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鮮血の開幕 ◆DbK4jNFgR6

意識が覚醒した間桐雁夜の目に入った光景は一面に広がる白。
ホワイトガーデンとでも言うべき白い部屋であった。
辺りを見渡すと老若男女問わず大勢の人々。彼ら、彼女らの首には金属製の首輪がはめられていた。

「首輪があるのは……俺もか」

そこでようやく雁夜は自らの首にも首輪がつけられていることに気付く。

「一体、どうなってるんだ。聖杯戦争の最中だってのに」

聖杯戦争を勝ち抜き聖杯を臓硯に渡すことで桜は解放される。
そのために雁夜はこれまで辛い魔術の修行に耐えてきた。
たとえ聖杯戦争の勝者となったとしても、最終的に雁夜は命を落とす。
即席での魔術会得は体に膨大な負担をかけるため、雁夜の余命は長くなかった。
それでも、それでも禅城葵の娘である桜を解放するためならばと、雁夜は聖杯戦争への参加を決意したのだ。

「誰の仕業だ。臓硯か? 俺に嫌がらせをするためにこんな真似を」
「お集まりの皆さん。ごきげんよう」

現れた人物を目にした雁夜は犯人が臓硯ではないことを理解せざるを得なかった。
しかし、その人物とは雁夜にとって臓硯と同じかそれ以上に憎むべき対象である。

「お前の、お前の仕業か……遠坂、時臣ッッッ!!!」

赤い洋服を身にまとい、手に握っているのは先端に宝石のついたステッキ。その優雅な仕草はまさに生粋の貴族そのもの。
雁夜に殺意を向けられてなお、それを平然と受け流す男の名は遠坂時臣である。

「喚くな雁夜、その優雅さに欠ける仕草は見るに堪えない。同じ御三家としてもう少し品格のある振る舞いをとってくれ」
「黙れ、黙れ、黙れッ!! 貴様かッ! 時臣! 俺を拉致したのは」
「だから喚くなと、はぁ。もういい。君のような落伍者に品格のある振る舞いを期待したのが間違いだった。
 それで拉致したのが私か、だったか。その通りだよ雁夜」
「何が目的だ! 時臣、一体何の目的があってこんな」
「話を遮らないでくれ。貴様のような落伍者に問われずともちゃんと説明する。
 君たちをここに集めたのは目的は一つ、それは殺し合いをしてもらうためだ」
「な、何だとッ!!」

宝石付きステッキを右、左、右、左と交互に持ち替えながら優雅な仕草で時臣は語る。

「殺し合いと言っても聖杯戦争ではない。バトル・ロワイアル。それがこの殺し合いの正式名称だ。
 最後の一人になるまで殺し合い、優勝者はどのような願いでも叶えることができる」
「つまり、この大人数で聖杯戦争をやるってことか」
「バトル・ロワイアルは聖杯戦争とは異なりサーヴァントは使用しない。あくまでも個人の戦いだと思ってくれていい」
「サーヴァントが、なしッ、だと! それじゃあ、俺は一体なんのために魔術を」
「無駄ではないさ、雁夜。ここに集まったものたちの大半は魔術師ですらない無力な一般人だ。女、子供であればお前の付け焼刃の魔術でも容易に殺害することができる」
「ふ、ふざけるなよ、ふざけるなよ、時臣ッ!!」

そして今度こそ、雁夜の怒りは爆発した。
成程、確かに会場を見渡してみれば時臣の言う通り、女子供がいる。
桜と変わらぬ年頃の少女が何人もいた。

「それを殺せというのか。外道が……やはり貴様は外道だ、時臣ッ!!」
「落伍者の戯言は聞くに堪えないな」
「こ、このッ! それで貴様は高見の見物かッ! 安全な場所から見てるだけか」
「私はバトル・ロワイアルの参加者ではないのでね。今回はあくまでも監督役のような立ち位置だ」
「ふざけるな、俺は、俺は聖杯戦争で貴様を殺すと決めている」
「君の戯言は聞き飽きたよ」

