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タッグデュエル! ~HEROの脅威~ ④」(2006/08/20 (日) 12:43:04) の最新版変更点

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 真紅がラーイエローの金糸雀の部屋に出入りするようになって、1週間が過ぎた。<br>  二人でデッキ構築やカードのトレード、それに練習デュエルを繰り返し、追試合格を目指<br> して研鑽を積んでいた。<br>  ビートダウンの真紅に、パーミッションの金糸雀。<br>  デッキタイプの全く違う二人だが、打倒流石兄弟を共通の目的に団結し、同じ決闘者とし<br> て腕を競い合い、そして協力し合って互いを高め合った。<br>   <br>  が、ここにきて、二人の間に亀裂が生じる。<br>   <br>   <br>   <br> 「先生達のデッキがE・HERO融合デッキだとするなら、この≪封魔の呪印≫の3枚積み<br>  は絶対に必要なのかしら」<br>   <br>   <br> ≪封魔の呪印≫<br> カウンター罠<br> 手札から魔法カードを1枚捨てる。<br> 魔法カードの発動と効果を無効にし、それを破壊する。<br> 相手はこのデュエル中、この効果で破壊された魔法カード及び<br> 同名カードを発動する事ができない。<br>    <br>     <br> 「≪融合≫や≪ミラクル・フュージョン≫をピンポイントで阻害して、上級E・HEROの融合<br>  召喚を阻止、こっちはアームド・ドラゴンやヴァンダルギオンで殴り勝つのかしら。この<br>  デュエルアカデミア一の策士、金糸雀の必勝プランは完璧かしら~♪」<br> 「でも、手札から魔法カードを1枚捨てるリスクは大きいのだわ。それに3枚も積んだら手札<br>  事故要因になりかねないわ。魔法カードの阻害なら、≪マジック・ジャマー≫なんかで<br>  やるべきだと思うわ」<br>    <br>  ≪封魔の呪印≫は、うまく決まれば相手のデッキに積まれている魔法カードを根こそぎ<br> 封殺出来るカウンター罠だ。コストが魔法カード限定というのが少々重いコストだが、相手<br> のデッキの核となる3枚積み魔法を完全に封印出来る事を考えれば、普通のカウンター罠<br> よりも遥かに強い。<br>  実際にデュエルに用いられる魔法カードは≪大嵐≫や≪サイクロン≫など、大抵が制限<br> カードである為、このカードの注目度は低かったが、≪融合≫やその他融合サポート魔法<br> を多く使うE・HERO融合デッキなどの登場によって注目度が高まっているカードだ。<br>  特定のキーカードが複数積まれたデッキが多く登場している現環境において、特定の<br> デッキに対するメタとして、大活躍が期待出来るカードである。<br>  だが、真紅はこの≪封魔の呪印≫に対して懐疑的だった。<br>     <br> 「このカードを3枚積んだところで、完全に融合を封印出来る訳ではないわ。≪融合≫だけ<br>  じゃなく、≪ミラクル・フュージョン≫や≪未来融合―フューチャー・フュージョン≫、フィー<br>  ルド魔法の≪フュージョン・ゲート≫……それにコストの関係もあるし、ここ一番で発動し<br>  たい時に、うまく発動出来るとは限らないのだわ」<br> 「それは他のカウンター罠やモンスター除去魔法の比率を上げれば対処可能かしら」<br> 「本当にそうかしら? E・HERO融合デッキ相手なら、むしろ除外系のカードを採用すべき<br>  だと思うのだわ。場と墓地を利用する≪ミラクル・フュージョン≫は厄介だし……」<br> 「だから、積極的に罠を張って、融合魔法の封殺を狙うべきなのかしら!」<br>      <br>  いかにE・HEROの融合を防ぐかで議論は紛糾し、二人は互いに折れなかった。<br>  金糸雀は、魂のデッキであるヴァンダルギオン・パーミッションデッキ、そしてコントロール<br> 戦術を信頼し、その勝利を確信していた。一方の真紅は、最大のモンスター除去や行動<br> 抑制は戦闘破壊に他ならないという持論の元、一歩も譲らない。<br>  翠星石の組んだHEROデッキを仮想流石兄弟として何度かデュエルを行ったが、やはり<br> ≪封魔の呪印≫は強かった。だが、平均ステータスの低いHEROに対して、上級ドラゴン<br> 族モンスターの高ステータスによるパワー戦術が有効だった事も多い。<br>  だが、二人は自分の主張に固執する余り、互いのデッキ特性を度外視して自分のよしと<br> する戦術を互いに押し付けあっていた。<br>  当然の成り行きとして、次第に雰囲気は険悪になり――ついに真紅が爆発した。