信長様の為に


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明智光秀は織田信長を慕っていた。織田信長は明智光秀をこれ以上ない程に信頼していた。
固い絆で結ばれた二人に適う敵は存在しない。織田軍は破竹の勢いで覇道を突き進み、遂に天下統一を目前とした刹那――。
本能寺にて豊臣秀吉の策略に嵌められ、織田信長は命を落とすことになる。

だがそれでも――忠臣、明智光秀は諦めなかった。彼は執念だけで敵軍の首を刎ね飛ばし、秀吉をあと一歩のところまで追い詰めた。
されど奇跡は永く続かない。自らの命惜しさに裏切った織田軍の兵が、光秀の心の臓を穿ったのだ。
そうして息絶え絶えになり、己が人生の幕引きを感じ取った光秀は、焼け焦げた信長の死骸に寄り添い共に死を選んだ――。

それがアースPで語り継がれている、明智光秀の歴史。
アースEなど様々な世界で信長を裏切ってきた光秀と違い、アースPの光秀は最期まで忠を貫き、果てた。
理由は単純。信長を誰よりも信じていたから。彼にならば、命を差し出しても構わないと思っているから。
だからこそ最期の瞬間まで信長の為に戦える。秀吉を恨むことはあれど、自らの最期に悔いはない。

その想いは今でもずっと変わっていない。
過去から現在まで、信長のことを忘れた日など一度もない。
たとえ性別が変わり、その情が別のものになりつつあったとしても――――。

♂ ♀ ♂ ♀

「……ここは?」
『───これより、音声プログラムを再生致します』
「この音声は、ICプレイヤーから? いつの間にこんなものを……」

右手に何か妙な感覚があると思えば、何故かICプレイヤーを握っていた。そこから流れる無機質な女性の音声は、不気味としか言い様がない。
アイドルとして活動していた光秀にラブレターや悪戯で音声を録音して送り付けてくる輩もいたが、今回の音声は完全に異質。恐らく自分を連れ去った者はこの女なのだろうと、直感する。

『───再生が終了しました』

耳を傾けてみれば、女の話している内容は滅茶苦茶なものだった。
批判は受け付けないが互いに殺し合え。反抗したら首輪爆破で殺す。チーム戦で、最後の一人になるか、一チームのみになれば終了。
はっきり言って頭の痛くなる内容であるが、金属のひやりとした感触が、音声の言葉は偽りではないと証明している。
もちろん首輪を爆破することなど、ただの脅し文句である可能性も有り得るが――だから反抗しようと決めるほど、光秀は思い切りがよくない。
先程の音声を何度も、何度も思い出して光秀は慎重に今後の方針を考える。

(一定法則に沿って分けられたチーム――ということは、もしや信長様もいるのでは?
 そして信長様は間違いなく、私と同じチームにいるハズ。完全ランダムなら兎も角、法則性があるのならそれ以外は有り得ない)

《一定法則》に沿って分けられたチーム。あの女はたしかに、そう言っていた。
他にも様々な言葉が流れていたが、光秀が何よりも注目した点はそこだ。

(特に根拠はないが――私があの女なら、親しい者や知人を同じチームにする。
 そうすることで他者を殺害する者も出てくるだろうし、積極的に他チームと争わせるにはそれが最も手っ取り早い。
 それに私と信長様は、深い信頼で結ばれているのだから、チームが違うということはまず有り得ないっ!)

光秀は自分と信長が同じチームだと確信した上で考える。
どのような法則で分けられているか説明されていないが、織田信長と明智光秀の二人はよくセットで紹介されている人物だ。
歴史の教科書から小説、はたまた偉人を女体化したライトノベルやゲームにも――明智光秀は織田軍の忠臣として登場する頻度が高い。
光秀が予想した親しい者や知人を同じチームに配属させる説が合っていれば、信長も同じチームでなければおかしい。

(しかし信長様が今の変わり果てた私を見て、どう思うのだろうか?
 アイドル活動している時はファンからも人気があって、容姿もよく褒められるけど……信長様の好みかなぁ?)

光秀は卑弥呼に蘇生された際に美少女へ変わった。
アイドルにスカウトされる程に優れた容姿は、男ならば誰しもが目を引くと言っても過言ではないだろう。
それは光秀自身も自覚しているし、ナンパをされた数だって数え切れないほどにある。ファンだって大量に存在する。
だけども――それでも、信長に気に入られなければ、光秀にとっては意味がないのだ。

たとえ信長以外の世界中に住まう人間が光秀のファンになったとしても、信長が褒めてくれなければ光秀は悲しむだろう。
今の彼女は忠臣であり――――そして恋する乙女でもあるのだから。


恋心に気付いたのはつい最近で。
昔はそんなことなかったのに、少女になってからは信長の心を考えるだけで胸がドキドキとする。
卑弥呼に尋ねたところ、それは不治の病――――恋だと聞かされた。

(それ以上に。わ――私などがこ――こここここ、恋する資格はあるのでしょうか、信長様?)

そう思うだけで、思わず頬が赤くなってしまう。
何を考えているのだ。自分は織田信長の忠臣、明智光秀だというのに、どうして恋などと――――。
この場にアイドル仲間の宗矩がいれば、動揺するこの心を鎮めてくれたかもしれないが――不幸にも彼女の姿はどこにもない。まあ彼女に恋をバレるのも恥ずかしいので、幸運なのかもしれないが。

(ひ――久々に信長様に会えそうだからといって、こうも取り乱してしまうとは……我ながら情けない。
 本来ならばもっと気合を入れなければならないのに、どうしてこうも胸が高鳴ってしまう……。空気を読め、私の胸!)

一生懸命に胸の高鳴りを抑え込もうとする光秀。
アースPの信長は当然ながら故人であり、卑弥呼から蘇生もされていないのだが、それでも光秀は信長がどこかで生きているか、自分のように復活していると信じている。
だからこそ今回は彼女にとって、信長と再会する絶好の機会でもあるのだ。多少は舞い上がってしまうのも仕方ない。

「――――私のうつけがぁぁあああ!」

ぱちーん、と頬を叩く音。光秀は理性を取り戻す為に自らの頬を叩いたのだ。

「……私は信長様の忠臣なのに。信長様の為に働く必要があるのに、こうも浮かれていてどうする!
 せっかくのチーム戦で、信長様と勝利することも出来るというのに……私はどうしようもない莫迦者です、信長様!
 しかし――信長様を想う気持ちだけは誰にも負けておりません。それだけは、胸を張って云えます。
 だから信長様――――私が他のチームを殲滅して信長様を勝利へ近付けてみせますので、その時はその……お褒め下さると嬉しいです」

そして再び、今度は気合いを入れるように頬を叩いて――。

「期待してお待ち下さい、信長様。この光秀が信長様の軍を勝利へ導いてみせます!」

その表情に、もう迷いはない。
何故なら彼女は織田信長の忠臣であり、恋姫なのだから。

「……あ、そういえば私の連れていたのぶのぶもいない!? のぶのぶも探さなければぁぁあああ!」

【A-3/森/1日目/深夜】

【明智光秀@アースP(パラレル)】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム1~3
[思考]
基本:信長様の軍を勝利へ導く
1:愛犬のぶのぶを探す
[備考]
※織田信長と同じチームだと思い込んでいます

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