Lostheart(hurt) distorted ROYAL◆NiwQmtZOLQ



チャットルームの書き込みは、以前のそれよりかなり増えていた。
更に、その中にある二つの書き込みと絢瀬絵里が居合わせたよいう状況が同時に存在していたことが、彼女たちに大きなアドバンテージを与えていた。

『つまり、樹ちゃんのスマホを皐月さんって人とれんげちゃんって子が。友奈ちゃんのスマホをコロナちゃんって子と桂さんって人が、それぞれ持っている可能性がとても高い……そういうことだね?』

セルティのまとめに、絵里がうなずく。
書き込まれたイニシャルと、何らかの隠喩であることを如実に表した文中の謎めいた言葉。
これらが、極力他の知り合いにもわかりやすいように

「れんげちゃんだけ、もとの世界の子からは分かりづらいんですけど……でも、共通した渾名みたいなのは本名が連想しやすい『れんちょん』だけだったから」
「仕方なく、支給品の名前をつけた…ってことね」

納得した、という風に夏凜が〆る。
ともあれ、そういうことなら連絡手段は存在する。既に電話機能までが解放されている以上、使わないでいる理由など何もない。
となると、どちらから連絡を取るべきか。
特にどちらでも問題があるというわけではないのだが、しかし改めてこうした二択となるとどちらがいいとすぐには決まらないものだ。
どうしようかな、と考えようとしたセルティに、しかし絵里がおずおずと意見を述べる。

「……桂さんとコロナちゃんにしたいと思うんですけど、駄目ですか?」
『別に。むしろ迷ってたから決めてくれてありがたいんだけど……何か理由が?』

その言葉に、絵里は少し俯いて答える。

「……単純に、書き込みがちょっと前みたいだから……」

伏し目がちに紡がれたその言葉で、セルティも理解した。
要するに、安否が最後に確認できたのがより古い方から連絡したい、とそういうわけだ。
夏凜も特に異議を唱えることはなく、友奈の番号を電話帳から呼び出していた。
声を聞けば確認できるから、ということで、電話を実際にするのは絵里にすぐ決定した。
渡された端末の通話ボタンをプッシュし、そっと耳にあてがう。
プルルルル、プルルルル、と。
電話のコール音が、静寂の中に響き渡っていた。
セルティと夏凜が見守る中で、絵里が握っている端末は機械音を吐き出し続ける。
そして、待つことおよそ十数秒─────コール音は止まり、代わりに聞こえてきたのは、電話越しの少女の声。

『……もしもし。こちらはブランゼル』

聞き覚えがある声に、絵里の目頭が僅かに熱くなる。
そのまま漏れ出してきそうな嗚咽を噛み殺し、その代わりに叫ぶように電話の向こうの名前を呼ぶ。

「その声………やっぱり、コロナちゃん!」
『………え、絵里さん!?』

やはり、確かに聞き覚えがある声。
思わず叫びが漏れ、そのまま喜びに任せてしまいそうな想いをしかしぐっと堪える。
尚も会話を交わそうとして、しかし電話の向こうから聞こえてきたのは少し話し合うような声と、端末そのものが揺れるような音。
そして、その後に聞こえてきた声は、先程とはうって変わった、しかしやはり聞き覚えのある声。

『………電話を代わらせていただいた。絵里殿か』
「桂さん……!」

何よりも、安心感のある「大人の声」を聞いたことで、更に彼女の心は揺らぐ。
しかし、その前に桂の方から機先を制して語りかけてきた言葉が、まだ彼女を繋ぎ止める。

『まだだ。一応確認をさせてもらわねば、な。
別れの時、銀時が俺に渡した支給品。そのうち、武器のほうはなんだった?』

本人確認。
成りすましでの行動を防ぐ為に、当人たちしか分からない事を聞く。針目縫などの変身能力持ちに騙されない為の処置。先程決めたばかりなのに、もう記憶の彼方にあるように感じてしまう。
問題は、銀時が彼へと渡していた武器。そう、確か、使い方がよく分からないとか何とか言われていた─────


「鎖分銅、だったわよね」
『………よく無事でいてくれた、絵里殿』

正否の代わりに、返ってきたのは安堵を噛み締めたような、そして電話越しでも此方を安心させてくれるような温かみを感じる声。
泣き出しそうになるのを堪えようとして─────しかし、久し振りに信用出来る人間と連絡が取れたことに、限界まで張り詰めていた絵里の心は容易くぐらついた。
安堵の嗚咽が漏れ、涙が否応無く頬を伝う。
言葉をまともに発する事も出来ず崩折れた彼女に、電話の向こう側の桂も一度押し黙る。
しかし、何時までもそうしてはいられない。
時間は有限だ。泣いて落ち着く暇も、今は惜しい。

『……絵里ちゃん。とりあえず、それを夏凜ちゃんに渡してもらって良いかな?』

セルティが、彼女の肩を叩いてその文面を見せる。
大丈夫だ、と反射的に言おうとして、しかしこみ上げる感情に収まりが中々つかないだろうと彼女自身が自覚していた為に、す、と夏凜へと差し出した。

「……電話を代わらせてもらったわ。私は三好夏凜よ」

受け取った夏凜も、絵里から聞いた分だけだが桂の事は知っている。
まずは名乗った上で、情報交換

『……夏凜殿。貴女が、か』
「どうかした?」
『……いや、後で語ろう。ともあれ、まずは互いに情報を共有するべきだろう』


『……なるほど。大まかな事情は把握した』

絵里の身に起こった、地下闘技場での決戦とその後の一件。
夏凜とセルティの身に起こった、放送局付近での様々な事件。
桂とコロナが、絵里たちと別れてから遭遇した出来事。
なるべく手早く、両者はそれらの情報を共有した。

