あなたの死を望みます。 ◆DGGi/wycYo

M:『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』

Y:『私、結城友奈は放送局に向かっています!』

R:『義輝と覇王へ。フルール・ド・ラパンとタマはティッピーの小屋へ』


「……」

――『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』
――『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』
――『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』

――『M』


「………………」


✻  ✻  ✻


「ぅ……ん……?」

右目を照らす眩しい光で覚醒した少女は、まず自分が仰向けに寝かされていること、そして両手両足を縛られていることに気が付いた。口は……塞がれて居ない。
次に判ったのは、ここが畳の上だということ。
最後に視認したのは……東郷美森と、浦添伊緒奈――ウリスが同じ空間にいたこと。

「おはよう、小湊るう子」

ウリスの手には、レーザーポインターが握られている。
そうか、私は――。

「迂闊に叫んだりすると、殺しはしないけど痛い目を見るわよ」
「……二、三、質問があります」

ため息を吐いた東郷が、ウリスに代わって話し始めた。
車椅子の彼女はその膝にノートパソコンをのせていた。恐らく、持っていたカードは全て奪われたのだろう。
腹巻だけは見逃してくれたようだが、時間の問題かも知れない。

「あなたがチャットに書き込んでいたと思われる内容について、詳しく聞かせてもらいます。
それも含めて、ここまでの動向を全て。答えない場合や嘘を吐いた場合は――」
「あまり好きじゃないけど、手足に刺したっていいのよ」

とっくに乾いている血の付いたボールペン片手に、ウリスが笑う。
どう考えてもこれは質問ではなくて尋問、いや拷問なのだが、打つ手の無い今、素直に答えるのが懸命だろう。
二人を刺激しないよう、るう子は慎重に話した。

神社を出たあとは、“フルール・ド・ラパン”つまり先程亡くなった桐間紗路と遭遇、続いて“義輝”三好夏凜、“覇王”アインハルト・ストラトスと合流。
わけあって一旦二組に別れた後、なかなか戻って来ない二人のために流したチャットの文章。
“ティッピーの小屋”は、ラビットハウスのこと。

「残る“タマ”はるう子。成る程、考えたじゃない」
「あなたは黙っていてください。では、その方たちと交換した情報も話せるだけ話してもらいます。
最低限……私のことについてどこまで話したか」

やはり踏み込んできたか。
ウリスとはともかく、るう子と東郷はこれが初対面ではない。

殺し合いが始まってすぐのこと。
宮永咲を殺害し、るう子をも殺そうとして、……いつの間にか姿を消していた、あの出来事。
彼女は間違いなく殺し合いに乗っている。
どういうわけか“あの”ウリスと共に行動しているのだ。同じ目的同士、手を組んだのだろうか。
そんな東郷にとって、『車椅子の少女に殺されそうになった』という情報を広められるのは大きな痛手だろう。

「――つまり、三好夏凜を通じて私が殺人を犯したという話が彼女とアインハルト・ストラトスに今も伝わっている。間違いはないですね」
「……はい」

事実、その情報は伝播した。
彼女の知り合いと出会えたのは本当にただの偶然なのだが、本人にとっては不都合であるに違いない。

「じゃあ、さっさとそいつらも始末した方があなたの身のためなんじゃないかしら」
「……考えておきます」

カタカタとパソコンに何かを打ち込む東郷。
後ろから覗けたなら、集めた情報をテキストファイルに打ち込む姿を見ることが出来ただろう。
それを抜きにしても、彼女の異常なタイピング速度は機械音痴なるう子や、ウリスでさえも目を見張るものがあった。
ともかく尋問はこれで終わったらしい。

「じゃあ、私は外の様子を見てくるわ。
盗み聞きなんて無粋な真似はしないから、お二人で積もる話でもあればどうぞ。
……ああ、小湊るう子を勝手に殺したりしたらダメよ、東郷美森さん」

そう言うと、ウリスは“スマートフォンをるう子にわざと見せるように持ちながら”部屋を出た。

「(あれって……)」

ウリスが離れたのを確認した東郷は、テキストファイルを他人に見られないよう暗号化、そしてパソコンをシャットダウン、カードに収納。
もしここが殺し合いの場でなかったなら、是非ともパソコンというもののイロハを習いたいくらいの手際の良さだった。
当の本人はといえば……顔色はお世辞にも良いとは言えず、下手をすれば嘔吐してもおかしくはなかった。

「風邪薬だけど、私持っていたんで、よかったら……」
「余計なお世話です」
「でも……」

るう子には、気になることが幾つもあった。
咲との会話を盗み聞きしていた彼女は、小湊るう子の人となりを多少は把握している。
それにウリスも居るのだから、情報は筒抜けだろう。
だがるう子は、三好夏凜から聞いている情報程度でしか東郷美森という少女のことを知らない。
人助けをする勇者の一員である彼女が何故殺し合いに乗っているのか、理由が分からない。
何故ウリスと一緒に行動しているのか、どう見ても不仲なのに、何故。
何よりも。

