてるから僕も敬遠しがちだ。<br>
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「確かに・・・僕も最近はユーロか洋楽ばっかりだな」<br>
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そんな他愛の無い話をしてる間に車はトンネルへと入っていく、まるで薔薇乙女市と他の街を隔てるかのように作られたこのトンネル。<br>
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昔からこのトンネルは好きじゃなかった、何というか薔薇乙女市だけを他の全てから隔離してるかのような感じがして堪らなかった。<br>
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そして曲が終わると同時にトンネルを抜けた、視界に入ってきたのはかつて光の街と言われた薔薇乙女市では無かった。</p>
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街全体が深紅に包まれたかのように紅かった、空に太陽は無くまるで血に染まったかのような紅月が浮かんでいた。<br>
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「い、一体何なのよ・・・コレは・・・」<br>
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真紅が驚いたような声を上げて僕のシャツの袖を掴む、僕も思わず路肩に車を駐車して呆然と空を見上げていた。<br>
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「月食にしては気味が悪いな・・・」<br>
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僕は思ったままの言葉を出す、赤は嫌いじゃない・・・でもこんな血の色みたいな紅は嫌いだ。<br>
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「とにかく先を急ぎましょう!!」<br>
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真紅が袖を何度も引張って速く車を出すように促して来る、僕はあぁと呟いて車のアクセルをふかす。<br>
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今思えば、この時僕は引き返すと言う選択肢を選ばなかった事を後悔した・・・。<br>
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そして運命の歯車は軋みを立てて回り始めた・・・。<br>
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(To Be Continue)<br></p>