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第九十三話 JUMとソリ」(2006/12/23 (土) 21:52:44) の最新版変更点

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<p>「一つ屋根の下 第九十三話 JUMとソリ」</p> <br> <br> <p> さてさて、スキー旅行も早くも二日目。そして冬休みも二日目。要するに、12月24日だ。<br> 時間もすでにお昼過ぎ。昼食を食べた僕達はそれぞれゲレンデで時間を過ごしていた。<br> めぐ先輩によると、今日の夜はクリスマスパーティーやるから早めに切り上げるそうだ。<br> そんな僕が今ドコにいるかと言えば、昨日もいた初心者練習場である。最も……<br> 「ひゃあー!はや……ちょっと早すぎる…ですぅ……」<br> 面子は昨日とは全く違うわけだけどね。<br> 「こんな緩い坂でも結構スピードが出るのですね。結構楽しいですわ。」<br> 僕の隣でキラ姉ちゃんがソリを持ってニコニコしている。そして、ソリを雪の上に固定するとそれに座り込み、<br> シャーっと颯爽と滑っていく。<br> 「銀ちゃん……今頃ビシビシかな……真紅…厳しいから……」<br> 「まぁ、いいんじゃないかな。水銀燈から練習に付き合って欲しいって言ってたし。」<br> 薔薇姉ちゃんと蒼姉ちゃんがソリを持って登ってくる。そう、今ここにいるのは翠姉ちゃんに蒼姉ちゃん。<br> そしてキラ姉ちゃんに薔薇姉ちゃんと、昨日とまるで正反対のメンバーなのであった。<br> 午前中、一番距離が短いリフトに乗って、ようやく普通のゲレンデデビューをした銀姉ちゃん。<br> 昨日からの練習の甲斐があってか、初級コースくらいなら難なく滑れるようになっていた。<br> しかし、銀姉ちゃんの目標はあくまで、全員で山頂から滑る事。僕らは明日の夜に帰るので、残された<br> 時間は少ない。その時間を無駄にしなように、赤鬼教官の真紅姉ちゃんと練習してるようだ。<br> でだ。滑れる面々も、折角だし他の事で遊びたい!って事でソリと。まぁ、そういう訳だ。</p> <br> <p><br> 「ボードも面白いですけど、最近のソリもなかなか面白いですねぇ。」<br> 「うん、スピードも結構あるし。何より、ボードより遥かに視点が低いから意外にスリルもあるよね。」<br> ソリは昨日、カナ姉ちゃんとヒナ姉ちゃんが使ってた奴だ。ちなみに、二人と柏葉も銀姉ちゃん達と一緒に<br> 練習中である。まぁ、あれであの二人はソコソコ滑れるんだけどね。<br> 「JUM……滑らないの?」<br> 「ん?ああ。じゃあ僕も滑らせて貰おうかな。」<br> 僕がそう言うと薔薇姉ちゃんが持っていたソリを置いてくれる。僕はそれに座る。そして出発……と思った<br> 所で背中に違和感。背中にモサモサしたウェアの感触。そして嗅ぎ慣れたシャンプーの香りがする髪。<br> 「え!?薔薇姉ちゃん!?」<br> 「れっつらごー……」<br> シュパッと頬を風が切る。<br> 「ちょ、ちょっと薔薇しー!!抜け駆けなんてズルイですよぉ~~!!」<br> 上から翠姉ちゃんと思われる声が聞こえる。しかし、風の音が耳に突き刺さるせいで断定はできない。<br> 「は……はやっ……」<br> 「体重二人分だから……」<br> ボソッと背中から声がする。成る程、一人で乗ったときより体重が増えてるから速度も増えてるわけね。<br> って、そんな冷静に分析してる場合じゃない。予想もしてない速さで僕は混乱気味だ。<br> 「……か~ぶ……」<br> 「へ?うおあっ!?」<br> 薔薇姉ちゃんが重心を左に傾ける。僕の体も一緒に傾けるせいで、ソリは左に曲がっていく。<br> 転ぶ!転ぶって!!あと少し体重が左に乗れば、そのままひっくり返りそうです。いや寧ろ、ひっくり返りそうと<br> 言うより……<br> 「うわああああああああああああ!!!」<br> 「きゃー……」<br> ゴロゴロゴロゴロと視界が目まぐるしく回転する。雪の白と空の青が交互に視界に入る。<br> ああ……やっぱり転んだか。</p> <br> <p><br> 「~~~~かい!?~~君!!~~すいしょ~!!」<br> 坂の上から僕を呼ぶ声がする。多分蒼姉ちゃんだろう。正直なところ、大丈夫とは言い切れそうにない。<br> 「っつつぅ……薔薇姉ちゃん?」<br> 未だに頭の中がグルグル回ってる気がするが、とりあえず気合で意識を維持。付近を見回す。僕らが乗っていた<br> と思われるソリは近くでひっくり返っていた。そして、その近くで……<br> 「JUM……埋もれちゃった……」<br> 薔薇姉ちゃんが新雪の中に埋もれて、雪の中に体を沈めていた。手足は出てるけど、体が完全に<br> 埋まってるようで手足をバタつかせてる。正直、自業自得だと思う。<br> 「あ~あ~……出れそう?」<br> 「ん~…んっ!