<br>     <br> 「話にならないのだわ! 金糸雀、貴女がこんなに頑固だとは思わなかったのだわ」<br> 「真紅こそデュエルアカデミア一の偏屈大魔王かしら! もう付き合ってられないかしら!」<br> 「その言葉、そっくりそのまま返してあげるのだわ。大体貴女は、自分では策士だ何だと<br>  言ってるけど、ここ一番のプレイングミスが多いし、デッキがうまく回らなかったら単なる<br>  お荷物なのだわ! もう少し攻撃的な構築をすべき……」<br>      <br>  真紅の怒りに任せたその言葉は、金糸雀のプライドを酷く傷つけた。そして、金糸雀の<br> 思考から余裕と理性を奪い、事態を更に悪い方向へ向かわせた。<br>  ――バシッ!<br>  金糸雀が投げつけたカードケースが真紅に当たり、部屋中にカードが散らばった。<br>       <br> 「……出てって! もう真紅とは絶交かしら! 真紅なんかとタッグは組まないかしら!」<br> 「……ッ! ええ、こっちから願い下げなのだわ! 貴女の手なんか借りなくても、追試は<br>  受かって見せるのだわ!」<br>  <br>  真紅は自分のデッキケースと決闘盤を引っ掴むと、早足で金糸雀の部屋を出て行った。<br>  後に残ったのは、部屋中に散らばったカードと、ヒビの入った絆だけだった。<br>  <br>  <br>  <br>  その夜、金糸雀は一人だった。<br>  真紅と決定的な決裂をしたその直後であり、流石にラーイエローの友人とはしゃぐ気に<br> はなれなかった。それに、追試合格の為にデッキ構築もしなければならない。<br>  と、そんな金糸雀の部屋にやって来たのは、ラーイエローの寮長の草笛みつだった。<br>  彼女もデュエルアカデミアの教員で、担当教科は国語である。『みっちゃん』と呼ばれて<br> 生徒からも親しまれている彼女は、金糸雀と特に仲が良かった。完璧主義的なところがあ<br> り、ともすれば寮の中で孤立しがちな金糸雀を放っておけないのだろう、教師と生徒という<br> 関係を超えて、金糸雀とみっちゃんは親友だった。<br>  部屋に入るなり目に入った、寂しそうな表情でカードを見つめる金糸雀の姿に、みっちゃ<br> んは何があったのかを察した。<br>  いつもの金糸雀なら、こんな辛そうな顔でカードを持つ事はしないのだ。<br>    <br> 「カナ……友達と喧嘩したの?」<br>    <br>  金糸雀はピクッと反応したが、すぐに何でもないという風に装って言った。<br>     <br> 「別に何でもないかしら……それよりみっちゃん、カナの新しいコンボなんだけど」<br> 「喧嘩したのね?」<br> 「まずね、≪ヘル・テンペスト≫でデッキデスを狙って……」<br> 「カナ!」<br>     <br>  ビクッと身体を震わせ、金糸雀は俯いた。<br>  みっちゃんは、そんな金糸雀を責めるでもなく、静かに問う。<br>     <br> 「ここんとこ、カナの部屋に毎日来てた子がいたよね? もしかしてあの子?」<br> 「……………」<br> 「カナ、あの子ととっても仲良しだったのに、どうして?」<br> 「……知らない。真紅なんて知らないかしら」<br>     <br>  金糸雀は、頑なに真紅の事を語ろうとしなかった。<br>  それは間接的に、自分が真紅と喧嘩していると語っているようなものだが……。<br>  ただ、金糸雀との付き合いの長いみっちゃんには分かっていた。<br>  真紅への反発心で満たされた金糸雀の心の隅にあるのは、やはり後悔だという事に。<br>  どうしてあんな事を言ってしまったのか。どうしてもっと冷静になれなかったのか。<br>  策士の自分が情けない。折角真紅と友達になれたのに、どうして……。<br>    <br>  結局金糸雀は、その晩、デッキを組む事も眠る事も出来なかった。<br>   <br>   <br>   <br>  二人は学年が違うから、授業では基本的に会う事はない。加えて寮も違うから、普通に<br> 生活する分にはいよいよもって会う機会がない。<br>  真紅も金糸雀も、とにかく会って話したい、謝りたいと内心では思いつつも、プライドが邪<br> 魔をして素直に謝りに行く事が出来ず、ギクシャクした不自然な日々が続いた。<br>    <br>  そして、追試の日がやってきた。<br>    <br>    <br>    <br>  デュエルアカデミアの体育館は30ものデュエルコートを持ち、普通の学校の体育館と比<br> べると途方もない広さを持つ。<br>  月一テストや期末試験の時に実技試験の会場として用いられるので、大人数のデュエ<br> ルを効率よく消化出来るように多くのコートが配され、自然と体育館そのものも大きくなっ<br> ていったのである。