まわり道をあと何回過ぎたら ◆X8NDX.mgrA


「あ、アキラ嬢!これはどうすれば止まる――のわあぁっ!?」
「あちゃー……」

 どんがらがっしゃーん、と音を立ててゴミ箱に激突したカイザル・リドファルドを見て、蒼井晶は内心で(ホント使えねー)と思いながら溜息をついた。
 晶は民家の壁を背に、捻挫した足が楽になるように伸ばして座っていた。
 カイザルがゴミの中から立ち上がり、倒れたスクーターを持ち上げて、不慣れな手つきで転がして晶の方に歩いてくる。
 そうして晶のもたれる壁にスクーターを立てかけると、心底申し訳なさそうに謝罪した。

「すみませんアキラ嬢、やはり私は馬でなければ駄目なようです」
「ううん、まともに運転できないのはあたしも同じだし、リドさんは気にしないで!
 それよりどうしよー、そろそろ放送だよね?結局ホノホノは見つけられなかったし……」

 良い子を演じながら、しかし晶は頭の中で真面目に考える。
 飛び出した高坂穂乃果を追って駅を離れた二人だったが、当の穂乃果は捕捉できなかった。
 その原因はいくつかある。

 まず、晶とカイザルが駅を出る際に、本部やラヴァレイとのやり取りがあったこと。
 僅かな時間とはいえ、穂乃果が走り去った姿を見失ってしまったのは痛かった。
 この件に関して、晶が本部の評価をさらに下げたのは言うまでもない。

 次に、二人がスクーターの運転に不慣れであったこと。
 未知の移動手段に困惑していたカイザルは言うまでもなく。
 晶はかろうじて運転はできたものの、ひとたび運転を始めると、それ自体に集中しなければならなくなってしまった。
 つまりは、晶に辺りを見渡して穂乃果を探す余裕はなかったのだ。

 最後に、スクーターを運転することを、カイザルが止めてきたこと。
 同乗していて、この乗り物を晶が運転するのは危険だと感じたらしい。
 カイザル曰く「アキラ嬢に万が一のことがあっては騎士の名折れ」だそうだが、晶自身もその言葉を聞き入れた。
 決して、カイザルの助言だからではなく、助言が的を射たものだったからである。

 かくして、穂乃果の居場所の手がかりを失った二人は、道端で休憩していた。
 晶の代わりになればと、カイザルはスクーターの運転を試みたが、結果は冒頭の通り。
 生きた馬とは勝手が違うのだろう。練習を積めば乗りこなせるのかもしれないが、そこまで待つ時間もまた、晶にはなかった。

(くそっ……急ぎ過ぎないほうが良かったのかも……)

 今の晶は、急いてはことを仕損じる、という格言そのままである。
 まさしくアンラッキーだと自嘲しながら横を向くと、カイザルが腕輪を見つめながら、晶に対して返事をした。
 その表情は、真面目くさっているという表現が相応しい。

「そうですね……ひとまず放送を聴いてから考えましょう。
 なに、そう何人も脱落するはずがありませんよ。ここには聖女もいるくらいなのですから」
(わぁ、死体を見ておいてそんなこと言えるんだぁ……おめでたいなぁ。
 それとも言い聞かせてるのかもねー、自分でも気づかない内に。どっちにしろ馬鹿だけど)

 カイザルの発言を酷評しつつ、晶は実際に放送後の行動を決めようとした。
 ウリスが脱落することはありえないと確信しているので、考えるのはそれ以外のこと、主に今後の方針だ。
 当面の目的は、他の参加者をうまく潰し合わせること。
 とはいえ、この殺し合いは一対一が基本のWIXOSSのバトルとは異なり、なにも晶自身がその場で直接手を下す必要はない。
 抽象的だが、火種を撒いて、最後に晶が火をつける、といった手段も取れる。
 しかし、それを実行するにしても、相応の舞台が必要なのは確かだった。

