I'll smile for yours ◆KKELIaaFJU


 朝四時すぎ。
 まだ辺りは薄暗いが、あと数時間もすれば日が昇り、朝が来る。
 そして、朝が来るということはあの少女が言っていた放送が来る。

 D-6のショッピングモール。
 ショッピングモールもしくはショッピングセンターの定義だが……
 厳密にあるのだが、ここで明言しないでおこう。

 そこにやってきた綺礼、ポルナレフ、そして気絶した希の三人。
 神威の車輪から降りて中を探索に向かおうとする。
 DIOがいるかもしれないという可能性を踏まえて慎重に。

「その少女を置いていかないのか?」
「いかねぇよ……もしDIOがここにいるなら何かするかもしれねぇからな」

 希の持っていた黒カードをポルナレフが回収する。
 この右手の状態では刀剣類も重火器も素人である彼女が使いこなすのは難しい。
 彼女が6枚も黒カードを所持していたことをみると少なくとも一人はすでに殺している。

「俺がコイツを背負っていく、それでいいだろ」
「…………構わない」

 自身も怪我をしているがポルナレフが希を背負う。
 その際、ポルナレフの背中に柔らかい感触が当たる。

「……ポルナレフ、鼻の下が伸びてるぞ」
「うるせぇ」

 少女の寝顔は年頃の少女そのもの。
 こんなところで出会っていなければ声を掛けていたかもしれない。
 そんなことを考えつつも、冷静に辺りを警戒しながら探索する。

 ショッピングモール内はまるで人の気配がない。
 誰か潜伏して気配を消しているのか、それとも本当に誰もいないのか?
 それを確かめるかのように、慎重さに重点を置く。

 結果的にはショッピングモール内に『誰もいなかった』。

 それでもショッピングモール内を二人は歩いていく。
 しばらく歩いていくと、テーブルや椅子が多く並べられているスペースに出た。
 そこで少し休憩を取ることにした。

「ここは食事処か」
「にしても……だだ広ぇな、おい」
「フードコートだからな」

 フードコート。
 『GOHAN-YA』『うどん屋』『ラーメン屋』などが軒を連ねている。
 しかし、調理器具はあれども食材や調味料等が何一つない。
 水道は止められているが、ガスと電気は動いている。
 不自然な点がやけに多いが、休憩スペースとしての役割は十分に果たしていると言える。
 一先ず、ここで二人は休憩を取ることにした。
 見晴らしは悪くない、むしろ、この広さとフードコートの造りならば誰か来てもすぐに気付く。
 二人がそこに陣取り、気絶した希を近くの寝具店で拝借してきた毛布と敷布団で横にする。

「で、何を食うんだ?」
「ふむ……」

 綺礼は悩む。
 赤いカードから何でも好きな食べ物が出るという。
 ここは素直に麻婆豆腐を出すべきなのか?
 だが、この状況で麻婆豆腐の一品だけで足りるのか?

 その時、ふと視線を反らした際にラーメン屋の写真が綺礼の目に映った。
 『これ』だ、という答えが直感できた。
 そして、綺礼の前に『それ』は出てきた。

「なんだ、そりゃ?」
「『麻婆ラーメン』だ……そこのラーメン屋に見本があったからな」

 綺礼が指差した先には……
 『麻婆ラーメン(1600円)』
 『辛そうで辛くない、むしろ辛かったことを脳が認識しようとしてくれないラー油入り』
 そう、立て看板に商品見本と店主らしき男の写真があった。

 赤い。
 ただただ赤い。
 血のような赤さではない。
 本格的な中国料理を思わせる赤さである。

 しかし、麻婆ラーメンの発祥は日本と言われている。

 皿の上の豆腐、挽肉、分葱が非常に食欲をそそる。
 それを綺礼はレンゲを用いて、口に運ぶ。
 豆板醤と花椒の辛みからくる旨味が綺礼の舌を刺激する。
 喉を刺激し、食道を通り、胃へと到達する。
 だが、綺礼の胃はさらに麻婆を求め、胃液を出し続ける。
 それに応えるように綺礼はレンゲを動かし、麻婆を口に運び続ける。