『話を聞く限り、最優先事項は恐らくそのるう子という少女だろうな』

全てを聞いた桂の結論に、夏凜も同意する。
桂たちが発見した、ゲームに関連性がある可能性が大きいアプリゲーム─────その内容が、そっくりそのままWIXOSSと同じであるということが、小湊るう子という存在の重要性を更に高めていた。
だが、それとは別に、合流も視野にいれるべきだろうという意見もあった。
既に人数が減り、まだ生存している人間に対してある程度は危険人物かどうかの目星がつくようになっている。
そんな状況であるならば、将来的に生き残った対主催メンバーで残ったマーダーを迎え撃つという理想的な構図になるべく近付けたい以上、仲間集めと同程度に「信用できる知り合いとの確実な再開」は重要だ。

『こちらは今、映画館にいる。恐らくは分校か、或いは温泉あたりでも合流は可能だが……』
「……さっきも言った通り、こっちはこのまま北に向かいたいわね。るう子の状況が分からないから、変なことに巻き込まれる前にできるだけ早く見つけてあげたい」

合流を早めたいのなら南東へ。るう子の救助を優先するなら北へ。
どちらも捨てがたい選択肢だが、向かう先が完全に異なるというのはやはりどうしようもない問題として浮上する。
どうしたものか、と思う夏凜だが─────そこで、桂がとあることに思い当たる。

『……いや、もしかしたらなんとかなるかもしれない。幸運なことに、アテはある』
「アテ?」
『ああ。ワープ装置……三ヶ所の学校に、それぞれを繋いでいる転移機能が備わっているようでな』

手短に説明されたその内容は、確かに効率良く集合する事に適していた。
三つの学校を繋ぐそれは、ちょうど夏凜たちが北に向かった先である音乃木坂学園と、桂たちの進行方向上にある旭丘分校を繋いでいることとなる。
このまま北に行き、アザゼルか自分たちがうまくるう子を発見し、その上で合流まで果たせたとすれば、目標は果たせたこととなる。
今後の話になってから隣で話を聞いていたセルティに視線で同意を仰げば、彼女も文句はないとばかりにヘルメットを縦に振っていた。

「……じゃあ、それでいいわね?」
『ああ。細かい場所集合は……やはり、音乃木坂学園かその周辺の施設、となるだろうな』
「分かったわ。そう伝えておく」
『頼んだ。皐月殿たちには私たちから連絡をしてみる』

これで、方針も決まった。
わずかな時間ではあるが、得たものは大きい。
今後の方針だけではない。様々な情報、そして何より信頼できる人間の生存。
恐らくは、今後の戦いにおいてもとても重要なものになるはずだ。

「……あ、それと」

最後に、と。
夏凜がもうひとつ、言葉を付け加える。

「温泉街に、絵里さんと同じ制服の死体があるかもしれない、て言ってたから……もし、余裕があれば」

映画館の北側が禁止エリアで封じられた今、分校に向かうには山の中を突っ切るか南側の道路を伝っていくのが最良。
そのうちの後者のルートならば、確かに足を伸ばせない場所ではない。

『……わかった。ルートにもよるが、考慮しておこう。
それでは、そちらの幸運を祈る。……それと、こちらからも一つ』

深呼吸のような音が一つ聞こえたかと思うと、電話越しにも感じ取れる、深い─────言いようのない複雑な感情が込められた言葉が耳に届いた。

『絵里殿に、伝えておいてくれ。最後まで銀時の隣にいてくれたこと、感謝する、と』
「……ええ、わかったわ」

その会話を最後に、通話は途切れた。


映画館の中、端末を握ったまま立ち尽くす人影が一つ。
絢瀬絵里からの通話を終えた桂小太郎は、何かを思案するように顎に手を当てていた。
深く考え込んでいた彼だったが、同行者が此方に戻ってくる音で顔を上げる。

「落ち着いたか、コロナ殿」
「はい、なんとか………すいません、安心しちゃって」

コロナから桂に電話が代わった後、コロナもまた再会の感動で泣き腫らしていた。
途中までは桂が落ち着くようにと手を握っていたが、途中からは自分で手水場に向かい、顔を洗うなどして幾らか落ち着きを取り戻していた。

「絵里殿もコロナ殿も、平和な世に生きる身だ。こんな場所で、安心できるような事があるのなら泣く事は何も恥ずべきではない」

その言葉に、先程のラビットハウスでの一件を思い出したのか、コロナの顔が少し赤くなる。
慌ててそれを隠すように、彼女は話題を探すかのように目を泳がせ─────そして、はたと話題が思いついたように口を開いた。

「でも、夏凜さんと合流できてたみたいなのは朗報ですね」

そう言いながら、コロナが取り出したのは一枚の黒カード。
ラビットハウスに残っていた、勇者部五箇条のポスター。くしゃくしゃになってはいるものの、極力修復がされ、眺めるには問題ない程度の状態で残っていた。

「勝手にとってきちゃいましたけど……夏凜さんにあげれば、喜んでくれるでしょうか」

これを渡すべきは、今となっては恐らくは唯一生き残った勇者部のメンバーである夏凜のみだろう。
複製の可能性も大きいが、それでも思い出の品ではある筈だ。本人の手元にあった方が良い、というより彼女が持つべきものだろう、とコロナは思う。
だが、それに対して桂は渋い顔を向ける。

「……いや。それは、止めておいた方が良いかもしれん」
「え?」

想像もしていなかった言葉に、コロナは疑問符を浮かべる。
そう思うコロナの言葉も尤もなのだが─────しかし、桂の脳裏にはどうしても、先程の一つの声がちらついて仕方がなかった。

