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<p> 「第二章～衝突・ルベール会戦～」<br>
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－－－水銀帝国軍、動く。<br>
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その報にアイゼンガルドが揺れた、先の海戦の敗北など何とも無いかのように水銀帝国軍は首都・ベルリアから出発した。<br>
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翌日には翠公国と水銀帝国の国境線にあるリィーヌ要塞を陥落させ最終防衛線パリア城へと軍を進めた。<br>
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皇帝・水銀燈率いる３万５千の軍勢はその日の夜の内にパリア城を徹底的に包囲しコレを攻めた。<br>
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水銀帝国軍動くの報を受けた真紅は１万２千の兵を率いてリィーヌ要塞北方のダンケインに上陸、リィーヌ要塞を奪回しルアーノに集結していた翠蒼連合軍１万５千と合流した。<br>
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真「遅くなったのだわ、リィーヌ要塞の伏兵に思わず時間を取られて合流が遅れたのだわ」<br>
翠「ふぇ～ん！！真紅～ありがとですぅ！！」<br>
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そう言って真紅の（無い）胸に飛び込む翠星石、ＪＵＭはその様子を幕舎の入り口付近で黙って見ていた。<br>
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これで公爵が勤まるのか？そう思うも自分は一介の騎士、そんな事口には出来ない。<br>
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蒼「ん？君は誰だい？」<br>
真「あぁ、紹介が遅れたのだわ・・・彼の名前は桜田ＪＵＭ、私の近衛隊長よ」<br>
翠「こんなチビに真紅の護衛が務まるのですかぁ？」<br>
蒼「失礼だよ翠星石、この人はきっと強い・・・だって僕と同じ臭いがするもの」<br>
真「あら？蒼星石、貴女が他人を褒めるなんて珍しいのだわ」<br>
蒼「そんな気がしただけだよ、明日の戦いで君の戦いぶりを見させてもらうよ♪」<br>
Ｊ「御意・・・」<br>
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結局翠星石・蒼星石の両名は全軍の指揮権を真紅に委譲しその指揮下に入る事で合意した。<br>
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ＪＵＭは幕舎を出るとホゥと溜息を付いた、目の前の暗闇・・・明日はきっと雨が降るだろう、ＪＵＭはそう呟いて夜空を眺めた。<br>
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今－－－戦いの夜が明けようとしていた。<br></p>
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翌早朝、両陣営の軍楽隊のラッパや太鼓がリィーヌに鳴り響いた、大地を埋め尽くす両陣営の軍団。<br>
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風向きが変わり紅王国の旗・翠公国の旗・蒼公国の旗・水銀帝国の旗、四つの旗が一斉に反対方向に翻った。<br>
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両陣営とも軍団が動き出し、ついに目と鼻の先まで来たそこで両陣営の進軍は停止する、ここである儀式的な事が行われるからである。<br>
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その時黒の軍団から黒き馬に乗りし一人の騎士が飛び出してきて自軍の旗を大地に突き立てた、そして敵軍団に向かって大声で吠えた。<br>
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『紅王国の騎士・桜田ＪＵＭはいるか！！過日の約束を果たす時が来たわ！！騎士として勝負に応じなさい！！』<br>
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聞き覚えのある声、是非も無しそれは３日前に真紅の命を狙いＪＵＭと死闘を繰り広げた女騎士・柿崎メグその人だった。<br>
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ＪＵＭはちらりと真紅を見る、真紅はＪＵＭの顔を見つめると黙ってこくりと頷く。<br>
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ＪＵＭは愛馬に跨ると味方の間を押しのけて両陣営の間に出る、そう両陣営で名うての騎士同士による一騎打ちである。<br>
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Ｊ「柿崎メグ・・・まさか貴女が出てくるとは思ってもいなかったぞ」<br>
メ「今日はアサシンとしてでは無く・・・騎士として正々堂々勝負を挑むわ」<br>
Ｊ「ふむ、受けよう・・・」<br>
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ＪＵＭは嬉しそうに微笑むと自軍の旗を地面に突き刺す、旗が風に靡くたびにソレがはためく、まるでそこだけ時が止まったかのように・・・。<br>
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両陣営固唾を呑んで見守る中－－－ついに決着を付ける時が来た。<br>
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<p>メ「参ります！！」<br>
Ｊ「いざ！！」<br>
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メグが愛馬の馬腹を蹴って勢いよく馬を駆けさせる、ＪＵＭもそれと時同じくして愛馬を駆けさせる。<br>
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互いに互いのエモノは把握している、エクスカリバーとゲイボルグ・・・。<br>