(そうだ、そういえばあの放送……)

 そのとき、数十分前に見たテレビ画面が思い出された。
 少女たちの前で、ジル・ド・レェと名乗る男が、視聴者に語り掛ける姿。
 放送局に招き寄せるためのものである放送を利用することを、晶は考え付いた。
 そして、それを具体的な案にしてカイザルに伝えようとしたとき、ちょうど第一回放送が始まった。






――二人はどちらも人殺し。二人はどちらも女の子。


 宇治松千夜は、高坂穂乃果と対面していた。
 動揺しているのか、動くこともできないらしい穂乃果をまじまじと見る。
 憔悴しきった――有り体に言えば、ひどい――顔をした今の穂乃果を、スクールアイドルと認識できるファンがどれだけいるだろうか。
 そんな穂乃果を前にして、放送が始まるのと同時に、千夜は口を開いた。

『――おはよう。午前6時、定時放送の時間よ』
「……私は、ずっと逃げてきたの」

 それは罪の意識から来る言葉。
 血の付いた腹部を撫でると、脳裏に鮮明に浮かぶのは侍――土方十四郎の背中。

「十四郎さんに助けられて、十四郎さんが死ぬ原因を作ってしまって」

 それは、何度も繰り返した後悔。
 殺し合いの現実から逃避していなければ、拳銃を持って立ち向かっていれば、未来は変わったのかもしれないという慚愧の念。
 夢の中まで、何度も何度も、自分を責め続けた。

「けど、ランサーさんに赦されて。それを受け入れてしまって」

『あまり自分を責めるな。その男は君を守るために戦ったのだろう?』
『もし償いをしたいというのなら、悔いることよりも彼の守った命を大切に守っていくことが君のため、彼のためにもなる。分かるか?』
『君はよく頑張った。その土方という男の想いは俺が汲もう』

「そのときは少し安心したけど、でも、それも逃げていたのと同じだったのよね」

 ランサーとの遭遇と、彼から告げられた赦しの言葉。
 あまりに優しい、優しすぎるその言葉を、自分の中で深く考えないままに享受してしまった。
 ランサーは騎士として、騎士道に則った行動をしたに過ぎないのだろう。
 しかし、言葉ひとつで簡単に赦されるほど、土方が死んだ件は簡単ではなかった。

「その上、ランサーさんに変な気を起こしたりして……私はおかしくなってた」

 愛の黒子によるランサーへの恋慕も、罪の意識をより深くした。
 それが呪いによるものだと知らないが故に、自身の身勝手さを痛感して己を苛んだ。
 ふと横を見ると、ヴィヴィオの遺品であるウサギが耳をだらりと下げていて、少し申し訳なさそうに見えた。
 しかし追及することもできないので、改めて穂乃果を見据える。

「それで、ヴィヴィオちゃんが目の前で死んで……怖かったの」

 その言葉に、穂乃果は一瞬だけ肩を震わせた。
 穂乃果にしてみれば、自分はヴィヴィオ殺害の真実を知っているから、非難されることを恐れたのかもしれない、と思った。
 しかし、糾弾する意思はない。する資格はない。
 思ったことや感じたことを、述べるだけ。

「ずっと怖くて、怖くて、どうしようもなかった……」

 目の前の穂乃果が反応する様子はない。
 数時間前の、ランサーと話しているときの生き生きした表情が嘘だったかのような疲れ切った顔で、ただこちらを見つめている。
 何を考えているのかは分からない。
 それでも、伝えなければならない。
 思いの丈を伝えるタイミングは、今しかないと確信していた。