(取り越し苦労である事を、祈りたいのだがな─────)

友奈と風の事を切り出した時の、夏凜の声。
友が死んだにしては、あまりにも平坦過ぎる声。
どこか壊れてしまったかのようなその声を思いだし─────しかし、今彼に何ができるというわけでもないのもまた事実。
首を振って余計な思考ごと振り払い、再び端末を取り出す。

「……ともあれ、コロナ殿。まずは皐月殿とれんげ殿に連絡を取らなければな」

そう言いながら再び端末の黒カードを取り出して、皐月への連絡をしようとする。
まずはそちらと合流、そして─────恐らく、そこが一つの決戦になる可能性が大きい。
電話帳を開く前に、桂はちらりとチャットルームを覗く。
『5番目のD』─────DIOを呼び出した存在もまた、地下闘技場にいる可能性が高い。
もしもあの男が乗ったなら、決して闘技場から遠い場所ではない音乃木坂学園にいる自分たちと遭遇する可能性は軽視できないものとなる。
先程、彼女たちにも極力避けて通るよう忠告はした。本来なら皐月やれんげと合流した上で迎えに行きたい程だが、そうなれば今度はるう子という少女がDIOと遭遇する可能性も同時に上昇する。
結局、最良の判断としてはなるべく早く合流するというそれしかない。

(……これも、取り越し苦労であってくれれば良いのだがな)

未だに、無力感は拭えぬまま─────それでも、人間である以上は一歩ずつ進むしかない。
先の見えない暗闇に、それでも光を切り開かんとばかりに、桂はその目を細めていた。


【G-7/ラビットハウス周辺/夜】

【桂小太郎@銀魂】
[状態]:胴体にダメージ(小) 、勇者に変身中
[服装]:いつも通りの袴姿
[装備]:風or樹のスマートフォン@結城友奈は勇者である
    晴嵐@魔法少女リリカルなのはVivid
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(17/20)、青カード(17/20)
    黒カード:鎖分銅@ラブライブ!、鎮痛剤(錠剤。残り10分の9)、抗生物質(軟膏。残り10分の9)
    長谷川泰三の白カード
[思考・行動]
基本方針:繭を倒し、殺し合いを終結させる
1:皐月や他の参加者と合流しつつ分校に向かい、ワープ装置で北西の島に飛び絵里たちとも合流。
2:コロナと行動。
3:神威、並びに殺し合いに乗った参加者や危険人物へはその都度適切な対処をしていく。
  殺し合いの進行がなされないと判断できれば交渉も視野に入れる。用心はする。
4:スマホアプリWIXOSSのゲームをクリアできる人材、及びWIXOSSについての(主にクロ)情報を入手したい。
5:金髪の女(セイバー)に警戒
[備考]
※【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※勇者に変身した場合は風か樹の勇者服を模した羽織を着用します。他に外見に変化はありません。
 変身の際の花弁は不定形です。強化の度合いはコロナと比べ低めです。


【コロナ・ティミル@魔法少女リリカルなのはVivid】
[状態]:胴体にダメージ(小) 、勇者に変身中、悲しみ
[服装]:制服
[装備]:友奈のスマートフォン@結城友奈は勇者である
    ブランゼル@魔法少女リリカルなのはVivid 、
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(16/20)、青カード(17/20)
     黒カード:トランシーバー(B)@現実、勇者部五箇条ポスター@結城友奈は勇者である
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを終わらせたい。
1:桂さんと行動。
2:桂さんのフォローをする
3:金髪の女の人(セイバー)へ警戒
[備考]
※参戦時期は少なくともアインハルト戦終了以後です。
※【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※勇者に変身した場合は友奈の勇者服が紺色に変化したものを着用します。
 髪の色と変身の際の桜の花弁が薄緑に変化します。魔力と魔法技術は強化されません


絵里が戻ってくると、既に通話は終わっていた。
できれば、もう少し言葉を聞きたかった─────そう思いかけるも、己の頬を手で張って甘えたくなる気持ちを抑える。
ただでさえ、泣くことでわざわざ夏凜に話を代わってもらうことになったのだ。これ以上頼るわけにはいかない。

「……とりあえず、聞いたことを纏めるわ」

電話が終わった、ということで、まず夏凜が話したのは今後の方針について。
るう子を探しつつ北上、その後ワープ装置によって合流。その方針に、絵里も異論を抱くことはない。

「集合するのは、その近く……駅か、地下闘技場になると思う、けど」
『地下闘技場は、危険である可能性が少なくないな。DIOがいる可能性がある』

セルティの言葉に、二人も頷く。
チャットルームに増えていた書き込みのひとつ─────『一番目のM』、そして『五番目のD』へと向けられたその言葉。
もしDIOがこれに応じたとすれば、地下闘技場はかなりリスキーな場所となる。

(アザゼルのヤツがちゃんと交渉を成立させていたら、少しは安心できるんだがな……)

夏凜がいる手前敢えてPDAには書かず、こっそりと心の中で呟く。
真っ向からぶつかっても勝ち目がないというのは、罪歌の能力を使用した杏里やそれ以上の実力者が束になって尚圧倒されたという絵里の言葉から分かっている。
杏里のことを許す気はないが、かといって無謀に復讐を企んでも意味はない。少なくとも、まともに勝負をすることになるという状況だけは避けたいところだ。
そんなことをセルティが考えている合間に、夏凜から絵里への方針説明は粗方終わっていた。

「方針については、大体こんな感じね。次は……向こうであったことも聞いたわ」

その言葉で、セルティも思案を一旦止めて夏凜の方を向く。
それは絵里だけでなく、セルティも聞いていなかった話だ。有益な情報があれば、共有しておくに限る。
二者の視線を受けながら、思い返すように顎に手を当てつつ夏凜が語り出す。