「それはこちらの台詞だな」

ここで第三者の声が上がった。

「ほう。貴方はロード・エルメロイですか」
「遠坂時臣だったか。よくも私にこのような下賤な遊技を強要してくれたな。
 魔術師同士の競い合いでもない、このような野蛮な行為にこのケイネス・エルメロイ・アーチボルトが参加すると思うかッ!」
「ふむ、あなたを見せしめにするのは勿体ない。時計塔のロードはこの遠坂時臣が自ら倒すことにしよう」
「はっ! 私と決闘しようというのかね、遠坂。島国の魔術風情が、このロード。エルメロイを倒す?」
「その通り、第三者の介入がなく、不正の入り込む余地のない一対一の決闘です。どちらが優れた魔術師かここで決めるとしましょう」
「私も舐められたものだな。身の程を弁えないとどうなるか、直々に教えてあげよう。
 ――Fervor,mei,sanguis(沸き立て、我が血潮)」

自慢の礼装、月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)を起動すべく、ケイネスは詠唱を行う。

「な、何故だ、何故私の月霊髄液が起動しない」
「無駄ですよ。その首輪がある限り貴方はこの空間で魔術を使うことができない」
「な、何だと、そんな馬鹿なッ!」

時計塔のロードであるケイネスにとって、それは決してあってはならないことだった。
このような首輪で自身の魔術が阻害されるなど、ロードとしてのプライドが許さない。
しかし、現実は残酷なもので、首輪がある限り白い部屋の中では魔術を始めとした一切の異能の力は封じられ、人間離れした身体能力なども制限されているのである。

「先手はそちらに譲りましたが、今度はこちらが攻めさせてもらうことにしましょう。
――Intensive Einascherung(我が敵の火葬は苛烈なるべし)」

宝石付きステッキから噴き出した炎はあらゆるものを燃やし尽くす魔の焔。
魔術による防御も行えず炎に包まれたケイネスは成すすべもなく火達磨になった。
時計塔のエリート魔術師の断末魔が白い部屋に響き渡る。

【ケイネス・エルメロイ・アーチボルト@Fate/Zero 死亡】

「き、貴様ァ! よくも我が主を」

ケイネスを主と呼ぶ、この男は聖杯戦争における槍の英霊、ランサーのサーヴァントである。
魔術師ではサーヴァントには勝てない。それは魔術師ならば誰もが知っている常識だ。
だが時臣は狼狽するでもなく、優雅な仕草でステッキを右、左、右、左、と交互に持ち替える。

「何も怒ることはあるまい、ランサー。これから行われるのが聖杯戦争でないことは説明したはずだ。
 その男もまた君の願いの邪魔になる存在でしかなかった。それが減ったのだから感謝するべきだろう」
「黙れ、外道が。俺に願いなどなかった。ただ主のために忠義を尽くせればそれでよかった」
「理解に苦しむな。まあいい。とりあえず、動かないでおいてもらおうか」
「なッ!」

パチン、と時臣が指を鳴らすとランサーが硬直した。
どれだけ力を籠めようとも一切動けず、自慢の槍で眼前にいる主の敵を貫くこともできない。

「さて、あとは首輪の効力を見せるための見せしめだが……ふむ、不要となったホムンクルスにしようか」

もう一度、時臣が指を鳴らすとまるで人形のように白い肌をした美女の首輪が爆ぜた。

【アイリスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/Zero 死亡】

「ア、アイリスフィールッ!!!」

甲冑を纏った騎士が声をあげる。

「もう聖杯戦争をやらない以上、その人形は不要だからね。どうせ短命なんだ。それを見せしめに選んだのは、私から君たちへの善意のようなものだよ」

「き、貴様、よくもアイリスフィールを」
「セイバーのサーヴァントか。君もランサーと同じような反応をする。
 まったく騎士という人種の言動は理解に苦しむな」

指を鳴らしてセイバーの動きを封じた時臣は説明を再開する。

「禁止エリアに入ったり、我々に刃向うような真似をすれば、そこの人形と同じ末路をたどることになる。
そして今までの会話を聞けば分かったかもしれないが、この会場には人間離れした力を持った者たちが複数いる。
一般人への配慮として支給品を用意した。強い支給品を引き当てれば魔術師でなかろうとも、そこの落伍者ぐらいは容易に倒せるかもしれないな」

雁夜をステッキで指しながら小馬鹿にした口調で時臣が言う。

「食料と水、それから会場の地図も含めて全員に配布しよう。それでは君たちの健闘を期待している」

左、右、左、と持ち替え、再度右手にステッキ握った時臣は、その先端を優雅な仕草で床につける。
同時に白い部屋に集まっていた参加者たちは次々と会場となる島へと移動させられ始めた。