「だから駅から逃げて、ここまで来たの」

 繭の放送は、耳を通り過ぎていく。
 そこでは脱落した発表があると繭は言っていた。
 けれどそれよりも、今この瞬間には重要なことがあった。

「でも、独りになって、考えて……今こうしてあなたに会って、決めたの」

 もともと自分は、チノやシャロからの相談相手となることの多い、いうなれば頼りにされるタイプだと自負している。
 幼馴染のシャロはからかうことも多いが、それでも最終的には、相談に対して答えを出している。
 今、すべきことも、それの延長だと考えればいい。
 考えた自分なりの答えを、相手に伝える。

「私、駅に戻る」

 相手の目を見て。

「戻って、私がヴィヴィオちゃんにしたことを全部話して、それで――」

 心を込めて。

「――この殺し合いの中で、逃げずに生きる」

 決意を言葉にする。
――現実から逃避して、優しい他人に支えられて、人を殺して、逃げ出して。
――そんな少女が、「逃げずに生きる」と宣言した。
――それは、この殺し合いが始まって以降、初めて宇治松千夜が「自分で」前を向いた瞬間だった。

『さあ、次はお待ちかね、ここまでに命を落とした方々の発表といきましょう』

 言い切った、そう思った直後に、脱落者の発表が開始された。
 それまでとは別のベクトルの緊張が身体に走る。
 少なくとも十四郎やヴィヴィオの名前は間違いなく呼ばれるはずで、再び事実を突き付けられるのはやはり心が痛い。
 友人たちの名前が呼ばれる可能性があるのも、怖かった。
 似たようなことを考えたのか、自分と同じタイミングで、穂乃果も身体を強張らせたのが見えた。
 名前が淡々と読み上げられる。
 幸か不幸か知らない名前ばかりだが、それにしても数が多いと思いながら聴いていると。

『矢澤にこ』

 えっ、と。
 それまで、反応らしい反応を示さなかった穂乃果が、そのとき初めて音を発した。
 表情を見ると、いかにも顔面蒼白といった様子だ。先程までの比ではない。

『南ことり』
「うそ……そんな……」

 女性と思しき名前に、さらに明確な反応を表す。
 悲痛な声を聴くに、おそらく穂乃果の大事な知り合い――自分にとってのシャロやラビットハウスの面々――が、放送で呼ばれたのだろう、と察した。
 そして、放送が終わった。
 それなのに、穂乃果はぽかんと口を開けて、呆然自失としたままだ。

(……私は落ち着いていないと)

 そんな穂乃果の姿を見ていて、自分は落ち着かなければと思った。
 十七人も死者が出ていることはショックではあったが、自身の親しい人物は、土方やヴィヴィオを除けば全員無事だと分かっていた。
 以前からの知り合いを亡くした穂乃果に、軽々しく同情したと思わせないように配慮しなければならない。
 だから、呆然としたままの穂乃果に近づいて、こう言った。

「……大丈夫?落ち着いて、穂乃果ちゃん」
「っ!やめてッ!」

 だが、声を掛けた次の瞬間、穂乃果は背を向けて走り出した。
 残されたのは、自分ひとり。
 追うことも考えたが――それをするには、少し、疲れてしまった。
 朦朧とした意識を奮い立たせて、穂乃果と相対していたのだから、それも当然なのかもしれない。
 そんなことを思っていると、疲れからか、不意に力が抜けて、ぺたんと尻餅をついてしまった。

(……こんな姿、みんなが見たらどう思うかしらね)

 ふと、気まぐれにそんなことを考えた。
 シャロもココアもチノもリゼも、きっと、みんな優しく笑って肩を貸してくれるだろう。
 みんなの姿を想像すると、口もとが緩んだ。

(もう少しだけ、休んでいよう)

 尻餅ついでに、いま少し休憩するのもいいだろう。
 そんな心づもりで、立ち上がるのを止めた。
 そのまま、視界が少し狭くなり、全身から力が抜けて、意識がぼんやりと遠のく。
 ウサギが焦ったような動きをしているのが、最後に見えた。