「携帯電話、ウリス……伊緒奈さんに取られちゃったんですか?」

目下最大の疑問点は、そこだった。

「あなたには関係のないことです」
「見ました、チャット。東郷さんが犬吠埼樹って人……同じ勇者部の人を殺したって」
「関係ないって言っているでしょう」
「ちょっとだけヘンだと思ったんです。幾らチャットが始まったのが最初の放送の後だからって、何で書く必要があるのかなって」
「だから、あなたには……」
「でも、東郷さんとウリスが居て、ウリスがあれを持ってて……」
「いい加減にして!」

東郷の声色には、隠せない動揺がはっきりと表れていた。
事実、彼女はかなり焦っていた。


✻  ✻  ✻


「どうするつもりかしら」
「この子から持っている情報を聞き出して、後は始末するつもりです。ところでその手紙は?」

旅館に着いた時、二人の目に真っ先に飛び込んできたのは一通の手紙。
ウリスはそれを手早く回収してざっと目を通すと、東郷に見せることなくポケットにしまった。

「殺すのは後にするわ。まだまだ利用価値があるみたいだし」

どういう意味だ、と聞いても無駄なのだろう。
ウリスが客間でるう子を縛っている間に、彼女の所持していたノートパソコンのケーブルをコンセントに繋いだ。
そして、チャット機能が午前6時に開放されたということに気付き、書き込みに目を通す。

「……」

真っ先に書き込まれていたあの一文。書き込み主は『M』。
最初は冗談だろうと思い、ウリスの顔をちらりと見た。
視線に気付いた彼女は、煽るような笑みだけを返した。

次にあった書き込みは、友奈のものだった。書き込み主は『Y』、イニシャルも一致する。
きっと私のことを心配してくれているのだと、すぐに分かった。
こんな、既に四人を手に掛けた、勇者という言葉から掛け離れてしまった私を。

最後の書き込みは、聞き覚えのある『義輝』、そして神社でるう子が言っていた『タマ』。るう子が夏凜と会っているということが、容易に想像出来た。
書き込み主は『R』。るう子のRだとしたら、全て説明が付く。

ウリスが私のイニシャルである『M』を騙り、そのスマートフォンで嘘を流したのだ、と。

頭を抱えていた矢先、るう子が目を覚ました。
嘘を吐いたと分かれば始末する――そのつもりで放った言葉が、ウリスの横槍でただの拷問に成り下がる。
しまいには、殺すべき相手にすら心配されていた。

分かっている。
この八方塞がりな状況を打破するためには、ウリスという悪意の塊を切らなければならない。
だが彼女は勇者の力をいつでも使え、自身の手には、弓矢だけ。

「(どうすればいい……どうすれば……)」

ぴしゃり、と東郷の思考をまたしても遮ったのは、襖が開かれた音。

「さて、そろそろお話も済んだかしら」
「ウリス……」
「心配することはないわ小湊るう子。タマに会えるかも知れないわよ」
「え?」

どういうことだ、東郷も問い詰める。
すると、玄関で見つけた手紙を取り出した。
さっきは見る前にウリスに取られたが、封筒には『小湊るう子へ』と書かれている。

「知ったツラした奴がタマを持っていることが分かったわ」
「それって……」
「三回目の放送までにはあなたを探しにここに戻ってくるって、ねっ!」

るう子の首筋にあてられたウリスの手から、バチバチと電流が流れ出す。

「づ、あぁっ!?」

意識を失ったるう子を抱えるウリスの手には、手袋のようなものがされていた。

「スタンガン……ではないようですが」
「用途は同じね、ガンじゃなくてグローブだけれど。そろそろ行きましょうか」


玄関を出て、スクーターに三人乗り。幸いにも車椅子は折り畳めるのでさほど荷物にはならない。
が、やはり三人だと全速力とはいかないか。

「そういや定春……例のデカい犬とやら、乗り物として使えるのかしらね」
「生き物ですから、何をするかは分かりません。今は不確定要素を増やすべきではないかと」
「ふーん……」

別に構わない。彼女はいつものように、悪意に満ちた笑みを浮かべる。
手紙の主である“アザゼル”と名乗る人物。文面には、彼が悪魔であることが書かれていた。
心当たりが一つ。
高圧的な態度を取り、あまつさえ自分を放り投げた忌まわしいあの男のことだとしたら。
あの時は遅れを取ったが、今この手には勇者の力がある。

煮え湯を飲まされた相手が、“人質”の友人を手札に持っていて、更に“人質”を探している。
ここまで面白く重なった偶然を利用しない手はない。
問題は彼の行方だが、最初に出会った場所とこの旅館に訪れたという事実。
そのままの進路で、禁止エリアを避けつつ人を探しているとなれば……行く先は決まりだ。

三人を乗せたスクーターが向かうは放送局。
アザゼルが居なかったとしても、東からの追跡者から逃げるには必然的に通ることになる。
その後は島を反時計周りするか、それとも“ティッピーの小屋”に向かうか……?