「あなたたちと別れた後、金髪の女と遭遇したって。風とは別人のね。その時は特に交戦は無かったけど、危険人物の可能性は高い……なんでも、DIOと組んでる可能性があるらしいって」

その一言で、絵里の心中が一瞬で張り詰める。
あのDIOの協力者、となれば、此方を害する事に何の躊躇いも無いだろうというのは容易に想像できてしまう。
少女の実力や能力などは分からないが、確かに細心の注意を払う必要があるはずだ─────と、絵里は心に留める。

『……そうなると、このDが二回目にチャットで発言したこれは』

セルティが指し示したのは、やはりチャットルームの書き込み。
誰かに対して約束をしていたことが窺えるそれと今の話を照らし合わせれば、金髪の少女という協力者の存在はほぼ確かだと言っていいだろう。
当の本人であるセイバーは既に激戦の末命を落としていたのだが、それを知る由は現段階の彼女たちにはない。

「それで、その後は……っと、そう。その後はショッピングモールに向かって、そこで─────風と会ったって」

そして、続いたその言葉に、セルティと絵里がしまったという表情をする。
そこから先、何があったのか─────それを彼女に語らせるのは、あまりにも残酷だ。
「友奈の端末をコロナたちが持っている」という事実から、友奈や風の死を彼らが見届けたというのは明らかだったというのに─────それに気づくのが、遅かった。
セルティが、夏凜の言葉を遮ろうと、止めようと手を伸ばそうとする。



─────しかし。



「風と戦ってる間に友奈が来て、その後すぐに二人は外に出て……で、何かいざこざがあった後、少し遅れて追いかけてたけど、その時はもう二人とも死んでたらしいわ」


─────その言葉の内容に、問題があったわけではない。
絵里もセルティも放送を聞いていたのだから、その二人の死は知っている。
だから、それを聞いたことで、彼女たちは夏凜を

問題は。
セルティと絵里が、夏凜の言葉を止めようとした二人が、そのまま固まってしまったほどの、違和感は。
その、友達が死んだという、ショッキングな内容を語っているはずの夏凜が。
この言葉で、最もダメージを受けているはずの夏凜が。
「何一つ口調を変えることなく」、「その前後の内容と同じように」、まるで─────まるで、「他人事のように」。
無感情ですらない、平坦な口調で、あっさりとそれを告げたこと。

「……その後、もっと見て回れる範囲を広くしようっていうことで、二人ずつ二組に分かれて行動することになったらしいわ。今桂さんたちは映画館で、鬼龍院さんたちは分校か城のあたりにいるんじゃないか、って」

そこまで言い終えて、夏凜はようやく他の二人が、自分を変なものでも見るかのような視線に気づく。

「……私、何か変なこと言った?」

自然な言葉。
先程のものとはうって代わって、本来込められるべき感情をきちんと込められている言葉。
不自然な態度を取る自分たちに、当然のように疑問を抱き、此方へとかけた言葉。
そこに違和感は無く、裏表も無く、単純明快な疑問のみがそこにある。

「何か、って………」

だからこそ、わからないと絵里は思う。
三好夏凜が先程告げた、他人事のように死を告げた言葉が、どうしても異質で奇妙なものであるように思えて。
友奈と風の事を告げた時の、あの言葉が─────おかしいとしか、思えない。

「……どうしたのよ、絢瀬さん」

そして、同時に。
絵里の中で、激しい感情が徐々に起こりつつあるのを、彼女自身が感じていた。
彼女自身でも理解しきれていない感情が、表層に浮き出てくるのを感じる。
夏凜が絵里へと声をかけたのも、きっとそれが態度に現れているから。

「………どうして」

そして。
その感情が、導くままに。
それを問わなければ、彼女の中の何かが壊れてしまいそうな焦燥感が導くままに。
ぽつり、と。
綾瀬絵里は、それを口にする。

「どうして、あなたはそんなに……友達が死んだのに、平気な顔でいられるの?」



「─────そんなこと」



帰ってきたのは。
やはり、他人事のように。
興味のない世間話を交わすように、彼女は気迫な感情のみを込めた言葉を紡ぎ続ける。
そこに情動はなく、さりとて感情の触れ幅を意識して消しているでもなく。
本当に、ただ、淡々と。
どうでもいいことを、述べるように。

「─────そんなこと、今はどうだって良いじゃない」

言い放たれた、そんな言葉。
そして、それは更に、絵里の激情に火を灯す。

「─────どうだって良くなんて、ないじゃない」

語気が強くなるのを、自分自身でも感じる。
目も自然と睨み付けるように鋭くなり、拳を握る力が強くなる。

「でも今は、そんなことを言っている場合じゃないでしょ?」

けれど。
それでもやはり、夏凜の声は変わらない。

「私たちは、悲しむより、進まなきゃ」

そして、その表情を僅かに引き締めて。
己を縛り付けるかのように、顔をひきつらせて。



「だって私は、勇者だから」

─────勇者。
その言葉を聞いた時、絵里の脳裏に過ったのは、本能字学園での記憶。
自分たちを守るように立ち塞がる少女が、安心させるように言った言葉。
人を守る為に、大切なものを無くさないようにと、戦う存在を表す言葉。

─────そんな言葉を、彼女は大切なものから■■る為に使っている。

「─────ふざけないで!」

口から飛び出した言葉は、自分でも想像しなかった程に大きく響き渡った。

それに対して、夏凜が初めてその感情を揺らがせる。
Mあるで、己が進む道を遮られたかのように。

「そんな事より、今はこの後の事を考えなきゃいけないでしょ?るう子だって助けないといけないじゃない!」

尚も切り捨てながら、しかしその言葉に込められた響きは、強められた語気の向かう先は、確かな小湊るう子への心配で。
それが、絵里の心を殊更に掻き乱す。
現実逃避ではない。
かといって、現実に正面から向き合っているわけでは無い。
「勇者部」という存在に対してだけ、夏凜は思考を放棄している。