【C-2/市街地/一日目・朝】

【宇治松千夜@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:疲労(極大)、決意、気絶
[服装]:高校の制服(腹部が血塗れ、泥などで汚れている)
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:ベレッタ92及び予備弾倉@現実 、不明支給品0~2枚、
黒カード:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはVivid
[思考・行動]
基本方針:生きて、心愛たちに会いたい
0:(気絶中)
1:少し休んで、駅に戻る。そして、全てを話す。
[備考]
※現在は黒子の呪いは解けています。
※セイクリッド・ハートは所有者であるヴィヴィオが死んだことで、ヴィヴィオの近くから離れられないという制限が解除されました。千夜が現在の所有者だと主催に認識されているかどうかは、次以降の書き手に任せます。






『次は正午、また私の声が聞けるといいわね』

 放送が流れている間のカイザル・リドファルドの表情は、ころころと変わっていた。

 繭の遊びを楽しむような口調に怒り、
 禁止エリアという未知のルールに困惑し、
 聖女ジャンヌが脱落したと聴いて驚愕し、
 少女ヴィヴィオの死に顔を思い出して悲しみ、
 十七人が死亡したという事実を知って落涙し、
 そして放送が終わると、繭を挫くつもりでありながら、未だに何も出来ていない自分自身を恥じた。

「あのぉ、リドさん、大丈夫ですか……?」

 心配そうに声を掛けてきた晶に、カイザルは平静を装って返答した。

「ええ、心配ありません。アキラ嬢こそ、大丈夫ですか?」
「うん……十七人も死んじゃったのは残念だけど……。
 伊緒奈は無事みたいだから、アキラはまだ頑張れるよ!」

 まっすぐな視線を向けるとともに、カイザルにそう答える晶。
 その言葉に、カイザルは再び奮起させられた。
 いたいけな少女ですら、友情のために頑張ると宣言しているのだ。
 高潔な騎士たらんとする自身が、こんなところで挫けてしまってどうする。

「……やはり、君は強い女性だな」

 また、晶がそれほど動揺していないことにも、カイザルは感心した。
 浦添伊緒奈という少女が、よほど強固な心の支えになっているのだろうと推察する。
 ならば、尚更伊緒奈という少女を早急に見つけた方がよいと判断した。

『あの子が死んだら、アキラはもうどうしていいか分かんない』

 カイザルはまた、初めて出会って話したときに、晶が言っていたことを思い出した。
 基本的に明るく振る舞っている少女の、必死な様子も。
 可憐な少女が、放送で伊緒奈の死を告げられたとき、泣き叫ぶ姿は容易に想像できた。
 そのような事態を招くわけにはいかない。

「あの、それでぇ、リドさんに提案があるんですけど。
 ホノホノ……高坂穂乃果ちゃんのこと、二手に分かれて探しませんかぁ?」

 だから、晶がしてきた提案を、カイザルは却下できなかった。
 友人を早く探しに向かいたい、という気持ちがそうさせるのだろうと思ったからだ。
 殺人者がうろついているという懸念はあったが、それは晶も承知していたらしい。

「もし襲われたら直ぐに大声出すし、それに、支給品もあるから心配しないで!
 それより、早くホノホノを見つけて、そのあとウリ……伊緒奈も探したいから!」

 このように、一歩も譲る気がない。
 カイザルは腕組みをして考えた。
 確かに、晶を守るためとはいえ、こうして二人で行動していては、高坂穂乃果の捜索には時間がかかりすぎる。
 そうなれば、結果的に少女が伊緒奈を探す時間も少なくなり、最悪の場合は――。

「……分かりました。ですが約束して下さい。危険な人物や場所には近づかないと」
「もちろん!」

 結果、カイザルは晶と二手に分かれて捜索することに決めた。
 なにも盲目的に守るだけが騎士ではない。
 騎士道にそのルーツがあるとされる『レディーファースト』の精神は、女性を尊重することに重点が置かれたものだ。
 カイザルはこの場で、蒼井晶という一人の少女の意思を尊重したといえる。