ふっ!!……無理そう……」<br> 薔薇姉ちゃんはジタバタするが、もがくほど雪に埋もれてる気がする。やれやれ、仕方ない。<br> 「JUM……手を貸して……」<br> 「はいはい。言われなくてもそうするよ。」<br> 僕は薔薇姉ちゃんに近づき、スッと手を差し伸べる。後は、手を持ち上げれば万事OK。<br> しかし、薔薇姉ちゃんは僕の手を握るとニヤリと笑い、思い切り僕を引き込んだ。<br> 「へへぇ……道連れ~……」<br> 「うわあああっ!??」<br> 思いも寄らない出来事に完全に不意をつかれる。薔薇姉ちゃんに引き込まれた僕は、薔薇姉ちゃんに馬乗り<br> のように覆いかぶさった。<br> 「キィイイイイイイ!!!こ、こんな公衆の面前で何やってやがるですかぁ!!離れやがれですぅ!!」<br> 坂の上から翠姉ちゃんの怒号が響く。いや、完全に不可抗力なんですけど。しかし、薔薇姉ちゃんは<br> さらに企み顔で言い放った。</p> <br> <p><br> 「JUMったら大胆……動けない私に……でも、JUMなら……雪の上もロマンチック……」<br> 普通に雪の上だと寒いんでは。そんなどうでもいいツッコミは置いておこう。<br> 「ばっ、なっ、薔薇姉ちゃんが僕を引っ張り込んだんじゃないか。」<br> 「うん……でも、転んだのは偶々だよ……だから、先にクリスマスプレゼント……折角神様がくれた機会…」<br> 薔薇姉ちゃんはそう言うと、少しだけ頭を持ち上げる。ヒンヤリと冷たい感覚が僕の唇に当たる。<br> 「ちょ、薔薇ねえちゃ……」<br> 「JUM……好き……」<br> 薔薇姉ちゃんはそう言うと、僕の抗議をまるで受け付けるつもりはないようで、僕の頭の後ろに腕を<br> 回し、そのまま僕の顔を自分の顔に押し付けた。雪のせいか、冷たい。<br> 「何をしているの?貴方達。」<br> ビクッと僕の背中が震える。何で貴方様の声が聞こえるんでしょうか?<br> 僕がギクシャクと顔を上げると、真紅姉ちゃん。そして銀姉ちゃん達もいた。<br> 「あれ?もしかしてお邪魔だったかな?でも、愛を育む時は他の人に迷惑かからないようにね。」<br> めぐ先輩が何だかとんでもない事を言う。<br> 「ち、ちがっ!!ソリで滑ってたら転んで、薔薇姉ちゃんが雪に埋もれて。それを助けようと……」<br> 「助けようとしたら、ムラムラしちゃって動けない薔薇しーちゃんに襲い掛かったって事だよね?」<br> 「違うって!!そしてら薔薇姉ちゃんが僕の手を……」<br> 必死に弁解を計る僕。しかし、そんな僕を地の果てに落としたのは薔薇姉ちゃんだった。<br> 「JUM……雪の中なのに、熱かったよ……」<br> 瞬間、僕は死を覚悟した。ほら、ある程度の覚悟があるとダメージが減るって言うじゃない。<br> でも僕は思う。オーバーダメージなら意味ないよね……と。</p> <br> <p><br> 「もうこんな時間だったんだ……知らなかった。」<br> 「知ってたら……何だと言うのかしら?」<br> 僕は赤くなった頬を擦りながら部屋へと戻っていた。隣にはプリプリして真紅姉ちゃん。<br> 「別に。どうだった?銀姉ちゃんは。」<br> 「そうね。まぁ、明日の帰るまでには何とかなると思うわよ。明日は、全員で山頂行きたいわね。」<br> 山頂か。今日の午前に多少は滑ったけど、山頂までは僕もまだ行ってないな。最悪、ゆっくり滑れば<br> 麓まで戻れるだろ。そんな事を思いながら部屋のドアを開ける。<br> 「あ、お帰りなさい二人とも。もうすぐ準備できるよ。」<br> 部屋の中は、どこから持ってきたのかクリスマスツリーが飾ってある。チカチカと電球がついたり消えたり。<br> 雪に見立てた綿も飾られている。<br> 「そうみたいだね。蒼姉ちゃんも三角帽子なんて被っちゃって。」<br> 「あはは、こういうのは雰囲気も大事だからね。」<br> パーティー用の三角帽子を被って笑う蒼姉ちゃん。冒頭で言ったが、今日はクリスマスイブだ。<br> 折角部屋も広いんだし、部屋でパーティーやろうか~とめぐ先輩が手配してくれていたようだ。<br> テーブルには七面鳥やケーキなど定番の食べ物。そして、シャンパン等も置かれている。<br> 「あ、お帰りJUM君と真紅ちゃん。後は二人だけだったんだよ。それじゃあ、はじめよっか。」<br> めぐ先輩がそう言いながら僕と真紅姉ちゃんにクラッカーと三角帽子を渡す。僕は、とりあえず帽子を<br> 頭に乗っける。そしてクラッカーを用意。<br> 「よしよし。えー、大変お待たせしました。それでは、クリスマスパーティーをはじめちゃいま~す!!」<br> めぐ先輩が宣言する。同時に、その開幕を祝うようにクラッカーの破裂音が鳴り響く。<br> 雪に囲まれた薄暗い部屋。その部屋を微かに照らす豆電球。そんな中で、聖夜を僕は迎えた。<br> END</p>

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