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―文月の頃―」(2006/08/18 (金) 00:15:41) の最新版変更点

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<p><br>   翠×雛の『マターリ歳時記』<br> <br> ―文月の頃―  【7月2日  半夏生】<br> <br> <br> 夏至から11日が過ぎても、依然として梅雨が明けない、七月最初の日曜日。<br> 翠星石は、週末恒例ゆるゆると朝寝を楽しんだ後、机上のノートパソコンに向かって、<br> 文月の名に相応しく、蒼星石からの電子メールを確認していた。<br> この作業も、すっかり日常生活に織り込まれてしまった感がある。<br> <br> 「うふふ……今日も来てるですね。流石は、私の妹。律儀で感心ですぅ」<br> <br> 気忙しく、新着メールを開く。<br> ここ数日の話題は、専ら、夏休みのことばかりだった。<br> 気が早いと頭で解っていても、会いたい気持ちは抑えられない。<br> <br> <br> 【おはよ、姉さん。そっちは、もう梅雨明けした?<br>  こっちは、だいぶ気温が上がって、夏らしくなってきたよ。 昨日は、オディールが――】<br> <br> そこまで読むと、翠星石は眉間に深い皺を刻んで、メールのウィンドウを閉じてしまった。<br> 昨夜から、心待ちにしていたにも拘わらず、である。<br> <br>   何故?<br> <br> 理由は単純で、他人からみれば、至極つまらないことだった。<br> つまりは、二人だけのナイショ話にオディールの名前が割り込んできたから、<br> 気分が悪くなったのだ。例えるなら、我が家の居間に土足で上がられた様な――<br> <br> 最近、メールの中で頻繁に、彼女の名前を見かけるようになった。<br> それは取りも直さず、蒼星石とオディールの親密度が増した事を意味する。<br> 実際、彼女たちはルームメイトであり、同じ大学に通う学生なのだから、<br> 仲良くなるのも当然の帰結と言えよう。<br> メール以外に時間を共有する術を持たない翠星石では、<br> 一日の大半をリアルタイムで過ごせるオディールに、太刀打ちできる訳がない。<br> 翠星石が一刻も早く蒼星石に会いたがったのには、そんな焦りも少なからず関係していた。<br> <br> 実際に会ってみて、悪い娘ではないと判ったものの、彼女が蒼星石の側で、<br> 同じ空気を呼吸していると思うと、心が乱れて平常心を保てない。<br> 翠星石の脳裏に、歪な妄想が拡がり始めていた。<br> <br> <br> <br> 《以下、名無しにかわりましてmのフィールドがお送りします》:sage:2006/07/02(日)<br> <br>  二段式のベッドで、ほぼ同時に目覚める蒼星石と、オディール。<br>  上で寝ていたオディールが身を乗り出し、蒼星石の居る下の段を覗き込んで、<br> <br>  『おはよ』<br> <br>  と囁く。彼女の肩から、プラチナブロンドが滝のように流れ落ちた。<br> <br>  だが、次の瞬間、寝惚け半分だったオディールが、体勢を崩して上の段から落下してきた。<br>  蒼星石は『危ないっ!』と叫ぶが早いか、飛翔して彼女の身体を空中で捕らえると、<br>  自らをクッションにすべく背中から床に倒れ込んだ。<br> <br>  『痛たたぁ…………随分と派手な起こし方をしてくれるね、オディール。<br>   ん? 心配しなくていいよ。ボクなら平気……だから、もう泣かないで』<br> <br>  泣きじゃくって謝る彼女の台詞を、蒼星石は、そっ……と重ねた唇で遮った。<br> <br>  ・・・続くですぅ><<br> <br> <br> <br> 「だぁ――――っ! なんなんですかっ! その同人誌にありそうな、<br>  ベタでエロリーメイトな展開はぁっ」<br> <br> 束の間、妄想に支配されていた頭を両手で抱え込んで、翠星石は身悶えした。<br> 冗談じゃない。今のは単なる絵空事。現実に起こり得る訳がない。<br> 翠星石は必死の思いで、自分に言い聞かせていた。<br> <br> そんな心の動揺に付け込み、怪しくも妖しい妄想が再び、頭の中に押し寄せてくる。<br> <br> <br> <br> 《以下、名無しにかわりましてmのフィールドがお送りします》:sage:2006/07/02(日)<br> <br>  眩い陽光が射し込むキッチンで、朝食に添えるサラダを並んで調理をしながら、談笑する二人。<br>  オディールは、慣れた手つきでフレンチドレッシングを作っていた。<br>  蒼星石はと言うと、新鮮なレタスを適当な大きさに千切って、サラダボウルに盛りつけていく。<br>  鮮やかなレタスの緑を、トマトとタマネギのスライスで覆って色付けし、<br>  飾りとしてプチトマトを、ちょこんと乗せる。