「しかし際限なく探し続けるのも……」
「じゃあ、三十分くらいしたら、あたしはまたこの場所に来ます!
 このスクーターを目印代わりに置いていくから、それでオッケー?」
「え、ええ……それなら」

 この段階になって、初めてカイザルは少女に疑問を持った。
 とはいえ、蒼井晶の裏の顔を邪推したわけではない。
 小柄な身体からは想像もできないほどの行動力が、どこから湧いてくるのかと純粋に興味を持ったのだ。
 そういえば、カイザルにとっては未知の建造物“駅”についても事細かに知っていた。
 単なる少女ではないのだろうか、と疑問は次から次へと湧いてくる。
 しかし、時間を無駄にするほど愚かではない。
 カイザルはひとまず、蒼井晶を不思議な少女だと結論付けた。

「さて、私も探さねば」

 晶が去った方向とは反対の方角へ、カイザルは歩き出した。
 迅速に見付けて、駅に戻りたいものだと思いながら、早足で市街地を歩くこと五分。
 しかし、思惑は外れて、中々見つからない。
 焦りはカイザルから冷静さを奪う。

 もともとこのカイザルという男、妙に真面目なところがある。
 アナティ城に輸送される最中、父親の仇であるファバロを討つ機会がありながら、剣が無いという理由でそれをしなかった。
 さらに「なら絞め殺したら?」と言ったリタに対して、カイザルはこう返した。
 「私は騎士だ」と。

 そう、カイザルは今でこそ賞金稼ぎだが、もともとの身分は騎士であった。
 紆余曲折を経てその身分は剥奪されてしまったが、騎士としての矜持を失ってはいない。
 常に高潔な騎士であろうとし、騎士団への敬意を欠かさない。
 その点は、いつも飄々としたファバロを嫌う理由にもなっているだろう。
 言ってしまえば、愚直な男なのだ。

 そのカイザルを、ファバロは「視野が狭い」と評したことがある。
 騎士としての在り方にこだわるカイザルは、ときに周りが見えなくなることがある。
 ファバロを見ると、叫ぶと同時に切りかかってきたこともあるくらいだ。
 決して機転が利かないというわけではないにせよ、臨機応変とは程遠い。

 そんなカイザルが、穂乃果を見つけられず、ひいては晶の人探しが遅れることに焦りを感じたとしたら。
 当然ながら、対応策を取ろうとする。
 その手段は単純なもので、人探しにおいて有効な手段であることは疑いようもない。
 だが、殺し合いの場で取るには、かなり危険を孕むものだった。






「――ホノカ嬢オオオオオオオオオオォォ!!!!!」






 言葉にすればなんのことはない、カイザルはただ穂乃果を大声で呼んだのだ。
 明るい空に、その声はとてもよく響いた。
 何度も、何度も。



【カイザル・リドファルド@神撃のバハムートGENESIS】
[状態]:健康、叫んでいる
[服装]:普段通り
[装備]:カイザルの剣@神撃のバハムートGENESIS
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:不明支給品1~2枚(確認済、武器となりそうな物はなし)
[思考・行動]
基本方針:騎士道に則り、繭の存在を挫く
0:――ホノカ嬢オオオオオォォ!!!
1:アキラ嬢を守りつつ、ホノカ嬢を連れ戻す
2:俺と、ファバロが……。
3:アキラ嬢を守りつつ、アナティ城へと向かう。ラヴァレイ殿も居る以上、体制は万全だ。
4:リタと合流する。
5:アザゼルは警戒。ファバロについては保留
[備考]
※参戦時期は6話のアナティ城滞在時から。
※蒼井晶から、浦添伊緒奈は善良で聡明な少女。小湊るう子と紅林遊月は人を陥れる悪辣な少女だと教わりました。
※ラヴァレイから、参戦時期以後の自身の動向についてを聞かされました。