「─────それでも、友達が死んだことを、そんなことなんて言う理由にはならないじゃない!」


─────絢瀬絵里には、それが許せない。
何が許せないのか明確に言語化出来ぬまま、しかし間違っているという確かな想いの下に叫ぶ。

彼女がそれに気づけないのは、偏にそれが彼女を縛る呪いであると、彼女自身が気付いていないから。
逃げたい、とか、辛い、とか、そういう泣き言なら幾らでも言えるけれど。
彼女は、無意識にその全てを背負った上で歩んでいくと決めた。決めてしまった。
それこそが「呪い」。絢瀬絵里を縛る、彼女の心が引き千切れようと彼女を牽引していく奴隷の首輪。
そして、それを背負ったからこそ。
自分が背負うと決めた、一時の友人に対して。
「自分よりも、もっと彼女のことを背負うべき」である、仲間である少女が。
自分の目の前で、背負うことを放棄していた、とするまらば─────それが、絢瀬絵里が叫ばずにはいられなかった理由。
彼女は、未だそれに区付くことはなく。
しかし、それに駆られるままに─────彼女は、叫び続けていた。


(……何を、そんなに怒ってるんだろう)

そして。
対する夏凜は、そもそも絵里がここまで突っ掛かってくる理由を「理解していない」。
絵里が激昂した理由も、そもそも何に激昂したのかさえも。
ただ、彼女が言うには、自分は仲間の死に対して白状だ、とかそういう事を訴えてきている。
彼女からすれば、ただ、今はそれをするべきではない、と思っているだけなのに。

(……勇者部の皆。友奈、風、樹、東郷……)

試しに、一人一人の顔を、彼女の脳裏に順繰りに浮かぶ。
勿論のことすぐに浮かんだその顔に、しかし彼女は違和感を抱く。
何故だか皆、此方を見ていない。
こちらとは反対側を向いているところしか、彼女の脳裏には浮かばない。
改めて、その表情自体を思い出そうとして─────そこで、彼女の中で一つの警鐘が鳴った。
何故だか、これ以上思い浮かべることは、絶対にダメであると思えてしまう。
具体的な理由はわからぬまま、しかしただそれだけを叫び続ける脳内を、夏凜は無理矢理シャットダウンさせる。

(……止めた。やっぱり、今そんなことを考えてる場合じゃないもの。)

─────そして、結局はそこに終止する。
勇者部という彼女の居場所に背を向けて────否、向けずにはいられなくて。
最後の、もうひとつの彼女の寄る辺─────勇者という肩書きに恥じぬものとして。
そう、だから私は──────勇者として、振る舞い続けなければならない。
それでいい、と、彼女は信じて動く。
最早、今の彼女自身にとって、彼女の存在を許してくれるものはもうそれしか残っていないのだから。


─────彼女の根底にあるのは、結局のところ勇者部への罪悪感だ。
そもそも、この世界に呼ばれる直前の時点で、夏凜は満開の後遺症とそれに関する嘆きを叫ぶ風と相対したばかりだった。
大赦への、そして己への憎悪にただ猛り狂う風に対して、夏凜は何も言う事が出来なかった。
それは、己だけ満開せず、治らない障害を負ってはいないことと同時に、「自分は大赦に属する勇者である」という自負が存在したから。
何せ、風の暴走に最初に対処出来たのも、彼女が大赦に風を見張るよう命令されたからでもあった為に、その縛りは強固なものとなっていた。
その縛りは、本来ならその直後に、自身が大赦の道具に過ぎないのだと東郷に断じられる事で吹っ切れる筈のものだったけれど─────少なくともこの彼女は、それを言われる前にこの殺し合いへと呼ばれていた。
そして、この殺し合いの最中においても尚。
東郷美森が先走り、マーダーとなった理由はきっと、勇者部のみんなの為なのだろうと。
そして、そんな彼女を止められなかった夏凜は、更に責任を負い。
極め付けに、犬吠埼樹の死を笑われたが故に激情に駆られ、取り返しのつかない罪を犯しかけたことを最後に─────彼女自身が、自分が「勇者部の一員」として戦う事に耐えられなくなった。
何も出来ない、仲間を救うどころか、自分は重荷にしかならない。
だから、彼女は勇者部である、少女としての三好夏凜を捨てた。
自身には、その資格なんてありはしない、と、そう己自身で断じて。

─────ここで、重要な事実がひとつ存在する。
三好夏凜という少女の生涯にわたって─────普通の少女としての振る舞いを許したのは、勇者部とそれに付随するものだけである、という事実が。
勇者部に入るまでの彼女の人生は、常に優秀な兄と比較され続けるものだった。

そんな彼女を、初めて無条件で迎えてくれた存在。
それが、彼女にとっての勇者部であり。
逆に言えば─────彼女以外の勇者部がいなくなり、彼女自身もそこから目を背けた今、「彼女を無条件で受け入れてくれるもの」なんて、彼女には既に存在していない。
彼女は既に、戻りつつあった。
勇者でなければ、己の存在価値はないと思い込んでいる─────勇者部に入る前の思考に。

或いは。
或いは、絢瀬絵里と東條希の二人の間に起こった出来事を彼女が知っていれば、結論は少しは違ったかもしれない。
少なくとも、白状であるという言葉に関して、もう少しは思うところもあっただろうが─────セルティと絵里が、絵里に無理に思い起こさせない為に肝心なところをぼかした上で伝えていたのが、この場に限っては裏目に出ていた。