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エクスカリバー・・・イングランドの伝説的英雄・アーサー王が所有していた聖剣、かつてアーサー王が騎士道に反して人を殺めた際に折れた剣の代わりとして湖の貴婦人より授けられた、アーサー王の死後にその剣は湖の貴婦人に返却されたと言う伝説を持つ名剣。<br>
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ゲイボルグ・・・ケルト神話においてクー・フーリンが使用されていたとされる魔槍。
投げれば千の棘に刺され絶命する槍などいろいろな話があるが共通することは
全ての話に心臓を貫くという行があるということである。<br>
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間合いから言えばゲイボルグを持つメグに軍配が上がるが、相手は百戦錬磨の騎士・桜田ＪＵＭ当然それの対応策を練っていた。<br>
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ＪＵＭは懐に手を入れ掴んだソレをメグ目掛けて投げ付けた、なんの変哲も無いただの短刀だ。<br>
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メ「小癪な！！」<br>
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そう言ってメグはゲイボルグの柄でそれを弾く、そのほんの些細な一動作がメグの瞳孔を開かせた。<br>
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柄で受けてしまったばっかりに穂先の軌道が逸れる、その一瞬の隙をＪＵＭは衝いた、また自分の愚かさをメグは恥じた。<br>
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馬に鞭を入れて更に加速する、魔力を供給して穂先を曲げる時間はもう無い－－この勝負貰った！！<br>
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だがメグはそれを読んでいたかの如く石突き（穂先の逆、柄の根本）でエクスカリバーの一撃を辛うじて弾く。<br>
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弾かれてもなおＪＵＭはメグに体当たりを食らわせる、その衝撃で両者共々馬から崩れるように落ちた。<br>
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二人は着地する瞬間後ろに飛び退き間合いを取る、その一連の動作はまるで大河の雫が河の上流から下流に流れるが如く自然な物であった。<br>
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その直後間髪入れずにメグがゲイボルグを繰り出す、しかしＪＵＭは慣れた手つきでそれを弾き続ける。<br>
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刃と穂先がぶつかり合う度にゲイボルグは火花を散らし軌道を変えて再び目標に襲いかかる、まるで其は汝の死の宣告が如く逃げられないとでも言いたいように。<br>
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およそ１００合近く打ち合ったが決着はつかない、両者の実力は互角・・・否、徐々にだがＪＵＭがメグを防御に回らせる回数が増えていく。<br>
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ＪＵＭは既にその聖剣を己が手足の如く扱えていた、手に馴染む感覚－－－今や剣は彼の体と一体化していた。<br>
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戦いの息吹、それは鉄と鉄・命と命がぶつかり合う音だが今となってはそれすら二人の耳には届いていない。<br>
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－－－二人は今、武の聖域に立っている。<br>
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己の息づかいと相手の息づかいが壮大な合唱曲となって己が耳に届く、その合唱曲を聞きながらＪＵＭは常日頃思っていた事を思い出した。<br>
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－－－誰かに負けるのはいい、また己（剣）を鍛え直せばいいだけ・・・だが自分に負ければ鍛えるべく己（剣）が折れてしまう、それは騎士としてあってはならない！！<br>
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ＪＵＭは雑念の一切合切を頭から振り払いエクスカリバーを構える－－－これが最後の勝負所だ。<br>
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ＪＵＭの気迫を感じ取ったメグもゲイボルグを構え心臓を貫く姿勢を見せる、今両者の心には後悔なんてものは無い。<br>
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己の全てを賭けても勝てるか解らない好敵手、それが今目の前にいることが堪らなく嬉しかった。<br>
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Ｊ・メ「いざ、参らん！！！！」<br>
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一陣の風が戦場に吹き荒れる－－－黒き騎士と紅き騎士、今決着の時が到来する！！<br>
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<p>＜＜次回予告＞＞<br>
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新緑萌える五月、緑の絨毯を敷き詰めた草原を踏み歩くのは黒の軍団と紅・翠・蒼の軍団。<br>
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黒の騎士団長・柿崎メグと紅王国第一近衛騎士団長・桜田ＪＵＭ、両者の一騎打ちはついに終結の時を迎える。<br>
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次回、薔薇乙女大戦・・・「第三章～終結・約束された勝利の剣～」・・・この戦いの勝利も壮大なサーガの一ページに過ぎない・・・。</p>