<br>  おいしそうね、と微笑むオディール。<br>  蒼星石は、余ったプチトマトを摘むと――<br> <br>  『キミの可愛らしい唇だって、とっても美味しそうだよ』<br> <br>  オディールの横顔に甘く囁いて、プチトマトを唇に銜えた。<br>  そして、悩ましげに目を細め、オディールに顔を近付けていく。<br>  <br>  オディールは羞恥で頬を朱に染めながら、瞳を閉じて…………<br>  雛鳥が親からエサを貰うかの様に、蒼星石が銜えたプチトマトを啄んだ。<br> <br>  ・・・まだ続くですぅ!><<br> <br> <br> <br> 「うひいぃ――――っ! もう止めるですぅ!」<br> <br> 思わず口を衝いて出た叫び声が、翠星石の意識を、現実に引き戻した。<br> 恐るべし、mのフィールド。<br> 胸に抱いた微かな不安を、こうも歪めて増幅・投影されるとは、予想だにしていなかった。<br> あのまま破滅的な妄想に曝され続けていたら、毒電波の侵蝕によって、<br> 翠星石は思考ばかりか、人格までジャンクにされていたかもしれない。<br> <br> 「……はぁはぁ……このまま悶々としてたら、また……mのフィールドに捕まっちまです。<br>  今度つかまったら、逃げられるか判らねぇですぅ」<br> <br> 二度ある事は三度ある。家の中で、ウジウジと腐っていたら危ない。<br> 気分転換に、誰かを誘ってウィンドウショッピングでもしようか?<br> しかし、窓の外は雨。出掛けるのは億劫である。足元が濡れるのも気持ち悪い。<br> <br> 「あ! そう言えば、みんなで旅行する目的地を決めてなかったですよ。<br>  丁度いいから、雛苺を呼んで、相談するですぅ」<br> <br> 翠星石は携帯電話で雛苺と約束を取り付けると、そそくさと身支度を始めた。<br> <br> <br> <br> 昼食を摂り終えて三十分ほど経った頃、翠星石は雛苺の到着を待ちつつ、<br> インターネットで候補地の検索を行っていた。<br> だが、懸命に探している時ほど、意外に目的の物は見付からない。<br> 翠星石は溜息を吐いて、椅子の背もたれに体重を預けた。<br> <br> 食後ということもあり、何の前触れもなく、翠星石の元に睡魔が忍び寄ってきた。<br> うとうと……と、船を漕ぎ始める。とろんとした微睡みが、なんとも心地良い。<br> 翠星石は午睡の魅惑に抗おうともせず、ノートパソコンを押し退け、机に突っ伏した。<br> <br> そこへ、またもや忍び寄る、妖しい影。mのフィールドの気配。<br> 早く、眼を覚まさないと!<br> 頭では解っているのだが、どういう訳か、自発的に覚醒できなかった。<br> <br> <br> <br> 《以下、名無しにかわりましてmのフィールドがお送りします》:sage:2006/07/02(日)<br> <br>  薄暗い空間。カーテンの隙間から射し込む、一筋の月明かり。<br>  月の女神ルナが、淡い蠱惑の光芒で指し示すは、狂気の精霊に取り憑かれた二人。<br>  シングルベッドの中で、窮屈そうに身を寄せ合う、彼女たち。<br>  霰もなく剥き出された肌は汗ばみ――<br>  <br> <br> (い、イヤっ! そんな光景、見たくねぇですぅ!)<br> <br> 妄想の中だというのに、翠星石は必死に顔を背けようとした。<br> けれど、これは自分の邪推が生み出す、歪んだ妄想。<br> どこまで逃げても、切り離せない影と同じ。<br> 逃れる術は、目覚めるより他にない。それも、更なる衝撃映像を見せられてしまう前に。<br> <br> (こうなったら…………力尽くでも起きてやるですっ)<br> <br> 翠星石はギュッと目を瞑って、力一杯、自分の頬を引っ叩くために両腕を広げた。<br> 弓弦を引き絞るように、ゆっくりと……確実に……。<br> <br> 彼女の身体が激しく揺さぶられたのは、最大限に広げた腕を引き戻す直前のことだった。<br> ビクゥッ! と跳ね起きたため、あわや椅子から転げ落ちそうになった翠星石を、<br> 誰かの腕が力強く支えた。<br> 祖父母の頑丈な腕とは異なり、ほっそりと華奢でありながら、とても頼もしい腕。<br> うっすら小麦色に日焼けした、思慕の情を掻き立てる懐かしい腕。<br> <br> (あれ? この感触…………蒼……星石?)<br> <br> ――違う。とても似ているけれど、僅かに、蒼星石の腕とは違う。<br> じゃあ、これは誰の腕?<br> <br> 翠星石は、肩を支えてくれた誰かの腕に両手を添えて、静かに頚を巡らした。<br> すると、驚くほどの至近に、雛苺の気遣わしげな顔があった。<br> <br> 「間一髪だったの。転んでたら、怪我するところだったのよー」<br> 「……雛苺。お前が、揺すり起こしてくれたですか?」