「遠坂時臣ッ! 俺は絶対に貴様を殺すッ!!」

強制移動させられる寸前、鬼の形相で時臣を睨み付けなら雁夜はそう宣言した。

「説明は終わったのね」

参加者が全員会場へと移動させられるのを見計らってから時臣の前に一人の女性が現れた。
女性の首に金属製の首輪はなく、つまり彼女も時臣と同様に主催者側の人間であることが分かる。

「そちらの準備もできたようだね、入巣清香」

この若干ロリっぽい三十路の女性こそ大企業アイリス・グローバルの社長、入巣清香であった。
年齢にそぐわぬ美人である女だが、正直なところ時臣は清香を快く思っていない。
清香は自らの娘である入巣蒔菜をバトル・ロワイアルに参加させていた。
同じく娘を持つ親として、それは許容し難い行為である。
時臣は確かに娘の桜を養子に出したが、それは桜のためを思ってのこと。
間桐の娘にすることが、桜にとっては最善だったからに他ならない。
一方、清香は娘の蒔菜に対しての愛情は皆無であり、今回の参加者選抜で娘が選ばれた時も一切反対しなかった。
その様子を間近で見ていた時臣は清香に対して不快感を覚えると共に、この女が不要になった時は自らの手で罰しようと心に決めていた。

「一体何人があの出まかせを信じるかしら」
「雁夜なら案外、真に受けているかもしれないな」

参加者たちにはああ言ったが時臣には始めから勝者の願望を叶える気などなかった。
優勝者が決定してこの部屋に招かれた瞬間、優勝者の首輪を爆破。願いを叶えるエネルギーを横取りする算段である。
弟子である言峰綺礼が参加者に入ってしまっていることは残念だが、代行者である以上、死は覚悟の上だろうと割り切る。
聖杯戦争と違い自分がリスクを負うことなく根源に至る手段を得られる。
つくづく彼女の協力者になって良かったと時臣は思う。
彼女というのは入巣清香でのことではなく――

「揃っているわね、二人共。計画は順調かしら?」
「無論だ、繭君」

この繭というカリフラワー頭の少女こそ、バトル・ロワイアルの発案者であり、時臣が最も信頼している協力者でもある。
魔術師でもない入巣清香とは異なり、繭はこの固有結界にも近い白い部屋を展開できる程の実力者だ。
対等な協力者としての資格は十分に満たされている存在なのである。

「何の問題なくバトル・ロワイアルは進行しているよ。
 彼らは自分たちが道化に過ぎないことも知らずに殺しあうだろう」
「そう。それならいいわ」
「私は部屋でワインでも飲みながら観戦させてもらうとするよ。繭君も後で私の部屋に来るといい。魔術における芸術性について語り合おうではないか」

そう言って時臣は繭に背を向けて自らの個室へと向かう。
繭の口元がにんまりと歪んでいること、その手には一枚のWIXOSSのカードが握られていることに最後まで彼は気付かなかった

繭の手に握られているのは毒牙属性のカード『アイン=ダガ』
場からトラッシュに置くことで相手シグニのパワーをマイナスする黒のカードである。
カードをダガーナイフへと変化させた繭は、無防備に背を向けて部屋へと戻る時臣の心臓にナイフを突き立てた。

「え……?」

おそらく時臣は最後まで何が起こったか理解できなかったであろう。
協力者に裏切られた哀れな魔術師は、瞬く間に動かない肉の塊へと変貌を遂げた。

【遠坂時臣@Fate/Zero 死亡】

「殺してよかったの?」
「ええ問題ないわ。彼の役目はここでおしまい。あとは貴方と『あのお方』がいれば十分だもの」

『あのお方』とは時臣には知らせていなかった最後の協力者であり、バトル・ロワイアルの真の発案者、そして繭が最も信頼している人物である。

「……そう」

人が死ぬのを直接見るのは慣れていない清香が時臣の死体から目を逸らす。
そんな清香に配慮したのか、単なる気まぐれか、繭は時臣の死体を消し去った。

「ふふふ、それじゃあ、始めましょう。楽しい、楽しい、ゲームの始まり」

セレクターバトルすら超越した死のゲームの開幕を繭は高らかに宣言した。


【ゲームスタート】


【主催】

【繭@selector infected WIXOSS】
【入巣清香@グリザイアの果実シリーズ】

【黒幕】

【???@???】