<br>  例によって、追試タッグデュエルの会場も、この体育館だった。<br>     <br> 「やあ (´・ω・`) ようこそ、追試会場へ。<br>  このパックはサービスだから、まず手にとって見て落ち着いて欲しい」<br>     <br>  ショボン教諭は、集まった追試の受験者達に、数字の書かれたカードの入ったパックを<br> 配って回り、壇上でそう言った。<br>      <br> 「うん、「受験番号」なんだ。済まない。<br>  マンジュ・ゴッドの顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。<br>  でも、このカードの番号を見たとき、君達は、きっと言葉では言い表せない<br>  「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。<br>  殺伐としたデュエルアカデミアで、そういう気持ちを忘れないで欲しい<br>  そう思って、追試を行うんだ。<br>    <br>  じゃあ、追試タッグデュエルを始めようか」<br>     <br>  ショボン教諭が配ったパックに封入されていたカードは、早い話がタッグデュエルをやる<br> 順番を示すものである。<br>  真紅と金糸雀は、「06」番。つまり6番目にデュエルをする事になった。<br>  が、二人の間には、相変わらず気まずい空気が流れていた。<br>  二人とも、内心で謝りたいとは思いつつ、きっかけを掴めずにいたのである。<br>  互いに下手にプライドの高い二人だけに、自分から歩み寄るという事が今一つ苦手で、<br> どうにも立ち行かないのだ。<br>  喧嘩を終わらせる事など簡単な事、ただ一言「ごめんなさい」と言えばいいだけなのに。<br>   <br>   <br>   <br>  追試タッグデュエルは順調に進んだ。<br>  流石兄弟は予想通りE・HEROデッキを使い、高速で融合して上級E・HEROを揃え、そ<br> の効果を遺憾なく発揮して生徒達を苦しめた。<br>  そして、5番目のタッグのデュエルが今、終わろうとしていた。<br>  オベリスクブルー1年の桜田ジュンと、同じくオベリスクブルー1年の柏葉巴である。<br>      <br> 「僕は≪シャインエンジェル≫の効果で、デッキから≪ユーフォロイド≫を特殊召喚!」<br>     <br>  光属性モンスターのリクルーター≪シャインエンジェル≫が墓地へと落ち、それに代わっ<br> てデッキから場にUFO型の機械族モンスターが出現した。<br>  そして、とどめの伏せカードを発動する。<br>    <br> 「そして伏せておいた≪パワー・ボンド≫を使わせてもらう!」<br>     <br>    <br> ≪パワー・ボンド≫<br> 通常魔法<br> 手札またはフィールド上から、<br> 融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、<br> 機械族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。<br> このカードによって特殊召喚したモンスターは、<br> 元々の攻撃力分だけ攻撃力がアップする。<br> 発動ターンのエンドフェイズ時、このカードを発動したプレイヤーは<br> 特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。<br> (この特殊召喚は融合召喚扱いとする)<br>     <br>    <br> 「柏葉の場の戦士族モンスター≪ギルフォード・ザ・レジェンド≫と、さっき召喚した僕の<br>  ≪ユーフォロイド≫を融合する! 出でよ、≪ユーフォロイド・ファイター≫!」<br>   <br>    <br> ≪ユーフォロイド・ファイター≫<br> 融合・効果モンスター<br> 星10/光属性/機械族/攻  ?/守  ?<br> 「ユーフォロイド」+戦士族モンスター<br> このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。<br> このカードの元々の攻撃力・守備力は、融合素材にした<br> モンスター2体の元々の攻撃力を合計した数値になる。<br>    <br>     <br>  装備の道を極めた伝説の戦士が高く跳躍し、UFOに騎乗する。<br>  2体の融合素材の攻撃力の合計は3800、それが≪パワー・ボンド≫の効果で2倍とな<br> り、7600。正しくフィニッシャーと呼ぶに相応しい攻撃力だ。<br>  UFOに乗った戦士が、兄者の場に出ている≪E・HERO フレイム・ウィングマン≫を標<br> 的に捉え、一気に加速し、背に負った大剣を引き抜く。