「機巧励起ローゼンメイデン十五話「CRAZY ATTACK」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
円卓。集うは異形、淀んだ瘴気は凝り、不定形の異形をも生む。<br>
円卓。魔術を執り、魔となり、魔そのものとなった魔人の集い。<br>
円卓。円卓を取り囲む重なった円卓。<br>
ここは円卓。人外たちの血の宴の酒場。<br>
円卓の向こう、そこは玉座。だが主の姿はなく。<br>
<br>
魔人の円卓、スーツを着込んだ青年の貌を被ったザキエルが数人の<br>
信者の報告を受けていた。<br>
彼の視線を受ける信者達は皆一様に面持ちを固くする。<br>
「ほ、報告しますメージ……」<br>
「一体どうしたと言うのですか?どうもただ事ではない様子ですが?」<br>
「じ、実はあの男が勝手に行動を起こしまして……」<br>
「アイツ、か?」<br>
「あ、は、はいそうです……」<br>
またか、ザキエルの好青年風の貌が苦々しく歪められる。<br>
「よもやローゼンメイデンを捕獲しに行ったのではないでしょうね?」<br>
「おそらく、そうだt……ッ!?」<br>
ビクン、信者達全員の肉体が同時に一度跳ね、そして停止した。<br>
時が止まったかのように驚愕の表情に見開かれた信者達の瞳、<br>
しかし次の瞬間にはその時は動き出した。<br>
ズルリ、瞳が斜めにずれ、その後を追うように腕、足、腹に赤い筋が<br>
できていく。<br>
そして、無数の肉片となり、信者だった物は一斉に崩れた。<br>
<br>
肉塊となった信者達、それを見下ろすザキエルの手には細身の剣が握られていた。<br>
薄く、冷たく研がれた冥い刀身が円卓を照らす炎で照り返される。<br>
「また癇癪、ザキエル?」<br>
クスクスと軽い笑い声をあげる少女の声。苦々しい気分を隠して<br>
ザキエルが彼女に向き合う。<br>
「別にそういうものではないよハニエル。ただの、気まぐれだ。」<br>
「ふぅん。でも、気紛れに信者さんを殺したらダメだと思うなぁ。」<br>
ハニエル、10代半ばの少女の姿をした魔人は、血で塗りつぶされた<br>
肉塊を踏みしめてザキエルのそばに歩み寄る。<br>
ぐじゅりぐじゅりと音を立てて信者達だったものが潰れて逝く。<br>
「ふふ。癇癪の原因あててあげようか?そうだなぁ~…うん、分かった。<br>
あれでしょ、また『アイツ』が勝手に行動したんでしょ、違う?」<br>
知っている答えを、さも今気づいたかのように悩んで見せてから<br>
下から見上げるようにザキエルを覗き込む。<br>
微かに逡巡、そしてため息。<br>
「……ああ正解だよハニエル。アイツがまた勝手に動いた。まったく気分の悪い…」<br>
「あれ?でも、私達は好きな事をするのが道理でしょ?それなのに<br>
怒ったらルール違反だと思うな。うふふ。」<br>
<br>
汚れを知らないような笑みで邪悪を孕ませる少女の貌。<br>
胸に凝った淀みがふつふつと音を立てザキエルの顔をゆがませる。<br>
「虫けら風情が好き勝手放題をするのがかい?立場をわきまえないゴミが、<br>
僕らのような魔術師でもない無力なカスがだぞ?」<br>
くすり、微笑む。<br>
「うん、知ってる。でも、それがこの結社の掟。好き勝手に踊るのが私達。」<br>
「分かってはいる。だがな――」<br>
「だから別に良いじゃない。好き勝手させてあげたら。そんなのが動いた位で<br>
アナタは大きな山が動くと考えてるの?それともまさか、貴方は貴方の<br>
侮蔑するゴミが何かをなせると恐れているのかなぁ?」<br>
言いながらハニエルの指がザキエルのスーツの隙間へと潜り込んでいく。<br>
挑戦的な瞳がザキエルを捉え、指が妖艶な動きをする。<br>
しかし、それに動じずザキエルの腕が少女の腕をつかむ。<br>
「あっ…」<br>
「僕も見くびられたものだね。僕が恐れる?まさか。僕はね、ああいった<br>
クズが嫌いなだけだよ。好きなのは強いもの、力のあるものさ……」<br>
「んっ……」<br>
暴力的なキス、掴んだ腕はそのまま腰に回されハニエルの身体が密着する。<br>
しかし抵抗することなくそのキスを受け入れる。<br>
<br>
「……ん……っ…あ、ふぁ………ん………」<br>
円卓の一席、少女と青年の暴力と暴力のぶつかりあいは果たして人の営みか。<br>
否、それは享楽と狂落の宴。瘴気と邪悪の孕み。<br>
ふと止み、お互いの唇が離れお互いを見つめあう。<br>
視線と視線が交わすのは、愛でも恋でも詩でもなく、愉悦と侮蔑と嘲笑。<br>
「ザキエル、貴方って剣を扱うだけのつまらない男だと思ってたけど、<br>
こうやって無理矢理相手をねじ伏せるのも得意なのね。<br>
それに………女を悦ばせるのもそこそこに得意、少し見直したわ。」<br>
「それはそれは恐悦至極。しかしだハニエル、君の口付けは実に甘美で<br>
毒々しい。さすが男を誘惑し堕落させるだけはある、素晴らしいよ。」<br>
敵意を持った双微笑。<br>
「ありがとうザキエル。それじゃ、この後はどうする?アイツの事なんて<br>
もうどうでも良いはずよね。今は、貴方を侮辱したこの私を力で……でしょ?」<br>
蔑みの微笑、ハニエルの口が三日月に歪む。<br>
