百合じゃない小説・続き


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 「すごいですね武藤くん。たったあれだけの質問で涼宮さんの答えをあてちゃうなんて…」
眉を垂れ下げたまま感嘆の声をあげた言葉は、改めて武藤遊戯という男を見た。
なにか決意を秘めた眼は常に力強く前を見ている。背は自分と同じくらいなのに不思議と大きく感じるその存在感は、漂う雰囲気からなのか精神的な意味においてなのか己より高みに位置するような気がしてならない。威厳、のようなものが武藤遊戯という男から放たれていた。
 「いや、ハルヒもなかなかやるぜ。唐突にこのゲームを始めた場合、ふつうは眼に飛び込んできたもの、つまりこの部屋にあるものや自分が身につけてるものを選びがちなんだけどそれをしなかったとはな」
言葉の台詞を受けて遊戯は改めて腕組みをすると、ふくれっ面のハルヒの背中に語りかけ、それから言葉に視線を移し軽く笑った。まるで言葉が感じ取った威厳を取り払うように、優しく笑う。
(不思議な人だな…)
ぼんやりとそんなことを考えていた言葉の耳をつんざくようにハルヒが叫ぶ。
 「こんなのつまんないわ!もっと他にマシなゲームはないの?」
ハルヒの台詞に遊戯は考え込むような仕草をすると
 「心理ゲームなんかはいくつかあるが…」
 「却下よ却下!もっとエキサイティングなゲームがいいわ」
すぐに阻まれてしまいやれやれと腕組みをし直した。
 「エキサイティングか…う~んどのゲームがいいか迷うぜ」
 「あの、しりとりなんかはどうでしょうか…?」
 「無し!そんなの子供の遊びじゃない」
考え込む遊戯の助けになればと発した言葉の台詞はあえなく却下されてしまう。程なくして小さく肩をすくませる言葉の肩に手が置かれた。
 「大丈夫です桂さん。この谷口におまかせください」
 「谷口…さん」
振り向けば少し離れた場所にいた谷口が三人の輪の中に入ってきた。堂々とした態度にはなにか策があるらしいので、言葉は手を胸の前で組むと谷口のために一歩足を引いた。輪の中心に、谷口がいる。
 「一体どんなゲームなんだ?谷口くん」
虚をつかれた遊戯は腕をほどくと谷口を見つめた。まもなく谷口も遊戯を見つめると、にやりと笑って親指を立てる。
 「野球拳なんてどーだ?道具はいらないし眼の保養…もといけっこう白熱するぜ!」
そこでずっこけかけたのは言葉と遊戯だけであった。後ろを向いていたハルヒはくるりと谷口に向き直り
 「それ、案外いいかもね」
と言ってのけた。
驚いたのは谷口だった。軽い気持ちでこの三人の輪に入る口実にと、口から出た台詞の中身がまさか採択されようとは夢にも思っていなかったのである。すぐさまガッツポーズを決めた。
 「す、涼宮さん…なにを言ってるんですか…!」
控えめな声音で反応してみせた言葉にハルヒは楽しそうにほほえみ返す。
 「じゃんけんで相手の服を脱がすのよ!面白そうじゃない…それに有名なわりに以外とやったことないものね。野球拳」
 「そっそんな…!だって私たちだって、脱がなくちゃならなくなるかもしれないんですよ?」
胸元で組んでいた手をほどき、必死に訴えてみたものの
 「あたしはかまわないわよ。それに心配しなくてもあたし、じゃんけんは強いんだから!」
ハルヒの言い切りに言葉は二の句が継げなくなってしまった。頬のあたりをほんのり赤く染めながら遊戯と谷口を見る。
 「な、遊戯くん、みんなでしようぜ!野球拳!」
がばりと肩を組んできた谷口に、遊戯は愛想笑いを返すと手で谷口を制した。
 「いや、もっと他にゲームがあるはずだ。」
谷口は一瞬呆け顔を作るとさらに顔を遊戯に寄せ耳打ちをした。
 「美女の裸を拝めるいい機会だぜ?上手くいきゃ桂さんのあのダイナマイトな胸が…」
耳打ちする谷口をふりほどき、遊戯は若干焦り気味に言葉を発した
 「オレは反対だ。そんなゲームよりもっとみんなが楽しいゲームをしようぜ」
かー と、嘆きの雄叫びをあげると谷口はかぶりを振って遊戯の両肩に手を置いた。
 「かってぇなー遊戯くんは!女子がこうしてノリ気なんだし、かるーいお遊びなんだからやろうぜ!」
 「い…いや…オレは」
口をいの字にしてたじろぐ遊戯に谷口は嘆息を漏らすと、どこの輪にも属さず窓の外を見ていた男に向かい声を張り上げた。