<br>  ≪ユーフォロイド・ファイター≫の剣が一閃し、次の瞬間、二人の勝利が確定した。<br>  ≪E・HERO フレイム・ウィングマン≫が爆散し、兄者のライフにダメージを与える。<br>       <br> 「これで先生達は5500のダメージを受け、ライフはゼロ……」<br> 「私達の勝ちです、先生」<br> 「う~む……やられたな、弟者」<br> 「ああ。まさかあそこであんな神引きを見せるとは、流石だよなこいつら」<br> 「よし、05番のタッグは合格だ」<br>      <br>  流石兄弟に一礼し、ジュンと巴はデュエルコートから出た。決闘盤を外してデッキをしま<br> い、一息つく。<br>    <br> 「それにしても、ごめんな」<br> 「何の事?」<br> 「いや、今回の一件さ。柏葉まで巻き込んで、追試受けさせちゃってさ」<br> 「いいの。私だって、好きで首を突っ込んだから。まさか『闇のデュエル』が関わってるとは<br>  夢にも思わなかったけど」<br> 「まあ……でも、柏葉がいなかったらヤバかったしな。本当にありがとう」<br>       <br>  実際、成績が悪くて追試を受ける二人ではなかった。今回追試を受ける羽目に陥ったの<br> は、色々と面倒事に巻き込まれて、実技試験を受けられなかったからだ。<br>  それに、その事では命までとられかけたし、試験どころではなかったのだ。<br>  ジュンと巴が待合の席に座ると同時に、彼らの横をスッと通り抜ける者達がいた。<br>  赤い制服と黄色い制服の二人だった。ジュンは、そのうちの一人に見覚えがあった。<br>  恐らくは、結構な昔に。<br>     <br> 「……真紅?」<br>     <br>  立ち上がろうとして腰を浮かせかけ、ジュンはその後姿をジッと見つめた。<br>      <br> 「桜田君? どうかしたの?」<br> 「え? あ、いや……何でもない」<br>     <br>  巴の声に、ジュンはハッとして巴の方に向き直る。<br>  まさか、あの真紅がデュエルアカデミアにいるなどと……他人の空似に違いない。<br>  そう思って自分で納得し、ジュンは椅子に座り直した。<br>    <br>    <br>    <br>  真紅と金糸雀は愛も変わらず気まずい雰囲気のまま、デュエルコートに立った。<br>  会場についてから、二人は一言も言葉を交わしていない。というか、何を言っていいのか<br> すらも分からず、ただただ無言を通していた。<br>    <br> 「では、06番のタッグとデュエルするか」<br> 「しかし、こうデュエル続きだと下手なガンスリンガーよりも大変だな、兄者」<br> 「それは言うなよ、弟者。特別手当がもらえるんだぞ」<br> 「こんな時にも金欲まみれとは、流石だよな俺ら」<br>     <br>  流石兄弟は短いやり取りを済ませると、タッグデュエルのルールを簡単に説明した。<br>    <br>    <br> ・2対2のタッグマッチ形式のみ<br> ・使用するフィールドは1チームにつき1つ<br> ・モンスターフィールドは1チームにつき5箇所<br> ・融合ゾーンは1チームにつき2つ(パートナーの融合カードは利用不可)<br> ・墓地ゾーンは1チームにつき1箇所(パートナーの墓地も利用可能)<br> ・LPは1チームにつき8000<br> ・フィールド魔法は通常の2人での対戦と同じく、ひとつまで<br> ・デッキは1人につき1つ(1チームに2つ)<br> ・パートナーの置いたカードは、自分のターンでも使用可能。<br> ・チームメンバーに対するアドバイス行為は禁止<br>    <br>    <br>  これが、デュエルアカデミアで採用されているタッグデュエルのルールだ。授業でもたま<br> にタッグデュエルについては触れる為、真紅も金糸雀も大体知っていたが、確認の為だ。<br>  そしてコイントスの結果、ターンの順番は真紅→兄者→金糸雀→弟者となった。<br>    <br> (真紅は……ううん、真紅に頼らなくても、カナ一人で十分かしら!)<br> (金糸雀にはどう言えばいいの……? いえ、今はデュエルに集中するのだわ)<br>     <br>  二人のガタガタの結束で、果たして流石兄弟に勝てるのだろうか?<br>  互いの事を気にしてどうにも集中しきれない二人は、雑念を振り払うかのように頭を振り<br> 決闘盤にセットしたデッキからカードを5枚ドローした。<br>    <br>    <br> 真紅&金糸雀 vs 流石兄弟   「「「「デュエル!!!」」」」

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