「美味いのか、そんな赤いのに……というか、ラーメンなのか、それ?」

 そのポルナレフの問いに、綺礼はレンゲを止める。
 少し考えて、麻婆ラーメンの器をポルナレフの前に差し出す。

「食うか?」
「いらねぇよ!」
「……そうか」

 綺礼は少々、残念そうな表情を浮かべるが再びレンゲを取る。
 なお、ラーメンの麺の部分は申し訳程度しか入っていなかったが、綺礼は特に気にすることはなかった。

 一方のポルナレフが取り出したのは……。
 普通のサンドイッチのように見えるもの。
 これはフランスの定番の軽食『クロックマダム』だ。
 焼いたパンの間に挟まったハムとチーズ、その上には目玉焼き。
 それを丁寧にナイフとフォークを使い、切り分ける。
 ナイフで目玉焼きを切ると中から半熟の黄身が流れ出す。
 その黄身が溶けたチーズやパンと絡み合う。
 それをフォークを用いてこぼさぬように口に運ぶ。

「……ゥンまああ~いっ!」

 多少オーバーリアクションかもしれない。
 しかし、美味しいことには変わりない。
 ポルナレフはクロックマダムを一気に食い終える。
 そして、青カードからコーヒーを一杯の取り出し、優雅に食事を終える。

「本当、こんな状況じゃなきゃな……」

 コーヒーカップを置き、ポルナレフはため息を吐く。
 その時、フードコート内のモニターから何やら映像が流れ始めた。
 定時放送にはまだ時間が早い。

 そして、モニターに映る一人の男。

「なんだぁコイツは……?」
「キャスターか……!」
「何っ、コイツがか!?」


『此度の放映をご覧頂けた幸運なる皆様。私、キャスターのサーヴァント、ジル・ド・レェと申します』


 ◆ ◇ ◆


 夏も終わり、もうすぐ2学期が始まる。
 廃校問題も解決しても、ウチらμ'sは活動を続けている。
 今度は文化祭や街のイベントでもライブがあるゆうてたな。

 だから、もっと練習せな……
 ダンスも、歌も、マイクパフォーマンスも、フリートークも、演技も……

 ……ん? 演技ってなんや?

 μ'sのみんなでライブで寸劇でもするんやったんかな?

 えーっと、確か言い出しっぺは穂乃果ちゃんで……

 絵里ちが意外にもノリノリで……

 脚本はみんな好き勝手に書いたから……

 海未ちゃんが殺陣をやりたいゆうて……

 凜ちゃんがアクションをやりたいゆうて…… 

 ヒロインの座を巡ってにこっちと真姫ちゃんと言い争って……

 花陽ちゃんがそんな二人を見て「誰か助けてー!」って叫んでて……


 それを……ことりちゃんが……衣装を作りながら………………


 あれ……ことりちゃんはどこにおるん……?


 おかしいな。

 あれ、何のために演技やったけ……? 

 寸劇のため?

 いいや、違う。

 演技で……人を騙さないと……誰を騙すん……?

 皆を……参加者を……騙さないと……

 何のために……?

 μ'sのため……?

 そうや、ウチはμ'sのために……





「―――――希ちゃんは嘘つきだよ」






 ベージュの髪に緑のリボンの女の子がそこにいた。

 見慣れた笑顔でウチに話しかけてきた女の子。



 違う。

 違う。

 違う!

 ウチは嘘つきなんかやない!



「だったら、なんで私と■■ちゃんを置いて逃げたのかな?」



 違う!

 ちがう!

 チガウ!!


「違わないよ、希ちゃんは嘘つきでズルい娘だよ?」


 ………。

 ………。


「だからさ、早くこっちに来てよ……ねぇ、希ちゃん?」


 ………もう、いやや。 


 ウチは、ただ………。


 ……μ'sを護りたかっただけなんや……




 ◆ ◇ ◆


「ああ! 胸糞悪ぃぜ!」

 キャスターの何度も流れる映像を目にしてポルナレフは感情を露にする。
 綺礼からキャスターのことを聞いていなかったら、ここまで怒りを露にしなかっただろう。
 綺礼が言っていたキャスターの特徴と放送に出てきた男の特徴が完全に一致していた。

 だが、それだけではない。
 『ジル・ド・レェ』と言えばポルナレフの出身国のフランスでは『救国の英雄』とも呼ばれた偉人だ。
 フランス人であるポルナレフはその偉人の末路まで知ってはいたが……。
 そんな男が『正気を失った殺戮者』と成り果ててこの地にいるのだ。

