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「「帰り道、長い道、君と眺めた道。」」(2006/10/31 (火) 21:53:47) の最新版変更点
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10月12日 PM 6・12<br>
「・・・・・・・んん・・・あれ・・・・。」<br>
放課後の教室で僕は目を覚ます、もう6時を回ってるじゃないか。<br>
自分のミスに苛立ち思わず舌打ちをする。<br>
いや、いつもであれば放課後こうして寝ていたからといって、<br>
こんな時間まで寝てしまうことはまずない。いつもは<br>
幼馴染が一緒に帰るため、起こしてくれるからだ。<br>
彼女の机に一瞥をくれる。昨日ケンカしてしまっていらい、<br>
まだ口もきいていない。<br>
僕にとってはケンカになんかなるとは思ってもみなかった・・・<br>
いつもの軽口だったんだけど・・・・。<br>
<br>
10月11日 PM4・23<br>
「ねえ、ジュン君。」<br>
「ん、どした。」<br>
「中学校に入ってから、ジュン君かわったね。」<br>
どことなく嬉しそうにそう彼女はつぶやいた。<br>
「なんだよ、いきなり、どうしたんだ。」<br>
「だって、声だって変わったし、背も伸びた。前は<br>
僕と同じくらいだったのに、ねえ覚えてる、小さい頃、僕の家で<br>
柱に傷をつけて背比べしてたの。」<br>
「ああ、同じくらいで、よく兄弟に間違われてたよな。」<br>
「そうだね、でも今はもう背伸びをしても叶わない。男の子になっていくん<br>
だね・・・・。」<br>
「そうだなあ、自分ではピンと来ないけどな。」<br>
<br>
<br>
「ふふ、でも変わったよ。<br>
・・・あのさ、僕はどうかな・・・・」<br>
「へ・・・・・・なにが。」<br>
「だから、僕は変わったかなって。」<br>
「うーん、そんなに変わってないんじゃないか、髪とかも変わってないし。<br>
あっ、変わったっていえば、お前の姉ちゃんの翠星石なんかは、<br>
ますます女の子って感じになったよな。髪は長いし、俺等と違って外では遊ばないし。」<br>
彼女がこの時下を向いたのにも深い意味はないと思った。<br>
「でも、制服だって、ほら男女で違うじゃん。」<br>
「そう、いわれればそうだなあ、でもさ、おとこおんな関係なしに<br>
親友でいような。」<br>
「うん・・・・・。」<br>
僕と彼女の家が近づく<br>
「それにさ、今日なんか変だぜ、どうしたんだよ。<br>
いきなり男とか女って、そんなのお前らしくないよ。」<br>
「・・・もういいよ。」<br>
ぽつりと呟きながら彼女が門をくぐる。僕はか細く震えたその言葉を<br>
うまく聞き取れなかった。<br>
「ん、なに。」<br>
「もう、いいって。」<br>
彼女の声が大きくなる。声は怒りで震えていた。僕はびっくりして立ち尽くしてしまった。<br>
「ジュン君にとって、僕は男でも女でも関係ないんでしょ。<br>
翠星石は可愛い女の子で、僕はただの仲いい幼馴染だもんね。<br>
でもね、僕だって・・・・僕だって。」<br>
「蒼星せ・・・・」<br>
言い終わる前に彼女はドアの向こうへと消えてしまった。<br>
振り帰りざまに彼女の瞳からなにかこぼれたように見えたのは<br>
気のせいではないだろう。<br>
<br>
家に帰ってからは、考えがぐちゃぐちゃで、とにかく・・・<br>
なにも考えたくなくて、ベッドに倒れこんだ。<br>
目をつぶっては彼女のことが頭に浮かぶ、<br>
男とか女とか関係なしに仲いい幼馴染だと思ってた。<br>
自分や蒼星石が変わったなんて思ったこともなかったし、<br>
男とか女とか意識したことがなかった。<br>
でも、あいつは僕が男の子になっていくのを感じて・・・・<br>
ここで僕の思考は途絶えた。<br>
<br>
朝、目が覚めると、酷く嫌な気分だった。<br>
夢で蒼星石が他の男に笑いかけ、一緒に歩いているのを<br>
見ていた。なぜか自分はそこに入ることはしなかった。<br>
<br>
別に変な夢じゃない、あいつにだって男の友達は他にもいる。<br>
でも、嫌な気分だった。<br>
<br>
<br>
10月12日 PM6・27<br>
<br>
「くそ・・・・。」<br>
いつもは自転車通学なんかじゃないから、鍵をはずすのにも<br>
手間取ってしまう。<br>
いつもは行きも帰りも彼女と一緒だったから、家から学校までの<br>
割りと長い道も平気で歩いてきていた。<br>
ただ今日の朝は、いつもと違って家の門の前に蒼星石がいなかったから、<br>
珍しく自転車なんかひっぱりだして学校まで来た。<br>
いつもと違う手順ってのは、調子でないもんだな。<br>
<br>