「おーい海馬くーん!遊戯くんを説得してくれよ~。女子と野球拳だぜ野球拳!こんな好機を逃そうとするお堅い遊戯くんをなんとかさー」
谷口がそこまで口にしたところで、海馬瀬人は谷口に一瞥をくれると窓の外に視線を戻した。くだらん そう呟いて。
「く、くだらないだぁ」
谷口は遊戯の肩に置いていた手をそこでようやく離し、拳を握った。すかさず海馬の二の句が告げられる。
「つまらんゲームはお前達で勝手にやっていろ。オレには関係のないことだ」
重々しい雰囲気で放たれた重々しい台詞に、谷口は数秒固まってから己を取り戻した。この目の前にいる武藤遊戯という男以上に海馬瀬人という人間とは上手く付き合えないだろう。本能がそう察知して、谷口はそれ以上海馬に声をかけるのをやめた。
「くっそーなんだよ、俺の味方になる男がどこにもいねぇ」
「なにブツブツいってんのよ!ほら谷口!さっさとやるわよ!あたしの相手は当然武藤遊戯!あんたよ!」
ぶつくさと文句を垂れていた谷口に勢いハルヒが指さし、次いで遊戯を刺した時であった。がちゃり とドアの開く音が室内に響く。外から少女が入ってきた。
「ん~?どしたのみんな。なんかモメてるみたいだけど?」
トイレに立っていた泉こなたが帰ってきたのだった。遊戯から事の詳細を聞いたこなたは、ぽんと手を打つと持ち歩いていた鞄の中を手でさぐり、中からえんじ色のケースを取り出して見せた。
「それならいーのがあるよ~。じゃーん」
こなたの動向を見守っていた四人が少女の掲げたえんじ色のケースを覗き込む。そのケースの中身とは。
「ウノだよ。クラスの友達とハマっててさぁお昼休憩なんかのときにやってたんだ。これならいい暇つぶしになるよ」
おお と四人がそれぞれに感嘆の声を漏らす。
「これよこれ!こういうのを待っていたのよ!」
「ウノか。良いカードゲームだ!これならオレも賛成だぜ」
「これ、小学生のとき遊んだことあります。大勢でやると楽しいですよね」
「ちぇ…でもまあこれはこれで楽しいか…な。とほほ」
こなたを囲んで盛り上がる四人のもとに、窓際にいた海馬が近づく。
「ふぅん。ウノか。カードゲームなら話しは別だ。貴様ら全員オレの前にひざまずかせてやる」
不敵な笑みを浮かべながら、海馬は堂々と輪の中に入った。
「まざりたいなら素直にまぜてっていいなさいよ」
ハルヒは半眼で海馬に対し言い放った。いきなりやってきて傍若無人な振る舞いをされるのは、大嫌いなのだ。遊戯同様に反発心がわき起こる。
「な…きさまナメた口を!」
「まぁまぁ、落ち着いてください海馬くん」
面と向かってツッコミを入れられたことのなかった海馬がハルヒに向かい怒りを顕わにしたところである。爽やかな空気がこの輪に混じり込んだ。
「僕も少々退屈していたところでして。まぜてもらってもよろしいでしょうか?」
先刻から傍観していた古泉一樹が加入の申し入れをしてきた。


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