ともあれ。

「でも─────」

それに忠実に、三好夏凜は繰り返すだけだ。
彼女の、壊れかけた論理に基づく逃避を。

「私は勇者だから──────そんなことで、立ち止まってちゃ、ダメだから」



──────その言葉で。
まるで、友を悼むことが、それを背負うことが、停滞だと言わんばかりのその言葉で。
その言葉は、絵里にとっての、琴線だった。

「いい加減に─────」

ほぼ、無意識に。
彼女は、右腕を高く振り上げ、それを彼女の頬目掛けて降り下ろし─────




(どうする)

ただ一人。
セルティ・ストゥルルソンだけが、冷静に状況を見ていた。

彼女とて、夏凜の言葉に思うところが無かった訳ではない。
いや、寧ろ、己の中の違和感に対しては絵里よりも確証を持っていた。
何故なら、彼女は「こう」なる前の三好夏凜を知っていたから。
友を想い、確かに勇者としての振る舞いを見せる彼女の姿を知っていたが故に、夏凜の今さっきの言葉には明確に違和感を感じとっていた。

(いや─────)

違う。
そもそも、言われてみればそれより前にも確かに違和感はあった。
自分が放送局を出る前と帰ってきた後で、明確におかしいと感じられる点が。
それはアザゼルに対して、東郷のものという端末を渡した時だ。
仮にも、三好夏凜にとって、アザゼルは東郷美森の仇である。
彼女がマーダーとして動き、何人かの人間を既にその手に掛けていたとして、その思いを胸に封じたとしても─────それでも、仇に対してそれを託した事に、違和感を感じずにはいられない。
連絡をするだけなら、電話であろうとメールであろうとタブレットでも事足りるのも確かであるこの状況で、わざわざ渡すだろうか。
或いは、また別の、思うところが彼女にあったという可能性もある。
だが、そんな都合があったと考えるより、今のこの状況とそれを照らし合わせた方が整合性が取れる。
即ち。

(夏凜ちゃんが、勇者部を捨てた─────?)

捨てた、という表現がどこまで的を射ているかは分からないが、ともあれそれに類するものではないか、とセルティは推察した。
勇者部、と限定したのは、彼女が人を想えないような人間ではなくなった、と断ずることは出来そうになかったから。
先の、るう子をおざなりにして、結果危険に巻き込んだというただそれだけに対してあそこまで激昂した夏凜の姿は、他人に対して極度に冷淡になったような人間のそれとは思えない。
友奈と風、そして東郷。この三者のみに他人事のような態度を取るというのが現状で確定している以上、その三人、或いは犬吠埼樹も含めた四人に対してそのような態度をとったと思えば納得できる。
……だが、そこまで絞り混んだところで、明確な解決策が用意できるわけではない。
仮に勇者部の誰かが生きていたとするならその誰かに説得してもらえばいいのだろうが、それがもういないからこその態度とも考えられる以上どうしようもない。
どうするべきか─────それを思案していたセルティだったが、そんな彼女の必死の思考を嘲笑うように二人の口論は激化していき。
そして、絵里が遂に手を上げかけた。

(─────マズい!)

咄嗟に、セルティは駆け出す。
口論している内は何とかなる。だが、今ここで手が出てしまうと、恐らくはその対立が明確になってしまう。
一度スッキリすればどうなる、だとか、そういうストレスからくる喧嘩などとは文字通り訳が違うのだ。
思わず駆け寄り、両者の間に立ちふさがってそれを止めようとする。
夏凜が勇者に変身している訳でも、どちらかが凶器を持っている訳でもない以上、影をあえて使う必要はない。セルティ自身の力で止められる─────そう思っての、物理的な仲裁。

けれど。
絵里の、全力とはいかないまでも八割程度の力が篭った咄嗟の平手が、ヘルメットに当たる可能性を、駆け出す直前まで別のことに思考を費やしていたセルティは失念していた。
そして同時に、絵里が緑子のデッキを所持していたことで、アーツ「」が自動的に発動していたこと。
そのアーツが乗った状態での攻撃が、人間に致命的なダメージをを与えるには到底足りないものの─────軽いものを吹き飛ばすには、十分に足りる程度であったことが、彼女の計算には入っておらず。

だから。
絢瀬絵里の手が思いきりヘルメットに衝突し、それが吹き飛んでしまい─────その下を露出させることとなる、という結果を、彼女は想定もしていなかった。。

カラン、と。
乾いた音が、響いた。



カラン、と。
乾いた音が、響いた。

「…………あ………」

地面に落ちたヘルメットを見て、絵里が声にならない声を出す。
そして、そのまま首がないままに立ち尽くすそれを見て─────彼女は腰が抜け、へたりと座り込む。
夏凜もまた、何も言うことが出来ない。
頭部が吹き飛ばされた、という事実を咀嚼し、激しい同様に襲われかけ─────しかし、すぐに違う疑問が湧き上がる。
変身すらしていない、何の特殊能力を持っている訳でもない。それなのに、その程度の少女の攻撃が当たったからで人間の首が飛ぶだろうか?
絵里もまた、同様の疑問を浮かべ─────それと同時に、少し遅れて実感する実際に手に残った感触、手応えのない感覚。それらが彼女を混乱させ、

そして。
首の無くなったセルティが動いた瞬間、夏凜は変身して詰め寄る。

「アンタ、何……!?」

油断なくセルティへと剣を突きつけ、文字通り訳のわからないモノを見る目でセルティを睨みつける。
一方の絵里はといえば、腰が抜けたまま立ち上がることも出来ずへたりこんでいる。
そんな両者に対し、セルティは改めてPDAを取り出して文字を打ち込むと、その画面を向ける。

