第一回放送 ◆NiwQmtZOLQ

そこは、白亜の部屋だった。
規模だけで言えば、そこは三つもの小さな島に相当する。
学校があり、病院があり、その他にも様々な施設が存在する島々。
けれど、建物や樹木といった全て白い箱で凸凹と歪に象られており、随所に窓が存在している。
普通に考えれば、そんな窓の向こうには何がある筈も無く、それは開く事のない只のアンティークに過ぎない。
───けれど、この白い空間が普通ではないのは、誰の目にも明らかな事で。

『う……あ、ぁッ…………――――――!』

───窓が開く。

『死……にたく……ない……し……』

───窓が開く。

『ぢや、ざん……なん…で…』

───窓が開く。
───窓が開く。───窓が開く。───窓が開く。───窓が開く。───窓が開く。───窓が開く。───窓が開く。───窓が開く。───窓が開く。───窓が開く。───窓が開く。───窓が開く。
窓の向こうに広がる風景から、様々な人々の感情が流れ込んでくる。
憎しみ、怒り、哀しみ───負の感情が、窓を通して此方へと伝わってくる。

「………ふふ」

そんな流れ込んでくる感情を、少女───繭は笑いながら聞いていた。
ここから見える、窓の向こうの場所で行われる殺し合い。
そこで死んだ者は、永遠に昏く寂しいカードの中で、未来永劫を過ごす事となる。
嘗ての彼女と、同じように。

「ふふ、あはは」

間違っているのは分かっている。
けれど。
これまで希望に包まれ、選択する自由を持っていた人間達が、選ぶことすらも出来ない自分のようになっていく様は。
そして、そんな現実に押し潰されて悲痛な感情を溢れさせる人々が嘆き悲しむ様は。
彼女にとって、とても心地良いものに映っていた。
だから彼女は、そんな嘆きの瞬間を繰り返し繰り返し見続ける。
その他の場所は、彼女が望まない限りその風景を映す事は無い。
彼女が望むのはあくまでも、『カードに囚われる人間達の絶望』なのだから。
だが───。

「…やっぱり、いるんだ」

再び彼女が手を翳した窓が開き、また新たな場所を映し出す。
そこに映ったのは、その瞳に希望を残した参加者達。
繭を打倒する為に、或いは徒党を組み、或いはその一人の力で以って牙を突き立てんとする者達。

「───気に入らない」

この逃げようのない殺し合いから、脱出してみせようと言うのか。
彼女が漸く見つけた、歪んでいながらも唯一の娯楽を、無情にも奪い取ろうと言うのか。

「出来るものなら、やってみなさい」

その表情にドス黒い感情を滾らせ、彼女は立ち上がる。
そう言えば、そろそろ頃合いだ。思い上がっている彼等にも、再び思い知らせるべきだろう。
この殺し合いでは、全てはこの繭というが絶対である事を。
殺し合いという現実から、目を背ける事など出来ない事を。
救いなんて、存在する筈も無い事を───────




おはよう、皆。
ふふふ、繭が憎らしい人もいるかしら?こんな殺し合いをさせられて、怒っている人も一杯いるでしょうね。
でも、ダーメ。出してなんてあげないんだから。
最後の一人になるか、死んでカードの中に囚われるか───選択肢があるだけ、いいと思いなさい。
さて、それじゃあそろそろ重要な話に移る?
まずは、禁止エリアからだね───もしかして、私が言ってないから知らない人もいる?でも、ルールを見れるのに知らないなんて言わせない。そんな人は、真っ先に狙われちゃうんだから。
今回の禁止エリアは───

B-3
D-7
F-2

───この三つ。しっかり覚えておかなきゃダメだよ?
何処かに書いて、残したりしておかないと。でないと───ふふ、どうなるでしょうね。
それじゃあ次は…これまでで死んじゃった人の名前を呼ぶね。
ふふ、こっちの方が気になる人は多いでしょう?
それじゃあ、言うわね。

宮永咲
神代小蒔
範馬勇次郎
池田華菜
土方十四郎
長谷川泰三
犬吠埼樹
越谷小鞠
間桐雁夜
園原杏里
ジャンヌ・ダルク
高町ヴィヴィオ
矢澤にこ
志村新八
ヴァローナ

…今呼んだ、15人が今の脱落者。
知り合いが呼ばれちゃった?友達が呼ばれちゃった?
さっきも言ったけど、優勝すれば、何でも一つ願いを叶えてあげるから───その人の大事な人くらいは、ご褒美に出してあげるかもしれないわ。
それじゃあ、頑張ってね。


繭に失敗があるとすれば、彼女がカードに魂が吸い込まれる、そこだけを見ていた事だ。
彼女が嘗て生み出したカードゲーム───WIXOSSにおいて、ルリグとなる少女に語りかけたように。
そのせいで、彼女は二人の死を見逃していた。
満艦飾マコ、そして南ことり。
彼女達は、この殺し合いに招かれた英霊であるサーヴァントにその魂を喰らわれた。
喰らわれた魂はカードに閉じ込められる事は無く、その為に繭が二人の死を知る事は無かったのである。
だから、正確には17人。
それが、この6時間で失われた正確な命の数だ。
また、先の二人の死が正しく伝わらない事は、彼女達の知り合いにとっては仮初めの希望であり、そして最悪の絶望の起爆剤ともなり得るもの。
だが、そんな事とは関係無しに、殺し合いは再び動き出す。
繭も再び窓を開け、その景色を眺め静かに笑う。
彼女が言った、カードから魂を解放するというのは───いや、願いを叶えるというそれさえも。
真実かどうか確かめる術は、今は無い。
広くも狭い、白亜の部屋で。彼女と出会うまでは───

【17人死亡 残り53人】

※繭は殺し合いの世界を覗く事が可能です。
ですが、何らかの理由が無い限りは、『カードに魂が閉じ込められる周辺』しか覗いていません。