「落ち着け、ポルナレフ」
「分かってる、分かってるけどよ……けどよ……!」

 恐らくはあの少女三人はキャスターの持つ何かスタンドのような超常能力で操られている。
 そう考えるともうすでにあの少女三人の命は……。
 ポルナレフの心に非常にやるせない気持ちだけが残った。

 一方の綺礼は別のことを考える。
 キャスターの放送の手際の良さだ。
 確かにサーヴァントには聖杯から現代の知識はあれどもここまで出来るのだろうか?
 そこで綺礼は一つの仮定を考える。

(恐らくはキャスターには共犯者がいる。
 雨生龍之介もしくはそれに準する者が確実に一人以上……キャスターの近くにいる。
 恐らくはキャスターの『罠』と考えていいだろう……)

 ――きみは…『引力』を信じるかい?

 DIOの言葉が綺礼の脳裏に過る。
 なぜ今その言葉を思い出したかは、定かではない。
 しかし、今はそのことを置いといて、思考を切り替える。

「放送局か……ここからだと南下して、西に進むのが早いか」
「ポルナレフよ、DIOはどうするんだ?」
「……それ、なんだよな」

 ここにDIOはいなかったことを考えるとDIOが向かったと思われる場所のめぼしいところは三つ。
 一つ、本能字学園。
 二つ、ホテル。
 三つ、駅。

 ここのいずれかにDIOが潜んでいると考える二人。
 ……尤も彼女が持っていたヴィマーナのようなものがあればこの前提は一気に覆る。

 どちらにしろ、放送局とは反対方向である。

「そういや、コイツと同じ服を着ていた子が一人いたな」
「ああ、そうだな……ん?」
「どうした?」
「彼女の様子が何か変だ」
「なにぃ?」

 寝かしていた少女の様子を見て、その変化に気付くのは容易であった。
 先程よりも少女の顔色が明らかに悪くなっている。
 気を失っていても、この放送の声が耳に届いていたかは定かではない。
 だが、青ざめており、血の気が引いているような寝顔である。 

「……何かキャスターと関係があるのか?」
「かもしれないな……」

 無理矢理にでも起こすか、それとも彼女が自分から起きるのを待つのか?
 それでも動き出した時間は待ってはくれない。

 6時の定時放送は目前に迫っていた。

【D-6/ショッピングモール/一日目 早朝】
【言峰綺礼@Fate/Zero】
 [状態]:健康
 [服装]:僧衣
 [装備]:なし
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0~2、神威の車輪@Fate/Zero
 [思考・行動]
基本方針:早急な脱出を。戦闘は避けるが、仕方が無い場合は排除する。
   1:少女(東條希)から事情を聞く。
   2:DIOの言葉への興味&嫌悪。


【ジャン=ピエール・ポルナレフ@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
 [状態]:肋骨、胸骨体、胸骨柄に罅(応急処置済み。行動、スタンド操作に支障はなし)
 [服装]:普段着
 [装備]:なし
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
     黒カード:不明支給品0~3、縛斬・餓虎@キルラキル(一時預かり)
     不明支給品1枚(希の分)、ヴィマーナ(6時間使用不能)、
     スパウザー@銀魂、不明支給品2枚(ことりの分、確認済み)
 [思考・行動]
基本方針:DIOを倒し、主催者を打倒する。
   1:少女(東條希)から事情を聞く。
   2:DIOを倒す。
   3:キャスターに怒り。


【東條希@ラブライブ!】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(大)、右手首から先を粉砕骨折(応急処置済み)、気絶(もう少しで覚醒する?)
[服装]:音ノ木坂学院の制服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
基本:μ'sのために……
 0:???
 1:ことりちゃんは……
 2:μ'sのメンバーには会いたくない
 [備考]
※参戦時期は1期終了後。2期開始前。


施設紹介
【ショッピングモールのフードコート】
参加者の縁の店から、参加者の縁のない店までたくさんある。
結構広く、テーブルと椅子も結構たくさんある。
調理器具はあれども食材や調味料等が何一つない。
水道は止められているが、ガスと電気は動いている状態である。


時系列順で読む


投下順で読む


049:空に碧い流星 言峰綺礼 108:Sacrament
049:空に碧い流星 ジャン=ピエール・ポルナレフ 108:Sacrament
049:空に碧い流星 東條希 108:Sacrament