『………驚かせてすまない。見ての通り、私は首が無くてね……だから、こうして文字を打ってコミュニケーションを取らせてもらっていたんだ』
「…………」

夏凜は無言。
絵里もまた、無言。こちらはどちらかと言えば、何か言おうにもまともな言葉が紡げないというのもあるが。
張り詰めた空気が流れる中で、尚もセルティは文字を打ち込む。

『別にとって食おうって訳じゃないし、あのヘルメットも出来るだけ恐がらせないようにと思って着けていたんだ。私は、あくまで君たちを不意に驚かせたくは無かった、それだけだ』

実のところ。
両者共に、彼女の存在そのものは受け入れてはいた。
しかし、絵里にとっては元々そういったものに対する恐怖心が大きい為に、夏凜にとってはそれを受け入れる最大の要因たる悪魔の態度故に、警戒は未だ解かれた訳ではなく。
そして、それに対して、セルティが出来るのはただ心境を語ることのみ。
幸い、と言うべきでも無いだろうが、後ろ暗いとまで言える事は無い。正直に誠心誠意話すことで、通じない相手ではないというのもなんとなくは分かっている。であるならば、ひとまずはそれを信じるのみだ。
それに。

『信用してくれ、とは言わない。だけど、それよりも先に、君たち二人は一度言い合いを止めてくれないか』

その言葉に、両者が止まったのを、セルティは見逃さない。
上手く行けば、この場を丸く収めきれる。先送りにすぎないが、ここでずっと諍いを繰り返していてはどうにもならない。

『お互いに、きっと思うところは一杯あるんだろう。それは私にも分かっている。だけど、今はそれよりもるう子ちゃんの捜索とか、する事はたくさんあるんだ』

卑怯な言い草だという事は、セルティ自身も自覚している。
そもそも論点をずらした上で、納得させる為に言葉を並べているのだ。信用出来ないと言われる可能性はある。
しかし、それでも─────何もしなければ、ここで宙ぶらりんになってしまう可能性が大きい。それは、出来る事なら避けたい事態だ。

『仲間割れをしてる場合じゃないってのは分かってると思うし、それでも言っておかないと気が済まないのかもしれない。……でも、やっぱりそれを私が見過ごす訳にはいかないってのも分かってほしい』

そこで、一度PDAに文字を打ち込む手を止める。
夏凜と絵里の方に視線を向けると、未だに表情には懐疑が浮かんでいる─────が、先に比べれば幾らかはましになった、と思う。
祈るような思いで、セルティは返答を待つ。

「……私は、信じるわ」

先にそう呟いたのは、夏凜だった。
接した時間の長さ、そして東郷の死の時に自分の代わりにアザゼルに突っかかった姿。
それは、外見とは関係なく、確かな信用に値する姿だ、と彼女は判断した。
そして。

「私も」

絵里にとっても、彼女は親身になって接してくれた存在だった。
人ならざるモノであっても人間の味方ではある存在として、鮮血という前例があった事も含め。
元々から恐怖心があった霊的なものという事情のために、幾らか夏凜より時間を擁したが─────それでも、信用しない理由にはならない。

「……夏凜ちゃんにも。私、熱くなりすぎてたみたい。……ごめん」
「……うん」

和解─────だろうか。
少なくとも、絵里の様子は先程に比べれば大分マシになっていた。
夏凜も、抱え込んだものが解消された訳では無いが、そちらは恐らく勇者部の話題さえ出さなければ爆発する事は無いだろう。

「……でも」


─────ダメか。
セルティが身構える。
また口論が始まるようなら、セルティにはどうしようもない。最悪の場合、影を使う事も視野に入れるべきか。
そんな思案をしていたセルティと、首を傾げた夏凜に対し、絵里は気まずそうな顔でそれを告げた。

「……それはそれとして、腰が抜けちゃって立てない………」

─────絵里が苦手な、所謂幽霊が目の前に現れたとあっては。
それが頼りになる存在だったと改めて確認出来たとしても、腰砕けになった分の衝撃を取り戻すには足りず。
夏凜が差し伸べた手を取って、ようやく絵里は立ち上がったのだった。




ひとまず、衝突による仲間割れは防げた事に、セルティは心の底から安堵する。
作戦であった訳ではないが、自身の正体を明かす事が結果的にプラスになったのではないか、と思うと、うまいこと幸運が味方してくれた。
これで、少なくとも今すぐにチームが分裂してしまうという事は避けられた筈だ。
しかし。

(結局のところ、問題を先延ばしにしただけだな……)

結局のところ、夏凜、そしてもしかしたら絵里も。両者が抱えている、何らかの問題が解決した訳ではない。
放置しておけば、必ずまたどこかで同様の言い争いが起こる可能性がある。

(夏凜ちゃんの地雷が勇者部だって分かってるだけでも救いかな……)

夏凜の場合、明確に「勇者部」のメンバーだけが地雷である可能性が大きい。
そして、夏凜があの状態にならなければ、絵里もわざわざ突っかかる事は無い筈だ。

(……本当は、解決できれば良いのだが)

セルティには、こうした少女たちの機微をケアするだけの技量はない。
いや、むしろこの会場全体を見回しても、他人を完璧にケアできるような余裕を持った人間などいないだろう。
脳裏にとある黒コートの人間が思い浮かんだが、彼はもう死んでいるし、仮に生きていたとしてもこの状況で頼りたいと思うような人間ではないから除外するにしても。
しかし、ならばこのまま放置できるかといえば、やはりそれにも一抹の不安を感じる。
埋まっている地雷など、場所がわかっていたとしても何らかの事故で踏んでしまう可能性は十分にあるのだから。

(もし─────私じゃなかったら、分かるのか─────?)

