ハーン邸・地下隠し部屋

・ちょっとした応接間ほどの広さと高さを持った部屋。

・正面と右手側の壁際にはかなりの数の蔵書が並んだ本棚が、左手側には黒い布を垂らした棚らしきものと、小さな暖炉が配されている。

・天井には豪奢な燭台が提げられているが、火はいっぽんも点されていない――室内に微かに残る異臭から察するに、あまり質の良くない獣脂の蝋燭でも使っているのだろうか?

・床には毛足の長い絨毯が敷かれているし、端のほうには小さな一本足の丸テーブルがひとつと、簡素な木の椅子がふたつ置かれている。

・意外にも本棚にある数冊の書物から、魔力の反応が確認された――物品保護や状態保存といった、保護用の付与魔法がかけられているらしい。いずれも古代王国時代の古書だろう。

・本棚の内容たるや、瞠目すべき――ファリス信者のシグナスとしては、決して見過ごすべきではない内容の蔵書ばかりだった。

・大半は所謂「オカルト書」の類――興味本位に書き立てられた「邪神崇拝」や「儀式魔法の秘術」、「古代王国時代の残酷な刑罰」といった内容に触れるもの――だったが、それらに混じってとてつもなく高価で、とてつもなく危険な書物がいくつも出てくる。

・古代王国成立以前の暗黒神信仰に纏わる儀式を詳述しているとされる『縞瑪瑙オベリスク写本』。

・ファン王国時代に或る傭兵が遺し、その凄絶かつ邪悪な内容から原書はもちろん、大半の写本が焚書処分とされたという『カルナバル砦攻略報告書』の西方語版写本。

・ファリス司祭によって著された研究書でありながら、その狂気にも似た異教徒の弾圧思想故、他ならぬアノスの法王から禁書指定を出された『司教法令集』。

・全9巻のうち6冊は著者自身が破棄、残る3冊もザインのラーダ神殿で起きた原因不明の火災で焼失したという『アマルティアの箴言』のうち、下位古代語写本版の4冊。

・著者、写本作成者、研究者など渡り歩いた先々の人間の大半が「奇怪な死」に見舞われたという『アエギプスの寺院』。

・また、『古代王国中期における、生体的魔法生物の技術的変遷』や『西方におけるバスティ信仰と人=獣人婚伝承研究序説』といった、魔法学院から禁書勧告が出された研究書の類まである。

・言ってしまえば(程度の大小こそ差が激しいが)この本棚は、「金に糸目をつけずに蒐集した、世に『邪悪』と称される書物たち」の一大貯蔵庫だ。

・売り払えばひと財産、どころの騒ぎではないだろう――これを買う相手、というのは大半が禄でもない思想の持ち主なのだろうが。

・左手側の壁際に移ると黒い布をめくり、その向こうの棚を検めはじめた。

・棚には水晶の球、黒や赤に塗られたり磨かれたりした髑髏、人の手を模した燭台、奇怪な形状をした装飾品といった、いかにも「暗黒魔法がらみ」じみた品々が所狭しと並べられていた。

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最終更新:2008年07月04日 20:37
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