・外見は、流行の詩人の詩集のように外装されている。捲ってからしばらくの間も、そんな内容だ。
・だがある場所からは、とんでもない内容に入れ替わっている――それも邪神崇拝だの暗黒魔法だのの絡みではなく、古代語魔法絡みのようだ。
・主な文章は、下位古代語で書かれている。時折混じる上位古代語や、儀式魔法に必要な魔法陣や呪文といったものらしい。
・あまりにも専門的すぎる内容であるため、即断することなど極めて困難なのだが、所々を拾い読みするかぎりでは、どうやら『蛮族』に「知性」や「魔法を制御する能力」を与えようという研究と、その成果によって得られたものの製造方法に関する書物の写本のようだ。
・ただし、『蛮族』の脳や神経や脊髄、知覚器官などに対する「実験」――現代に生きる人間であるシグナスたちにとっては「生体解剖」や「拷問」にも等しい行為――の記録もまた詳細に図入りで記載されており、あまりの惨たらしさに、冒険者といえども正視に堪えがたい部分も数多くある。
・仮に下位古代語が読めない者が見たとしたなら拷問の教本か、邪神に捧げる儀式の手順書としか思えないだろう。