「(精々首を洗って待ってなさいよ、クソったれさん)」



東郷美森は考えた。
今ここで隙を付けばウリスを殺せるかも知れない。だが、無理だろう。
犬吠埼風の悪ふざけの一撃すら難なく耐えた勇者の精霊防御だ。
きっと、ただの弓矢でも結果は同じだろう。

るう子を利用してでも、主導権を取り戻す。
思考回路の大半をそこに割いた結果、彼女は気付かなかった。
このスクーターが、放送局に向かっていることに。
三好夏凜や結城友奈が向かっている、放送局に。


✻  ✻  ✻

――現在チャットルームには誰もいません――

――入室者有り――


K:『友奈?友奈なの?私よ、にぼっしーよ』


――退室しました――

――現在チャットルームには誰もいません――



【G-3/宿泊施設付近/一日目・昼】
【浦添伊緒奈(ウリス)@selector infected WIXOSS】  
[状態]:全身にダメージ(小)、疲労(小)、スクーター運転中
[服装]:いつもの黒スーツ
[装備]:ナイフ(現地調達)、スタングローブ@デュラララ!!
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(19/20)、青カード(18/20)、小湊るう子宛の手紙    
    黒カード:うさぎになったバリスタ@ご注文はうさぎですか?
     ボールペン@selector infected WIXOSS
     レーザーポインター@現実
     東郷美森のスマートフォン@結城友奈は勇者である
     スクーター@現実
     宮永咲の不明支給品0~1(確認済)
[思考・行動]
基本方針:参加者たちの心を壊して勝ち残る。
     0:放送局に向かう。アザゼルを見つけ次第復讐する。
     1:東郷美森、及び小湊るう子を利用する。
     2:使える手札を集める。様子を見て壊す。
     3:"負の感情”を持った者は優先的に壊す。
     4:使えないと判断した手札は殺すのも止む無し。    
     5:蒼井晶たちがどうなろうと知ったことではない。
     6:出来れば力を使いこなせるようにしておきたい。
     7:それまでは出来る限り、弱者相手の戦闘か狙撃による殺害を心がける
[備考]
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという嘘をチャットに流しました。
※変身した際はルリグの姿になります。その際、東郷のスマホに依存してカラーリングが青みがかっています。
※チャットの書き込み(3件目まで)を把握しました。

【東郷美森@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康、両脚と記憶の一部と左耳が『散華』、動揺、満開ゲージ:4
[服装]:讃州中学の制服
[装備]:弓矢(現地調達)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(17/20)、青カード(17/20)、
    定春@銀魂、不明支給品0~1(確認済み)
    風邪薬(2錠消費)@ご注文はうさぎですか?
    ノートパソコン(セットアップ完了、バッテリー残量少し)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いに勝ち残り、神樹を滅ぼし勇者部の皆を解放する
     0:早急に浦添伊緒奈を切りたい
     1:南東の市街地に行って、参加者を「確実に」殺していく。
     2:友奈ちゃんたちのことは……考えない。
     3:浦添伊緒奈と小湊るう子を利用して、始末する。
     4:どうすれば……?
[備考]
※参戦時期は10話時点です
※チャットの書き込み(3件目まで)を把握しました。

【小湊るう子@selector infected WIXOSS】
[状態]:全身にダメージ(小)、左腕にヒビ、微熱(服薬済み)、魔力消費(微?)、体力消費(中)、両手両足拘束、気絶
[服装]:中学校の制服、チタン鉱製の腹巻
[装備]:黒のヘルメット着用
[道具]:腕輪と白カード
    黒カード:チタン鉱製の腹巻@キルラキル
     宮永咲の白カード
 [思考・行動]
基本方針:誰かを犠牲にして願いを叶えたくない。繭の思惑が知りたい。
   0:……………。
   1:シャロさん………
   2:ウリスと東郷さんに対処したい。
   3:遊月、晶さんのことが気がかり。
   4:魂のカードを見つけたら回収する。出来れば解放もしたい。
   5:東郷さんとウリス、仲が悪いの……?


【スタングローブ@デュラララ!!】
宮永咲に支給。
鯨木かさねが使用していたグローブで、肘に付けたスイッチを押すと電流が流れる。


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132:One after another endlessly 浦添伊緒奈 151:■■■■ your enemies
132:One after another endlessly 東郷美森 151:■■■■ your enemies
132:One after another endlessly 小湊るう子 151:■■■■ your enemies