鏡面の憎悪

現状をふと考える。

一体何がいけなかったのか。

気まぐれに学校に行こうと思い、いつも通り教師の説教を聞き流す。
放課後、最近頻繁に出てくる邪魔者がいないか確認。
帰り道、言葉にするのもおぞましい通りすがりの『 』を見つけて……。

そこで記憶が途切れている。

次の記憶はあの部屋だ。
殺し合いがどうとか言っていたが正直言ってどうでもいい。
いつも通り『 』であれば殺す、それだけだ。
もしも『 』がいなければ……まあそれはその時に考えればいいだろう。

そして気になることを思い出す。

最近殺しの最中に興奮の絶頂で記憶が飛ぶことがよくある。
はたしてあのときの『 』は殺せていたのだろうか。

殺せていたたのならそれでいい。
しかし、もしそうでないのなら……。

考えた瞬間全身の血液が煮え立つ感触を覚える。

帰らなければ。帰って…「あの、すみません?」

思考が、中断される。

「……何?」

邪魔をされた恨みと、あとついでにありったけの憎悪を込めて声の主をにらみつける。

「あー、えっと?少し話だけでも聞いてくれたら、っと……」
「そもそも誰よ、あなたは?」

返事を返しながら相手を観察する。
動きは戦闘慣れした者のそれではなく、『 』の気配も今のところはしない。
白髪交じりなのか髪色は灰色、目には赤と青のカラコン、耳はどこかの映画で見た妖精のようにとがっている。
ずいぶんとおかしな格好だ、噂に聞くこすぷれいや?とか言う輩なのだろうか。

「あぁ、申し遅れました。私はアーゴイル、武器屋のアーゴイルといえばお分かりで……」

白か。
それならもうこの男に用は無い、そうそうに立ち去ろうと、

「あ、待ってください!」
「……」

振り返る、今度は殺意を込めてみる。

「せっかくの縁ですし名前教えてもらえませんか?」
「肩斬華…子、もういい?」

なんとなくこいつに本名そのままを名乗るのは嫌だったので適当に付け加える。

先ほどからさほどもしゃべっていないはずなのにこの男を相手にすると無性に苛々する
ここはさっさと離れた方が精神衛生のためにもいいのだろう。

「ついてきたりなんかしたら、殺すわよ」

なおも口を開こうとする男をようやくその場を離れることができた。
早く帰らなければならない、早く……。

【F-5/平野/1日目/深夜】
【肩斬華@アースP(パラレル)】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考]
基本:元世界へ帰る
1:この場を離れる
2:『 』は見かけ次第殺す
3:『 』でなくても自分の邪魔をすれば殺す、かも
[備考]

「ふむ、振られてしまった……か」

去っていく少女の後姿を見送りながら男、ヘイス・アーゴイルはつぶやく。
さすがに殺すとまで言われてはついていくわけにもいかない。
周到に準備をしている普段ならともかく、今の彼は非戦闘員の半人半魔にすぎない。
服の中に仕込んでいた小さな魔道具まで没収している主催者の芸の細かさには感嘆の念を禁じ得ない。

「殺し合いか、本当に下らんことをやってくれるな、あの男は」

支給された参加者候補リストには人間側の有力者の名もちらほらと載っていた。
現行で殺し合いが始まっているのを見るに、何人かはすでにこの場にいるのだろう。
本来ならばそんなことは伝説の錬金術師であるあの男、サン・ジェルミが見逃すはずがない。
しかし殺し合いは行われている、つまりこの殺し合いにおいてサン・ジェルミは主催者、もしくはその関係者であるという図式が成り立つ。
そしてサン・ジェルミが主催者側にいるということで殺し合いの大まかな目的も察することができる。
あの男のすることだ、今回の目的も人類の繁栄につながるものなのだろう。

だから、潰す。

そもそもこの殺し合いで主催者の思惑通りに動いたところで彼自身が生き残る目は少ない。
例えチーム戦であろうとも、先の戦争の成果で警戒される程度には知名度が上がっていることは自覚している。
それになにより彼自身があの連中とともに戦うことを考えられない。
彼の根本も先ほどの少女と同じ、憎悪なのだから。

「カタギリハナコか」

見るからに憎悪に囚われた彼女に話しかけたのは単純に同類としての興味からであり、
事実彼女の憎しみは凄まじく、向けられた瞬間危うく普段から演じている店主としての仮面をはがされかけるところであった。

だが、予想外の収穫も得ることができた。
彼が経営している武器屋、アーガイル商店は先の戦争で大規模な利益と名を上げた。
気になるのはおそらく戦闘技能持ちであろうハナコがその名にノーリアクションだったこと。

「これは……ひょっとすると」

その概念の知識はあるが今まで眉唾ものだと思っていた。
だが、それを考えるとチーム戦の殺し合いという中途半端な形式にも納得がいく。
受け入れるべきかもしれない『異世界』という概念を。

【F-5/平野/1日目/深夜】
【ヘイス・アーゴイル@アースF(ファンタジー)】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いをつぶす
1:『異世界』の存在を確認する
2:協力するなら『異世界』の住人と
3:自分のチームの優勝は断固として阻止する
[備考]
※サン・ジェルミ伯爵が主催者側にいる可能性が高いと考えています
※異世界が存在し、チームは世界ごとに分けられている可能性があると考えています


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最終更新:2015年07月04日 21:51