ふと、そんなことを思う。
デュラハンとして、気付いた時にはこの世を彷徨っていたような存在。
それまで深く物を考える事もなく、首を無くし、それを探し始めて、あの街に辿り着いて─────岸谷森羅と一緒に暮らして。
そうして、色んな「人間」に触れる事で人間性を獲得した自分だから。
あの少女たちの抱える本当の問題が何か、それすらも分からないのか。

(─────森羅。私はどうすればいいんだと思う……?)

自分に口があれば、きっと溜息混じりに呟いていただろう質問。
空気を震わせる事が無く、ただ虚空に消えただけのそんな質問にも、心を覗いているかの如く察して答えをくれる人間は、此処には居なかった。



【D-1/放送局跡付近/一日目・夜中】

【セルティ・ストゥルルソン@デュラララ!!】
[状態]:健康、精神的疲労(小)、罪悪感(中)
[服装]:普段通り
[装備]:V‐MAX@Fate/Zero、ヘルメット@現地調達 、PDA@デュラララ!!
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:カードキー(使用可)、イングラムM10(32/32)@現実
         ジャック・ハンマー御用達薬品セット(精神安定剤抜き)、精神安定剤2回分     
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を狙う
0: 南ことりの腕輪を回収後、アザゼルと連絡を取りつつ北方でるう子達を捜索する。
1: 絵里、夏凜をサポートする。
2:静雄との合流。
4:縫い目(針目縫)はいずれどうにかする。
5:杏里ちゃんを殺したのはDIO……
6:静雄、一体何をやっているんだ……?

[備考]
※制限により、スーツの耐久力が微量ではありますが低下しています。
 少なくとも、弾丸程度では大きなダメージにはなりません。
※三好夏凜、アインハルト・ストラトス、アザゼル、絢瀬絵里と情報交換しました。


【絢瀬絵里@ラブライブ!】
[状態]:精神的疲労(大、精神安定剤服用)、髪下し状態、精神的ショックからの寒気(小)
[服装]:音ノ木坂学院の制服
[装備]:無毀なる湖光@Fate/Zero、 グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS
    セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはVivid 、宮内ひかげの携帯電話@のんのんびより    
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(70/85)、青カード(66/85)、最高級うどん玉
    黒カード:エリザベス変身セット@銀魂、ベレッタM92&ベレッタ92予備弾倉@現実、 タブレットPC@現実、トランシーバーA@現実
         盗聴器@現実、ヴィマーナ@Fate/Zero(使用可能)、セルティのヘルメット@デュラララ、メルセデス・ベンツ@現実                   
         具@のんのんびより、こまぐるみ(お正月バージョン)@のんのんびより、ブレスレット@Fate/Zero、
         黄長瀬紬の装備セット@キルラキル、狸の着ぐるみ@のんのんびより、小型テレビ@現実
         カイザルの剣@神撃のバハムート GENESIS、ライターー@現実、ビームサーベル@銀魂
         不明支給品:0~1(千夜)、0~1(晶)
    白カード:坂田銀時、本部以蔵、ファバロ・リオーネ、東條希、宇治松千夜、神代小蒔
[思考・行動]
基本方針:皆で脱出。
0:夏凜ちゃん…?
1:北に向かいるう子を探す。
2:自分の手持ちのカードの分配を考える。
 [備考]
※参戦時期は2期1話の第二回ラブライブ開催を知る前。
※アザゼル、、セルティ、三好夏凜、緑子と情報交換しました。
※多元世界についてなんとなくですが、理解しました。
※左肩の怪我は骨は既に治癒しており、今は若干痛い程度になっています。行動に支障はありません。
※セルティがデュラハンであることを知りました。

【三好夏凜@結城友奈は勇者である】
[状態]: 精神的疲労(大、精神安定剤服用)疲労(中)、顔にダメージ(小)、左顔面が腫れている、胴体にダメージ(小)、罪悪感(大)
    満開ゲージ:0、左目の視力を『散華』、「勇者」であろうとする意志(半ば現実逃避)、肉体的ダメージはアヴァロンで回復中、顔に泣きはらした跡、「勇者部」からの逃避
[服装]:普段通り
[装備]:にぼし(ひと袋)、夏凜のスマートフォン@結城友奈は勇者である、全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero     
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(26/30)、青カード(25/30)
    黒カード:不明支給品0~1(紗路、確認済み)、不明支給品1(アインハルト)、不明支給品0~2(池田)、スクーター@現実、

    白カード:東郷美森、アインハルト・ストラトス
[思考・行動]
基本方針:繭を倒して、元の世界に帰る。
0:るう子を救助する。
1:『勇者として』行動する。
2:セルティらのサポートをする。
3:ダメージから回復したら全て遠き理想郷(アヴァロン)を返却する。
4:勇者部については……今は考えない。それでいい、はず。
[備考]
※参戦時期は9話終了時からです。
※夢限少女になれる条件を満たしたセレクターには、何らかの適性があるのではないかとの考えてを強めています。
※夏凛の勇者スマホは他の勇者スマホとの通信機能が全て使えなくなっています。
 ただし他の電話やパソコンなどの通信機器に関しては制限されていません。
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという情報(大嘘)を知りました。
※セルティ、ホル・ホース、アザゼル、絢瀬絵里、緑子と情報交換しました。

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189:何の為にこの手は 桂小太郎 199:黒き呪縛は灰色の祝福]
189:何の為にこの手は コロナ・ティミル 199:黒き呪縛は灰色の祝福
194:New Game セルティ・ストゥルルソン :[[]]
194:New Game 絢瀬絵里 :[[]]
194:New Game 三好夏凛 :[[]]