それに促され、しかし挑むかのようにザキエルの腕がハニエルを押し倒す。<br>
「そうだな。君に侮辱されたこの怨みを晴らすとするかな………」<br>
再度交わされる口付け。<br>
<br>
交わる獣が二匹。あげる嬌声が孕むのは憎悪と瘴気。<br>
異形の潜む焔が二人の影法師を刻む。<br>
<br>
<br>
「「ひ、雛苺!!??」」<br>
私は叫んだ。終わったと思ったとたん学校の窓ガラスに浮かんだ転移魔方陣、<br>
そこから出てきたのは見間違えることなく雛苺だった。<br>
一体どうして来たのか?それが頭を過ぎるがそれよりも先に、<br>
「トモエェェ~~~~~!!!!!」<br>
出てくるなり必死な表情で私に駆け寄ってくる雛苺。<br>
それを私はしっかりと抱きとめる。<br>
「トモエトモエトモエぇぇ!!やっぱりなの!やっぱり痛い痛いだったなの!」<br>
今にも泣きそうな顔で私を見上げる雛苺。<br>
そして、それが怒気を持って真紅に向けられる。<br>
「真紅なの…?真紅がトモエをいじめたなの!!??」<br>
幾分にも動揺する気配もなしに真紅がやれやれと言った顔で私を見る。<br>
「どうするの?私が話すより貴方の口から伝える方が信頼性があると<br>
思うのだけれど。」<br>
確かに、真紅の言葉では逆に雛苺の気持ちを逆撫でするだけだろう。<br>
私は雛苺をこちらに向かせて話しかける。<br>
「……違うよ雛苺。私は全然大丈夫。」<br>
「ほんと……?」<br>
「うん。でも、それよりもどうしてここまで来たの?家で待っててって<br>
言ったじゃない。」<br>
「うぃ……トモエが心配だったなの。守られてばかりじゃヤだったの……」<br>
<br>
私は雛苺の髪を撫でてあげる。この子はこの子なりに私を心配して<br>
来てくれたのだ。もしかすると自分が殺されるかもしれなかったのに。<br>
それを考えると優しく髪を撫でるくらいの事しかできなかった。<br>
「雛苺、分かってくれたかしら?私は貴女を倒す気なんんてないのだわ。<br>
アリスゲームに則って戦う気もまったくない。」<br>
「真紅……でもでも、始まっちゃったのよ?皆起きちゃったなのよ?<br>
7人の姉妹が皆おきちゃったなの。」<br>
それにピクリと真紅が反応した。<br>
「雛苺、それはどういう事?7人全員が今この時代で覚醒したの?」<br>
腕の中の雛苺が真紅にうなずく。<br>
「うぃ。感じたなの、真紅が起きて、本当にアリスゲームが始まったなの。」<br>
「………それじゃ、他の子たちまで。」<br>
「うぃ。」<br>
「最後の一人になるまで……アリスになるための……闘いが……」<br>
「始まる……なの。」<br>
神妙な空気が場に流れる。<br>
だが、それは次の瞬間、爆音と甲高い笑い声にさえぎられた。<br>
<br>
<br>
<br>
「ハーーーーーーーッハハハハハハハハハハァァァアァ!!!!」<br>
<br>
<br>
爆音、爆音、爆音の連続放射。昨日破壊された町並みが今また<br>
新しい脅威によって破壊されていた。<br>
天に向かって聳える数本の金色ドリル、オレンジ色にペイントされた<br>
ボディ、そしてその胸部につけられた『亀』のマーク。<br>
非常に滑稽な姿をしたロボットは空を飛びながら眼下の街に<br>
ミサイルをぶち込んでいた。<br>
「ヘっ、汚い花火だぜ!!!そらそらどうしたローゼンメイデン!!!<br>
この、ファントムバベルが最強の!宇宙一の!スーパーウルトラの!<br>
武闘派天才科学者ベジータ様が怖くて尻尾を巻いたかーーー!!!」<br>
恐ろしくハイテンションな叫び声が拡声器によって桃種町に響きわたる。<br>
「ふっ……顔を知る前からこの俺の戦闘値に恐れをなして逃げたか。<br>
まったく、強いってことは罪だな。いや、天才である事もか。<br>
流石は『スーパーサイヤカカロット1号~おっすオラチャーハン~』。」<br>
何やら意味の分からない事を呟きながら悦に浸っているキ○○イ。<br>
<br>
まったく、いきなり何だと言うのだ。闘いがすんで一件落着かと思えば<br>
次はこれだ。昨日に引き続き2度目の敵襲。<br>
今までにもこういう事態はあったが、まったく辟易してしまう。<br>
がしかし、今はそうも言ってられない。<br>
「ジュン、あの客人をさっさと追い返しに行くのだわ!!」<br>
そういって私はジュンのいる方を向く、が<br>
「おご………ぉぉ……ごご……」<br>
そこには何やら泡を吹いて地面に突っ伏しているジュンの姿。<br>
「ちょっとジュン、一体貴方何をやってるの!!??」<br>
「お………ぉぉ……」<br>
ダメだ、気絶している。<br>
「起きなさいジュン!起きろといってるのだわ!!!」<br>
「ぷぎょ!!ぶごっ!ぬごぉぉぉ……や、やめ……ふぉぎょっ!……ガクっ。」<br>
襟元を掴んで左頬と右頬に数発ずつ張り手を見舞ってやるが起きる気配なし。<br>
まったく、大切なときに役に立たない家来だ。<br>
今目の前で大変な事が起きてると言うのに。<br>
「困ったのだわ、ジュンが使い物にならないなんて。」<br>
頭を抱えたくなったその時だ。<br>
<br>
「トモエ、ヒナ達が行ッくなの~!」<br>