 浅い眠りの状態で、周囲の音が耳に入ってくることは珍しくない。
 千夜が話している最中、穂乃果はそれに似た状態であったといえよう。
 もちろん、穂乃果は立ったまま寝ていた訳でもないし、ただ馬耳東風でいた訳でもない。

 全てはタイミングのせいだった。
 千夜の言葉を、自身の中で深く考え込む前に、その名前が呼ばれてしまった。
 矢澤にこ、そして、南ことり。
 大事な先輩と、自分がまさに助けようとしていた親友が、もう死んだという事実。
 千夜と同程度に憔悴していた穂乃果に、その事実はあまりに重くのしかかり――放心状態にさせた。

「……大丈夫?落ち着いて、穂乃果ちゃん」

 何も考えられない、そんな状態。
 そんな状態であったがゆえに、千夜のこの問いは、穂乃果を落ち着かせるどころか更に動揺させた。
 近づいてきていたのも、優しい言葉も、暗に責めているようにしか思えなかった。

「っ!やめてッ!」

 千夜に背を向けて走ること十分近く。
 追って来る気配はもとより感じなかったが、それでも何かから逃れるように穂乃果は走り、そして息が上がってきたところで足を止めた。 
 ……しかし、休む暇は与えられなかった。

――ホノカ嬢オオオオオォォ!!!

「っ!?」

 近くもなく、遠くもない距離から響いてきたその声は、穂乃果を再び緊張させた。
 駅にやってきた三人の内の、若い男性の声。
 本部と一緒にヴィヴィオの死体を検分していたはずの男が、ここまで穂乃果を探しに来る理由は、一つしかない。
 ヴィヴィオに毒を盛った、その罪を罰するため。
 冷静さを欠いた穂乃果の思考回路では、その単純な考えしか浮かばなかった。

「いや……」

 愛の黒子の効果が消えて、心を満たしていたランサーへの恋情は殆ど消えた。
 更に放送で告げられた二人の死と、それによる目的の消失が原因で、穂乃果は完全に放心状態だった。
 それに意図せずして追い討ちをかけた、千夜とカイザルの声。

「いやだよ……」

 口をついて出る「いやだ」が、何を嫌がっているのかも分からない。
 自分の内面に目を向けて、考えることも出来なくなっている。
 少し前の穂乃果なら、ランサーに縋っていただろう。
 しかし、今の穂乃果は、ランサーが放送で呼ばれなかったことすら認識できていない。

「私、わたしは……」

 穂乃果は自分自身の気持ちに答えを出せないまま、両手で顔を覆うと、ゆっくりと蹲った。



【高坂穂乃果@ラブライブ!】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(極大)、放心状態
[服装]:音ノ木坂学院の制服
[装備]:ヘルメット@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(6/10)、青カード(10/10)
     黒カード:青酸カリ@現実
[思考・行動]
基本方針:優勝してランサーとμ'sの皆を生き返らせる?
0:?????
1:にこちゃん、ことりちゃん……。
2:本部を殺害する?
3:参加者全員を皆殺しにする?(μ'sの皆はこの手で殺したくない)
[備考]
※参戦時期はμ'sが揃って以降のいつか(2期1話以降)。
※ランサーが本部に殺されたという考えに疑念を抱き始めました
※ランサーが離れたことで黒子による好意は時間経過とともに薄れつつあります。また、それに加えて上記の疑念によって殺意が乱れ、『ランサーだけでなくμ'sの皆も生き返らせよう』という発想を得ました。






 蒼井晶は市街地をぶらぶら歩きながら、今後の方針を考えていた。
 そこに誰かを探すようなそぶりはない。
 穂乃果を分かれて探すことを提案したのは晶だが、実のところ穂乃果はそれほど重要ではなくなっていた。
 最悪、見つかろうが見つからなかろうが構わない。
 それよりも、怪人物がいる放送局に行くことを優先しようという気になっていた。
 そう考えた原因には、放送で呼ばれた脱落者の多さがある。

