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「『ずーいずーい♪ずっころばーし♪』」(2006/03/01 (水) 19:54:45) の最新版変更点
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<p>喧騒が絶えない昼休みの廊下。<br>
薔薇学には移動教室がある場合は、二つの校舎を結ぶ大きな廊下を通らなければならない。<br>
よって必然的に人口密度が多くなる。<br>
だから二人が出会う確立はかなり高いわけで。<br>
「ジュン」<br>
「あ、銀姉」<br>
ジュンを見つけた水銀燈が近づいてくる。<br>
「お母さんが今日はカレー作るっていうから、食べにきてね。あ、ネクタイ曲がってるわよ。しょうがない子ねぇ」<br>
水銀燈はテキパキとジュンのネクタイを結び直す。<br>
「はい、できた。あんまり遅くならないでねぇ」<br>
ジュンが口を挟む間もなく水銀燈は去っていった。<br>
「おい桜田」<br>
「なんだよべジータ」<br>
「なんでお前は水銀燈先輩の隣の家に住んでるってーだけで、あんなにかまってもらえるんだ?おかしいだろ<br>
学園一の美女だぞ!?・・・うげほッげほ」<br>
唾も飛ばさんばかりの勢いにべジータはまくし立てる。<br>
「やめろよべジータ・・・。風邪がうつる。インフルエンザだったらどうする気だ?マスクしろ」<br>
ジュンは煙たそうな顔をする。<br>
「いいやしないね!知ってるか!?むしろお前は学園一殺したい男ランキング一位だぞ!?」<br>
「そんなことわかってるよ。でも僕が酷い目にあったときの話知ってるだろ?加害者は五体満足で帰ってこなかった<br>
んだぜ?逆に気の毒に思うよ」<br>
「うう・・・ま、そうだが」<br>
「わかったらマスクしろ」</p>
<p>風邪を引いた。<br>
38度7分。まだまだ上昇中だ。<br>
「べジータに・・・うつされ・・・うぇ・・・」<br>
「辛い?」<br>
「ごめん、銀姉。せっかくの・・・土曜だってのに」<br>
「いいのよぉ。今日はお母さんもおばさまもいないんだから、私が看病してあげるわぁ」<br>
「ありがとう」<br>
冷水で絞ったタオルをジュンの額に乗せる。手で軽く当てて、裏返すとすぐに温くなってしまう。<br>
「困ったわぁ。すぐ温くなっちゃう・・・。かといってまだ解熱剤は早いし・・・」<br>
「うーん・・・そんなに無理しなくて・・・いいよぉ・・・」<br>
「もう、お ば か さん。日曜に買い物付き合ってくれるっていったでしょ」<br>
水銀燈はジュンの額を指で、ツンと突っついた。<br>
「荷物もち・・・だけどね」<br>
「ふふ。わかればいいのよ。あ、そうそう、アレがあったわ」<br>
手をポン、と叩いた水銀燈は台所へパタパタと走っていった。<br>
(なんかあったっけ?)<br>
「ねえねえジュン。これなら風邪もばっちり治るわぁ」<br>
緑と白の細長いものが水銀燈の手の中で、バトンのようにくるくる回されている。<br>
「こ れ」<br>
ジュンの顔の前に差し出される。<br>
ネギだった。<br>
「・・・どうするの?これ」<br>
「ふふ。これを・・・お尻の穴の中に・・・入れるのぉ」<br>
水銀燈はネギの根っこの部分を口に近づけて、ペロリと舐めるしぐさをする。<br>
「えぇ!や、やめてよぉ・・・」<br>
「うそよ。ネギ刻んできたからガーゼで首に巻くのよ。こうすればいいってお母さんいってた」<br>
水銀燈はジュンを起こして、首にネギ入りのガーゼを巻いた。ふわり、水銀燈から、いい匂いが<br>
したが、すぐ、白ネギに消された。<br>
「どう?今、お粥も作ってるからね」<br>
「ありがと」</p>
<p>
「ふー、ふー・・・・。はい、あーん。・・・どうあっつくない?」<br>
土鍋からすくった粥を水銀燈は、息で冷ましながら、ジュンの口へ運ぶ。<br>
「うん・・・おいしいよ」<br>
「じゃあ、ご飯食べ終わったら、薬飲もうね」<br>
30分後。<br>
「あ・・・水切らしちゃってるわぁ。さっきので最後だったのね」<br>
水銀燈は冷蔵庫のドアを閉める。<br>
「仕方ないわぁ・・・」<br>
水銀燈は薬袋を持って、ジュンの部屋へいった。<br>
「ジュン」<br>
「・・・なに?」<br>
ジュンは首を向けた。しんどいのであまり体は動かしたくない。<br>
「お水なかったのよ・・・。ジュースやお茶だと、薬の効果、半減するから、だめだし」<br>
「ならいいよ・・・」<br>
ジュンは首を元の位置に戻す。<br>
「でも、薬は飲まなきゃ。ダ メ」<br>
水銀燈はジュンの顔を覗き込み、そのまま、キスをした。<br>
「!!」<br>
顔を両手で捕まれ、水銀燈の舌でジュンの口がこじ開けられていく。<br>
ジュンの舌に、丸いものがいくつかコロンと渡された。水銀燈の舌が名残おしそうに少し絡み付いてきた。<br>
「ぎ、銀姉!うつったら・・・」<br>
ジュンの口に水銀燈の人差し指が当てられた。<br>
「かまわないわぁ・・・。だって私はジュンのこと大好きだもの」<br>
「もう」<br>
「さ、薬飲んだなら、寝なさい」<br>
ジュンの目が水銀燈の手で隠された。<br>
あったかくて、やわらかい手。<br>
「・・・寝れない」<br>
「仕方ない子ね・・・子守唄歌ってあげるから」<br>
水銀燈は一つ、呼吸をした。</p>
<p>
「ずーいずーいずっころばーし♪ごーまみーそずい♪」<br>
「それ、違うよw」<br>
「クス・・・お休み」</p>
<p>もう熱は下がったみたいだ。<br>
頭の中の重りも取れたみたいだ。</p>
<p>「銀姉。やっぱ昨日のあれじゃない?」<br>
「こほ・・・こほ。そうかもね」<br>
ジュンの風邪はすっかり水銀燈にうつってしまった。<br>
自分は快復したのに、少し複雑な気分で水銀燈の額のタオルを取り替える。<br>
「なんかないかな・・・」<br>
ジュンは水銀燈の家を漁る。<br>
なにか風邪薬があればよいけれど。<br>
「お、これなんかいいんじゃないか?」</p>
<p>「ねえ、銀姉!座薬あったよー」<br>
「お、おばかねえ・・・それは、お母さんの、タン・・・うげほッげほ」</p>
<p><br>
『ずーいずーい♪ずっころばーし♪』 ~完~<br>
<a title="suigin" name="suigin"></a></p>