<br> 「ヒナが来てみたら、翠ちゃん、うんうん唸って、酷くうなされてたのよ?<br>  もうビックリしちゃって、つい……力の加減ができなかったの。ワザとじゃないのよ?」<br> 「ふん……おバカ苺のしそうな事は、百も承知してるですぅ」<br> <br> 雛苺の腕を無愛想に振り解いて、翠星石は大仰に肩を竦めた。<br> が、素っ気ない態度とは裏腹に、雛苺には心から感謝していた。<br> もしも彼女が起こしてくれなかったら、今頃、どうなっていたか判らない。<br> <br> 口を開けば、また諍いの種を蒔くだけだろう。<br> ならば、なにも言葉に限る必要なんて無い。<br> 気持ちを伝える術は、多種多様。一挙手一投足でも、意志の疎通が可能なのだから。<br> <br> 翠星石は席を立つと、悄気返っている雛苺の頭を、ぽふぽふと愛情込めて叩いた。<br> <br> 「…………ありがとです。来てくれて……感謝して……やるですぅ」<br> 「うよ?! 今日の翠ちゃん、不気味に素直なのっ。な、なに企んでるのー?」<br> 「ぬなっ!! なんにも企んでやしねぇですっ!」<br> <br> 額にビキビキと青筋を浮き上がらせた翠星石は、一瞬で手首を返すや、腕を振り上げた。<br> そのまま、雛苺の脳天に手刀を叩き込……もうとして、寸止めする。<br> 頚を竦めていた雛苺は、衝撃と激痛が、いつまで経っても訪れないことを訝しんで、<br> 怖々と双眸を開いた。<br> <br> すると――<br> <br> 「止ぁめ止め。じゃれ合う暇があったら、さっさと旅行先を決めちまうです」<br> <br> 翠星石は既に、ノートパソコンに向かっていた。<br> そして、どこで貰ってきたのか、旅行会社のパンフレットの束を、雛苺に差し出した。<br> <br> 「雛苺は、ここから良さそうな場所をピックアップしとけですぅ」<br> 「う、ういー。翠ちゃんの希望は海辺の温泉なのよね?」<br> 「美味しい特産品があれば、なお良しですね」<br> 「解ったの。ヒナ、張り切っちゃうのよー」<br> 「張り切りすぎて空回りすんなですぅ」<br> <br> 軽口の応酬を続けながら、二人は旅行の計画を煮詰めていった。<br> 所要時間や費用など、大雑把なドンブリ勘定だったが、あれこれ考えるのは面白い。<br> 或いは、実際に旅立つよりも、計画を立てている時の方が楽しいのかもしれない。<br> 翠星石も、雛苺も、終始笑顔のまま、夕暮れ時を迎えたのだった。<br> <br> 輝かしい夏の記憶が、二人の胸にしまってある日記に、書き加えられてゆく。<br> 一生に一度しかない、楽しくて、かけがえのない思い出が、また一つ……残った。<br> <br></p> <hr> <br> 『保守がわり番外編  着信アリかしらー!? その7』<br> <br> <br> 翠「蒼星石! お前みたいな性悪娘は、月に代わってお仕置きです。<br>   暫くは椅子に座れなくなるほど、お尻を引っ叩いてやるですから、<br>   覚悟しやがれですぅ!」<br> 蒼「・・・・・・ふふ。まさか、姉さんに性悪呼ばわりされるとはね。<br>   今の台詞、そっくりお返しするよ。ボクが、姉さんの性格を教育し直してあげる」<br> 翠「むっきぃーっ! 生意気いうなですぅーっ!」<br> <br> |ご電|  ∩ 金「・・・くっくっくぅ。目論見どおりの展開ね。 <br> |ざ柱|∀゚)彡   これで、二人はプリキ・・・じゃなくて、共倒れかしらー♪<br> |るで|⊂彡    ヤッちゃえヤッちゃえ!」<br> <br> 蒼「ボク達は、ほんの数分、産まれる順番が違っただけ。<br>   もしかしたら、出生届の記入ミスで、ホントはボクがお姉さんなのかも知れないよね?<br>   うん・・・実際、その方が、しっくりくるんじゃないかな」<br> 翠「・・・だ、だったら、どーだと言うですっ!」<br> 蒼「今からでも、姉妹の関係を覆せると思ってさ。言うなれば下克上?」<br> 翠「本能寺の変を気取りやがるですか」<br> 蒼「ボクがお姉さんになった暁には、今までキミにされた悪戯を――<br>   あーんな事や、こーんな事の仕返しをしてあげるから、覚悟しておいてね。ふふ・・・」<br> 翠「・・・・・・」(* ゚д゚ *)<br> 蒼「? どうしたの。怖くて声も出ない?」<br> 翠「え・・・っと。あの・・・想像したら、妹プレイも良い・・・かなって思った・・・ですぅ」<br> 蒼「・・・・・・そ、そう・・・だね。なんだろう。ボク、血が滾ってきたよ」(*´Д`)ハァハァ<br> <br> <br> 金「っ?! なにやら、ミョーな流れになってきたかしらっ!」( д) °°<br> <br> ・・・次回『壮絶! 双子姉妹、本能の変』に稲妻キィッーク! かしらー。<br>

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