(ウリスは当然だけど、あの二人がまだ無事なんて意外かも。
 それにしても、まさか十七人も死んでるなんて思わなかったなぁ……)

 七十人中の十七人と考えれば、この殺し合いはかなりのハイペースで進んでいることになる。
 また、カイザルがあれだけ賞賛していたジャンヌ・ダルクが呼ばれたことから、相当な強者が参加者の中にいることも予測できる。
 ぐずぐずしている内に、万が一にもウリスが殺されるようなことがあっては困る。
 だから、穂乃果の捜索に時間を喰われるのはまっぴら御免だった。

(さっきの放送のせいで、放送局には人がたくさん来るだろうから、そこで上手く潰し合わせることができるかもだし……。
 それに、もしかしたらウリスがいるかも!あーあ、早く行きたいなぁ。
 ウリスのために殺すって決めたのに、なーんにも出来てないんだもん)

 “三十分”という制限時間を付けたのも、余計な時間を喰わないためである。
 晶としては即座に放送局に向かいたかったが、それでは穂乃果を探すと言った手前、カイザルに怪しまれる可能性があるから、という苦肉の策だった。
 もちろん、穂乃果を見つけられればそれはそれでいいのだが。

――ホノカ嬢オオオオオォォ!!!

(は?なにやってんのあの脳筋……。
 ハッ、まあいいか。危ないのはあたしじゃないし)

 そんな折に響いた、先程までの同行者の声にも、晶は冷めた反応を返した。
 危険人物の標的になりかねない行為をしている自称騎士を、少し嘲笑っただけ。
 そうして、市街地を歩いていると――思わぬ出会いがあった。

(アンラッキーだと思ってたけど……あたしにも運が回ってきたのかな?)

 少女がひとり、無防備な状態で、晶の目の前にいたのだ。
 少女は晶に気付く様子もない。
 カイザルの声は一定の間隔で聞こえてくるが、まだ距離はある。
 晶は思う。殺すには、なんともおあつらえ向きではないか、と。

「ラッキー、ラッキー、アキラッキー……♪」

 晶はその顔を凶悪な笑みで歪めると、少女に近づいていった。



【蒼井晶@selector infected WIXOSS】
[状態]:健康、左足首捻挫(湿布済み)
[服装]:中学校の制服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
    黒カード:不明支給品1~3枚(武器があるらしい?)
[思考・行動]
基本方針:ウリスを勝ち残らせるために動く
0:利用できそうな参加者は他の参加者とつぶし合わせ、利用価値が無いものはさっさと始末する。
1:目の前の少女を――
2:カイザルとラヴァレイを利用しつつ、機会を見て彼らと他の参加者を潰し合わせるなり盾にするなりする。
3:ウリスを探し出し、指示に従う。ウリスの為なら何でもする
4:紅林遊月、小湊るう子は痛い目に遭ってもらう
5:カイザルたちに男(本部)を始末してもらいたい
6:キャスターを利用する。
[備考]
※参戦時期は二期の2話、ウリスに焚き付けられた後からです
※カイザル・リドファルドの知っている範囲で、知り合いの情報、バハムートのことを聞き出しました。



※原付@銀魂はC-2の市街地に放置されています。
※蒼井晶が発見した少女は、宇治松千夜か高坂穂乃果のどちらかです。どちらかは、後続にお任せします。


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Back:孤軍 Next:Sacrament

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085:駒鳥殺しの、その行方 高坂穂乃果 115:高坂穂乃果の罪と罰
085:駒鳥殺しの、その行方 宇治松千夜 109:二度殺された少女たち
077:低迷の原因は手前の中から 蒼井晶 109:二度殺された少女たち
077:低迷の原因は手前の中から カイザル・リドファルド 115:高坂穂乃果の罪と罰