「お寝坊さんだね。」<br>
校門まで自転車を押してきたところでふいに声をかけられた。<br>
「蒼星石・・・」<br>
まさかいるなんても思いもしない。それに昨日のことが引っかかって、<br>
うまく言葉がでない。<br>
「ジュン君。」<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
二人とも黙っている、数秒のような、もっとのような。<br>
彼女はなにか言いたげに、僕は伏し目がちに。<br>
「あのさ、」<br>
彼女が口を開く。<br>
「昨日はごめんなさい。」<br>
ばっと頭を下げながら。<br>
「僕が突然変なこと言っちゃって、最後は勝手に怒っちゃって・・・<br>
本当にごめんなさい。」<br>
僕はなにか言わなくちゃと懸命に言葉を探すが、出てこない。<br>
「ジュン君は折角親友って言ってくれたのに・・・気分悪くしたよね。」<br>
彼女の肩はかすかに震えている。<br>
僕は呆けたように立ち尽くしている。今までで初めてこんなに<br>
弱い彼女を見た。そして、そうさせている僕自身にひどく腹がたつ。<br>
「ジュン君・・・・・・・だけど、やっぱり仲良くいたいんだ。<br>
だから、僕のこと嫌いにならないでぇ・・・うぅ。」<br>
ぽろぽろと涙をこぼしながら、僕の制服のすそをつまんでくる。<br>
<br>
<br>
「嫌いになることなんかないから」<br>
思わず声が大きくなる。蒼星石がビクッと震える。<br>
「その・・・・嫌いになることなんかは絶対ないから。」<br>
なんだか初めて言葉を発して大分落ち着いてきた。<br>
「僕のほうこそ、ごめん。<br>
今まで考えもしなかったことだから。つい今までの感じで答えちゃって。」<br>
「ううん、いいんだ。僕があんなこと言っちゃったから・・・・。<br>
ジュン君、これからも仲良くしてくれるかな。」<br>
「もちろん。」<br>
「ありがとぉ。」<br>
涙交じりに彼女が微笑む。あれ、こいつってこんな顔して微笑むことなんか<br>
あったか・・・・<br>
記憶にない微笑み方をされてすこしたじろぐ。柔らかい、そんな微笑み。<br>
ああ、もしかするとこれが・・・・<br>
「あのさ。」<br>
僕は意を決したように言う。<br>
「どうしたの、ジュン君。」<br>
「・・・・・・・・・」<br>
駄目だ、いえない。なんだか恥ずかしい。くそう。<br>
蒼星石は僕の言葉を待ってる。なにか言わなきゃ。<br>
「ぼ、僕、今日自転車で来たから。その、、、、後ろ乗っていくか。」<br>
「いいの。」<br>
蒼星石がたずねる。<br>
「ああ。」<br>
「ありがとう。」<br>
また微笑む。今日はどうしてか、その表情を見るたび心の奥が熱くなる。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
彼女を後ろに乗せながらペダルをこぐ。<br>
「蒼星石。」<br>
「なに。」<br>
「今日って、あの時間まで学校にいたのって。」<br>
「うん、待ってたんだ。早く仲直りしたくて。やっぱり<br>
・・・この道は二人じゃないと。」<br>
「そうか。」<br>
「そうだよ。」<br>
言葉が出ない・・・昨日みたいに悪い雰囲気では決してないが、<br>
今の雰囲気も今までなかったものだ。<br>
さーっと、僕らの自転車を追い抜くように風が通り抜けた。<br>
途端、かすかに後ろから甘い匂いがした。<br>
こんなこと初めてだ。<br>
思わずバランスをくずす。<br>
「きゃあ。」<br>
びっくりしたのだろう、蒼星石が僕に強くしがみつく。<br>
すると、今まで感じたこともない、<br>
子供のころには絶対になかった感触が背中に伝わる。<br>
これって・・・・・・<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
「なあ」<br>
「ん、どうしたの。」<br>
「お前・・・・・女の子なんだな。」<br>
「えぇっ、どうしたの急に。」<br>
「背中に・・・・・・」<br>
それで、意図が伝わったのか蒼星石もだまってしまった。<br>
また怒らせたのだろうか・・・<br>
「ジュン君。」<br>
「はいっ。」<br>
「ありがとう。僕嬉しいよ。」<br>
きっとまたあの微笑みなんだろう。<br>
心の奥が熱くなって僕はペダルを強く踏み込んだ。<br>
<br>
<br>
帰り道、君を乗せて走る<br>
長い道、言葉は少ないけれど<br>
君と眺めた道、二人だとこんなにも楽しい<br>
<br>
帰り道、君の家が見える<br>
長い道、もう終わるけれど<br>
君と眺めた道、二人まだ走っていたい<br>
<br>
帰り道、君が微笑みながら<br>
長い道、僕にありがとうと囁く<br>
君と眺めた道、二人また明日歩く道<br>